高級寿司屋で妻と乾杯したその瞬間、隣の個室のドアが開いた。男が酔った勢いで妻の腕を掴み、「こっちで一緒に楽しもうや」と言い放った。私はその腕をねじって倒し、男は逆上して「事務所で地獄を見ろ」と脅してきた。笑ってしまった。その男は、私の父の組の若頭だったからだ。私は組長の息子として育った。…

高級寿司屋で妻と乾杯したその瞬間、隣の個室のドアが開いた。男が酔った勢いで妻の腕を掴み、「こっちで一緒に楽しもうや」と言い放った。私はその腕をねじって倒し、男は逆上して「事務所で地獄を見ろ」と脅してきた。笑ってしまった。その男は、私の父の組の若頭だったからだ。私は組長の息子として育った。...

金を出さないなら、事務所で地獄を見ることになるぞ。

そう言い放ったのは原木深夜という男だった。俺は妻と久しぶりに高級寿司屋で食事をしていた。原木はチンピラたちと個室で騒いでいた。

俺はこの寿司屋の昔からの常連だ。妻がお手洗いに行った時、原木が妻に「いい女じゃねえか。こっちで一緒に楽しもうぜ」と言って妻の腕を掴んできた。俺はすぐに駆け寄り、原木の腕をひねって倒した。

すると原木が「慰謝料と全員の食事代を払え」と詰め寄ってくる。

「はあ。とりあえず店に迷惑だろうが。全員外に出ろ」

俺がそう言って外でチンピラたちをやっつけ、事務所へ行くことになるが、そこで原木は地獄を見ることになるとは、この時はまだ知る由もなかった。

俺の名前は佐山ひよし。40歳だ。今はIT企業で専務をしている。40歳を過ぎて、俺のこれまでの過去を少し振り返ってみようか。

俺はかなり変わった家で生まれ育った一人息子だ。小学校へ上がってもクラスメートの親が「俺とは遊んではいけない」と言い、俺はいつも友達がいなくて一人だった。

俺の家は和風の大きな家で、門から玄関までが長く、庭には鯉がいて、俺の友達は鯉だった。俺が鯉の近くに行くと鯉たちは寄ってくる。餌やりは俺の担当だった。

家の中には二人の高校生くらいの不良少年が住み込み、毎日庭の掃除や家の掃除、母の食事の手伝いをしている。俺は小学校から父に空手、柔道、剣道など様々な武道を習わされていた。

たまには挫けそうになり、母に泣きついていたが、母は「男は強くないとね」といつも着物で綺麗な笑顔を見せて俺を励ましてくれた。

学生になるとパソコンのプログラミングに興味を持ち、武道はもちろん父の事務所で宿題を済ませ、パソコンばかり触っていた。そして高校へは行かず、事務所でプログラミングをするのと父の金庫番になる。その時に経理も覚えた。

今は妻の会社で働いているが、妻との交際のきっかけは偶然運命的な出会いをしたことだった。

父はたくさんのスナックや夜の店を持っている。結婚前は店で暴れる人間がいると俺の出動だ。そんな毎日を送っていて、その頃には自分の立場はもうしっかり理解していた。そして俺は結婚自体を諦めていて、将来の希望がなかった。このまま父の後を継いでいくのだと。

しかし、ある日の妻との出会いで俺は結婚に至るのだった。婿養子になったので俺の苗字は城崎から佐山になる。それは30歳の時だ。

俺は久しぶりに行きつけの店で飲んでいた。夢もなく疲れていた俺だが、その店に同年代と思われる女性が一人でウイスキーを煽っている。彼女がいるのは俺の席の隣の隣の席だ。

彼女がお手洗いに向かうが、もうすでに足元がふらついていた。とても綺麗なスーツ姿の女性で、俺は少し彼女が心配になる。やがてまた席に戻り、ウイスキーを飲み出した彼女は、ついにカウンターに顔を埋めてしまった。

