「友達づらすんな。中卒の貧乏人とは縁を切る。」…

「友達づらすんな。中卒の貧乏人とは縁を切る。」...

「友達づらするな。中卒の貧乏人とは縁を切る。」

そう言い放ったのは、俺の中学時代の同級生・シゲルだった。彼は確かにエリートだが、言っていいことと悪いことがある。ここ数ヶ月、同級生の暴言に耐え続けてきた俺だが、先日ある出来事が発覚し、もう我慢の限界に達していた。

俺だって好きで同級生と関わっているわけではない。ここで俺は、同級生に対して攻めの姿勢を示した。

「お前の会社、終わったな。」

同級生は俺の発言の意味が分からず、口をあんぐりと開けている。これから同級生は、俺の言葉の意味を理解することになるだろう。意味が理解できた時には、もう遅い。後戻りできない地獄への片道切符を、俺は手渡したんだ。

俺の名前はさ乙め。大手工場に務める45歳で、どこにでもいる家庭持ちのおじさんだ。俺は趣味を聞かれたら仕事と答えてしまうくらい、仕事が好きだ。妻にも「家庭と仕事どっちが大切なの? 」なんて数えきれないほど聞かれてきた。

俺は1ヶ月前、急遽営業部への移動が決まり、一番の得意先である企業に足しげく通っている。しかし俺は、その取引先に今頭を悩ませている。

のことの発端は、取引先へ挨拶をしに行った時のこと。

「さ乙女しです。よろしくお願いします。」

「え、お前、しじゃん。」

俺の挨拶を遮え切り、、取引先の担当者が口を開いた。どうやら俺を知っている人物らしく、担当者の顔をまじまじと見ると、確かに見覚えがある顔だ。

「もしかしてお前、しげるか? 」

「そうだよ。中卒のくせによく今の会社に入れたな。」

俺は平成を予っていたものの、今すぐ帰りたいくらいうんざりした気分になっていた。

幼少期、俺は両親を事故でなくし、親代わりとして年置いた祖父母が俺を育ててくれた。すでに祖父母は高齢で仕事をすることもできなかったため、いつも生活は困窮しており、そんな俺を見てシゲルはいつも「貧乏人」と馬カにしていた。

シゲルに対していいイメージがなかったし、再開早々失礼な発言をされて、俺はこれからのことを考えてげなりしてしまう。

そんな俺の心情など知ったこっちゃないとばかりに、シゲルは自慢話を始める。

「俺はなあ、海外の有名大学卒業なんだよ。会社でも主戦力だからな。あっという間に出世しちゃってな。」

「おお、それはすごいな。」

正直本当にどうでもいい自慢話ではあったが、めんどくさいので適当に愛槌を打ちあっていた。

「お前んちは貧乏だったし、お前、中卒だったよな。かわいそうに。」

気分を良くしたのか、シゲルは俺の家や学歴を馬鹿にする発言を繰り返す。腹立たしい気持ちにはなったが、相手をしたところで自分が疲れるだけだ。俺は聞き流すことにしていたが、その後も取引先に足を運ぶと、シゲルは毎回俺を馬カにする発言を繰り返した。

