「私も一緒に住むわ」——義母は私たちの新居を、勝手に自分も住む前提で決めていた。私は夫の洋太と2人で新生活を始めたかったのに、義母は私の意見なんて聞く耳を持たない。妊娠を報告しても「赤ちゃんが生まれたら私の部屋がなくなっちゃうじゃない」と言い放ち、しまいには洋太名義で勝手にタワマンまで契約していた。義母のやりたい放題に我慢の限界が来た時、私は義母の秘密を暴く決意をした。そこで見つけたのは、私…

「私も一緒に住むわ」——義母は私たちの新居を、勝手に自分も住む前提で決めていた。私は夫の洋太と2人で新生活を始めたかったのに、義母は私の意見なんて聞く耳を持たない。妊娠を報告しても「赤ちゃんが生まれたら私の部屋がなくなっちゃうじゃない」と言い放ち、しまいには洋太名義で勝手にタワマンまで契約していた。義母のやりたい放題に我慢の限界が来た時、私は義母の秘密を暴く決意をした。そこで見つけたのは、私...

私たちが夢に見たマイホームの引き渡し日。義母が大荷物を抱えてアパートに押しかけ、タクシーを指さして言った。「さあ行くわよ。私たちの新しい家に」

私は戸惑いながら言った。「お母さん、困ります」

でも義母はもう車に乗り込んでいた。

タワマンに到着すると、義母は我先に部屋へ入り、自分の部屋にすると言っていた部屋を開けて悲鳴を上げた。「あ、ここは私の部屋よ。なんで子供のものが置いてあるのよ」

部屋にはおもちゃや子供用ベッドが並んでいる。「お母さんには自分の家があるじゃないですか」と私が言うと、義母は笑いながら衝撃的なことを言った。

「家売ってきたわ。私もここに住めるなんて最高よ」

義父が大切にしていた家を手放したと平然と言ってのけた義母。私はため息をついて言った。「ここに入居するのは私の友達ですよ。あの子供用のおもちゃや家具は友達のものです」

「え、どうして私の名義で契約したのよ」

そこへ友達夫婦が入ってきて、「わあ、思った通り素敵なところね。あゆみ、素敵なところ紹介してくれてありがとうね」と感謝してくれた。義母は鬼のような形相で私を睨んでいる。

私は義母の腕を引き、部屋の外へ出た。

事の始まりは、私が洋太と出会った頃まで遡る。

私は仕事が大好きで、恋愛より仕事の方が合っていると自分に言い聞かせながら30歳までバリバリ働いてきた。そんな私の前に現れたのが、2つ年下の取引先担当者・洋太だった。いつも明るくて、私に優しく接してくれる。気づけば惹かれていた。

そんな日々が続いたある日、取引先に電話をすると洋太が出た。突然すぎて声が裏返った私に、洋太は笑いながら言った。「すみません。つい可愛くて」

「あ、いえ、すみません」と私も慌てたが、その直後、洋太が言った。「相葉さんが良かったらですけど、今度一緒に食事に行きませんか? 」

「是非お願いします」とまたしても声が裏返ってしまった。

それから何度も食事に行き、デートを重ねた。クリスマスの夜、洋太はプロポーズしてくれた。「僕と結婚してください。絶対に幸せにするんで、お願いします」

答えはもちろんイエス。こうして私たちは結婚式を終えた。

仕事人間だった私は、洋太を妻として支えたいと思い、仕事をやめた。新居のアパートに引っ越しても、洋太は変わらず優しい。ただ一つだけ心配なことがあった。それは義母のことだ。

義父は洋太が幼い頃に病気で亡くなり、義母が女手一つで洋太を育て上げた。お金に余裕がなく、洋太は大学進学を諦めて高卒で働き始めた。義母は足が悪く、長く働けないため、洋太は毎月お金を渡している。義母は毎回「いつも申し訳ないね」と謝ってくれる。私たちの生活は贅沢ができないくらいカツカツだったが、洋太と一緒にいられる毎日は幸せだった。

結婚して1年が経った頃、念願だったマイホームの見学に行く日が来た。私の実家は祖父が建てた古い家で、子供ながらに嫌だと感じることが多かったため、自分の家を持つことが夢だった。少しずつではあるが貯金してきた。

その時だった。義母がチャイムも鳴らさずに突然アパートに入ってきた。

「あら、やだ。あゆみさん、まだ何も用意していないの? 」

驚いて義母を見ると、義母は派手な服に身を包み、「私も物件を見に行くわ」と言い始めた。洋太が私の耳元で囁いた。「母さんに今日は物件の見学に行くって電話で言ってしまったんだ。ごめん」