「大丈夫ですか」

俺はそう声をかける。すると彼女は「少しお話を聞いてもらえますか」と言ってきたので、「俺でよければ」と答えたんだ。

彼女はあるIT企業の一人娘で、突然お父様が倒れ、30歳の若さで社長になってしまったらしい。しかし若い彼女には荷が重く、とても疲れているとのこと。そして彼女はふらつく足でタクシーも呼ばず、俺に礼を言って店を出ていく。

俺は彼女が心配ですぐお勘定して俺も店を出る。ここは関西のとある繁華街だ。案の定、ふらついた足で歩く彼女に男たちが群がっていく。俺はタクシーを呼び、すぐ彼女の手を引っ張って彼女とタクシーに乗る。彼女の家を聞いて、「心配しないでください」と言い、家まで送った。そして「何かあればいつでも助けに行くから」と、俺は彼女に連絡先を教えたんだ。

その後、彼女からお礼にと食事に誘われ、俺たちの交際が始まることになった。彼女には俺の今の立場なども話していたが、彼女はそんな俺の全てを受け入れてくれたんだ。

俺の両親も俺の将来を心配してくれていたようで、彼女の婿養子として真面目に働こうという俺のことを応援してくれた。俺はプログラミングが得意なので、社長である妻の下で専務となる。やがて娘にも恵まれ、会社は俺の作ったアプリの開発が順調で、妻も喜んでくれていた。

妻の母と同居しており、8歳の娘のことをお母さんに任せて、アプリの売れ行きが今日本で1位になったお祝いに、妻と高級寿司を食べに行くことになった。俺が小学生の頃から両親と通っていた寿司屋だ。

大将も元気で、俺たちはカウンターに座った。しかし今日は個室の方がかなり騒がしい。大将に小声で訪ねてみると、チンピラ風の男たちが個室で飲んで騒いでいるようだ。

妻と乾杯をして美味しい寿司を頂いていた。店は相変わらず満席である。大将と店員は忙しくしていたが、個室のドアを開けたある男が「酒が足らん。はよ持ってこいや」と叫ぶ声が聞こえる。店員は慌ててビールを持って走っていた。