そんな日々を繰り返していたある日、俺はいつものように取引先に足を運んでいた。シゲルから呼び出されたのだ 。

シゲルの元へ行くと、何やら不機嫌そうな顔をしており、嫌な予感がした。

「今度納品する予定だったものだが、納期を早めてくれ。どうにかできるだろう。」

簡単に言ってくれるが、もう納品予定日を前に、こちらの会社では製品を作るスケジュールが組まれている。急にそんなことを言われても「そうですか」と承にはいかない。

「ちょっと待ってくれ。もうこっちの会社の製造スケジュールも決まってるんだぞ。」

俺が答えると、シゲルはより一層不機嫌そうな顔をした。

「うるさいな。無理なもんは無理なんだから、お前がどうにかしろよ。」

そんなシゲルの暴論に俺は呆然としていたが、シゲルにとってはそんなことはどうでもいいようだ。

「ああ、こんな話してたら喉乾いたわ。お前、隣町のコーヒー店でコーヒー買ってこいよ。俺、そこのコーヒーじゃないとダメなんだわ。」

いきなり呼び出しておいて、今度はパシリに使おうというのか。なぜ俺がそんなことをしないといけないんだよ。それ、仕事と関係ないだろ。自分で買ってこいよ。

あまりにもひどい言動に、俺は苦を停した。

俺の言葉を聞いた瞬間、シゲルは激怒した。

「お前みたいな人間は、俺の言うことを聞いていればいいんだよ。」

「シゲル、待ってくれよ。俺たちは昔からの付き合いなんだからさ。仕事でも有効な関係を築いていこう。」

興奮気味のシゲルを俺は悟す。しかし次の瞬間、シゲルから思いがけない発言が飛び出した。

「友達づらなんかすんじゃねえよ。俺は昔からお前のことが気に食わなかったんだよ。」

シゲルの発言に、開いた口が塞がらない。確かにシゲルに気に入られていないことなど十重承知だ。しかし、仕事のパートナーにそんなことを言うシゲルの神経が信じられなかった。

「二度と友達すんな。「中卒貧乏人とは縁を切る。」

シゲルはニヤニヤしながら俺にそう言った。

別にシゲルと縁を切ることなどどうでもいい。だが、仕事のパートナーに対して失礼な発言を繰り返すシゲルに我慢できなくなってしまった俺は、シゲルを追い詰める一言を放つ。

「そうか。分かったよ。本当に縁を切っていいんだな。」

「そう言ってるだろう。」

「ふーん。まあいいけど。」

俺は一呼吸置いて、静かに言った。

「お前の会社、終わったな。」

「は? どういうことだよ。」

今までの俺とは違う発言に、シゲルは少し困惑したような顔をする。俺の発言がどういうことなのか、シゲルに教えるために俺は一枚の紙を差し出した。

「この名刺が何だって言うんだよ。」

俺がシゲルに差し出したのは、俺の名刺だ。しかし、その名刺は初日に手渡したものとは別のもの。

「え、社長?

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俺の名前の名刺には、「社長」という二文字が刻まれている。シゲルは俺のことを今まで営業の社員としか認識していなかっただろう。

「中学校の近くにあった古い工場、覚えているか? 」

「覚えてるけど、一体その工場が何だって言うんだよ。」

俺の質問の意味が分からず、シゲルは少し苛立っているようだ。

俺たちが通っていた中学校のすぐ近くには、昔からある古い工場があった。規模も小さい工場だったが、シゲルはいつもその工場を馬カにしていた。

「あんな古くてボロい貧乏工場で働いているやつの気が知れないわ。」

シゲルがそう発言しているのを、俺は何回も聞いている。

金銭的な余裕がなかった俺は、中学卒業と同時に仕事をすることを決めたのだが、中卒の俺を雇ってくれる企業はなかなか見つからなかった。そんな俺を唯一雇ってくれると言ったのが、その工場だ。

「若いのに大変だね。」「少しずつ仕事を覚えていけばいいさ。」

確かにその工場はとても古く、設備も古い。

しかし、社長の人柄は抜群によく、俺の教遇を理解し、優しい言葉をかけていつも気にかけてくれていた。社長の優しさに報いることができるように、俺は日々仕事に打ち込み、ネルマを死んで独学で製造に関する勉強も続けた。

に入社してからあっという間に10年が経過。俺はある日、社長に呼び出されていた。

「いきなり呼び出して悪かったね。」「担当直入に言うけど、旬に工場をついで欲しいと思っているんだ。」

「え、俺ですか? 」

社長の思いがけない発言に、俺はかなり驚いてしまった。

「私には子供がいないからね。」「この工場をどうするべきか、ずっと考えていたんだ。」「春は頑張りやだし、10年間見てきて、君に託したいと思ったんだ。」

社長の言葉を聞いて、俺はどうするべきか頭の中で考えを巡らせる。こんな自分に本当に社長など勤務のだろうか。社長になるイメージを浮かべ、そんな不安も感じた。しかし、不安以上に「やってみたい」という気持ちが強くあった。

「わかりました。」

俺はそう答えた。自信はないが、自分の全身全霊を注ぎ、工場をよりよくしていこうと心の中で誓う。

その後の道のりは平坦なものではなかったが、俺は努力をし続けた。工場を大きくするために、俺がまず着手したのが新製品の開発だ。今までの工場は、でかい工場から仕事を委託してもらうだけで、自社製品を持っていなかった。そこで俺は、自社の製品を開発するため試行錯誤を繰り返した。

