「ねえ、一体誰がこの家の鍵を持ってると思ってるの?」
金曜日の夜、2か月ぶりの休日を楽しみに、私は湖の別荘へ向かっていた。車の窓を開け、沈む夕日を眺めながら、やっと一息つけると思った。スーパーで買ったワインと食材、それから新しいシャンプーも買った。今回はゆっくりしようと決めていた。
でも、別荘に近づくにつれて違和感を覚えた。家の中から明るい光が漏れている。駐車場には3台の車。兄のジェイクの車はすぐにわかったが、あとの2台は見覚えがなかった。
ドアをノックしても、中は大音量の音楽で気づかない。鍵を開けて中に入ると、そこにはパーティーの光景が広がっていた。見知らぬ人たちが10人近く。カサンドラが飲み物を片手に立っている。彼女の両親は私のソファに座っていた。テーブルには空き缶や酒瓶が散乱し、私のものではないスピーカーから音楽が流れている。
音楽が止まり、全員が私を見た。しかし、彼らの顔には悪びれた様子が一切なかった。カサンドラは顔を赤くして、腰に手を当てた。
「あんた、何してるの?」
「何してるのって…ここは私の家よ、カサンドラ」
「私たち、鍵を持ってるのよ。だからいつでも来てリラックスしていいの」
私は平静を装って言った。「今週末は私がここで休むつもりなの。だから、今日はみんな帰ってくれないかしら」
するとカサンドラは周りの人に向かって叫んだ。
「なんでこんなバカな寄生虫がここにいるの?」そして私をまっすぐ見て言った。「あんたが出て行きなさいよ。追い出す前に」
まるでビンタされた気分だった。彼女の両親も親戚たちも、まるで私が悪者であるかのように見つめてくる。私は笑った。なぜだかわからないけど、笑った。
「わかったわ。出ていくわ」
ドアを閉めた瞬間、背中に「ヒル」「負け犬」「空っぽの老女」といった言葉が浴びせられた。私は笑顔を保ったまま車に乗り込み、40分かけて自分のアパートに戻った。ハンドルを握る手が痛くなるほど強く握りしめていた。
家に着いて、買ってきた食材を片付けると、ミントティーを淹れてキッチンのテーブルに座った。そこで私は計算を始めた。2年前、ジェイクとカサンドラの結婚式のほとんどを私が払った。招待状も豪華な会場も写真家も。全部私だ。
去年、ジェイクの給料が下がったと言って、家賃を数か月援助してほしいと頼まれた。それが1年続いた。月1400ドル、合計で約17000ドル。私は別に緊急用貯金も持っていて、そこに約25000ドルあった。ジェイクにその口座へのアクセスも与えていた。たまに引き出しがあったが、必要なんだろうと思って何も言わなかった。
そしてカサンドラの車。結婚祝いにローンの支払いを買ってあげた。毎月320ドル、2年間。合計で約7700ドル。
私は湯のみを置いた。結婚式、家賃、車、緊急貯金。2年間で50万ドル以上。なのにカサンドラは私を「ヒル」と呼び、私の家から追い出した。私は決心した。もう支援はしない。
私はスマホを手に取り、アプリで自動支払いを確認した。ジェイクの家賃の振り込みをキャンセル。カサンドラの車のローン支払いもキャンセル。次の朝、銀行に行って、緊急貯金口座からジェイクの名前を外した。
1週間後、ジェイクから電話がかかってきた。挨拶もなく、いきなり怒鳴った。
「どういうことだ? 家賃が振り込まれてない!」
「もう払わないことにしたの」
「正気か?!」
「私は正気よ。そのために、あなたの奥さんには感謝しなくちゃね。先週末、私の家から追い出してくれたんだから」
ジェイクは電話を切った。30秒後、カサンドラから着信。出なかった。次にメッセージが来た。「欲張り」「自己中」「復讐心に燃えてる」と。それを読んで、私はソファで大笑いした。