食事中に妻がお手洗いに向かったのだが、よく見ると騒がしい個室のドアは開けっぱなしだ。俺はその個室の前を通って奥にあるお手洗いに妻が無事に行くまで見届けた。

しかし妻が戻ってくる時、こちらに向かって歩いていると、個室からヤクザ風の男が出てきて「おい、女じゃねえか。こっちで一緒に楽しもうや」と言って妻の腕を掴んだ。

俺はすぐ駆け寄り、「おい、その手を離せ」と言って、そのヤクザ風の男の腕をねじって倒した。

するとヤクザ風の男が「てめえ、何しやがんだ。俺は城崎組の若頭の舎弟だ。ああ、痛いなあ。腕を骨折したやんけ。慰謝料と今日の食事代全部支払え」と言う。

「ん? 何だって? 城崎組?」

「ああ、そうだが。お前ら、いいからこいつをやっちまえ」

「ちょっと待てや。店内で騒ぐのは迷惑だろうが。せめてから全員外に出ろや」

「俺が勝ったら、お前が俺たちの分も払うようにな」

「ああ、金出さないなら事務所で地獄見ろ」

「お前の腕を少しひねっただけだし、骨折などしてへん。先に手を出したのはそっちだろうが。最近のヤクザさんは一般の女性にまで手を出すのか」

「何やって」

「とにかくこれ以上騒ぐと店に迷惑だろうが。はよ外に出ろや」

俺はそう言って妻にタクシー代を渡し、スマホで事務所へ連絡を入れるように頼んだ。そして食事が終わったら帰るようにと、食事代を大将に渡した。

そしてぞろぞろとチンピラ5人と原木が店の外へ出てくる。

「てめえ、舐めてんのか? こんな店に来てて、ほんま貧乏なんやろ。俺らへの慰謝料も食事代も払われへんのとちゃうか。おい、お前ら、こいつを好きにやってまえ」

原木がそう言うと、チンピラたちが俺に詰め寄る。しかし5人程度は俺には楽勝だ。一人一人、素早く振り上げた腕を払い、後ろに回って足を引っかけて全員を倒す。

「てめえ、急所とか言ったな。残念ながらお前に払う金はない。なあ、事務所とやらに行きましょうか」

「てめえ、事務所がどんなとこか知ってんのか?」

「いや、俺は行ってみたいねんな」

俺と原木がそんな会話をしている間に、チンピラたちはどこかへ散らばっていく。

「行ってみたいって、子供の遊び場やないわ。ほな、しっかり地獄を見てもらうことにしようかいな」

「ああ、どんな地獄が待ってんの?」

「ほんまに来る気かい。ほな、来てのお楽しみにしようか」

「いいけど、今のヤクザさんって、そうやって一般の俺にも手をかけたりするのか?」

「てめぇは特別だ。俺の子分たちも痛い目に合わせてくれたからの」

「城崎組は関西トップの組やろ」

「ああ、そうだ。よう知ってるやんけ。関西に住んでる人間ならほとんどが知ってるやんけ。俺がそこに若頭だ」

俺はじっと原木の顔を見ながら、妻の連絡を待つ。

「ふむ。若頭さんなあ」

「何だ、てめえ、まだ喧嘩売ってんのか?」

「いや、別に」

こう言った時、妻からメールが入った。俺はスマホを見て、「原木さん、ほな、事務所へ行きましょうか」と言う。

「やっと来る気になったのか。手間取らせやがって」

「いや、あんたがタクシー呼んでるから待ってたんやけど」

「はあ。お前が呼べ。若頭さんなら黒塗りの高級車でも迎えに来るんと違うか?」

「何だ、お前? 名前は?」

「俺は佐山ひよし。会社役員やけど。高級車はまだかな?」

事務所へ連行すると言い出した原木に、迎えの車もない。多分、一般の人に手を出したことを怒られると、本人も半分は分かっているのだろうか。

俺はスマホを取って、妻からメールで今日起こった出来事を組長に伝えてもらうことにした。

「お前、さっきから何スマホで遊んでんや? 佐山とか言ったが、お前が今どんな立場か分かってんのか?」

「いや、スマホで遊んではいませんよ。俺にも仕事の連絡が入るので。で、車はまだなんですかね?」

「じゃあ事務所で地獄を見せてやるよ。今、舎弟が忙しいんだ。タクシー呼ぶから待ってろ」

俺は少し笑いそうになったが、今回のようなつまらないことで事務所が動くはずはないのだ。それでも俺を連れて行くというのなら、とりあえず付き合うことにしようと、ちょっと懐かしくニコニコ笑顔になってしまった。

「おい、何笑ってんやお前。ビビって頭がおかしくなったんか」

そう言うなり、やってきたタクシーに乗り込み、俺は原木に連行された。

事務所に着き、ドアから中に入ると、昔から家で庭掃除をしていた舎弟の松山さん、他全員の幹部が俺を迎え入れた。

「おお、坊っちゃま、お元気そうで」

彼の名前は松山りた。いつも俺が鯉の餌やりだけは俺が担当だからと言っておいた、あの時の青年だ。

その後、幹部ヤクザの皆に「ただいま、お前ら久しぶり」と声をかけると、皆が揃って「お坊っちゃま、お帰りなさい」と言うのだ。40歳になってまでお坊っちゃまはちょっと恥ずかしいが、それを聞いていた原木若頭は口をポカンと開けていた。

