「お母さん、また会えて嬉しいよ。」そう言って、私はようやく実家に足を踏み入れた。だが、母は私を見るなり、まるで汚い虫でも見るように顔をしかめて言ったのだ。「何しに来たの?」私は黙って、スマホの画面を母の前に突き出した。そこには、無職のはずの兄夫婦が、高級レストランで笑い合う写真が映っている。私が毎月20万円を実家に送っていることも、兄夫婦が母から搾取していることも、母は信じようとしない。「仕…

「お母さん、また会えて嬉しいよ。」そう言って、私はようやく実家に足を踏み入れた。だが、母は私を見るなり、まるで汚い虫でも見るように顔をしかめて言ったのだ。「何しに来たの?」私は黙って、スマホの画面を母の前に突き出した。そこには、無職のはずの兄夫婦が、高級レストランで笑い合う写真が映っている。私が毎月20万円を実家に送っていることも、兄夫婦が母から搾取していることも、母は信じようとしない。「仕...

「たった200円じゃ食べていけないのよ」

ある日、母が万引きで捕まったという電話がかかってきたのは、いつも通りの穏やかな午後のことだった。驚きつつも私はすぐに雑貨店へ駆けつけ、母が盗もうとした商品の代金を支払い、その場をどうにか収めて母を連れ帰った。しかし、理由が分からない。母には毎月20万円の仕送りをしている。それなのに母は「200円しか受け取っていない」というのだ。

「ねえ、お母さんの通帳は誰が管理しているの? 」

「みな子さんに預けているわ。彼女は献身的に私の世話をしてくれて、お金の管理もきっちりしているから安心でしょ。」

母は兄嫁のみな子を完全に信用しているようだった。

「みな子さんがお母さんのお金を勝手に使っているってことはないの? 」

「そんなことあるわけないわ。みな子さんを悪者にしたいからって、20万仕送りしていたって嘘を言うの? 」

母はみな子を信じるあまり、私の主張を嘘だと決めつけた。信じないなら自分の目で確かめさせるしかない。う思った私は、母を銀行へ連れて行き、通帳の入出金の記録を確認させた。

その記録により、私が毎月20万円を送金していたことが証明された。それと同時に、私が振り込んだその日のうちに同額の20万円が引き出されていることも分かったのだ。

私は相葉花江、36歳の会社員だ。私は幼少期からずっと、4つ年上の兄・一と比較されて生きてきた。一は成績優秀な上に運動神経も抜群で、両親は兄を出来た子だと褒めてばかりいた。私はそれほど勉強ができないわけではなかったが、一に比べると見劣りしてしまう。運動は苦手で、特に理が大嫌いだった。

「お兄ちゃんを見習いなさい。」

そう言われる度、寂しさが込み上げた。それでも両親に褒められたくて、私は勉強を頑張った。しかし、私がテストでいい点数を取っても、両親が褒めてくれることはなかった。

「どうして。」

兄と両親に抗議しても聞く耳を持ってもらえず、不満ばかりが募っていった。一は自分が両親に交遇されていることを自覚しており、いつも私に傲慢な態度を取っていた。特に食事の時間は最悪で、その日のメニューが一の好物だと、私の分まで食べてしまう。私が抗議しても「悔しかったら俺よりもいい成績を取ってみろ」と調されるだけだった。いつしか私の中に、早く自立したいという思いが強くなり、高校を卒業したら一人暮らしをしようと決めていた。

しかし中学2年の頃、両親は私に「高校の授業料は出さない」と宣告したのだ。

理由は「両親の思う高校に私が入れないから」だという。でも、高校卒業の資格がなかったら就職も難しくなる。

「そうね。嫌なら、有名市立に合格できるように今から頑張れば。」

母が言う高校には、私の学力ではとても入れない。それでも高校に行きたかった私は、それから1年間、惜しんで勉強に励んだ。

しかし、結果は不合格。結局地元の公立高校に通うことになったのだが、両親は「約束だから」と、授業料の支払いを拒否したのである。

私は高校に入学して早々アルバイトを始め、授業料を自分で区面するしかなかった。コンビニで早朝のアルバイトをし、学校が終わった後はまっすぐアルバイトに向かう。友達と遊ぶことも、高校生活を楽しむ余裕も私にはなかった。