仕方なく、義母と一緒にモデルルームへ向かった。

完成するとこの地域で一番高いビルになるというタワマンのモデルルーム。義母はすっかり乗り気で、「このマンションに決めてもいいんじゃない? タワマンなんて世の女性の憧れじゃない」と言ってきた。

私は「そんなに急いでいないので、ここだけではなく色々な家を見ていきましょう」と伝えたが、義母は即座に言い返した。「いえ、もうここにしましょう。早く決めないと他の人に取られてしまうわよ」

なぜ義母に決められなくてはいけないのか意味が分からない。イライラしていると、義母はさらにありえない言葉を口にした。

「私も一緒に住むわ」

一瞬固まる私。聞き間違いだと思ったが、義母は続けた。「一緒に住んだらきっと楽しいわよ。私、広い部屋がいいわ。ヨガとか部屋でしたいもの。あとそれからリビングには大きなテレビを置きましょう」

義母は私たちと同居する気満々だ。私は洋太に目で合図を送った。洋太は「そんな大事なこと今すぐには決められないよ」と言ってくれたが、義母は不満そうに言った。「私とは一緒に住みたくないっていうの。あなたのこと一生懸命に育ててきたのにひどいわ」

女手一つで育てたのは事実だ。それを言われると、優しい洋太はすぐに同居を了承してしまいそうで怖い。

すると義母が急に私の顔を覗き込んできた。「あゆみさんはもちろん一緒に住んでもいいと思ってくれているわよね」

思わず「え、それは…」と驚きの声を出すと、義母は態度を急変させて私を睨んだ。「あゆみさんひどいわ。私とは住みたくないのね。夫の母親を大事にできないなんて最低だわ」

大きな声で責められた。誰も大事にしないとは言っていないのに、あまりにも一方的だ。

義母の機嫌を取ろうと、帰りに寿司を食べて帰らないかと提案した。寿司が大好きな義母は目を輝かせた。店内で、義母の姿が見えないことを確認して、私は洋太に小声で伝えた。「お母さんには申し訳ないけど、私はまだ洋太と2人きりの生活がしたいの」

洋太は頷いてくれた。「俺も同じ考えだよ。母さんには俺からやんわり伝えるから安心して」

安心して席に戻ると、義母が「あら遅かったじゃない。もう頼んどいたわよ」と上機嫌で言った。

だが、寿司がテーブルに到着して私は自分の目を疑った。義母と洋太の前にはこれでもかというほど豪華な寿司セット。私の前にはかっぱ巻きのセット。

同居を拒んだことへの復讐か。義母の嫌がらせに顔が歪む。

洋太が「母さん、こんなのひどいじゃないか」と言うと、義母は笑って言った。「あゆみさんがかっぱ巻きが好きだって言ってたからこれにしたのよ」

かっぱ巻きが好きだなんて一度も言ったことはない。それなのに平気な顔で嘘をついている。私はショックを受けながらもかっぱ巻きを口に放り込んだ。

洋太が説得するように話し始めた。「母さん、申し訳ないんだけど、やっぱり今はまだ一緒には住めないよ」

義母は驚いた表情で洋太を見た。「なんでよ。分かった。急すぎたのね。もう少し考える時間を上げるからよく考えて」

義母の都合のいい解釈に驚き、洋太は何も言えなくなってしまった。

それから義母は頻繁にアポなしでアパートに来るようになった。インテリア雑誌を広げて「この家具素敵よね。買いましょう。注文しとくわね」とやりたい放題。まだタワマンを購入するかも決めていないのに、義母のテンションはヒートアップしていく。

洋太は言った。「父さんが亡くなってしまってから、母さんは何も贅沢せずに暮らしてきたんだ。だからあまり母さんに強く言うことができなくてごめんね」

私は腹を括るしかないと思った。同居はしたくないが、他の方法で義母に親孝行しようと話した。

そんなある日、ついに事件が起こった。

日曜日の朝、家の電話が鳴り、まだ寝ている洋太の代わりに私が出ると義母の声が聞こえてきた。興奮した様子の義母はさらりと告げた。

「あなたたちのためにあのタワマン、洋太名義で契約しておいたわよ」

顔面蒼白になる私。信じられない。私たちの夢のマイホームが、義母に勝手に決められてしまうなんて。怒りよりも悲しみの方が強く、涙が止まらない。

「勝手なことをしないでください。私と洋太はお母さんとの同居をまだ考えていないんです。新居だって大事な買い物なのでゆっくり決めたいんです」

すると義母は逆切れした。「なんでそんなことを言うの?

