同窓会で、エリートの同級生が俺にだけ水を差し出して言った。「お前にはそれで十分だ。それを飲んでさっさと帰れ」と。高校時代から俺を馬鹿にしていた彼に、大人になっても変わらず見下されて、会場の笑い者になった。怒りで震える手を押さえ、水を飲み干してその場を去ったが、心の中では復讐を誓っていた。そして翌日、500億円規模の取引先との相談の席で、俺は彼の上司として、彼の会社の運命を握る立場に立っていた…

同窓会で、エリートの同級生が俺にだけ水を差し出して言った。「お前にはそれで十分だ。それを飲んでさっさと帰れ」と。高校時代から俺を馬鹿にしていた彼に、大人になっても変わらず見下されて、会場の笑い者になった。怒りで震える手を押さえ、水を飲み干してその場を去ったが、心の中では復讐を誓っていた。そして翌日、500億円規模の取引先との相談の席で、俺は彼の上司として、彼の会社の運命を握る立場に立っていた...

同窓会の席で、俺にだけ渡されたのは透明な水だけだった。華やかな料理が次々と運ばれる中、エリート同級生がニヤニヤしながら言い放った。

「お前にはそれで十分だ」

その言葉に周囲の連中がクスクスと笑う。俺は怒りで手が震えたが、ぐっとこらえて、差し出された水を一気に飲み干し、その場を後にした。絶対に許さない。俺は復讐を誓った。

俺の名前は山口秀樹。今はIT企業ネクストテックのCEOとして働いている。CEOと聞けば多くの人が華やかな人生を想像するだろうが、ここに至るまでにたくさんの苦労があった。

幼い頃に父を亡くし、母子家庭で育った。母は仕事を掛け持ちし、休む間もなく働き続けていた。そんな母を見て育った俺は、高校に入ってからアルバイトを始めた。夕方まで学校、その後に数時間バイト、帰宅して勉強という日々。同級生たちが遊んでいる横で、俺は孤独に耐えながら働き続けた。月5万ほどの収入のうち、1万だけを自分の小遣いにし、残りは全て母に渡した。母の力になれるならそれで十分だと思っていた。

高校を卒業し、興味があったIT業界に飛び込んだ。最初はサポート業務しかさせてもらえなかったが、独学でプログラミングを学び、少しずつ技術者として認められるようになった。そして20代後半、仕事仲間とともにネクストテックを起業したのだ。

小さなオフィスで最小限の資金から始めた会社は、最初はかなり苦しかった。しかし、情熱を持って顧客対応に全力を注ぎ続けた結果、AIやクラウド技術を駆使した最先端のソリューションが注目を集め、急成長していった。今では大企業からも技術提携のオファーが来るようになり、直近では500億円規模の提携話が進んでいた。

そんなある日、高校の同窓会の招待状が届いた。高校時代の孤独な日々を思い出し、少し不安になったが、もう昔とは違う。自分の成長を見せられるいい機会だと思い、参加を決めた。

当日、小綺麗な服に身を包んで会場にやってきた。数少ない仲の良かった同級生を探していると、後ろから声をかけられた。

「おい、お前、秀だろ?」

振り返ると、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべた新一が立っていた。新一は高校時代、俺をいじめていた張本人だ。貧乏なこと、母子家庭なこと、アルバイトを必死にしていたこと、何かにつけて俺を馬鹿にして見下していた。できれば関わりたくなかったが、早々に絡まれてしまった。

「みんないい年になって、さすがに大人になったはずだ」と思っていたが、新一は全然変わっていなかった。

「高卒底辺がよく来れたな。無理してそんな格好までして」

失礼な発言に腹が立ったが、ここで怒っても面倒になるだけだと思い、適当に流した。新一は話を聞かず、自分の自慢話を始める。

「俺はな、大手製薬会社グローバルファーマの部長をしているんだよ。お前とは違ってエリートなんだよ」

どうやら会社と役職でマウントを取りたいらしい。新一が去ってくれて、俺はようやくほっとした。

同窓会はそれなりに格式高いホテルで行われ、豪華な料理が提供された。しかし、俺に手渡されたのは霊水のみだった。不思議に思っていると、俺の様子を見ていた新一が口を開いた。

「お前にはそれで十分だ」

多くのクラスメイトが新一に同調して笑っている。俺に食事が出されないのは新一の仕業だ。俺だって他の同級生と同じ会費を払っている。

「お前の仕業か。俺が何をしたって言うんだよ。ひどすぎないか?」

抗議しても新一には響かない。むしろ煽ってくる。

「お前ごときに水を出してやったんだから、感謝して欲しいくらいだ。それを飲んでさっさと帰れ」

怒りで手が震えたが、ここで爆発しても何もいいことはない。霊水を一気に流し込み、冷静に「ご馳走様。じゃあ俺は帰るわ」と言って会場を後にした。新一は腹を抱えて笑っていた。

心のうちに激しい怒りが燃え上がる。ここまでコケにされて、このまま黙っているわけにはいかない。俺は新一への逆襲を誓った。

翌日、俺は以前から予定されていた500億円規模の技術提携の相談がある日だった。高級スーツに身を包み、会議室へと足を運んだ。開始時間の5分前、相談相手がぞろぞろと入ってきた。先頭でふんぞり返っていたのは、新一だった。

