「帰れ、ブス」――夫がキャバクラで泥酔しながら、私にそう叫んだ。私は義母の介護で寝る時間も惜しんで尽くしてきたのに、夫は毎晩のように女と遊び、実の母のことは「死にかけのババア」と呼んでいた。でも、彼らは知らなかった。私がかつて六本木で誰もが知る高級クラブのママだったことを。その日、私は最高級の着物に身を包み、夫が通うキャバクラの扉を開けた―― 続きが気になる?コメントで「続き」と書いて教えてね。

「帰れ、ブス」――夫がキャバクラで泥酔しながら、私にそう叫んだ。私は義母の介護で寝る時間も惜しんで尽くしてきたのに、夫は毎晩のように女と遊び、実の母のことは「死にかけのババア」と呼んでいた。でも、彼らは知らなかった。私がかつて六本木で誰もが知る高級クラブのママだったことを。その日、私は最高級の着物に身を包み、夫が通うキャバクラの扉を開けた―― 続きが気になる?コメントで「続き」と書いて教えてね。

「帰れ、ブス」

店内に響いたその言葉に、私は静かにスマホを取り出した。角のボックス席では、夫の純平が泥酔してヘラヘラ笑い、隣には派手な化粧の女が寄り添っている。店のママも、VIPの常連客も、みんな青ざめて固まっていた。

「こんなところで何をしてるの?」

私は38歳の専業主婦。3歳年下の夫・純平と義母の稽古と一緒に暮らしている。純平と出会ったのは5年前のことだ。

当時、私は六本木で高級クラブを経営していた。常連客に誘われて大相撲を見に行ったとき、隣の席に座っていたのが純平だった。取引先の重役と一緒に来ていた彼は、相撲好きの重役を接待するために来場したらしい。その重役の応援する力士が負けて不機嫌になるのを見て、純平が困った顔をしていた。

「勝負ごとですから、そんなこともありますよ」

私が重役に声をかけると、彼は「そうだな」と力士にも「よく頑張った」と声をかけ始めた。純平はほっとした表情を浮かべ、私に礼を言ってくれた。

数日後、犬の散歩に出かけると同じように犬を連れた純平に出会った。彼は私の顔を覚えていて、「おはようございます。この前はありがとうございました」と声をかけてきた。

「可愛いワンちゃんですね」
「ええ、でもすごくやんちゃで困ってます」

犬の話で盛り上がるうちに、彼が連絡先を教えてほしいと言ってきた。それがきっかけで私たちは交際を始めた。このときの私は、犬好きに悪い人はいないと思い込んでいた。

デートのたびに、純平は優しい顔を見せてくれた。私の仕事にも理解を示し、応援してくれた。交際から2年が過ぎた頃、彼から「結婚しよう」と言われ、私に迷いはなかった。今思えば、純平が犬好きだというだけで、私の中の結婚へのハードルが下がっていたのかもしれない。

店を後輩に任せ、私は純平との結婚を受け入れた。しかし義母は私のことが気に入らなかった。水商売上がりとして、私を拒絶したのだ。

「年下の純平をまんまと騙しても、私はそうはいかないよ」

義母は何かにつけて嫌みを言ってくる。資産家である彼女が自分の財産を心配する気持ちは理解できる。だが、仮に義母に何かあっても、私に遺産が入るわけではない。

「お母さんの遺産は純平さんにしか入りませんから」
「だからあの子をたぶらかしてるんでしょ」

義母には何を言っても無駄だった。それでも私は気にしないようにして毎日を過ごした。しかし、純平の態度には腹が立った。義母が私に嫌みを言っている現場を目にしても、彼は何も言わず見ないふりをしたのだ。

「どうして何も言ってくれないの?」
「お袋の言うことなんて、放っておいたらいいんだ」

純平は「どうせあと何年かしたらあっちの世界に行くんだ」と言い放った。

「それでも、夫として妻をかばってくれてもいいでしょう」
「うるさいな。水商売女は黙って男に尽くしてりゃいいんだ」

これが純平の本性だった。結婚前、彼は私の仕事を理解しているふりをしていただけで、心の中では私のことを見下していたのだ。

「水商売なんて男を喜ばせてなんぼだろ。俺が気分よく過ごすためにお前と結婚したんだ」

その言葉に、私は呆れて離婚を考え始めた。でも、義母を一人にできない。私は迷いながらも、毎日の生活を続けていた。

1ヶ月後、私は離婚届けを用意して純平の帰りを待っていた。夜7時を過ぎた頃、浴室から大きな音が聞こえてきた。驚いて大急ぎで向かうと、義母が倒れていた。

「お母さん!」

慌てて駆け寄るが、義母は意識がない。震える手でスマホを取り出し、救急車を要請した。司令官の指示に従い応急処置を施そうと義母の胸に手を当てると、心臓の鼓動が伝わってきた。