当然のことながら大学に進学することなどできず、私は高校を卒業してすぐに地元企業に就職したのだ。

一は有名私立大学を卒業後、大手企業に就職し、相変わらず私を調してくる。

私はガムシャラに働き、就職して半年で実家を出て一人暮らしを始めた。誰にも下げまれることもなく、私らしくいられる空間をようやく手に入れたのだ。

それからは平穏な日々が流れた。仕事では業績が認められ、管理職にも出もでき、順風満帆な毎日を送っていたのである。

そんなある日、仕事のプロジェクトを進めていると、そこに社長がやってきた。隣には私とそれほど年の変わらないであろう青年が経っている。

「明日からここにいる息子の孝太郎が一緒に働く。みんなよろしく頼むよ。俺の息子だからって特別扱いはしないでくれ。」

「孝太郎と言います。この会社のことを知るため、平社員から頑張ります。どうぞよろしくお願いします。」

孝太郎は礼儀正しく頭を下げた。聞けば、孝太郎はアメリカの大学を卒業した後、そのまま現地に残り経営学を学んでいたらしい。最近になり、父である社長に呼び戻され、事業を手伝うことになったそうだ。ゆくゆくは社長になるために、現場の仕事を学びたいと自ら志願して、平社員として入社を決めたのだとか。

翌日から、私のプロジェクトに孝太郎が加わった。

孝太郎は社長思考とは思えないほど腰が低く、重立った作業はもちろん、雑用に至るまで率戦して行ってくれたのだ。

「社長のご則なんですから、もっと偉そうにしても誰も文句言いませんよ。」

「僕はそういう人が苦手なんです。父が社長だと言っても、それは僕の実力じゃない。僕はあくまで実力で評価されたいんです。」

その言葉に私は関心してまった。

孝太郎はアメリカ事コみのアイデアを出しながら、私のサポートをしてくれ、プロジェクトは大成功を納めたのである。

「孝太郎さんのおかげで大成功に終わりました。ありがとうございました。」

「いえ、皆さんの頑張りの成果です。」

孝太郎はどこまで行っても決して選ぶらない。プロジェクトが終わった後も、一社員として誠実に働く孝太郎に、私はいつしか恋心を抱くようになっていた。しかし、相手は社長思考にしてくれるはずはない。私は淡い片思いだと諦めていたのである。

ある日、仕事のトラブルがあり、私は一人会社に残り残業をしていたのだが、そこに帰ったはずの孝太郎が現れた。

「お疲れ様です。コーヒーで一息つきませんか?

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「ありがとう。でも、どうして? 」

「こんなことがなかったら、早苗さんと二人で話すことなんてできませんから。」

孝太郎は少し顔を明らめ、私から目をそらした。

まさか孝太郎は私に興味があるのだろうか? 「口がうまいのね。でも、ちょうど休憩したかったから嬉しいわ。」

私は大雪室のソファーに座り、コーヒーを飲みながら一息つくことにした。

「早苗さんはどうしてそんなに頑張れるんですか? 」

「みんなが頑張ってくれるからね。私がサボるわけにはいかないでしょ。」

「すごいですね。ところで、この会社にはどうして入社を?

