「ばあばはいらない。ママがそう言ってた。お金だけくれればいいって」——5歳の孫の無邪気な言葉が、私の人生を一瞬で変えた。40年以上かけて築いてきた家族への信頼が、その一言で音を立てて崩れ落ちた。私は68歳。夫を亡くしてから息子夫婦のために全てを捧げてきた。1億4000万円のマンションを贈与すると告げたまさにその瞬間、孫の口から衝撃の真実が漏れた。息子も嫁も、私をただの財布だと思っていた。私は…

「ばあばはいらない。ママがそう言ってた。お金だけくれればいいって」——5歳の孫の無邪気な言葉が、私の人生を一瞬で変えた。40年以上かけて築いてきた家族への信頼が、その一言で音を立てて崩れ落ちた。私は68歳。夫を亡くしてから息子夫婦のために全てを捧げてきた。1億4000万円のマンションを贈与すると告げたまさにその瞬間、孫の口から衝撃の真実が漏れた。息子も嫁も、私をただの財布だと思っていた。私は...

ばあばはいらない。その言葉が私の人生を根底から変えることになるとは、その時は思いもしませんでした。

私は森田清美、68歳。10年前に夫を亡くしてから、息子の裕介とその家族のために生きてきたと言っても過言ではありません。

あの日、私は重要な決断をお伝えするため、息子夫婦を自宅に招いていました。リビングのソファーに向かい合って座る裕介と栞さん。2人の間には5歳になる孫の優馬がちょこんと座っています。

「裕介、栞さん、今日は大切なお話があってお呼びしました」

私は深呼吸をして、準備していた言葉を口にしました。

「実は駅前の新築マンションをあなたたちに生前贈与しようと考えているんです。価格は1億4000万円ほどになりますが、私たち家族の将来のためにと思いまして」

息子夫婦の目が大きく見開かれました。驚きと喜びが入り混じった表情です。

「お母さん、本当ですか? 」

栞さんが身を乗り出してきた。まさにその時でした。

「ばあばはいらない。ママがそう言ってた。お金だけくれればいいって」

優馬の無邪気な声が静寂を切り裂きました。優馬の言葉に私は凍りついたように動けなくなりました。栞さんは慌てて優馬の口を抑えようとしましたが、もう遅かったのです。

私は震える声で訪ねました。

「優馬ちゃん、どうしてそんなことを言うの? 」

「だってママがパパに言ってたもん。ばあばは財布だって」

その瞬間、私の中で何かが音を立てて崩れ落ちていくのを感じました。

思い返せば、私は裕介のために全てを捧げてきました。夫が残してくれた財産の大半を息子の教育費に当てました。私立中学から大学院まで、総額2000万円以上。さらに栞さんの実家が抱えていた500万円の借金も黙って肩代わりしました。

優馬が生まれてからの5年間は、まさに第2の子育てでした。栞さんが仕事に復帰してから週5日は朝から晩まで孫の世話をしていました。離乳食作りから公園遊び、絵本の読み聞かせまで。

それなのに、最近では仕事が忙しいからと、月に一度会えるかどうか。私から連絡をしても返事はそっけないものばかりでした。

「母さん、優馬は子供だから何を言っているかわからないんです」

裕介が取り繕おうように言いましたが、私にはもう全てが見えていました。献身的な愛情も積み重ねてきた時間も、結局はお金としていなかったのです。

私は優馬に向き直り、できるだけ優しい声で訪ねました。

「優馬ちゃん、どうしてばあばは財布だって言うの? 誰がそんなことを教えたの?

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優馬は無邪気に答えました。

「ママが言ってたもん。ばあばは優しいけど、お金のためだけに会ってるんだって。本当のおばあちゃんじゃないから大事にしなくていいって」

その言葉を聞いて、私の胸が張り裂けそうになりました。5歳の純真な子供に、こんな歪んだ価値観を植えつけているなんて。

「優馬、それは違うよ」

裕介が慌てて息子を抱き上げようとしましたが、優馬は続けました。

「でもパパも言ってたよ。ばあばのお金は全部僕たちのものになるから、今は我慢してるんだって」

栞さんの顔が真っ赤になりました。しかしその表情は反省ではなく、秘密がバレたことへの焦りでした。

「お母さん、子供の言うことですから真に受けないでください」

栞さんが取り繕おうように言いましたが、もう遅かったのです。

私は静かに立ち上がり、息子夫婦を見つめました。

「裕介、栞さん、正直に答えてください。私は本当にただの財布なのですか? 」

2人は目を合わせ、そうに視線をそらしました。

「母さん、そんなことはないよ。ただ最近は価値観が…。それにお母さんの生活スタイルも私たちとは合いません。古すぎるというか…」

「ケチというか」

その言葉が私の心に突き刺さりました。

「ケチですか? では、月に30万円の仕送りは少なすぎるということでしょうか? 」

「え?

30万円? 」

裕介の顔色が変わりました。栞さんも驚いた表情をしています。

「私はあなただちに…」

「母さん、何を言って…」

「あなただちに毎月30万円の仕送りをしてきました。それはあなたたちが知っているはずです」

栞さんが口を開きました。

「でも、それは…その…」

「それは何ですか? 栞さん」

「あ、あの…」

栞さんは言葉を濁し、裕介を見ました。裕介も目をそらしています。私は何かがおかしいと感じました。

「裕介、まさか…」

「母さん、すみません」

裕介が突然、土下座をしました。

「実は…仕送りは全て…」

「全て、何? 」

「全て僕が使ってしまいました。投資に失敗して…借金が…」

私はその場に立ち尽くしました。30年間続けてきた仕送りが、息子の借金返済に消えていたのです。

「それで…栞さんはそれを知っていたのですか?

栞さんはうつむいたまま答えません。その沈黙がすべてを語っていました。

「私は…愚かでしたね」

私は静かにそう言い、自宅を後にしました。息子夫婦の言葉も、優馬の無邪気な声も、すべてが私の心に突き刺さっていました。

次の日、私は弁護士のもとを訪れました。

「遺言書を書き直したいのです。そして…生前贈与の計画は中止にします」

私は新しく決めた内容を弁護士に伝えました。全ての財産は、私が信頼できる団体に寄付する。そして私は待っています。息子夫婦が謝罪に来るのを。しかし、1ヶ月過ぎても2ヶ月過ぎても、彼らからの連絡はありませんでした。