「ここに高卒の仕事はない」――そう言って部長は笑いながら、俺のノートパソコンを5階の窓から投げ捨てた。そこには何年もかけて築き上げた全データが入っていた。40歳の俺は、高校卒業からずっとこの工場で機械エンジニアとして働き、技術を認められて大企業に引き抜かれたばかりだった。だが新部署の部長は、最初から俺を敵視していた。耐えに耐えた末に退職届を叩きつけたが、部長はまだ自分が何をしたか理解していな…

「ここに高卒の仕事はない」――そう言って部長は笑いながら、俺のノートパソコンを5階の窓から投げ捨てた。そこには何年もかけて築き上げた全データが入っていた。40歳の俺は、高校卒業からずっとこの工場で機械エンジニアとして働き、技術を認められて大企業に引き抜かれたばかりだった。だが新部署の部長は、最初から俺を敵視していた。耐えに耐えた末に退職届を叩きつけたが、部長はまだ自分が何をしたか理解していな...

「ここに高卒の仕事はない」

部長はケラケラと笑いながら、俺のノートパソコンを奪い取った。そして窓を開け、5階から投げ捨てたのだ。

あのパソコンには、これまでの仕事の集大成となるデータが全て保存されていた。壊れたら二度と取り戻せない。

俺は呆れを通り越して、怒りすら湧かなかった。ただ静かに退職届を机に叩きつけて、その場を後にした。

部長はまだ、自分が何をしたのか理解していないようだった。だが、すぐに思い知ることになるだろう。

俺の名前は板野大輔。40歳。地元の小さな町で機械エンジニアとして働いてきた。高校卒業と同時にこの工場に入社し、長年お世話になってきた。

皆、卒業したての俺に優しく仕事を教えてくれた。その恩に報いるため、俺は技術を磨き続けた。手先の器用さもあったが、何より努力を重ねてきた。

ここ数年は、社長が他社の社長たちに俺を自慢するほどになった。技術は研ぎ澄まされ、仕事も順調だった。生活は平凡だが、穏やかな毎日だった。

そんなある日、社長の昔からの知り合いという年配の男性が工場を訪れた。地元でも有名な大企業の会長だと聞き、俺は少し緊張した。

「君が大輔君か。社長からいつも話は聞いているよ」

会長は俺に興味を持ったようで、何度も話を振ってくる。工場の視察に来たはずなのに、なぜか俺に夢中になっているようだった。

「君には是非、我が社に来て欲しい」

その一言に、俺は言葉を失った。まさか大企業の会長から引き抜かれるなんて、想像もしていなかったからだ。

会長がここに来た目的は、社長に会うためではなく、俺を引き抜くためだった。話は既に社長にも通してあり、俺が了承すれば問題ないという。

悩んだ。長年お世話になった工場を離れるのは心苦しかった。だが、大企業なら今まで以上に多くの経験を積めるだろう。家族にもより豊かな暮らしをさせてあげられる。

「未熟ですが、是非お願いします」

俺は会長の誘いを受けることにした。配属先は企画開発部。車内の機械エンジニアたちが集められた部署だ。

入社してすぐ、異変に気づいた。部長の洋一という男性が、俺のことを快く思っていないようだった。目が合うたびに、嫌な視線を感じる。

新人の育成は俺の仕事だと言われたが、部長は何も教えてくれない。ただ使えるように扱うだけだ。それでも俺は耐えた。新しい環境に慣れるまで、と思っていた。

だが、ある日ついに限界が来た。

「余裕がないんです。自分の仕事は自分でしてもらえませんか?」

そう言った瞬間、部長の表情が歪んだ。そして俺を馬鹿にするように笑い出し、ノートパソコンを奪い取ったのだ。

窓から投げ捨てられたパソコンは、5階の高さから地面に叩きつけられた。砕け散る音が聞こえたような気がした。

あのデータは、俺が長年かけて作り上げてきたものだ。それを何のためらいもなく壊した。俺の仕事を、人生を、否定されたような気分だった。

退職届を叩きつけて工場を出た後も、怒りは収まらなかった。だが、冷静になると一つの決意が湧いてきた。

あのデータを壊した責任を、必ず取らせてやる。部長が自分の行動の代償を思い知るまで、俺はもう止まらない。

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