孝太郎は次々に質問をぶつけてくる。その一つ一つに、私は素直に答えた。

「なんだか質問ばかりしてすみません。」

「気にしないで。別に隠すようなことは何もないから、遠慮なく聞いてちょうだい。」

「それじゃあお言葉に甘えて、今交されてる彼氏はいますか? 」

その質問に、私は思わず飲んでいたコーヒーを詰まらせてしまった。

「大丈夫ですか? 」

孝太郎は慌てた様子で私に繁価値を差し出す。

「大丈夫よ。ありがとう。ちょっとびっくりしちゃって。」

「すみません。質けでしたね。でも、僕は個人的に早苗さんに興味があるんです。」

孝太郎はまっすぐに私を見つめ、交際を申し込んできたのだ。

「私なんか、社長のご則にはふさわしくないわ。」

「そんなこと気にしないでください。僕は僕がいいと思った人と一緒になります。」

孝太郎の真っすぐな気持ちは、抑えていた私の感情をゆり動かした。

「実は私も前から孝太郎さんが好きだったわ。だけど、本当に私でいいの? 」

「早苗さんがいいんです。」

互いの気持ちを確認し合った私たちは、そのまま交際することになったのだ。

プライベートでも孝太郎は私のことをとても大切にしてくれ、講師ともに私たちは良きパートナーへとなっていったのである。

それから2年ほど交際を続け、私たちは結婚した。社長も私たちの結婚を祝福してくれ、だろうに自身が経営する別会社の勝者を譲ることにしたようだ。

地元の中小企業向けにオフィス機器や事務用品の販売を行いながら、メンテナンスを行う地域密着型の専門者だが、業績は伸び悩んでいる。今の孝太郎なら、新しいアイデアでまだまだ業績を伸ばせるだろう。

社長はただ会社を譲るだけでなく、孝太郎が自身の力を試せるように考えたようだ。

「うちの出世頭である早苗さんと一緒になるんだ。彼女の力も借りながら、二人で会社を盛り立ててくれ。」

それから社長はギフトしても私たち夫婦を支えてくれた。そのおかげもあり、孝太郎の会社は次々に新しいサービスを開始し、業績は右肩上がりに伸びていったのである。

私と孝太郎の結婚生活は、まさに順風満帆だった。「孝太郎と結婚してよかった。」心からそう思えるのである。

私たちが結婚して1年が過ぎた頃、見知らぬ番号から電話がかかってきた。

私のプライベートな番号を知っている人は限られているが、こちら側に登録のない番号からの着信は、何かの営業電話かいたずらくらいしか考えられない。電話に出るのをためらっていると、数回のコールの後、電話は切れた。しかし、すぐにまた同じ番号からかかってきたのである。出てみると、救急病院からの電話だった。聞けば、母が家の階段からして足を骨折したという。

入院の手続きがあるため病院に来てほしいと言われ、私は戸惑った。

あれほど私を下げ住んできた母のために、私が動く必要があるのだろうか。

しかし、一は連絡が取れず、数年前に父も亡くなっていたため、代わりに病院へ行ってくれる人はいない。仕方なく、私は病院へと向かった。

「なんだ、花江が来たのかい。」

私の顔を見るなり、母は残念そうに呟いた。母にしてみれば、一ぺに来て欲しかったのだろう。「それでも、わざわざ足を運んだ人間に対して感謝も言えないのか。」と私は呆れてしまったのだ。

私は必要な手続きを済ませ、足早に病院を後にした。

それから2週間入院することになった母は、毎日のように電話をかけてきては、「あれを持ってこい。」「これを持ってこい。」と注文をつけてくる。

一ぺは仕事が忙しいらしく、病院には顔を見せていない。だとしても、一ぺも数年前に結婚し、妻のみな子は専業主婦のはず。実家との関わりをできるだけ持たないようにし、仕事もしている私より、みな子の方が母との関係も良く、時間的余裕もあるはずなのだ。

それでも母は「一ぺとみな子に迷惑をかけられない」と、私にばかり要求してきた。

結局母が退員するまでの間、私は毎日病院に通うことになったのである。

母は順調に回復し、予定通り2週間で退院することになった。足は少し動きにくいようだが、一人で暮らすことに問題はない。

私は実家まで母を送り、「仕事があるから」と実を作り、すぐに自宅へと帰ったのである。それから数日経って、また母から電話がかかってきた。

「一ぺとみな子が、足の悪い私を心配して同居してくれることになったのよ。」

一ぺ夫婦が同居することになり、母は上期限のようだ。

「それは良かったわね。」

「おとどっかの誰かさんは、退院したばかりの私を置いてそ草と帰って行ったっていうのに、一ぺたちは違うわね。」

母はあんに私に嫌味を言いたかったらしい。

「忙しいから飽きるわね。」

母の話にうんざりした私は、一方的に電話を切った。

一兵たちが同居するのであれば、当分、母が私に連絡してくることもないだろう。そう思っていたのだが、それから1ヶ月ほどして、今度は一ぺから電話がかかってきたのである。

「実は、花江に相談があるんだ。」

一ぺは珍しく首傷な声を出している。

「相談って何?