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私はあなたたちのためにしたのよ。それにお金を払うのは洋太。あなたにそんなことを言う権利はない」

義母はそう言うと、勢いよく電話を切ってしまった。おそらく義母は私たちのためではなく、自分が住みたいから契約したのだろう。

洋太に伝えると、さすがの洋太も驚いていた。その時、突然強い目眩がした。洋太が間一髪で私を受け止めてくれた。

「あゆみ、大丈夫か? 顔色もあまり良くないみたいだよ」

翌日、病院に駆け込むと、医師に思いもよらないことを言われた。なんと私のお腹には新しい命が宿っていた。妊娠3ヶ月。すでに心臓も力強く鼓動しているという。

その日の夜、またしてもアポなしでアパートに来た義母に妊娠を報告したが、義母は喜んでくれなかった。

「赤ちゃんが生まれたら私の部屋がなくなっちゃうじゃない」

本当に自分のことしか考えていない。涙がこぼれ落ちた。それを見ていた洋太が大きな声を出した。「母さん、俺たち同居はしないよ。何回もそう言っているじゃないか」

義母は泣きながら訴えた。「こんな老いぼればあさんとは一緒に住めないっていうのかい。私は父さんがいなくなってからお金もないのに洋太を育ててきたんだ。少ししかなかった父さんの遺産ももうないよ。どう暮らしていけばいいっていうの」

洋太は何も言えず口を閉ざした。義母が洋太を一人で育て上げたのは事実だ。この話をすると洋太が何も言えなくなるのを分かっていて、あえてこの話をする。義母は本当にずるい。

そんな時だった。義母のスマホに、義父の兄が亡くなったという知らせが入った。義母は面倒そうな顔をして言った。「葬儀があるみたい。私は足が悪いし行けないわ。できればあなたたちに行ってもらいたいんだけれど」

義母は「世話になってないし、行く必要はない」と言うが、そういうわけにはいかない。葬儀は明日だ。仕事で行けない洋太に代わって、私が行くことになった。

翌日、喪服に身を包んで葬儀会場に入ると、私をじろじろと見る50代くらいの男性がいた。男性の方から話しかけてきてくれた。

「初めまして。私は洋太の父の弟です。あなたは洋太のお嫁さんだね。写真で見たことがあるからすぐに分かったよ」

男性は優しそうに微笑みながら、義父の思い出を話してくれた。「洋太の父、俺の兄は本当に家族思いの優しい人だったんだよ。常に洋太のことばかり考えていて、俺はそんな兄を尊敬していたんだ」

温かい気持ちになった。しかし、そこで男性からある事実を知ることになった。義父が生前は会社を経営していて、お金には余裕があったそうだ。いつ自分がいなくなってもいいように、義父は多額の遺産を残してくれていたらしい。

そしてマンションの引き渡し当日。義母は大荷物を抱えてアパートに押しかけてきた。

「家売ってきたわ」

義母は義父が大切にしていた家を手放したと平然と言ってのけた。私はため息をついて、真実を話した。

義母が勝手にタワマンを契約した後、私たちは急いで洋太にキャンセルしてもらっていた。義母は洋太の身分証や印鑑を偽造して担当者を騙していたらしい。事情を話すと、あっという間にキャンセルの手続きを取ってくれた。そして、タワマンに住みたがっていた友達にいい物件があると紹介し、義母の悪行を見逃してもらうことで交渉が成立した。友達はすぐにこのタワマンを気に入り、即契約した。

タワマンも魅力的だったが、子供を育てるならのんびりとした田舎の方がいい。私のそんな考えを洋太は快く了承してくれた。

そのことを説明すると、義母は「私より赤ちゃんの方が大切なのね。私はどんな時も洋太のことを考えて生活してきたのに、こんなのひどすぎるわ」と言って泣き崩れた。

私は冷ややかな目で義母を見ながら言った。「本当にそうでしょうか? 」

義母は私を睨みつけながら「どうして何も知らないあなたにそんなこと言われなければいけないのよ」と言い返してくる。私は静かにポケットから1枚の紙を取り出して義母に見せつけた。

「義父の弟さんが大事に保管していました。これは一体どういうことですか? お父さんの遺産、使いきれないくらいじゃないですか?

