深夜2時、眠れなくてベランダに出た俺。隣人の部屋から、艶めかしい声が聞こえてきた。翌朝、すべてを聞かれていたことを知った彼女は、笑顔で信じられない提案をしてきた。「私が寝てる最中に侵入してきて襲ってほしいの。」断れずに受け取った鍵。深まる彼女の妄想の世界に、俺はどんどん引き込まれていく。そして気づけば、彼女に恋をしていた。だが告白への返事は、まさかの拒絶だった。「私の本当の顔を知って好きにな…

深夜2時、眠れなくてベランダに出た俺。隣人の部屋から、艶めかしい声が聞こえてきた。翌朝、すべてを聞かれていたことを知った彼女は、笑顔で信じられない提案をしてきた。「私が寝てる最中に侵入してきて襲ってほしいの。」断れずに受け取った鍵。深まる彼女の妄想の世界に、俺はどんどん引き込まれていく。そして気づけば、彼女に恋をしていた。だが告白への返事は、まさかの拒絶だった。「私の本当の顔を知って好きにな...

深夜二時を過ぎても眠れず、ベランダに出た俺は隣人の真夏さんの声を聞いた。誰かと電話しているようで、内容こそ聞き取れなかったが、その声は明らかに艶めかしいものだった。そして、「現実ってつまんないなあ。妄想ならどんなことでもできるのに」と彼女がため息混じりに呟いた時、俺は動揺して足元の物干し台にぶつかってしまった。

「タイガさん、いるんですか?」

完全にバレていた。謝る俺に、彼女は開き直ったように言った。「明日、起きたら家に来てくれますか?」

翌朝、恐る恐る訪れた俺に、彼女は笑顔でお茶を出すと、衝撃の提案をしてきた。「私、いろんな体験をしてみたいの。普通の行為じゃ物足りないというか、もっと派手なことがしたいの。だから、タイガさんは秘密を知った以上、協力して欲しいなって。」

彼女が考えたシチュエーションは「寝てる最中に男の人が家に侵入してきて、最終的に襲われちゃう」というものだった。あまりのギャップに驚きつつも、俺は彼女の勢いに押され、鍵を受け取り、その日のうちに家に帰った。冷静になると、これは俺にとっても悪くない話かもしれないと思えた。

そして一週間後の休日、深夜零時を回った頃、俺は彼女の家に侵入した。寝息を立てる彼女にキスをすると、彼女は目を開けた。そのまま言葉を交わすこともなく、俺たちは愛し合った。翌朝、彼女は満足そうに「焦らしすぎだよ」と笑った。

それから半年ほどの間、俺たちは寝室だけでなく、浴室やクローゼット、夏の日にはベランダなど、様々な場所で彼女の妄想を再現するようになった。回数を重ねるごとに、俺は彼女に惹かれていった。連絡先すら知らないのに、俺は真夏さんに恋をしていた。

意を決して告白すると、彼女は困ったように言った。「タイガさんのことはもちろん好きです。でも、付き合うのは怖いんです。私の本当の顔を知って好きになってくれた人なんて、過去に誰もいないんですよ。いつか『普通がいい』って言われて、突き離されるのが怖いんです。」

彼女は自分の過去を話してくれた。子供の頃にいじめられていた彼女は、現実逃避のために妄想を始めたこと。初めての彼氏には「変な女は無理」と振られたこと。だからこそ、妄想の世界に自分の居場所を作り、現実の自分を取り繕って生きてきたこと。

俺は彼女の言葉を聞いて、改めて気持ちを伝えた。「これまでの話を聞いても、俺は真夏さんのことが好きだよ。だから、これからも好きでいさせて欲しい。そしていつか俺のことを完全に信用できたら、その時は実際に付き合ってください。」

彼女は驚いた表情を見せたが、どこか嬉しそうでもあった。その後も俺たちの関係は続き、デートに行くようになり、連絡先も交換した。告白から一年後、俺はもう一度だけ、今度はプロポーズをしようと決意した。

「真夏さん、僕と結婚してください。僕はもう真夏さん以外考えられません。」

彼女は涙を浮かべて応えた。「最初は怖かったけど、タイガさんなら信じられる気がする。妄想じゃなくて現実でこんなに幸せになれるなんて思ってなかった。こんな私だけど、よろしくお願いします。」

結婚後も、俺たちは彼女の妄想を続けるために、行為の時だけ別々に寝て、鍵で侵入するという生活を送っている。周りから見れば変態夫婦かもしれないが、これが俺たちらしい幸せの形だ。今日も俺は、そんな幸せを噛みしめながら生きている。

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