「実は、務めていた会社が倒産したんだ。」

「え。」

聞けば、一が勤めていた会社は他国の完税政策の影響で膨大な損失をったのだとか、それと同時に社長の脱税が発覚し、状況が急激に悪化した。会社の倒産により一は出業し、それまで母に送っていた仕送りができなくなったという。

「それで、私にどうしろって言うの? 」

「俺が最就職するまでの間、母さんへの仕送りを代わりにやってくれないか? 」

一ぺは、母を失望させたくないと、出業したことも伝えないようだ。

「俺のキャリアがあれば、仕事はすぐに見つかる。ほんの少しの間でいいんだ。」

散々私を馬カにしてきたというのに、都合が悪くなった時だけ頼ってくる一ぺに腹が立つ。しかし、私が支援せず、年老いた母を見捨てたと噂が立てば、孝太郎の会社に影響が出るかもしれない。と思うと、無限に断るわけにもいかなかったのである。

「分かったわ。だけど、本当に一時的に援助するだけだからね。」

私はしぶしぶ受け入れ、毎月20万円を母の口座に送ることにしたのだ。

しかし、半年が経っても一ぺは最就職することができなかった。理由を尋ねても、「自分に会う仕事がなかなかない」というだけで、はっきりした答えは帰ってこない。

一夫婦は、無入となった半年の間になき父の遺産を全て使い果たし、母の年金まで使い込んでいた。

母は、一兵とみな子の話を偶然聞いてしまい、一ぺの出業を知ったそうだが、「最終就職するまでは生活も大変だろう」と、自分の年金を一ぺたちに差し出していたのである。

「二人の生活が落ち着くまでは。」と母が自ら決めたようだが、どこまで行っても一ぺに甘い母に嫌けが刺す。

ある日、私は何気なく見ていたSNSの投稿に、一とみな子の姿を見つけた。

二人は高級レストランで食事をする様子を写真に納め、リッチな生活をアピールしているようだが、無入の身でありながら、どんな神経をしているのかと私は呆れてしまったのだ。よく見ると、みな子の投稿には高級時計やバッグがこれみよしに移り込んでいる。

他の投稿も見てみると、一兵とみな子の贅沢ぶりがよくわかった。やはり一兵は就職活動などしていない。頻繁に投稿される写真や動画がそれを裏付けていたのだ。

私に仕送りを押し付け、仕事もせず遊んでいる一ぺたちが許せない。その日の夜、私は実家へと赴き、母に一ぺたちのことを報告した。

「何かの間違いじゃないの? 一ぺがそんなかっこ悪いことをするわけないわ。」

母は私の言うことを信じようとしない。

「これを見て。」

私はスマホを取り出し、みな子のSNS投稿を見せた。

「なんてこと?

人のお金でこんな。」

母は言葉をつまらせ、顔を真っ赤にして震えている。よほど頭に来たのだろう。

母はすぐに一ぺ夫婦を呼びつけ、目の前に座らせた。

「これは一体どういうこと? 」

「ち、ちょっとした生き抜きのつもりだったんだ。」

母の剣幕に、一ぺとみな子は肩を丸めて小さくなっている。

「このまま働かないなら、この家から出ていって。」

「わかった。ちゃんと働くから。」

実家からのを言い渡された一兵は、ようやく就職する気になったようだ。

「だけど、本当に難しいんだ。小さな会社ならすぐに採用されるけど、給料が前の半分になる。だからって大手は若い人材を選ぶし。」

一兵は言葉を遮り、何かを思いついたように私を見た。

「そうだ。孝太郎さんの会社で働かせてもらえないだろうか。」

私は驚いてしまった。確かに孝太郎の会社は、一平が以前勤めていた会社に見劣りしないほど成長しているが、これまでの実家での私の扱いを知っている孝太郎が、一を採用するだろうか。