「お母さん、しっかりしてください」

必死に呼びかけると、かすかに義母の目が開いた。ほどなくして救急隊が到着し、義母は病院へ運ばれた。3時間ほどの手術の後、義母は集中治療室へ運ばれた。医師は「意識が戻るかどうかが一つの山場だ」と言った。

純平にも知らせたが、「仕事が忙しい」と病院に顔を見せない。実の母親が命の危機に直面しているのに、心配もしないのか。私は怒りばかりが湧いてきた。

翌朝、義母の呼吸は安定し、目も開いている。「もう大丈夫でしょう」と医師に言われ、ほっと胸を撫で下ろした。しかし、義母は反応を示さない。医師が痛いところはないかと尋ねても、眼球が動くだけで声も出さず体も動かさない。

「ロックトインシンドロームかもしれません」

聞き慣れない言葉に戸惑った。義母は脳梗塞のため、自分の意思で全身を動かせなくなり、言葉も発せない。食べ物を飲み込むこともできないため、当面は経管での生活となった。完全回復は難しいが、数週間のリハビリで多少の回復は期待できるという。

その日から、私の介護生活が始まった。毎日義母の病室を訪れ、リハビリに付き添い、懸命に話しかけた。医師によれば、義母は反応できなくても意識や記憶力には問題がなく、こちらの言っていることは全て理解できているという。数日後には、眼球で返事ができるようになった。ゆっくりだが、私の問いかけに瞬きで答えてくれる。義母は懸命に生きようとしているのだと思い、私は献身的に介護に務めた。

しかしその頃から、純平の帰りが遅くなった。「弱った母親を見たくない」と見舞いにも行かず、毎晩のように深夜に帰ってくる。

「どうして毎日こんなに遅いの?」
「仕事だよ。早く帰ってきても、どうせお前は病院だろ」

「そんなこと言ったって仕方ないでしょ。それに、あなたの母親なのよ。何とも思わないの?」
「死にそうな奴の面倒なんか、病院に任せておけばいいんだ」

その言葉に私は怒りを通り越して呆れてしまった。

半年後、医師から在宅介護への切り替えが提案された。義母のバイタルは安定し、視線入力デバイスで意思を伝えられるようになっている。義母にとって自宅に戻る方が幸せだろう。しかし終わりの見えない介護生活を考えると、施設入所も検討せざるを得ない。私は純平に相談した。

「お母さんのことだけど、退院を勧められてるの」
「なんだって?それで退院させてどうするんだ?」

純平は不機嫌な様子を見せた。

「お母さんは家に帰りたいだろうけど、施設に入ってもらおうかと思ってる」
「それはダメだ。施設なんかに入れたら、また金がかかるだろう」

「でも、ものすごく大変なことよ。私一人じゃとても」
「夜なら俺も協力する。だから施設は諦めろ」

純平に反対され、私は在宅介護を選ぶしかなかった。彼が言葉通り協力してくれるとは思えなかったが、私の不安は見事に的中した。義母が家に戻り24時間体制での介護が始まっても、純平は義母の部屋に寄りつこうともしなかった。介護はお前がやれと、私に全てを押し付けたのだ。

ある日、酔った純平が同僚の坂本に連れられて帰ってきた。坂本に手伝ってもらい、純平を寝室に運ぶと、女性の香水の香りが漂ってきた。スーツには茶色い長い髪の毛もついている。