「お坊っちゃま、そちらのソファーへ」

「りたさん、ありがとう」

俺がそう言ってソファーに座った時、組長である父が現れ、原木の顔が真っ青になった。

「荒木、お前はいつからそんなつまらない遊びを始めてんや? ああ、大体最近のお前は弛んでいて、どうしようもない」

こう言った俺の父である組長に、原木は地面に座り土下座を始める。

「も、申し訳ございません。組長、ちょっと飲みすぎまして」

「ああ、飲みすぎだと。そんなんでお前は若頭としてこの組を守れるというのかいな。ええ加減にしろ」

城崎組の組長である俺の父は顔を真っ赤にして怒っている。原木は土下座したまま震えていて、「組長、本当に申し訳ございません」と言う。

「謝る相手が間違っておる。息子に謝れ」

「組長の息子さんだったとは。佐山さん。この度は大変なご迷惑を」

「ああ、ほんまにええ迷惑だ。それにお店にもな」

「で、逃げたチンピラたちはどうした? すぐ連絡を付けてこちらに呼んでもらえんかな?」

「かしこまりました」

そう言って原木はチンピラどもに電話をかける。そして原木が「すぐこちらに謝罪に来るとのことです」と言う。すると父が「荒木、お前は東京大学卒でもっと賢いと思ってたがな。東京の組が潰れて彷徨っていたお前には本当に期待をしていたんや。うちの息子は30歳の若さで関西を牛耳ったこの組の元組長だ。あちらこちらでよく働いたもんだ。しかし、表の道になることを決めたので、わしがまた組長に戻ったまでや」と言う。

「えっ、も、元組長さん、もしかしてあの城崎弘さんだったとは」

原木は俺の名前を知っていたようで、さらにガクガク震え出した。そうしている間にチンピラ5人組がやってきて、すぐ原木の隣に土下座したんだ。

「さて、そこの若いのと荒木を、ひよしならどうする?」

父が俺に聞く。

「父さん、女性に手を出す時点でアウトだな」

「それは間違いない」

「じゃあ、お前たち、財布と免許を出せ。スマホもだ」

荒木たちに命令した組長。全員は震えながら財布と免許を出した。それに財布の中身まで全部出される。高級寿司屋で遊ぶほどのたくさんのお札が原木の財布から出てきた。

「荒木、その金は息子の嫁への慰謝料とする。お前たちがしでかしたことは全部息子から聞いておるんや。そして原木、お前は今日限りで破門や」

「組長、そんな、どうかそれだけは」

「いや、お前のような間抜けな若頭など、うちの恥だ。それとその他のチンピラたちの金は、今日の寿司代でわしからきちんと支払っておくわ。あと松山君、こいつらの免許証のコピーを取ってくれ。そしてパスポートの用意だ」

「はい。すぐ手配します」

「組長、パスポートって」

「ああ、心配すんな。破門になってもお前の仕事は用意してやる。そしてそいつらチンピラたちもな。お前らのような人間がこの町をうろつかれると困るんでな。海外でいい仕事を与えてやるよ」

原木たちはさらに震えて固まっている。

「原木、そういうことだから。じゃあ俺はもう帰るんで」

俺はそう言って父と松山さんたちに挨拶をして事務所を出た。

それから父と連絡を取ったが、原木たちはしばらく事務所で見張られて、その後海外でどのような仕事をしているのかは詳しく聞いていないが、向こうでは見張りがいて、帰国はいつできるかわからないとのこと。

それから俺はまた1ヶ月新しいゲーム制作に取り組み、そのミニゲームもアプリとして好評だ。今はスマホゲームがとても人気である。そして妻も2人目を妊娠し、元気な男の子を出産した。

義母がよくしてくれて、娘も中学生になる。入学式では桜が満開で、とてもいい写真が撮れた。俺も育児をするために仕事をリモートでこなしている。俺はすっかりヤクザの世界とは離れて、妻から妻の会社である社長を任されることになったんだ。

格闘技や武道ばかりしていたり、パソコンと睨めっこばかりしていた俺。人とのコミュニケーションは苦手である。しかし今の仕事はほとんどがパソコンで完結してしまう。

息子が3歳の頃、また妻と以前の寿司屋に行った。今度は静かな琴の音がBGMで流れ、ゆっくりと乾杯をして食事ができた。この日は妻との結婚記念日だったんだ。

結婚を諦めていた俺だが、いつの間にか時は過ぎ、2児の父になっていた。40歳を過ぎて、今はパソコンで英会話の勉強をしている。スクリーンに映る英会話教師の日本語は関西弁で、とても笑える。いずれはスマホ以外のゲームも海外のプログラマーと一緒に作成できればと、また俺に新しい夢ができたんだ。

