「来週から俺の両親も同居させることにした。嫌ならお前が出て行け」――何の相談もなく新築一軒家を建て、妻の私に一方的にそう宣告した夫。私はにっこり笑って「分かったわ」と答え、夫が出張から戻るまでの1週間、完璧に“準備”を整えた。夫が義両親を連れて新居に戻ってきたその日、私は笑顔で宣言した。「荷物はあなたの愛人に送っといたわ」。義両親が凍りつき、夫が顔面蒼白で叫んだその瞬間、私はさらに深い真実を…

「来週から俺の両親も同居させることにした。嫌ならお前が出て行け」――何の相談もなく新築一軒家を建て、妻の私に一方的にそう宣告した夫。私はにっこり笑って「分かったわ」と答え、夫が出張から戻るまでの1週間、完璧に“準備”を整えた。夫が義両親を連れて新居に戻ってきたその日、私は笑顔で宣言した。「荷物はあなたの愛人に送っといたわ」。義両親が凍りつき、夫が顔面蒼白で叫んだその瞬間、私はさらに深い真実を...

「2階は私が全部使うから。もう荷物も届いてるはずよ。荷物、2階に運んでおいてね」

新居への引っ越し当日、妹のり子から突然かかってきた電話の第一声がこれだった。私たち夫婦の新居に一緒に住むだと?しかも2階を全部使う?

わけがわからなかった。なぜなら私たちの新居は、段差のないユニバーサルデザインの平屋だからだ。2階なんて存在しない。

私は夫のたけしと結婚10年目。子どもはいないが、穏やかで幸せな日々を送ってきた。実家が古くなり、建て替えの話が出たのを機に、念願の新居を建てた。これから2人だけの時間を楽しむつもりだった。

そんな私の新居に、り子が一緒に住む?

り子は小さい頃から成績優秀で、いつも「頭がいいね」と褒められて育った。一方の私は勉強ができる方ではなかった。り子はそんな私を「バカ姉」と見下し、口も態度も悪かった。プライドが異常に高く、自分の意見しか信じない。両親に反抗して早々に実家を出たが、どこに行っても問題を起こして解雇され、今ではニート生活を送っている。すべて他人のせいにして。

そんなり子が、私の新居に住むなんて。考えただけでぞっとした。

電話を切って新居に着くと、そこには私たち夫婦の荷物ダンボール8箱だけがあった。り子の荷物はどこにもない。私は再び電話をかけた。

「り子、あんた一体どこに住むつもり?うちは平屋だし、あんたの荷物も見当たらないわよ」

するとり子は焦った声で言った。

「ちょっと待って。今新居に来たけど…お姉ちゃんどこにいるのよ?ここじゃないの?じゃあここは誰の家なの?」

その時、電話越しに聞き慣れた声がした。

「ここは私たちの新しい家だよ」

祖母の声だった。祖母がり子から電話を奪い取ったらしい。祖母は私に言った。

「鈴、いい家を建てたね。そこからたけしさんと一緒に2人の生活をスタートさせるんだよ。り子が荷物を運んだ新居は、私とあんたの両親の新居だよ」

そうだった。私たち夫婦が新居を建てるのと同時に、両親と祖母も新居を探していたのだ。そしてり子は、私が新居に引っ越すことを聞いて「バカな姉を利用して寄生してやろう」と考え、両親に住所を聞いた。しかし両親と祖母はそれに気づき、教えたのは私たちの新居ではなく、自分たちの新居の住所だった。

まんまと騙されたり子は、荷物を送った先が両親と祖母の新居だと知って激怒した。

「ちょっとおばあちゃん、勝手なことしないでよ!私はお姉ちゃんと住みたかったの!おばあちゃんやお父さん、お母さんと一緒なんて真っ平ごめんだわ!」

祖母は冷静に言い返した。

「あんたが鈴と一緒に暮らす理由は何だい?鈴に全ての生活費を出させて、自分は仕事もせずにゴロゴロ過ごすつもりだろう。末は優しい子だから何も言えないのをいいことに、寄生するつもりだったんだろう。お前というやつは」