「頼むよ。内から孝太郎さんに頼んでみてくれないか? 」

「私からもお願いするわ。一ぺを助けてあげて。」

「孝太郎に聞いてみるわ。彼の会社のことは私には分からないから、今は人手は足りてるって言われても文句言わないでね。」

私はしぶしぶ仲回を受け負ったのだ。

正直なところ、一の手助けなどしたくない。「収入を得るようになれば、また私に傲慢な態度を取るに決まってる。」しかし、一に収入ができれば、私からの仕送りは止めることができる。そう自分に言い聞かせ、私は孝太郎に話をした。

すると孝太郎は「困っているなら」と、一兵を雇用することを承諾してくれたのだ。

翌習から一の勤務が始まった。

オフィス機の法人営業を担うことになった後、太郎は管理職でないことに不満を言いながらも、毎日真面目に出社しているようだ。

一が就職して1ヶ月が過ぎた頃、私は母への仕送りを元に戻してもらうように申し入れた。

「仕事になれるまでは、もう少しの方でやってほしい。」

就職したとはいえ、慣れないの営業で収入も安定しないのだろう。そう思った私は、安定するまでの間と、承諾したのだ。

しかし、3ヶ月が過ぎても一ぺは母への仕送りを再開せず、ずっと私に依存していたのである。

一の就職から半年後、私は実家を尋ねた。

みな子がパートに出るようになったと聞き、母の身の回りの世話をするためだったのだが、どういうわけか母は軽減そうに私を見つめる。

「何しに来たの? 」

まるで汚いものでも見るように顔を仕める母に、私は違和感を感じた。

毎月20万円の仕送りをして、母の生活を支えているというのに、なぜそんな態度を取られないといけないのか。

「困ってることがないかと思ったんだけど、余計な心配だったようね。」

「あなたにやってもらうことは何もないわ。分かったら、さっさと帰って。」

母は以前にも増して冷たい態度を取り続ける。

一の最終職の件から、親子関係も少しは改善していたというのに、一体どういうことなのか。

私には、母の態度の理由が全く検討もつかなかったのだ。

しばらく経ったある日、地元の雑貨店の天使から電話がかかってきた。聞けば、母が万引で捕まったという。

驚いた私はすぐに雑貨店に向かった。

雑貨店の事務所で、母は申し訳なさそうに下を向き、店長に謝っている。

私は母が盗もうとした商品の代金を支払い、その場は温便に済ませてもらい、母を連れ帰った。

しかし、なぜ母が万引などしたのだろうか。

生活に困らないように、仕送りは続けている。

何か思い悩んでいることでもあるのだろうか。

家までの道中、私は喫茶店に立ち寄り、母に理由を訪ねることにした。

「どうして万引なんてしたの?

何か悩んでることでもあるなら、話くらい聞くわよ。」

「理由は、花江が一番よく分かってるでしょう。」

「え。」

母の回答に、私は戸惑ってしまった。

母に対して、私が何か傷つけるようなことをしたというのだろうか。

「悪いけど、私には何のことかわからないわ。」

「とぼけないで。毎月、たった200円じゃ食べていけないのよ。」

「え? どういうこと? 」

母の話では、私からの仕送りを毎月200円しか受け取っていないという。

「そんなはずないわ。私はちゃんと20万振り込んでるわ。」

私の話に、母は驚愕した様子を見せたが、それでも実際には200円しか受け取っていないと断言した。

「お母さんの通帳は、誰が管理しているの? 」

「みな子さんに預けているわ。彼女は献身的に私の世話をしてくれて、お金の管理もきっちりしているから安心でしょ。」

その話に、私は学然としたのだ。

母は、無入の状態でも合有していた一兵とみな子の姿を、忘れたのだろうか。

「みな子さんがお母さんのお金を勝手に使っているってことはないの?