30分後、母から電話が来た。「ジェイクがすごく怒ってるのよ。一体何があったの?」私は全部話した。母はしばらく黙ってから言った。「あなた、家族のことを考えて。ジェイクは奥さんを愛してるの。カサンドラはちょっと気分屋なだけ。家族の衝突を避けるために、少し折れてくれないかしら」
「母さん、これはリスペクトの問題よ。彼女が私を尊重しないなら、彼女に流れるお金を止める。それだけ」
「でもルビ…」
私は電話を切った。
翌週、私は別荘に鍵屋を呼んで、すべての鍵を交換した。新しい鍵、新しい錠前。もう誰も私の家に入れない。両親にも、ジェイクにも、鍵は渡さなかった。彼らは私が必要だった時に味方してくれなかった。
数日後、水曜日の夜。玄関のチャイムが鳴り、のぞき穴から見ると母と父、そしてジェイクが立っていた。カサンドラの姿はない。賢明な判断だ。彼女がいたら、事態は悪化するだけだとわかっている。
彼らを中に入れ、キッチンのテーブルに座らせた。しばらく沈黙が続いた。
ジェイクが口を開いた。「ルビ、わかってるよ。君が怒ってる理由は。カサンドラと話したんだ。彼女は謝るって言ってる。だけど、条件がある。支払いを全部復活させてくれ。家賃も、車のローンも。俺の口座へのアクセスも戻してくれ」
思わず笑ってしまった。冗談きつい。「何も戻さないわよ」
母は不機嫌そうな顔をした。父は黙ってテーブルを見つめていた。私はスマホを取り出し、カサンドラとのメッセージ履歴を開いて皆に見せた。
「これを見て。今週中に彼女が私に送ってきたものよ」
数十件のメッセージがあった。「売れ残りの老女」「役立たず」「男ができないのはお前が哀れだから」「美容整形が必要な顔」「人生が空っぽで嫉妬してる」などなど。
父はショックを受けた顔をした。母は気まずそうにしていた。ジェイクは画面を見つめたまま何も言わなかった。「これが、あなたの奥さんの本当の私への想いよ。なのに、私に彼女の生活費を払い続けろって言うの?」
ジェイクは何も言えなかった。母が咳払いをした。「でも、あなたの弟はお金に困ってるの。彼の妻を養っていくのは大変なのよ」
「私はもう決めたわ。もう誰の支援もしない」
ジェイクは立ち上がった。「わかった。なら、いいだろう」彼らは去って行った。父は一言も発しなかった。
2週間後、母から電話があった。「ジェイクたち、アパートを追い出されたの。私たちの家に引っ越してくるわ」
「そう。教えてくれてありがとう」私は電話を切った。
2か月後、母はまた電話をかけてきた。今度は疲れ切り、苛立っていた。「ルビ、相談があるの。カサンドラがうちに住んでるんだけど…もう我慢の限界なの」
「どうしたの?」
「彼女、何から何まで文句ばかりなの。特別な料理を作れって言うし、私の掃除の仕方も気に入らないし、家の温度も気に入らない。何もかも気に入らないのよ。先週は、あなたのお父さんにリビングの家具を動かさせたのよ。ソファを別の壁に移したいって。お父さんは腰が悪いのに。高級な家具を持ち上げさせられたのよ」
「ジェイクは何て言ってるの?」
「彼女を守るばかりよ。何をしても擁護するの」
「お母さん、彼らを家に住まわせたのは自分でしょ。だから、自分でどうにかするしかないわ」
「ルビ、お願い…」
私は電話を切った。
それから4か月後、両親が私の職場に現れた。近くのカフェで会うと、母が切り出した。「ジェイクとカサンドラ、離婚することになったの」