り子は泣き言を言ったが、祖母は一歩も引かない。そして私は電話越しに、呆れてものも言えなかった。するとり子は今度は私に言った。

「お姉ちゃん、そんなに嫌なら諦めるわ。ただ、その代わりと言っては何だけど、30万ほど貸してくれない?すぐに返すわよ。今ちょっと必要でさ」

私はもう呆れ果てた。自分の妹が情けない。すると電話の後ろで、普段は温厚な父の大声が響いた。

「り子、お前借金してるんだってな。全て調べ済みなんだ。お前、借金してたから鈴と一緒に暮らして生活費を浮かそうという魂胆だったんだろう。しかも鈴と暮らせなくなったら、今度は金を貸して欲しいだ。どこまでお前は鈴に迷惑をかけたら気が済むんだ」

私はそのまま電話を切った。もう妹と話す気はなかった。話したところで何の進展もない。

その後、り子は両親と祖母にこっぴどく叱られたらしい。そして「一から根性を叩き直す」と宣言され、就職活動をすることになった。しかしニート生活が長すぎて、実績も資格もなく、就職はかなり困難だったようだ。それでもなんとか雇ってくれる会社が見つかり、今は借金返済も始めている。最近では会社や上司の愚痴も言わなくなったという。

今回の件は、り子にとっていい薬になったのだろう。人のことを見下し、馬鹿にしていると、その分だけ全てが自分に返ってくる。ようやくそのことに気づいたようだった。

――あれは、夫の両親と同居すると言われた日のことだ。

「来週から俺の両親も同居させることにした。そのための新築一軒家だからな。分かったらさっさと準備しろ。嫌ならお前が出て行け」

これは私の夫であるテルヒさんが言った言葉だ。何の相談もなく、彼は新築一軒家を建てた。そして義両親の同居も、一切相談はなかった。

私はこう告げた。

「分かったわ。ばっちり準備しておくから任せて」

夫はにやりと汚い笑みを浮かべた。

「へえ、物分かりがいいじゃないか。俺は明日から1週間出張に行ってくる。だから引っ越しの準備はお前が全部やっておけ。俺の荷物は丁寧に扱えよ」

でも私も心の中で笑っていた。夫は本当にバカな男だと。

1週間後、夫は義両親を連れて新居にやってきた。私は準備を進め、人足先に新居の前で待機していた。義両親は真っ先に私に頭を下げた。

「裕子さん、同居を提案してくれてありがとう。今日からお世話になるよ」

「本当に嬉しいわ。もう私たちは年だけど、できることは自分たちでするからね」

私は義両親に笑顔を向け、先に新居の中へ案内した。そして夫と2人きりになった瞬間、夫が口を開いた。

「ご苦労様だったな、裕子。じゃあ、先に俺の荷物から解きほぐしろ。前にも言ったが、丁寧に扱えよ」

私はそこで公開した。

「もう全部終わったわよ。荷物はあなたの愛人に送っといた」

「は?今何て言った?」

「だから、あなたの荷物はあなたの愛人に送っといた。丁寧にね」

夫は驚いて口を開いた。

「は、お前自分が何を言ってるのか分かってるのか?ふざけたこと言ってんじゃねえ」

夫は頭に血が上がり、周りが見えなくなっていたのだろう。あまりにも大きな声で怒鳴り散らしたため、当然のように義両親にも聞こえていた。何事かと慌てた様子で私たちのところに戻ってきた義両親は、心配そうに口を開いた。

「テルヒ、どうしたんだ?そんなに大声で怒鳴るなんて。一体何があったの?そんなに強く言ったら裕子さんがかわいそうよ」

義両親に理由を聞かれるが、夫にとっては本当のことを知られるわけにはいかない。目を泳がせながら放った言葉に、私は呆れてしまった。

「いや、荷物を解きほぐしてたんだけどな。裕子のやつがあまりにも荷物を雑に扱うもんだから、見ていられなくなってな」

「裕子さんが雑?本当かしら」

「うむ。わしもそう思う。裕子さんどうなのかね」

そんな嘘が通用するはずもない。義両親も夫を怪しいと感じたようだ。そこで私にも確認しようとしてくれたので、先ほど夫に言ったことを伝えることにした。

「テルの荷物は彼の愛人に送りました。そう伝えたら、大声で切れ始めたんです」

「な、なんて?」

「愛人?どういうこと?」

義両親は驚きのあまり、信じられないといった顔をしている。夫は必死に言い訳を始めた。

「違う。裕子は何か勘違いしているんだ。俺に愛人なんかいるわけないじゃないか。父さんも母さんも、なんでそんな顔してるんだよ。大丈夫だって。息子の言うことを信じろよ」

