「お前、価値ゼロだよな。仕事もしていない上に不妊だし。今日で離婚だ。不要物は捨てないとな。」…

「お前、価値ゼロだよな。仕事もしていない上に不妊だし。今日で離婚だ。不要物は捨てないとな。」...

エリ、どうしてこんなところにいるの?私は急いでエリを物置きから連れ出し、汚れを払った。エリは埃でむせている。真冬の寒い時期に、物置きで寝ているなんて信じられなかった。

「いいんです。ルールですから。」

「は?ルールって何?物置きで寝ないといけないなんて知らない。」

エリはガタガタと震え、目に涙を浮かべて必死に私の顔を見つめていた。私の名前は野朝子。30歳になったばかりで、付き合って3年になる彼氏のケ太と一緒に会社を立ち上げ、順調に経営している。家族は母と、3歳年下の弟の守、そして彼の妻のエリ。守は昔から無口で無表情だったが、エリと結婚してから人が変わったように明るくなった。エリは優しくて穏やかで、母の介護も一手に引き受けてくれている。私はそんなエリに心から感謝していた。

正月に結婚報告のため実家に帰ると、母と守、エリが笑顔で出迎えてくれた。しかしエリの笑顔はどこかぎこちない。声に元気がなく、以前のように庭の花の話もしてこない。夕飯の支度をするエリの手はガサガサになっていた。

「エリ、夕飯は私が作るわ。ゆっくり休んで。」

「いえ、いいんです。いつものことですから。」

守は「俺は自分の部屋で仕事するから、できたら呼べ」と言って、さっさと部屋に籠もってしまった。母はソファで「年になると体が痛くてしょうがない」と横になったまま。エリはただ愛想笑いを浮かべるだけだった。

その夜、目が覚めた時には夜中だった。なんとなく外の空気を吸いたくなって庭に出ると、物置きから明かりが漏れている。長い間使っていない物置きから。不思議に思って確認すると、中ではエリがうずくまっていた。

「エリ、どうしてこんなところにいるの?母と守に何か言われたの?」

そう言った瞬間、エリは震え出し、涙を浮かべて訴えた。「お母さんと守るさんは何も悪くないんです。全部私が悪いんです。どん臭くて家事も要領よくできないので。」

エリが話し始めた内容は、あまりにひどいものだった。母と守は家事を全てエリに押し付け、自分たちはテレビを見たり、2人で出かけたり。家事が終わっていないと文句や暴言を吐くのだという。

「おい、働けない上にこんなこともできないのかよ。」
「本当にダメな嫁だわ。使えない嫁なんていらないわね。」
「夕方までに家事が終わらなかったら物置きで寝なさいよ。バツを与えた方が早く動けるようになるでしょ。」

物置きで寝るなど、正気の沙汰とは思えない。私はエリを抱きしめて謝った。「エリ、今まで本当にごめんなさい。私、何も知らなくて。」

その夜、エリを自分の部屋に寝かせ、翌朝、私はエリを連れて実家を出た。守と母のことは絶対に許さない。私は決意した。

彼氏のケ太に事情を説明すると、ケ太も激怒した。「お前の母親と弟は最低だな。」

私はケ太に協力を依頼した。私たちの会社は、守の会社と取引があったのだ。守の会社の社長は、ケ太の協力で会社を大きくすることができた恩がある人物だった。ケ太はその社長に守のことを話し、取引中止を告げてくれた。

数日後、守から電話がかかってきた。「ちょっと姉ちゃん、どういうことだよ。なんで俺の会社と取引してるって言ってくれなかったんだよ。しかも取引中止ってなんでだよ。」

「お嫁さんを物置きに寝させる人がいる会社と、なんか取引したくないわ。」

守はさらに言い放った。「なんであいつをかうんだよ。あんな鈍くてどん臭いやつ。家事をさせるために結婚したのに全然役に立たねえ。母さんの介護させるにはちょうどいい女だったから結婚したのに。」

母も横から口を出す。「そうよ。あんな女のためにどうして守の会社が取引中止にならなきゃいけないわけ。あ子、さっさと取引を再開しなさい。」

家事と介護をさせるために優しくして結婚させた。信じられない。エリは涙を流していた。私はこの人生で一番の怒りを感じた。

「とにかく、あんたの会社とは一切取引しない。あと、ケ太からあんたの会社の社長さんに伝えてもらったわよ。あなたの会社には嫁を物置きに寝させるクズ男がいますよってね。」

守は慌てた。「は?そんな俺が首になるじゃん。どうしてくれるんだよ。大体母さんがあいつを利用しようって言い始めたからこうなったんだ。」

「なんでそうなるのよ。言い出したのは守でしょ。全部朝子のせいよ。」

互いに責任をなすり合う守と母。エリに謝ることも反省することもない。「どっちが言い始めたとかどうでもいいから、クズなあんたたちにエリは渡さない。あと私にも2度と連絡してこないで。」

「待ってくれ。頼むから許してくれよ。これからは家事も介護も手伝うから。お願いよ。私たちがどうなってもいいの?」

「自業自得よ。」そう言って私は電話を切った。

後日、守の悪事は会社内で噂になり、評判はガタ落ち。守は退職に追い込まれ、新しい職場でも白い目で見られ、逃げるように会社を辞めた。守の稼ぎだけを頼りにしていた母は収入を失い、ボロボロのアパートで細々と暮らしているらしい。守が母の世話をしているが、喧嘩ばかりの毎日だという。

エリはこう話してくれた。「私、守さんに騙されているなんて分からなかったんです。最初はとても優しい人だったから、信じたかったんです。それに私には母がいないので、お母さんのことを本当のお母さんのように思っていたんです。」

「私の家族が本当にひどいことをした。申し訳ない。私はずっとエリを大切にしよう。」

その後、私とエリはまるで本当の姉妹のような関係を続けている。エリは自分で仕事を見つけ、好きだったガーデニングも再開。少しずつ、結婚した時のような可愛らしい笑顔を取り戻している。仕事ができないのではなく、母と守がそうエリにすり込んでいただけだったのだ。

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