新婚旅行から帰ってきたその日、夫が突然「離婚してくれ。旅行先で出会った女と結婚する」と言ってきた。しかも相手の名前を聞いて、私は絶句した。彼はツアーガイドのソフィアだと答えたのだ。ソフィアは夫のアプローチを完全に拒絶していたのに、彼はそれを好きの証拠だと勘違いしていた。夫の妄想に呆れる一方で、私は彼の裏切りを証明する証拠写真を握りしめていた。そして私は離婚届に署名することを選んだ。けれど、こ…

新婚旅行から帰ってきたその日、夫が突然「離婚してくれ。旅行先で出会った女と結婚する」と言ってきた。しかも相手の名前を聞いて、私は絶句した。彼はツアーガイドのソフィアだと答えたのだ。ソフィアは夫のアプローチを完全に拒絶していたのに、彼はそれを好きの証拠だと勘違いしていた。夫の妄想に呆れる一方で、私は彼の裏切りを証明する証拠写真を握りしめていた。そして私は離婚届に署名することを選んだ。けれど、こ...

「離婚してくれ。旅行先で出会った女と結婚する」

夫の言葉に、私は一瞬固まった。けれど驚きはなかった。むしろ「ようやく来たか」という思いだった。夫は気まずそうな笑みを浮かべていた。私は記入済みの離婚届を受け取った。形式的に相手の名前を聞くと、夫は意外な名前を口にした。

「ソフィア・アロンソ・ディアスだよ」

私は目を見開いた。新婚旅行のツアーガイドだった女性。彼女は夫のアプローチを完全に拒絶していた。夫は彼女の好意を勝手に勘違いしていたのだ。私は夫の妄想に呆れながらも、離婚届に署名した。塚本舞という名前を書くのは、これが最後だった。

夫の名前は塚本翔太。友人の紹介で出会い、交際一年でプロポーズされた。彼は優しくて、仕事もできて、私といると特別な気持ちにさせてくれた。けれど交際半年が過ぎた頃、彼の浮気癖に気づき始めていた。スマホのメッセージに「遊んでただけ」と言われても、私は信じたいと思った。結婚すれば変わるだろうと期待した。

新婚旅行はヨーロッパを選んだ。旅行代理店勤務の私が案内する形だった。最初の国でツアーガイドのソフィアと出会う。彼女は明るく知識豊富な女性で、私ともすぐに打ち解けた。でも夫の態度が日に日に変わっていく。ソフィアに頻繁に話しかけ、彼女が私と話している時でも割り込んでくる。ソフィアの表情が曇っていくのが分かった。

最終日の朝、ソフィアが私に母国語で話しかけてきた。夫には理解できない言葉だった。

「シ太さんが私にしつこくアプローチしてくるんです。メッセージも何度も送ってきて困っています」

私は予感が的中したことを悟った。それでも新婚旅行を続けるしかなかった。

次の国に移動したホテルで、私はオリビアという女性の落とし物を拾った。彼女は看護師で、旅の途中だった。ところが夫はオリビアにも興味を示し始める。朝食の席で声をかけ、断られても諦めない。私は夫の行動に嫌気が差していた。

そんな中、私は体調を崩し、部屋で休むことになった。夫は私を置いて「散歩に行く」と言い残して出かけてしまった。私は外で一人、倒れ込んでしまった。気づくとオリビアが助けてくれた。彼女は看護師として私の世話を焼き、朝に夫と日本人女性が腕を組んで歩いていたことを教えてくれた。証拠写真も撮ってくれていた。

私はソフィアとオリビアをグループチャットに繋いだ。三人で話し合い、証拠を集める決意をした。オリビアはその後も夫の監視を続け、新しい証拠写真を送ってくれた。夫はあの日本人女性の部屋に入っていた。帰国した日、新居で夫が離婚を切り出した。相手はソフィアだと言った。私は夫の勘違いを指摘せず、離婚届に署名した。

市役所で離婚届を提出し、私は実家へ帰った。両親は驚いたが、何も聞かずに受け入れてくれた。私は弁護士に相談し、夫と浮気相手に慰謝料を請求することにした。

面談の日、カフェで夫と浮気相手の女性・時田七美と向き合った。七美は私より先に翔太と知り合い、海外まで来ていたことを勝ち誇って話した。私は弁護士に発言を促そうとした。

その時、カフェに警察官が入ってきた。二人の警察官はまっすぐ私たちのテーブルへやってきた。

「塚本翔太さんですね。貴重品購入の容疑でご同行願います」

翔太が旅行先で買った骨董品の壺が、盗品だったのだ。インターポールから連絡があり、現地の法律で禁止されている盗品の売買に関わったとして、翔太と七美は現地に移送されることになった。二人は警察官に連れられてカフェを出ていった。私は呆然とその様子を見送った。

その後、両家の両親と会い、誠意ある謝罪と共に慰謝料を受け取った。数ヶ月後、ソフィアとオリビアが日本に来てくれた。三人で東京や京都を巡り、楽しい時間を過ごした。

「数年後、また三人であの場所で会いましょう」

オリビアの提案に、私は胸が熱くなった。新婚旅行で行けなかった美しい町。三人で必ず行く約束をした。

それから数年が経ち、私は約束の場所に立っていた。ソフィアとオリビアが笑顔で手を振っている。私たちは駆け寄って抱き合った。あの辛い経験があったからこそ、この二人に出会えた。あの旅行は無駄ではなかった。むしろ人生で最も大切な出会いをもたらしてくれた。

私はこれから前を向いて生きていく。ソフィアとオリビアとの絆を胸に。この絆は時間や距離では決して切れないものだ。

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