中学しか出ていない俺だが、幼い頃を振り返ると本当に孤独だった。家の掃除をしていたヤクザ上がりの松山さんがたまに鯉のぼりの相手をしてくれていたが、クラスメートの家に行っても追い返される俺。そんな時は俯いて涙を流しながら帰った。ランドセルも重く感じる日々。

中学生になれば空手も黒帯になり、たまに喧嘩を売られたこともあったが、喧嘩にもならず怪我もせずに済んだ。しかし、それも両親が俺の将来を心配してくれての愛情だったのであろう。

娘は妻に似たのか、元々勉強ができたようだが、高校に合格して英会話を勉強している。娘は将来通訳や外資系の仕事に就きたいと言っていた。英語に興味を持ち出した最近では、俺も英語の本も買って読んだり、実際にパソコンで打ってみたりして、英会話教室でネイティブな英語も学んでいる。

久しぶりに父に寿司に誘われていつもの寿司屋に行く。「先日はうちの若いのがご迷惑をかけたようで」と父は大将に謝っていた。そして俺に「仕事の方はどうなんや」と聞いてくる。

「ああ、順調やで。今新しい商品を開発中やけど、あの原木とやらはどうなってしもたんや?」

「ああ、今は松山君が若頭を務めてくれている。原木たちはもうすぐ帰ってくるけどな。次はわしの知り合いの建設現場の仕事が決まっているからな。横着もあるし、監視付きや」

「まあ、あいつらに一生自由はないだろう。ヤクザの世界を舐めた罰や」

そのように父が言う。俺は父が命を取るような人間ではないことは分かっていた。しかしあのようなチンピラがヤクザを目指していたとは恐ろしいものがある。俺ももしかすると中学などで荒れていて、両親の手に負えないような10代を送っていたかもしれない。今でもはぐれ者のような大人がたくさんいるのも事実だ。

暴力団対策法はきつくなったが、金庫番も今は松山さんがしてくれているとのことだった。松山さんなら信用できる。小学校の頃は「りた兄ちゃん」と言って俺は懐いていて、顔には喧嘩でできた傷があったが、とても人間として優しい人だった。俺ももうすぐ50歳だから、松山さんももう60歳か。いずれ組長になっても、松山さんならしっかりやっていくだろう。

ある日、妻とドライブをしていると、父から「ちょっと見てこい」という指示があり、行ってみると家の建築現場があった。俺は妻と社長に挨拶をして建築現場を見せてもらうと、社長が「あれがお父さんに頼まれた原木とその他5人だよ」と教えてくれたんだ。

原木も50歳だろう。フラフラになって、年下の後輩に叱られながら現場作業していた。ちょうど真夏の暑い日だ。原木を取り巻いていたチンピラ5人組も、他の若い先輩は暑さで休憩中なのに、怒鳴られながらの作業中だった。

もちろん労働基準法違反にはならないようにきちんと休憩は取らせていると社長は言っていた。海外でどのような仕事をしてきたのかは知らないが、50歳からの現場作業はとてもきつそうだった。まあ、父から言わせれば自業自得かもしれない。

物価も高く、昔もそうだったかもしれないが、こちらも治安はますます悪くなってきている。原木たちもあのままなら、何をしでかすかわからない人間になっていただろう。

妻はあの日とても嫌な思いをしたようで、帰りの助手席で原木たちのことで微笑んでいた。

そして娘は有名大学を卒業して外資系の企業へ就職。息子は中高一貫の私立に通いながら警察官を目指すと言っている。その後俺の作り上げたゲームは爆発的人気を出し、日本版は俺が特許を取り、特許使用料が爆上がりになり、妻も大喜びだ。海外版はネットで一緒に作った友人のサムが収益を上げている。

俺は元々この仕事が好きだった。それに人生で諦めていた人生のパートナーともあの日出会い、今は庶民として幸せに暮らしている。妻のお父様の会社をしっかり守り、家族を大切にしていくことを再び誓うのだった。

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