「そんなことあるわけないわ。」

「みな子さんを悪者にしたいからって、20万仕送りしていたって嘘を言うの? 」

母は、みな子を信じるあまり、私の主張を嘘だと決めつけた。

信じないなら、自分の目で確かめさせるしかない。

そう思った私は、母を銀行へ連れて行き、通帳の入出金の記録を確認させたのだ。

その記録により、私が毎月20万円を送金していたことが証明された。

それと同時に、私が振り込んだその日のうちに、同額の20万円が引き出されていることも分かったのだ。

「じゃあ、誰がお金を引き出してるっていうの。」

「みな子さんしかありえないわね。」

その後、実家に母を送った私は、家でのみな子の様子を聞いてみた。

みな子は、毎月私からの仕送りが200円しか入っていなかったと嘘をつき、母にお金を渡さなかったそうだ。

「だけど、お弁当やお相てくれてね、すごく気にかけてくれてるのよ。」

そう言いながら、母は冷蔵庫にしまってあったお相材を持ってきたのだ。

よく見ると、みな子がパートをしているスーパーのもので、どれも賞味期限が切れている。

「これは、いつ買ってきてくれたの? 」

「昨日の夜よ。「仕送りがなくて生活が大変だろうから」って。」

間違いない。

みな子は、母への仕送りを自分の懐に入れ、それがバレないように、母にスーパーで廃棄になる賞味期限切れの弁当やお相を与え、「献身的なふり」をしていたのだ。

「これまでも、ずっと騙されていたのね。」

母は、想像もしていなかった真実に驚愕し、言葉をなくしている。

「花江を誤解していたわ。私はてっきり、あなたがこれまでの私たちのに腹を立てて、仕返しに嫌がらせをしているものだと思ってた。」

「これまでのことは許せないわ。」

「だけど、仕返しなんてしないわよ。」

「本当にごめんなさい。」

母は涙を流し、私に頭を下げたのだ。

母は、小さい頃から優秀だと信じていた一兵のことも、その一兵が選んだみな子のことも、信じきっていたのだろう。

全てが嘘だったと気づいた母は、これまでの私への仕打ちを反省し、心から謝った。

「もういいわよ。」

「それより、今後は銀行振り込みはやめた方がいいわね。」

「そうね。」

「年金の講座も変更して、みな子さんに預けている通帳は解約するわ。」

私と母はその後も話し合い、仕送りを手渡しで行うことに決めた。

「それより、兄さんとみな子さんは、何にお金を使っているのかしら。孝太郎の会社からは相応の給料が出ているみたいだけど、まさかまだ贅沢を続けてるんじゃ。」

母に言われ、私はみな子のSNSを確認した。

すると、最近更新された投稿にも、一ぺとみな子が高級品を購入したり、贅沢な旅行を楽しんでいる様子が掲載されていたのだ。

「人のお金を無断で使って、こんな。許せないわ。」

母は怒りをあわにした。

無理もない。

一平とみな子は、私や母に嘘を伝え、騙し取ったお金で贅沢の限りを尽くしているのだ。

その日家に帰った私は、一兵たちの所行業行業を全て孝太郎に話した。

「それは許せないことだね。」

「だけど、仕送りだけでできる贅沢じゃない。他にも資金源があるんじゃないか。」

孝太郎の言う通り、高級レストランでの食事だけならまだ理解できるが、高級時計やバッグとなると、20万では賄えない。

「だけど、他の資金って言っても、お母さんの年金くらいしかないわよ。」

「実は、お兄さんが入社してから、会社の備品がなくなることが増えたんだ。」

「に、営業の経費だって請求してくる費用も、成果と見合っていない。」

「まさか、会社のお金を横量しているってこと? 」

私は驚いてしまった。

もしそれが事実なら、一兵は犯罪に手を染めているということだ。

「今、詳しく調査しているところだから、すぐに真実が分かるよ。」

孝太郎は、一の新辺調査を行うため、探偵を雇ったという。

もし事実であれば、一には罪を償わせなければならない。

しかし、家族が犯罪者になることに、私は戸惑いを隠せなかった。

それから1ヶ月後、一ぺから電話がかかってきたのだが、彼は私が電話に出るなり怒鳴りつけてきたのだ。

「母さんを上にさせるつもりか。」

「どうやら、みな子が座からお金を引き出そうとしたらしいわね。」

「仕送りなら、お母さんに直接渡したわよ。」

「だから、何も問題ないと思うけど。」

「なんだって。」

「だけど、母さんはそんな金受け取ってないって。」

「それはおかしいわね。ちゃんと受け取りのサインもらったわよ。」

一兵は態度を急変させ、同揺した様子を見せた。

「それより、大事な話があるの。」

「今夜、みな子さんと一緒にうちに来てもらえないかしら?