「どこの女と会ってたの?」
「言いがかりはよせ。仕事の接待に決まってるだろう」

純平はあくまで仕事だと言い張る。その場では追求できず、私は様子を見ることにした。

翌朝、起きてくるなり純平は「早く飯を作れ」と私に命令した。連日の介護で寝不足に陥り、疲労困憊なのに、ねぎらいの言葉すらかけずに怒鳴る。

「シャツにシワがついてるじゃないか。専業主婦のくせに、アイロンもまともにかけられないのか。やり直せ」

その言葉に、私は我慢の限界を迎えた。

「毎日毎日、寝る時間も惜しんで介護してるのよ。少しは休ませてよ」
「俺に立てついていいと思ってるのか?」

純平は離婚をほのめかしてきた。

「今さら夜の仕事にも戻れない。おばさんを雇ってくれる店なんてないぞ。無職のお前がどうやって生きていくって言うんだ」

すぐにでも離婚届けを突きつけてやりたくなった。しかし、私がいなくなれば義母はどうなってしまうのか。私は義母のことを思い、離婚を思いとどまった。それに気をよくした純平は、それからも傲慢に振る舞い続けた。

義母が家に戻ってから半年後、いつものように着替えを手伝おうと義母の部屋に行き、声をかけた。その瞬間、義母の手がかすかに動いたのだ。

「お母さん、手が動くようになったんですね」

私は嬉しくて仕方なかった。医師からはさらなる回復は見込めないと言われており、私も諦めていたのだ。その日、家に帰ってきた純平にそのことを伝えたが、彼は全く関心を示さなかった。

「ババアのことなんか聞きたくもない」

それでも義母がまだまだ回復するかもしれないと思うと、私は嬉しかった。翌日、理学療法士の元を訪ね、義母のリハビリをお願いした。義母が自力で手を動かせるようになれば、できることも増えていく。そうなれば生きる気力も高まっていくかもしれない。

「元気になったら、二人で旅行に行きましょうね。そのためにお母さんには頑張ってもらいますからね」

私の言葉に、義母は力強い瞬きで答えてくれた。

それから数日後、知らないアカウントからLINEが送られてきた。何かの広告かと思い開いてみると、「早く純平と別れなさい」と書かれている。メッセージには、純平と付き合っていると書かれていた。純平の愛人が私を挑発してきたのだ。

それからというもの、連日のように愛人からメッセージが送られてくるようになった。純平と抱き合っている写真や、ホテルらしき場所で裸で寝ている純平の姿など、浮気の証拠を次々と添付してくる。

「最近、よくわからないメッセージが来るんだけど、あなた何か知ってる?」
「何のことだ?俺は何も知らん」

愛人が私を挑発していることに、純平は気づいていないようだ。そうであれば、きちんと制裁をしなければならない。夜の世界には夜の世界のルールがある。それを理解させなければと思い、私は探偵を雇うことにした。

愛人の素性はすぐに判明した。純平が行きつけの店でキャバ嬢をしている千原アンナだった。アンナが店で働き始めてから、純平は毎週のように彼女のマンションを訪れていた。休日出勤と言って出かけていたのも嘘だった。

浮気の証拠は揃った。しかし私が離婚しなければ、アンナの方から何か仕掛けてくるかもしれない。離婚を突きつけるのはその時でいいのかもしれない。そう思い、しばらく様子を見ることにした。

数日後、泥酔して帰ってきた純平の口元に真っ赤な口紅がつけられ、香水の匂いがまとわりついていた。私はその様子を動画に収め、決着の準備を進めた。

数週間後、義母が傘寿を迎えるということで、純平に早く帰ってくるように促した。

「それが何だって言うんだ?死にかけのババアに興味なんかない。それにあいつだって、俺がいない方がいいだろう」

その言い草に、私は我慢の限界を迎えた。義母の介護を夜間ヘルパーに依頼し、身なりを整えた。クラブ時代に仕立てた最高級の着物に身を包み、髪の毛もきちんとセットしてもらって、アンナが勤めるキャバクラに乗り込んだ。

店の扉を開けた途端、店のママやVIPの常連客の顔が青ざめた。黒服が私に駆け寄り、「どうされましたか」と尋ねてくる。あまりの緊迫感に、店内は静寂に包まれていた。

「私の夫がこの店に来ているはずなんだけど、案内してもらえるかしら」

店のママが慌てた様子でやってきて、「少しお待ちください」と頭を下げた。実は私が経営していたのは、日本橋で知らない者がいない高級クラブだった。常連客には政財界の重鎮たちも多数いる。ママを引退した後も経営権は残しており、常連客とは今でも年賀状のやり取りを続けている。