新製品の開発を始めて5年後、自分の中でやっと満足できるものが完成した。

「やっとできた。」「これならいける。」

俺が開発した新製品は、斬新な機能がついていることから発売当初からその業界で話題になった。実際に購入した人の評判も良く、見る見る製品は売れた。その製品を川切りに、その後も新しい機能をつけた製品を販売することで、会社の名前が徐々に浸透していった。かなりボロボロだった工場も、利益が多く出たことで広く新しいものに作り直すことができた。

工場が大きくなったので、人でも欲しくなり人員を増やした。して、今までの比ではないほど工場は大きくなり、今の形になったのだ。

ここまでの経緯をシゲルに丁寧に説明したところ、少しずつ状況が分かってきたのか、シゲルは焦り始めた。

「残念だよ。」「うちの会社とそちらの会社は、近々50億の取引をするはずだったんだがな。」

「なんだよ、その話。」「俺は知らないぞ。」

シゲルがそういうのも無理はない。50億円というのは、うちの会社と取引先の上層部間で取り交わされた引合で、両者の社員にまで降りてきていない話なのだから。のことも、シゲルに教えてあげると、顔を真っ青にさせていた。

「で、俺と縁を切るんだっけ? 」

俺はそんな状況でも追撃の手を緩めない。

「お、俺が悪かったよ。」「同級生のよしみで許してくれよ。」

シゲルは情けない姿で懇願するが、俺の怒りは収まらない。

「もう知らない。」「ちなみに、俺はお前の発言に怒っているんじゃないんだ。」

「は?

「身に覚え、あるだろう。」

シゲルは身に覚えがあるらしく、今までで一番うろたえていた。しかし俺は、その様子を気にすることなく立ち去った。

これからシゲルは、自分のしでかしたことが大けにならないか不安で仕方ない日々を送るはずだ。

シゲルが言動を改めればここまで大事にはならなかったわけだし、自業自得としか言いようがない。

翌日、会社に取引先から電話が来た。電話の相手は、シゲルの上司だった。

「この度は、うちの佐々木シ茂がごレイを働き、申し訳ございません。」

50億円の取引がなくなるとなったら、会社にとってかなり大きな損失になるだろう。どうにか許してもらおうと、上司も必死なようだった。

「しかしね、今回の件は、さすがに許せませんよ。」

俺が返すと、上司は驚くべき発言をする。

「うちの佐々木が本当に失礼な言動を取ったと聞いております。」「ですが、プライベートな会話でのトラブルと聞きました。」「なので、許していただけませんか? 」

「シゲルは『プライベートなトラブル』と言ったんですか? 」

思わず上司に聞き返してしまった。

「あ、はい。」「昔からの古い付き合いで調子に乗って、社長を怒らせてしまったと。」

どうやらシゲルは、本当のことを言ったらさらに怒られると思い、言い訳をしたようだ。

俺が取引を辞めた原因は、日頃のシゲルの態度や発言のひどさにもあるが、もう一つ理由がある。

俺は、できるだけ社員が働きやすい環境を作るため、社員とのコミュニケーションを大切にしていた。

そんな俺の耳に、ある話が入ってきたのだ。

それは、シゲルの会社を担当するうちの会社の社員が、短期間で2人連続してやめたというもの。

やめた2人というのは、仕事熱心でいつも楽しそうに仕事をしていた社員だ。こんな社員が連続でやめていくというのは、何か深刻な問題が発生しているに違いない。

俺はやめた社員に連絡をし、事情を聞こうとしたのだが、やめた理由を尋ねてもはぐらかされるばかり。

このまま原因が分からないままだと、どんどん担当者になった社員がやめていくのではないかと不安になった。そこで思いついたのが、俺が担当者として取引先に出向くというもの。

そして俺はシゲルと再開した。

昔と変わらないシゲルの言動を見て、原因はシゲルにあるのではないかとすぐに感じた。

シゲルに俺が社長であることを告げる前日、俺は再度元社員に連絡を取っていた。

「実際に取引先に行ってみて、担当者が問題だと思ったんだが、どうだろうか。」

俺が元社員に相かけても、社員は真実をなかなか話そうとしてくれない。

「どうか本当のことを言ってくれないか? 」「これ以上、被害者を出さないためにも真実が知りたいんだ。」

会社で働いてくれる従業員たちは、俺にとって宝だ。これ以上大切なものを失いたくないからこそ、俺は必死で頼み込んだ。

「わかりました。」「実は……」

そこで語られたのは、シゲルが今までやらかしてきた悪事の数々。

やめた社員は2人とも女性だった。

シゲルは女性社員を気に入っており、顔を合わせると毎回口説いてきたというのだ。仕事の話をしようとしても、まともに会話がままならず、しつこく飲みや食事に誘われていたという。