義両親は半信半疑の様子だったが、私はさらに真実を語ることにした。

「新築一軒家を立てること、お2人と同居することも、テルは私に相談なく決めたんです。同居を断ったら家を追い出すと脅されていたんです」

それを聞いて義両親は困惑した。

「それは本当なの?あなた、どうしましょう」

「お、落ち着きなさい。まさか照る日がそんなことを」

夫はさらに言い訳を続けるが、私は胸ポケットからあるものを取り出した。

「ねえ、テルヒさん、これがなんだか分かる?」

「なんだよそれ。分かるわけないだろ」

「これはボイスレコーダーよ。ここに私が嘘をついていない証拠が残されているから、再生するわね」

夫は慌てて止めようとしたが、私は再生した。そこには1週間前に夫が私に言った言葉が録音されていた。夫の暴言、脅し、全てが収められていた。

音声を聞き、夫は顔面蒼白になった。

「なんだよこれ。なんでこんなものがいつの間に録音なんて…」

実は私は最近、夫にいびられていた。その証拠を集めるために、常にボイスレコーダーを持ち歩いていたのだ。すると義両親の表情がだんだんと険しくなり、夫に向かって口を開いた。

「裕子さんはこんなにいい人なのに、照る日ったら何を考えているの?全くこのバカ息子が、消え失せろ」

「いや、いびってなんかいないって!裕子の被害妄想なんだって!」

夫はしらを切ろうとするが、私はさらに別の音声を再生した。夫が「おい、さっさとしろよ」と私に食事の文句を言っている録音もあった。それでも夫は認めようとしない。そこで私はスマホを取り出した。

「ねえ、これを見ても言い訳ができる?」

そう言って映像を流すと、そこには私の財布から金を抜き取る夫の姿が映っていた。実は最近、財布から少しずつお金がなくなっていたのだ。私はこっそりカメラを仕掛けていた。

「テルヒさんがこんなことをし出したのは、新築一軒家の購入を決めた後からだったわね。なぜ私のお金を盗み出したのか調べてもらったのよ。そしたらあなたが愛人に貢いでいることが分かったの」

すると夫はまた言い訳を始めた。

「お金を盗むわけないじゃないか。これはお前の財布にお金を入れてやったんだよ」

開き直る夫に、私は大量の写真をばらまいた。夫が愛人と腕を組んで歩いている写真、ホテルに入ろうとしている写真。浮気の証拠として十分すぎるものが揃っていた。

これには普段温厚な義両親ですら激怒した。

「テルヒさん、これはどういうことなの?裕子さんを裏切るなんて許せないわ」

「母さんの言う通りだ。いや、裕子さんだけではないな。わしたちのことも騙していたんじゃないか。ふざけるんじゃない」

さすがに夫も反省して謝罪してくれるかと思ったが、夫は私の予想のはるか斜め上の反応をしていた。

「ああ、うまくやれてると思ったんだけどな。まさかここまでバレてるとは思わなかったぜ」

あろうことか夫は、反省どころか開き直ってしまった。そして本当のことを話し始めた。

「俺が一軒家を購入したのは、ゆくゆくはレミと一緒に住むためだよ。そのためには裕子が邪魔だったからな。めちゃくちゃいびってやれば離婚したくなるに決まってるから、それを狙っていたんだよ」

