顔合わせの日、妹は私が心を込めて握ったおにぎりを「貧乏臭い」と言い放ち、そのまま流しに投げつけた。 その瞬間、婚約者が立ち上がったのに、私は気づかなかった。 まさか彼が流しに落ちたおにぎりを拾って、その場で食べ始めるとは思っていなかった。 「美味しい。ま子さん、最高だよ。」 その言葉に、母は泣き、父は目を拭った。 そして、何よりも驚いたのは、妹の夫が立ち上がって、こう言ったことだ。…

顔合わせの日、妹は私が心を込めて握ったおにぎりを「貧乏臭い」と言い放ち、そのまま流しに投げつけた。 その瞬間、婚約者が立ち上がったのに、私は気づかなかった。 まさか彼が流しに落ちたおにぎりを拾って、その場で食べ始めるとは思っていなかった。 「美味しい。ま子さん、最高だよ。」 その言葉に、母は泣き、父は目を拭った。 そして、何よりも驚いたのは、妹の夫が立ち上がって、こう言ったことだ。...

顔でおにぎりって受けるんですけど、それに3菜と野菜料理ですって。いかにも田舎ね。貧乏臭い。
婚約者の実家で顔合わせの日。妹はそう言い放って、目の前の手作りおにぎりをバシバシっと流しに投げつけた。
この女、何をしてくれたんだ?
そう思っていたら、私の婚約者が現れて、事態は一変した。
味方になった妹の行末は——。

私は米本ま子、30歳。料理をするのも食べるのも大好きなOL。
色々なジャンルの料理を作るけれど、中でも好きで得意としているのは和食だ。
仕事が終わると、毎日ご飯に合うおかずを何にしようか考えながら帰宅するのが日課だった。
しかし、そんな私の一人暮らしも、とうとう終わりが見えてきた。
運命の人である両平に出会ったからだ。

彼との出会いは、会社のお昼休みのことだった。
当時私は中堅の営業スタッフとして務めており、お昼は手作り弁当を持参していた。
しかしある日、炊飯器が壊れてしまった。
お米が炊けなかったため、お昼はコンビニで適当に買おうと思い、会社の外を歩いていると、おにぎりを販売しているキッチンカーを見つけた。
そこで働いていたのが両兵だった。
メニューを見てみると、おにぎりは種類豊富でどれも美味しそうで、お味噌汁のセットもあった。
コンビニより美味しいかもしれないと思って、気軽に寄ってみた。

「いらっしゃいませ。」
「えっと、どれにしようかな?」
「こちらは初めてですか?」
「あ、はい。えっと、おすすめって…」
「ああ、今の時期でしたら、鮭とイクラの親子おにぎりがおすすめですよ。」
「じゃあ、それのお味噌汁セットで。」
「かしこまりました。」

渡されたおにぎりは小ぶりながら、ずっしりと重みが感じられ、丁寧に作られているのが分かった。
そして食べてみて驚いた。
まず何よりもお米が美味しい。
そして具材との相性が抜群で、私はあっという間に食べ終えてしまった。

「すみません。この親子おにぎり、さっきもいただきましたよね。」
「あ、はい。あんまり美味しかったので、もう一つ食べたくなっちゃって。」
「わあ、嬉しいな。」

これをきっかけに、私は度々キッチンカーを利用するようになり、常連として両兵と会話を交わすようになった。

「いらっしゃい。ま子さん。今日は何にする?」
「今日はおかかをください。」
「了解。セットにする?」
「うん。今日はおにぎりだけで。」
「え、足りなくない?」
「昨日の夕飯の残りを持ってきたから、おにぎりとそれを食べるよ。」
「へえ。」

私がキッチンカーから離れたベンチで食べていたら、販売が終わったのか、両兵が近づいてきた。

「今日の味はいかがでしたか?」
「いつもながら、美味しかったです。」
「持ってきたお弁当って、それ?」
「そう。」
「へえ。意外。うちをよく利用してくれるから、お弁当とかあまり作らない人かと思ってたけど、ちゃんと作るんだね。」
「残り物を詰めただけよ。」
「いやいや、それにしてはちゃんとお弁当になってる。この煮物なんか、味が染みてそうだね。美味しそう。食べてみる?」
「え、いいの?」
「本当はこんなに美味しいおにぎりを作る人に出すのは恥ずかしいんだけど、よかったら…」
「じゃあ、お言葉に甘えて。」
「ん、う、美味しい。ま子さんって、料理教室とか通ってるの?」
「うん。昔から母の手伝いをしてたから、自然と作れるようになってた。」
「へえ、すごいね。家庭的。これ、よかったら作り方教えてよ。おにぎりにも合いそう。」
「本当?こんなんでよければ、全然いいよ。」