「話って何だよ。」

「来れば分かるわ。」

「来なければ、後々二人が困ることになると思うから、必ず来てね。」

その夜、私は孝太郎と母も同席の上、一ぺとみな子の到着を待った。

夜7時、訪ねてきた一兵とみな子は、戸惑いを隠せないのか、二人で顔を見合わせては、こちらの様子を伺っている。

「あなたたち、私の年金と花江からの仕送りを、自分たちの小遣いにしてたのね。」

母は、これまでの私からの仕送りの記録と、一兵たちに渡していた年金の記録を見せつけた。

「ちょっと借りただけだよ。」

「後からちゃんと返すつもりだったんだ。」

「嘘おっしゃい。」

「返すつもりの人が、わざわざ仕送りが200円だったなんて嘘を言うもんですか? 」

母が真実を突きつけると、一兵とみな子は何も言い返せないのか、を向いて黙り込んでしまった。

「お兄さん、会社のお金も不正に受け取ってますね。」

「それは知らない。」

「俺は何もやってない。」

孝太郎の追求に、一兵は強く反発した。

「証拠は揃ってるんですよ。」

孝太郎は、車内に取り付けられた防犯の映像を流した。

そこには、誰もいないオフィスで、一が会社の備品を持ち去る映像が映されていたのだ。

「そして、これがその備品です。」

孝太郎はタブレットを取り出し、ネットオークションの画面を開いて見せた。

「このアカウントを調べてもらったら、一平さんのものだってことが判明しましたよ。」

一は、会社から盗んだ備品をネットオークションで売っていたのだ。

「それから、お兄さんが請求した接退費ですが、調査の結果、全て虚偽の申告だったことがわかりました。」

安定の調査により、一平はみな子と訪れた高級レストランや友人たちと訪れた高級クラブの領収書を「接対」と偽り、経費として請求していたことが分かったそうだ。

孝太郎は、探偵の調査報告書と合わせて、タブレットに送られてきた、一兵とみな子が贅沢な旅行や食事を楽しんでいる光景を隠し取りした映像を見せた。

「これが撮影された日と、領収書の日は完全に一致しています。」

「これを、どう説明しますか? 」

孝太郎の厳しい追求に、一は言い訳も思いつかなくなったのか、その場で土下座を始めたのだ。

「すまなかった。」

「この通りだ。」

「許してくれ。」

「どうして、こんなことを?

「前の暮らしが忘れられずに、つい、さしたんだ。」

一となくは平謝しているが、母は気が収まらないようだ。

「今後、一切あなたを息子だとは思わないわ。」

「今すぐ、この家から出ていって。」

母は、一兵とみな子に絶縁を宣言したのである。

「お兄さんを即こ解雇します。」

「今後のことは、警察にお任せすることになりますので、覚悟しておいてください。」

「そんな。」

「頼む。」

「警察だけは勘弁してくれ。」

一ぺとみな子がどれほど謝っても、母も孝太郎も一歩も折れない。

「花江、お前からも俺たちを許すよ。」

「頼んでくれ。」

「お断りよ。」

「私はすでに母と孝太郎と話し、一兵たちがどれだけっても、決して許さないと決めていたのだ。」

「きっちり罪を償いなさい。」

その後、警察に逮捕された一兵とみな子は、複数の詐欺と業務上横量の罪で起訴されたのである。

裁判では、二人に懲役系が言い渡され、分の間の向こうで過ごすことになったのだ。

一夫婦の一見が落ち着き、私と母は完全に和解することができた。

母は、これまでの償いをするかのように、私と孝太郎に優しく接してくれている。

最近母は、「自分で生きていく力が欲しい」と、働くことに意欲を見せ始めた。

孝太郎は母の気持ちを考慮し、自社の事務職として採用してくれたのだ。

働き始めた母は、生きとした笑顔を見せてくれている。

しばらくして、私の妊娠が発覚し、孝太郎も母も喜びしてくれた。

優しくて頼もしい夫と、心を入れ替えた母と共に、私は明るく温かい未来を迎えられそうだ。