この言葉に義両親は怒りが頂点に達した。

「このバカ息子が、どこまで自分勝手なことを言えば気が済むんだ」

「お父さんの言う通りよ。全くあなたみたいな息子を持って、情けないったらありゃしないわ」

しかし夫はそれでも言い換えなかった。

「ふん。そんなの知ったこっちゃないね。俺にとってはレミが一番なんだよ。レミのためなら、必要のないお前らを捨てることなんて簡単なんだよ」

義父は今にも殴りかかりそうになっている。私はそこで、ふと大事なことを思い出した。夫を絶望させる事実を知っていたことを。

「テルヒさん、あなたの頭の中ってどうなっているのかしら?どんな綺麗なお花畑なのか見てみたいわね」

「なんだと?バカにしやがって。それはどういう意味だ?」

「私、すでにレミさんと接触してるのよ。レミさんにとって、テルヒはATM程度の存在よ」

「なんだと?お前調子に乗るなよ。レミはそんな女じゃない」

そこで私は鞄の中からあるものを取り出して夫に見せた。通帳と一枚の写真だった。

「テルヒ、これを見てもそんなことが言える?」

「は?これは嘘だろ?」

通帳には、レミから私への慰謝料の振り込み記録があった。写真には、レミが知らない男とタワーマンションに入っていく姿が写っていた。

「レミさんがテルヒさんと浮気してること。それを私が知って、振り込まれるお金よ。レミさんと一緒にタワマンに入っていく男は、レミさんの本命の男と言っていいでしょうね」

「まさか、慰謝料か…。そういや裕子、お前が俺の荷物を送った宛先ってどこなんだ?」

「レミさんのところだって言ったじゃない」

「それって、まさかこのタワマンか?」

「正解。よくわかったわね」

そこまで話すと、さすがに夫も愛人に騙されていたと気づいたのだろう。膝からがっくりと崩れ落ちて、力なく頭を抱えてうなだれていた。

「うわ、くそ…」

私はそんな夫に、とどめの一言を伝えた。

「人を騙すなら、騙される覚悟もしておくことね」

そうして私は義両親と共に、その場を去った。夫を残して。

その後、夫は新築一軒家で一人暮らしをすることになるのだが、それがまた地獄の日々を送ることになっていた。ある日、私は夫から電話がかかってきた。

「今更何の用なの?」

「何の用じゃねえよ。お前のせいで俺の人生めちゃくちゃだ」

「何を言ってるのよ。自業自得じゃない」

「黙れ。お前が俺の荷物をレミの男のタワマンに送らなければ、あんなことにはならなかったんだ」

話を聞くと、荷物が届いたことでレミの本命の男に夫の存在がバレて、その男がレミと一緒に夫の家に乗り込んできて大変だったらしい。しかもレミは夫とタワマンの男で二股をかけただけでなく、複数の浮気相手が存在していたという。最終的にレミは全ての男に捨てられ、その後は何事もなかったかのように夫の家に何度も来るようになったらしい。

「なあ、頼むよ。裕子助けてくれよ」

夫は弱々しく私に助けを求めてきた。しかし私はきっぱりと。

「もう私には関係ないから、自分でどうにかしなさい。話は終わりよ。それじゃあね」

そう言って電話を切った。

それから数日後、私は味方になってくれた義両親に伝えたいことがあったので、カフェに誘って話すことにした。

「お父さん、お母さん、この前はご迷惑をおかけしました。それと、私のためにありがとうございました」

すると義両親は優しい顔をして言った。

「いやいや、とんでもない。こちらこそ本当にうちのバカ息子は申し訳なかったな」

「本当にね。裕子さんが一番苦しかったはずなのに、よく耐えたね。よく頑張ったわ」

その言葉を聞いて、私は嬉しくて思わず涙が出そうになった。すると義両親はさらに嬉しい言葉を続けてくれた。

「裕子さん、わしたちのことを本当の両親だと思ってくれていいからな」

「何かあったらいつでも言いなさい。いつだって助けてあげるから」

「お父さん、お母さん、ありがとう。本当にありがとうございます」

夫に裏切られたことは残念だった。でも、こんなに優しい義両親に出会わせてくれたことには感謝している。これからの人生、どんなことが起こるだろうか。一つ一つ乗り越えながら頑張って、そして私の味方でいてくれた義両親に恩返しをするためにも、新しい人生を前向きにスタートしよう。そう心に誓って、私は幸せ探しに走り始めた。

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