店内を見渡すと、角のボックス席にいた純平と目が合った。泥酔しているようで、機嫌よくヘラヘラと笑っている。その横には、下手なメイクのアンナが寄り添っていた。

「こんなところで何をしてるの?」

純平は私の顔を見るなり「帰れ、ブス」と暴言を吐き、一緒に来ていた坂本にも「お前も言ってやれ」と帰れコールを煽っている。坂本は私の顔色を見ながらも、純平に逆らえないようだ。

「いつも付き合わせてごめんなさいね」

私は純平に無理やり付き合わされているであろう坂本に謝った。しかし、すぐに純平の怒鳴り声が響いた。

「うるさい。年増のババアの顔なんか見たくない。さっさと帰れ」
「そうよ。ここはおばさんの来るところじゃないわ。帰りなさい」

それを皮切りに、純平とアンナは私に向かって帰れコールを始めた。純平に睨まれ、坂本もしぶしぶ同調し始める。その姿に呆れ果てた私は、スマホを取り出し、ある人物に電話をかけた。相手が応答したのを確認し、坂本に電話を取り継ぐ。

電話を変わった瞬間、坂本の顔が凍りついた。

「社長…」

純平と坂本が務めている会社の社長も、かつて私の常連客だったのだ。社長から怒鳴られ、坂本は私に土下座をした。

「今まで嘘をついていて、申し訳ありませんでした」

坂本は純平の不倫の事実を洗いざらい暴露した。口裏を合わせるように頼まれて、仕方なくやっていたと。

「俺を裏切るのか?」
「坂本は以前、仕事で犯したミスを純平に庇ってもらい、それ以降彼に逆らえなくなったと告白した」
「僕は首になりたくない」

どうやら社長は、「正直に告白しないと二人とも首だ」と脅したようだ。

そこへ黒服がやってきて、純平に出禁を言い渡した。

「黒服の分際で勝手に決めないでよ」
「純平さんは私のお客さんよ」
「店に不利益となるお客様は不要です。この世界で働いてるなら、それくらいあなたも分かるでしょう」

「あんたが来なかったら、こんなことにならなかったわよ」

アンナは怒り狂い、私に暴言を吐きつけてきた。

「全く、こんな品のないホステスがいたなんて、この町の格も下がったわね」
「なんですって?」

私に掴みかかろうとするアンナを、店のママが止めに入った。

「あんた、この業界でやっていけないわよ」
「どういう意味?」
「この方はこの世界じゃ名前を知らない人はいない。あらゆる業界との繋がりもあるの。人を怒らせてどうなるか、分かってるの?」

ママは私の素性をアンナに言って聞かせ、大人しく身を引けと忠告した。しかしアンナは素直に引かなかった。

「こんな店、どうせやめるつもりだったのよ」

アンナは逆ギレして、ママに退職を宣言した。彼女は地下アイドルとしても活動しており、それだけでは食べていけずにキャバクラで働いていた。しかし最近になってメジャーデビューが決定したという。グループ出演のドラマ撮影も進行していると余裕を見せた。

そんなアンナに、マネージャーから電話がかかってきた。

「ほらね、もう次の仕事が決まったみたい」

アンナは勝ち誇ったような顔を私に見せ、電話に応じた。しかし電話の向こうからは「お前、何をしたんだ」と怒鳴り声が聞こえてくる。

実は店に乗り込む直前、私はアンナの所属事務所とスポンサー企業にも連絡し、彼女の不倫の事実を明かしていたのだ。アイドルにとって、不倫というスキャンダルは致命的でしかない。さらにスポンサー企業の重役たちは私の常連客で、その夫と不倫をしているアンナを許さないと、彼女の引退を求めたのだ。

「うそ…」

アンナは叫び、純平を突き飛ばして店を飛び出していった。

その後、私は店に迷惑をかけたことを謝罪し、坂本に協力してもらって純平を連れて自宅へと戻った。

自宅に戻ると、義母が車椅子に座って待っていた。ヘルパーさんが言うには、どうしても直接伝えたいことがあると言って、寝なかったらしい。

「ごめんね」

義母はゆっくりと、しかしはっきりと言葉で伝えてくれた。

「話せるのか?」

実は訪問リハビリを受ける中、義母は小さな声で、ゆっくりではあるが少しずつ言葉が話せるようになっていた。まだ会話ができるほどではないが、指も一本動かせるようになり、タッチパネルを押せるようにもなっている。そのことは何度も純平に伝えようとしたのだが、彼は母の回復に一切関心を示さなかった。

