社長は俺に突然「首だ」と言い渡した。大口契約が決まったばかりだというのに、顔色ひとつ変えずに。理由は「うちの会社には若手が必要だ」、そして「息子が案件を引き継ぐことは以前から決まっていた」。
俺は藤山孝太、建築会社で営業一筋30年余り。社運をかけた大規模工場の案件を、何年もかけて契約にこぎつけたまさにその日に、ポイとゴミのように捨てられた。社長のわがままな息子のために。
俺は必死に訴えたが、社長は「私は社長だ。お前は1社員に過ぎない」と怒鳴るだけ。結局、俺は長年勤めた会社を退職した。
しかし1ヶ月後、社長親子は慌てた様子で俺の目の前に現れた。「頼む。会社に戻ってきてくれ」。土下座までして。どうやら、俺が担当を外れた途端、あの大規模案件は進展しなくなったらしい。だが、もう遅い。俺はすでにライバル会社への転職を決め、この案件を取り戻す準備を始めていたのだ。



