「お前、中卒だろ。使えない社員は8181。バイバイだ」…

「お前、中卒だろ。使えない社員は8181。バイバイだ」...

「お前、中卒だろ。使えない社員は8181。バイバイだ」
新しく部長になった池田は、数字の語呂合わせで俺に別れを告げた。周りでは取り巻きたちがニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
俺の名前は飯島、23歳。家はとんでもなく貧乏で、生まれた直後に父が病気で亡くなり、母は女手一つで俺を育てた。中学生になると新聞配達を始め、少しでも母の助けになろうと働いた。
配達先に輸入食品卸売会社があり、そこの社長・森さんがいつも表に出て新聞を受け取ってくれた。中学3年の春、森社長が言った。「飯島君、うちで働かないか。営業部に空きがあるんだ」
中卒の就職は難しいと聞いていたから、俺は考えるより先に頷いていた。それから必死に働いて恩に報いるつもりだった。
だが23歳になったある日、森社長が驚きの発表をした。経営不振に陥った弟の会社を救うため統合すると。それに伴い会社は再編成され、営業部の新しい部長として、弟の会社で部長を務めていた池田が着任した。
最初の挨拶はいい印象だった。しかしすぐに本性が明らかになる。初日の飲み会で「お前中卒なんだって。俺中卒とか初めて見たわ。中卒君、お前はお酌係な。あ、俺次は01を飲むから注文してくれ」と言ってきた。01はワインの意味だと言う。数字の語呂合わせが好きらしく、まともに会話もできない。
気づけば俺は「中卒君」と呼ばれ、雑用を押し付けられるようになった。池田部長は俺をいびってストレス発散のサンドバッグにした。「営業部のお荷物に仕事を与えてやってんだ。感謝しろよ」と笑う。
最悪なのは、取り巻きのエリート社員たちが便乗してきたことだ。いい大学を出た連中で、中卒の俺を虫ケラ以下だと思っている。数少ない味方の近藤課長は、池田部長の見えないところで俺を気遣ってくれた。
「飯島、大丈夫か。すまん。俺から何度も部長に注意しているんだが、聞く耳持たずなんだ」
森社長に相談できないのかと言われたが、社長は再編成で忙しい。俺は「自分で解決してやる」と意気込んでいた。
それから数週間後のこと。エリート集団の一人が青白い顔で池田部長のもとへ行き、営業部から出て行った。戻ってきた池田部長は鋭い声で俺を呼んだ。
「おい、中卒、こっちに来い」
突きつけられたのは、見覚えのない書類。だが俺のサインが書かれていた。筆跡が歪んでいる。誰かが俺のサインを真似したような不自然さだった。
「お前の発注ミスのせいでうちは損だ。どうやって責任を取るつもりだ」
「これは俺の担当ではありません」
「お前のサインが書いてあるだろ。言い逃れするつもりか」
さっき部長のもとへ行ったエリート社員を見ると、そいつは気まずそうに視線を外した。どうやら自分のミスを俺に擦り付けようとしているらしい。池田部長は取り巻きのミスを隠すために、俺のサインを偽装したのだ。
「全くこれだから中卒は。いい機会だ。責任を取って中卒はやめろ。使えない社員は8181だ」
俺は退職願いを書くと言い、その場を離れた。近藤課長が慌てて止めようとしたが、巻き込むわけにはいかない。「すみません。ご迷惑をおかけします」とだけ言って、俺は一振り返らずに会社を後にした。

退職から3日後、自宅で転職サイトを見ていると、森社長から電話がかかってきた。「飯島君、本当にすまなかった。俺がいない間に君が会社を追い出されていたなんて。会社まで来てくれないか」
社長室に行くと、近藤課長と、滝のような汗を流す池田部長たちがいた。森社長が説明してくれた。「飯島君が去った後、近藤君から電話をもらって事情を聞いた。海外の仕事は目処がついていたから急いで帰国したんだ」
「君は営業成績トップのエースだ。君が担当だから取引してくれる会社もある。もし君がやめたと知られたら取引中止が相次ぐ」
確かに、記録の上では俺は10人中6位だった。だがそれは、自分が掴んだ取引を他の社員に分けていたからだ。俺は自分の成績を上げるより、営業部全体の底上げに尽力していた。そのことを森社長と近藤課長は知っていた。
そして近藤課長が驚きの真実を明かす。「飯島君が作った退職願いは、人事に提出していない。俺が預かっていたんだ。君はこの3日間、有休を消化しただけだよ」
俺は最初ポカンとしたが、すぐに笑顔が溢れた。一人で解決しようと意気込んでいた自分を反省した。
森社長が池田部長たちに問い詰める。「飯島君に何か言うことはないのか」
渋々といった様子で頭を下げる池田部長たち。俺は厳しい顔で言った。「謝罪の言葉は受け取りました。しかし許すわけにはいきません。他人にミスを擦り付けるなんて、社会人としてあってはならないことです」
結局、池田部長は降格処分の上、資材管理部へ移動となり、取り巻きたちも全員が減給や移動などの処罰を受けた。空席になった営業部の部長には近藤課長が就任した。
近藤課長改め近藤部長が「部長なんて柄じゃないんだけどな」と自信なさげに言う。俺は力強く励ました。「大丈夫ですよ。部長は俺たちがしっかり支えますから」
今回の出来事で、俺は意気込まずに周りの助けを借りることも大事だと学んだ。社会人として成長できたと考えれば、池田部長たちとのトラブルも悪いことばかりじゃなかった。

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