私たちと一緒に住む必要ないですよね」

手紙には義父が残した遺産の数々が細かく記されていた。お金だけではなく株券や土地など全てだ。義母は慌てふためいている。

葬儀の時、義父の弟から渡されていたのだ。義父が残した遺産はざっと見て優に3億円以上。それを義母は一人で使い切ってしまったと言い放ったのだ。

「ショックと怒りで声が出ず、ただ義母を見つめることしかできない私。洋太は大きなため息をついて言った。「信じられない。父さんの大事な金をそんなことのために使ったのか。俺には1円も出してくれなかったのにな」

それだけではない。義母は洋太から毎月お金をもらいながら、義父の弟からも毎月生活するには十分すぎるくらいのお金をもらっていた。義父の弟が現在も会社を継いで社長をしており、未亡人になった義母を哀れみ、毎月お金を振り込んでいたのだ。

その時だった。「君は何を言っているのかね。俺は毎月夫である兄をなくした君を哀れみ、お金を振り込んでいるのは事実ではないか」

怒った義父の弟が大きな声を出して部屋に入ってきた。義母はびっくりしている。「どうしてあなたがここにいるのよ。関係ないおっさんは話に入ってこないでちょうだい」

私は言った。「この話をするために私がここに呼んだんです。忙しいのに来ていただいたので、失礼な態度をするのはやめてください。それに、毎月お金も頂いているのにその態度は失礼ですよ」

義父の弟は我慢できずに大きな声を出した。「黙って聞いてたら嘘ばっかり言って。兄は君と洋太のために財産を残したんだぞ。兄は亡くなる前に君に遺産の確認もしたではないか」

洋太は怒りで顔を真っ赤にしている。「俺はお金がない家のために行きたい大学も諦めたんだ。今だって毎月俺は母さんのためにお金を振り込んでいるんだぞ。父さんの遺産はまだ残っているんだろう」

義母は顔面蒼白になり、慌てながら衝撃的なことを口にした。「父さんの遺産はもう使い切ってしまったのよ」

「嘘だろ? 父さんが残してくれた莫大な遺産、何に使ったんだよ」と洋太が声を震わせながら言うと、義母は消え入りそうな声で言った。「ジュエリーとか…」

義母は自分のためだけに、義父が残した大事な遺産を使ってしまったようだ。

洋太は冷たい目で義母を見た。「父さんが俺たちのために残してくれた遺産をくだらないことに使ってしまうなんて、失望したよ。毎月俺が振り込んでいたお金も、どうせくだらないことに使っていたんだろう。もう俺に関わるのはやめてくれ」

洋太は私の腕を引っ張りその場を去ろうとするが、義母は謝りながらついてこようとした。「洋太、ごめんなさい。謝るから許してちょうだい。母さんには洋太しかないのよ」

洋太は無視をして歩き続けた。義父の弟は義母を見て言い放った。「洋太君の言う通りだ。大事な遺産を自分の欲望のためだけに使ってしまうなんて信じられない。毎月のお金の振り込みは今限りでやめる。そうしなければ天国の兄が報われないよ」

義母はその場に膝から崩れ落ちて泣き始めた。しかし、そんな義母を誰も助けようとはしなかった。

私と洋太は車で、これから住むことになる新居へと向かった。友達のマンションの引き渡し日と私たちの引っ越し日が偶然一緒だったのだ。

洋太は言った。「俺は苦労して俺を育ててくれた母さんに楽をさせてあげたいとそればかり思っていたんだけど、影で父さんの遺産を使い切ってしまうなんてひどすぎるよ」

車に乗って1時間が経過した頃、私たちは今日から住むことになる新居に到着した。新居はタワマンとは対照的な小住宅で中古だ。周りに高い建物もなく、交通量も少ない。私たちはこの建物を見た時に即決したのだ。私好みにリフォームしてあり、中古とは思えないくらい綺麗になっている。

洋太は深呼吸して、私を胸に抱き寄せた。「あゆみ、これからはうんと幸せな家庭を作っていこうな」

私は大きく頷いた。

その後、洋太はあれだけ大切にしていた義母との縁を切り、毎月の仕送りもやめた。義母は私たちの元にやってくるなり土下座してお金の無心をしてきたが、当然のように追い返した。義父の弟からの振り込みも中断され、生活に困った義母はパートに出る時間を増やしたが、それでもお金が足りずに消費者金融に手を出していると洋太から聞いた。

義母がどうなろうとも、もう私や洋太には関係ないことだ。

あの事件の後、私は元気な男の子を出産し、優太と名付けた。世界で一番可愛くて愛しい。洋太も同じ考えのようで、優太を可愛がってくれている。

洋太はマイホーム購入を機に新しい会社に入社した。なんと義父の弟が社長をしている会社だ。結婚をしていない義父の弟が、是非洋太に会社の後を継いでもらいたいと懇願したのが始まりだった。今では毎日楽しそうに仕事に通っている。いつか義父のような立派な社長になることが目標だそうだ。

これからも私は洋太を支えていき、幸せな家庭を築いていこうと思う。