それでも元社員は頑張って仕事をしていたらしいのだが、「はっきり言わないと分かってもらえない」と思い、はっきりと断ったのだという。

「はあ。」「俺がこんなに誘ってやってるのに、なんだよ。」

すると、拒絶されたシゲルは怒りを争わにし、元社員に威圧的な態度を取ったというのだ。

「いいのか?

」「俺が仕事を受けないって言ったら、お前、どうなるか分かってるんだろうな。」

それだけではなく、元社員を脅すようになった。女性社員は、そんなシゲルの相手をするのが怖くなり退職したというのだ。

そんなことが、俺が状況を把握していれば、俺がこのことを知っていれば、すぐにでも対応できたというのに、気づけなかったことが悔まれた。

「安心してくれ。」「もう決してこんな思いはさせない。」「シゲルには、それ相応の償いをしてもらう。」「だから、会社にもう一度戻ってきてほしい。」

俺は元社員に頭を下げた。本気度が伝わり、元社員はもう一度会社に戻ってきてくれることになった。

その後、被害者であるもう一人の社員にも、同じように会社に戻ってきてもらえるよう頼み込んだ。

失いかけた社員を取り戻したが、問題はシゲルだ。

真実を知った俺は、シゲルに正体を明かし追い込んだのだ。

しかしそれでもシゲルはまだ悪あがきをしようとしているようなので、俺は上司に真実を告げることにした。

「今回、取引を辞めたのはプライベートな問題が理由ではありません。」「うちの社員は、佐々木シ茂が原因で退職しているんですよ。」「2人もね。」

「ほ、本当ですか? 」「本当に申し訳ありません。」

上司も俺の口から真実を聞いて、ことの重大さを理解したようだ。

「残念ですが、もう新しい取引先も見つけているのでね。」「本当に50億の契約はなかったことにさせてこうかと思っています。」

俺の言葉を聞いて、上司はさらに焦り出した。

「本当に申し訳ありません。」「直ちにこちらでも事実確認をさせていただきます。」「なので、どうか契約を拍にするのは少しお待ちいただけないでしょうか? 」

「こちらは大切な社員が2人もやめているのでね。」「そちらでもきちんと事実確認をしてください。」

強めにそう伝え、電話を切った。

これでおそらく、今までしてきたシゲルの悪業が白実の元にさらされるだろう。

その後、取引先で再度事実確認が行われ、シゲルはかなり厳しく追求されたようだ。

上司から厳しく問い詰められ、俺が話していた内容が事実であることをシゲルも白状したらしい。

最初の電話から1週間後、「謝罪がしたい」と言って、シゲルとシゲルの上司がうちの会社にやってきた。

ところがだ。ここまですれば反省するかと思っていたのだが、シゲルは納得いっていないような表情を浮かべている。

「この度は申し訳ありませんでした。」

謝罪は一応したが、上司に気づかれないように俺を睨みつけている。これだけ追い詰められているというのに、謝罪する相手を睨みつけるとは。

「本当に申し訳ないと思っているのでしょうか? 」「本当に申し訳ないと思っていたら、睨みつけるなんてことはしないと思うのですが。」

俺がそう言うと、シゲルは顔を揺らした。

「シゲル、お前、何をしているんだ?