そう、今日の相談相手は、新一が務めるグローバルファーマだったのだ。俺は昨日の時点で把握していたが、新一はまさか俺が相談相手のCEOだとは気づいていないようだ。俺が「ネクストテックCEOの山口秀樹です」と自己紹介すると、新一は目を大きく見開いて動揺した。

元々、両者間で事前交渉が複数回行われていたが、部長である新一は一度も姿を見せていなかった。仕事を全て部下に押し付けていたことは明らかだ。だからこそ、俺が取引先のCEOだと知らなかったのだろう。

「あれ?もしかして、グローバルファーマの部長ともあろう方が、相談相手の会社のCEOが誰かも把握していなかったんですか?」

俺が嫌みを言うと、新一は顔を引きつらせた。プライドが高く怒りっぽい新一なら、こんなことを言われて屈辱的だろう。しかし、ここは相談の場だ。俺は相談相手のトップで、食ってかかれば大事になることくらい分かっているはずだ。

「おい、お前すぐに相談の準備をしろ」

新一は俺に何も言い返せず、部下に怒鳴り散らしてごまかそうとした。本当に器の小さい男だ。

「ちょっと待ってください。心変わりしました。500億円の提携は破談にしたいと思います」

俺の爆弾発言に、その場の全員が愕然とした。

「破談だって?何をふざけたことを」

「別にふざけているわけではありません。ビジネスにおいて、取引先との信頼関係はとても重要です。しかし、あなたの昨日の態度を見て、私たちの間に信頼関係が築けると思いますか?私はそうは思いません」

新一は顔面蒼白になり、弁解を始めた。

「いやいや、昨日のことは本当に申し訳なかった。昨日は少し酒が回っていただけで、普段はこんなことはしない。どうか水に流してください」

「酒のせいですか?いい大人が自分の言動を制御できないんですか?なおさら、そんな人間と信頼関係なんて築けませんよ」

心にもないことを言う新一に、俺は淡々と告げた。新一は慌て始める。

「破談にされたら困るんだよ」

「困ると言われても、そちらの事情はうちには関係ないので」

すると新一は、何かを思いついたようにドヤ顔で言い放った。

「500億円の相談だぞ。破談になればそっちにだってかなりの痛手になるはずだ」

はあ。これで俺を言い負かしたつもりなのだろうか。確かに、うちの会社としてもこの提携が成立すれば市場拡大や資金調達に繋がるというメリットがある。それは事実だ。しかし、うちと取引を望んでいるのはグローバルファーマだけではない。

「うちと取引を望む相手が、御社だけだと思っているんですか?」

俺の言葉に、新一は再び顔をこわばらせた。

「それはどういうことだ?」

「弊社の心配は無用ですよ。うちのAI技術は多くの製薬会社の注目を集めている。新薬開発をスムーズに行うために、この技術は必要不可欠です。相談を持ちかけてきた中には、グローバルファーマのライバル会社もありました。もしものことを考え、同じ条件を提示してきたライバル会社とも提携する準備を進めていたんです」

俺がその事実を告げると、新一は膝から崩れ落ちて頭を抱えた。

「ライバル会社と… マジかよ。俺は一体どうなるんだ?」

このまま破談になれば、新一は責任を問われるだろう。しかし、同情的な余地はない。俺は新一という人間を信用できないし、仕事をないがしろにする人物とも仕事をしたくない。

「どうぞお帰りください」

冷めたい目で床にへたり込む新一を見下ろしながら言うと、新一はいきなり逆上し始めた。

「この俺が頭を下げてるんだぞ。ふざけるな。この貧乏人が偉そうに」

新一は立ち上がり、俺に掴みかかろうとしてきた。口でどうにかできないと思ったら、力でどうにかしようというのか。短絡的すぎる新一の行動に、俺は大きなため息をついた。

暴れ始めた新一は、部下とうちの社員たちに取り押さえられた。騒ぎを聞きつけた警備員が駆けつけ、その場から引きずり出された。

「おい、秀!ふざけるな!相談をしろ!俺を誰だと思ってるんだ!」

警備員に引きずられながら、新一はわめき散らし、会社から追い出された。新一に付いてきたグローバルファーマの社員たちも、俺に何度も頭を下げて逃げるように帰っていった。

翌日、焦ったグローバルファーマの社長から謝罪の連絡が来たが、俺は相談は破談だと告げて電話を切った。その後、ライバル会社と提携することができた。グローバルファーマは業界での競争力を大幅に失い、トップの座から転落した。

新一は上司から相談破断の責任を問われ、部長を解任されたらしい。それをきっかけに社員たちの不満が爆発し、社内調査が行われた。その結果、新一が複数名で社内の金を横領していたことが発覚。新一は逮捕され、そのニュースはワイドショーで全国に流れた。

俺の会社は、グローバルファーマのライバル会社と提携したことにより、さらに知名度が高まった。業績も右肩上がりで、新たな技術開発にも着手する予定だ。

今こうして会社で成功することができたのは、女手一つで育ててくれた母のおかげだ。母も俺が仕事を頑張っている姿を嬉しそうに見守ってくれている。自分を支えてくれる多くの人に感謝しながら、俺は今日も技術開発に打ち込むのであった。

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