義母はタッチパネルを操作し、「私が何も知らないとでも思ってた?」と書いて見せた。純平は義母の回復はないと決めつけ、自宅にいながらスマホで堂々とアンナとの不倫旅行の計画を立てていたらしい。その中で「どうせババアは長くない。遺産ががっぽり入ってくる」と話していたそうだ。義母は言葉は話せなくても意識はしっかりしている。この時の純平の言葉を、しっかりと聞いていたのだ。

「出て行け」

義母は純平に勘当を言い渡し、家から追い出した。

義母に家を追い出された純平は大いに焦ったようだ。数日後、私が買い物に出かけた隙を狙って自宅に侵入し、あろうことか義母の命を奪おうと手をかけた。しかしその直後、義母は手元にあった防犯ブザーを押した。警報音が鳴り響き、即座に警備会社に通報が入る。その音に驚いた純平は何もできず、慌てて逃走したようだ。

通知を受けた私はすぐに自宅に戻り、警察へと通報した。その結果、純平は巡回中の警察官に確保され、逮捕された。

警察の取り調べで純平は「自分の家に帰っただけだ」と話しているようだが、すでに勘当されている彼は不法侵入でしかない。その上、家に設置してあった防犯カメラの映像に、彼が義母の首に手をかけるところがしっかりと映っていた。

その後、殺人未遂の罪で起訴された純平は、裁判でも「殺意はなかった」と主張した。しかし裁判官は「身勝手で反倫理的、人倫に反する行為」として、長い懲役を言い渡した。

このことで、純平は義母の遺産の相続権を失った。たとえ勘当されたとしても、遺留分は受け取れるというのに、法律の知識に乏しいがゆえに彼は全てを失った。

その後、私は刑務所にいる純平に離婚届けを送付し、弁護士を通して慰謝料請求の裁判を起こした。その結果、純平の財産は差し押さえられることとなった。純平は義母の遺産を全額相続することを見込み、高級腕時計や高級車を購入していた。それらが全て差し押さえられ、私は慰謝料を受け取った。

アンナはその後、所属していたグループを脱退させられ、事務所も首になったようだ。さらに撮影中の不祥事発覚により、多額の違約金まで発生したという。アンナの不祥事はSNSで話題になり、面白おかしく拡散されたそうだ。どこにいても好奇の目にさらされることとなったアンナに、実家の両親も激怒したらしい。

「二度と家に帰ってくるな」と彼女を勘当したようだ。多額の賠償金の支払いに追われ、アンナはまた夜の世界で働こうとしたようだが、私の顔に泥を塗った彼女を雇ってくれる店はなかったらしい。仕方なく、量のある風俗店で働き出したようだが、収入の大半を差し押さえられ、食べることもやっとの状態なのだとか。夜の世界のルールを破った罰が当たったのだ。

夜の店は、現実世界に疲れた人の心を癒す場所。その場所で働くホステスは、一時の夢を見せ、明日への活力を与えるのが仕事。アンナはそのことを忘れ、客の男性に手を出し、妻である私を挑発したのだ。当然の報いだと諦めるしかない。

私は純平と離婚した後も、義母と共に暮らしている。ゆっくりではあるが、少しずつ回復を見せている義母は、私のことを本当の娘のように思ってくれているようだ。全てが片付いた頃、義母は私に「お詫びとして遺産を生前贈与したい」と申し出てきた。しかし、私は義母の遺産を受け取るつもりはない。

「もしものことがあったら、その全てを、お母さんと同じ病気で苦しむ人に、そしてそれを支える人のために使ってほしい」

私の気持ちを知った義母は、支援団体を設立したいと言った。それに賛同した私は、義母の名義で支援団体を立ち上げ、今は二人で運営をしている。

純平の逮捕から1年が経ち、私は義母との温泉旅行を計画した。天気のいい日に義母を車椅子に乗せて散歩に出ると、とても気持ち良さそうに目を細める彼女を見ていて、旅行に行こうと思ったのだ。義母が旅行を楽しめるようにと、介護事業所をしている元常連客たちも協力を約束してくれ、楽しい旅になりそうだ。

この先、別の男性と再婚することになったとしても、私は義母を本当の母として世話を続けるつもりでいる。きっとそれが、義母にとっても幸せなのだと信じている。

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