こうして私たちは親しくなり、交際をスタートした。
そして交際2年で、結婚を考えるようになった。
となると、両家の顔合わせが必要だ。
私は両親と顔合わせについて相談しようと、実家に行った。
すると妹が来ていた。
妹のリエは私の2歳年下で、すでに結婚して家を出ている。

「ドラマに影響受けて有名大学に入れるなんて、すごいのね。お姉ちゃんはそんな夫をゲットできるかしら?」
「さあ、どうかしら?」

私はリエの言葉を軽く流した。
昔からリエは私を見下すような発言が多く、私はそれに慣れっこになっていたからだ。
顔合わせの日、私は朝から張り切って料理を作った。
おにぎりを中心に、3つのおかずと野菜料理を用意した。
実家の台所で、心を込めて握ったおにぎり。
私はそれが何よりのごちそうだと思っていた。

そして、顔合わせの席。
両兵と彼の家族、私の両親とリエ夫婦が揃った。
私は作った料理をテーブルに並べた。
すると、リエがそれを一瞥して、笑った。

「顔でおにぎりって受けるんですけど、それに3菜と野菜料理ですって。いかにも田舎ね。貧乏臭い。」

その言葉に、場の空気が凍った。
私は言葉を失った。
するとリエは、私が目の前に置いた手作りおにぎりを、バシバシっと掴んで流しに投げつけた。
「こんなもの、誰が食べるのよ。」

私は立ち尽くした。
涙が出そうになった。
すると、両兵が立ち上がった。
彼は静かに、しかしはっきりとした口調で言った。

「リエさん。ま子さんの作った料理を、そうやって侮辱する権利があなたにあるんですか?」

リエは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑った。
「何言ってるのよ。こんな手の込んだもの、お姉ちゃんが作ったわけないでしょ。どうせどこかの店で買ってきたんでしょ?」

「違います。これは全部、ま子さんが今朝から作ったものです。僕はその工程を全部見ていました。おにぎりを握るま子さんの手は、まるで芸術作品を仕上げる職人のようでした。」

両兵の言葉に、リエの顔色が変わった。
しかし彼女はまだ引かなかった。
「ふん。そんなに褒めるなら、このおにぎり、全部食べなさいよ。」

「ええ、もちろん。僕はま子さんが作ってくれた料理を、全部いただきます。」

両兵はそう言うと、流しに投げられたおにぎりを拾い上げ、そのまま食べ始めた。
「美味しい。ま子さん、最高だよ。」

私は涙を堪えきれなかった。
母が隣で泣いていた。
父も静かに目を拭っていた。
そしてリエの夫が、リエに顔を向けて言った。
「リエ、出よう。」

「え、何で?」
「君の行為は明らかに間違っている。僕はこんな妻と一緒にいて恥ずかしい。」

リエは呆然とした。
彼女の夫は、私と両兵に向かって深く頭を下げた。
「申し訳ありません。妻の無礼をお詫びします。」

その後、リエ夫婦はその場を去った。
リエの顔は、初めて見るほど青ざめていた。
私はその夜、両兵に言われた言葉を忘れられなかった。
「ま子さんの料理は、世界で一番美味しい。それは誰が何と言おうと変わらない。」

私は泣きながら、両兵の胸に飛び込んだ。
その後、私たちは無事に結婚した。
リエと夫は、あの日から私たちの前から姿を消した。
数ヶ月後、リエから母宛に一通の手紙が届いた。
「お姉ちゃんに謝りたいです。でも、どうしたらいいかわかりません。」

私はその手紙を読んで、少しだけ微笑んだ。
そして、私はこう思った。
——私は自分の作った料理を、心の底から愛してくれる人と結婚できて、本当に幸せだ。

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