カサンドラは、生活水準が落ちたことに耐えられなかったらしい。両親の家での暮らしを嫌い、ジェイクが自分を養えないと非難し、Facebookに「ジェイクは自分の妻を養うこともできないバカな男」と投稿していた。最後にジェイクは我慢の限界になり、離婚届を出した。
「それで、それが一番いい選択だったのよ、きっと」私は言った。今回、母も父も何も言い返さなかった。
数か月後、離婚が成立。カサンドラは自分の実家に戻った。その数か月後、母からいい知らせが来た。「ジェイク、新しい仕事を見つけたのよ。すごくいい給料で」そして、実家から自分のアパートに引っ越したとも。
そのまた数か月後、母が興奮気味に電話してきた。「カサンドラ、ジェイクとよりを戻したいって電話してきたのよ。彼女、間違いを犯したって言ってるわ」
「ジェイクは何て言ったの?」
「絶対に嫌だって。彼女がしつこく電話やメッセージを送ってきて、家にも押しかけてきたらしいわ。最後は、警察を呼ぶって言ったみたい」
「自業自得ね」
1週間後、見知らぬ番号から電話がかかってきた。出ると、カサンドラだった。
「ルビ、助けてほしいの。お願い。ジェイクとよりを戻すのを手伝ってくれない? 彼、私の話を聞いてくれないの。あなたが話してくれたら…」
思わず笑ってしまった。「あんた、私にジェイクとよりを戻すのを手伝えって? 全部やった後で?」
「私が悪かったわ。もうわかってる。でも、私たちはお似合いなの」
「お似合い? 違うでしょ。あんたは彼をクズみたいに扱った。働かずに、彼と私のお金を使い、私を私の家から追い出し、ネットで彼の悪口を書きまくった。それで今、私に助けてほしいの?」
「ルビ、お願い…」
「思い出させてあげる。あんたは私をヒルと呼んだわ。私の家から出て行けと言った。売れ残りの老女だの、役立たずだの、整形が必要だのってメッセージを送りつけた。私は哀れで嫉妬深いってね。覚えてる?」
彼女は沈黙した。そして言い返してきた。「あんたは独り身で惨めだから、嫉妬してるだけよ」
「私は独りだけど、あんたがジェイクを扱ったように誰かを扱うくらいなら、独りの方がマシよ」
電話を切った。これがカサンドラと直接話した最後だった。
数か月後、母が噂を教えてくれた。カサンドラはジェイクに拒否された後、すぐに新しい男を作ったらしい。飲んだくれで、薬物もやってる男だという。彼女は幸せそうじゃないらしい。太って、髪はボサボサで、憔悴していたという。
ある日曜日、実家での夕食で、私は久しぶりにジェイクとゆっくり話した。
「調子はどう?」「すごくいいよ。昇進したんだ。給料も上がった」「よかったね」「新しい彼女もできたんだ。エイミーって言って、学校の先生なんだ。すごく優しい人なんだよ」
「本当に良かった」
ジェイクは少し間を置いて言った。「ルビ、謝りたいんだ。カサンドラが君にあんなことをしたのに、俺が止められなかったこと。君のお金を受け取って、当然だと思ってたこと。君を守れなかったこと。全部間違ってた。君が正しかったんだ。俺はバカだった」
涙がにじんだけど、私はそれを飲み込んだ。「許すわ」
彼は私を抱きしめた。それから、私たちの関係は徐々に修復していった。
今の私は、相変わらず歯科医として働いている。週末は湖の別荘に行く。誰かに邪魔されることなく、ただ静かに。貯金もたまって、前から欲しかった新しい車も買った。来年はヨーロッパ旅行も考えている。
あと、マイケルという男性と付き合い始めた。彼は、ジェイクの新しい彼女エイミーと同じ学校で働いている先生なんだ。二人に紹介してもらった。
家族は大事だ。でも、リスペクトも同じくらい大事。そして、自分を守るために、時には人から離れることも必要だって学んだ。それがどれだけつらくても。