その場で上司に叱られ、少しは大人しくなるかと思ったのだが、相手はシゲルだ。

やはり人筋ではいかない相手だった。

「大体、ちょっとふざけて女性社員口説いちゃっただけで何だってんだよ。」

開き直って文句を言い始めたのだ。

「口説いただけだろ。」

「聞いた話によると、振られたことに腹を立ててうちの社員を脅したらしいじゃないか。」

「俺は取引先の社員だぞ。」「コビって俺の言うことを聞いてればいいんだよ。」「それなのに、俺の誘いを断りやがって。」

そんなめちゃくちゃな言い分が通るわけがないというのに。

「本当に反省していないようですね。」「残念ですが、やはり50億円の取引はなかったことにしてください。」

俺がそう言った瞬間、シゲルは焦り出す。

「わ、悪かったよ。」「つい頭に血が登っちゃったんだよ。」「俺ら友達だろ。」「許してくれよ。」

自分の立場が悪くなると、手のひらを返してペコペコし出すシゲルの姿は、本当に情けないものだった。

そして本当にどうしようもないやつだ。

「さっきのお前の発言が本音だろ。」「別に、俺はお前の会社じゃなくても取引をしてくれる会社はあるんだ。」

俺がそこまで言うと、取引先の上司はどうにか俺に考え直してもらおうと必死で謝罪をする。だが、シゲルが心から反省していない以上、俺の気持ちは変わらない。

「今まで長いお付き合いがあったので、私も残念ですよ。」「ですが、謝罪しに来たのに人を睨みつけて言い訳ばっかりする相手がいる会社とは、仕事できませんね。」

「俺が悪かった。」「許してくれよ。」

俺の本気が伝わり、焦り出したシゲルが必死に謝罪するが、もう遅い。

俺の気持ちは、どれだけ謝罪されても変わることはないのだ。

「お引き取りください。」

そう言って俺は、シゲルとシゲルの上司を追い返した。

おそらくこれでシゲルはさらに責任問題を問われることになるだろうが、俺には関係ない。

「頼む。」「俺を助けてくれ。」

最後までシゲルは俺に懇願していたが、その願いを聞き入れることはなかった。

その後、50億円の契約の話は正式に覇気になり、取引先と俺が直接関わることはなくなった。

その一件から半年後、俺は仕事の関係で町を歩いていたところ、同級生とばったり会った。

同級生はシゲルと家が隣同士で、シゲルの家の事情に詳しいやつだ。

同級生と近況報告をし終わった後、ふと思い出したかのように、シゲルの近況について教えてくれた。

シゲルは、あの後、俺とのトラブル、契約の責任に加え、会社に隠していたことがバレ、解雇になったという。

隠していたことというのが、シゲルの学歴についてだ。

本人は俺に「海外の有名大学を卒業している」と言っていたが、それは真っ赤な嘘だった。

元々俺は、社員がやめてしまった原因がシゲルにあると睨み、シゲルについて調査会社に依頼していた。

その過程で、シゲルが海外の有名大学を卒業したのが嘘だという事実が分かったのだ。

元々シゲルから出身大学を聞いた段階で、「嘘なのではないか」と俺は思っていた。

というのも、シゲルは昔から勉強が苦手で、宿題なんかも自分の古分や周りの同級生に押し付けていて、まともに勉強を頑張っている姿を見たことがない。

そのため、テストの順位は下から数えた方が早いレベルだったのだ。

そんなやつが海外の大学になんて入学できるのか、疑問に思っていたのだ。

蓋を開けてみれば、海外の有名大学ではなく、「金を払えば入学できる」とまで言われている地方のFラン大学出身だった。

俺は中卒だし、大学を卒業しているだけでもすごいと思うから、別にシゲルの学歴を馬鹿にしているわけではない。

だが、問題はシゲルの学歴詐称だ。

以前勤めていた会社でも、学歴を偽って就職し、学歴詐称がバレて解雇になったことが、調査で明らかになった。

シゲルとシゲルの上司が謝罪に来た際に、俺はその事実をこっそりとシゲルの上司に伝えていた。

おそらくあの後、上層部でその情報が共有されたはずだ。

シゲルの会社は学歴重視のエリートたちが集められる企業なので、学歴詐称は非常に大きな問題になったらしい。

しかも、うちの女性社員を口説いていたシゲルだが、塔の昔に結婚しており、妻も子もいた。

だが、今回会社を首になったことで、シゲルに愛想がつき果てて出ていったとのこと。

今では最終職もなかなかできず、寂しく一人で家に引きこもっているという。

だが、同情の余地はない。

今回の一件で大切な社員を失いそうになった俺だが、なんとか社員にも戻ってもらうことができ、平凡な日常を取り戻した。

しかし、俺が一連のトラブルに気づくのが遅れたら、社員に戻ってきてもらうことは難しかったかもしれない。

同じことを繰り返さないためにも、俺はもっと社員を気にかけようと心に誓った。

社員は会社の宝。

俺はこれからも、社員と一丸となって会社を盛り上げていこうと思う。