父の顔をすぐに見た。あの女に「出て行け」と言ってほしかった。でも父は言った。「セルマと話し合ったんだ。……答えはノーだ。」
何が彼女にそんなことを言わせるのか。私は二週間、セルマが存在しないふりをした。でも家の中のどこにいても、彼女の笑い声が聞こえた。胸の何かがひび割れる感覚がした。
母のネックレスを思い出した。母はそれを毎日身につけていた。鼻にラベンダーがついていても気づかなくて、私は笑ってしまったことがある。そんな母を思い出すたびに、セルマへの怒りが増した。
「あなたに権利なんてない」と私は言った。
「あなたの父はすべてに同意したわ」とセルマは笑った。「あなたが父の幸せの邪魔をしているのよ」
その言葉は物理的な打撃のように響いた。彼女が嘘をついているのか、父が本当にそんなことを言ったのか、私には判断できなかった。でも、彼女の思う通りに泣くのは嫌だった。
私は二つの仕事を掛け持ちした。目標は明確だった。五万ドル、成績が維持できれば大学への全額奨学金、誰にも邪魔されない人生。父とセルマの家にいる間は、ただそれを我慢すればよかった。あと十七歳の誕生日まで。
ネックレスの件は、セルマが私の部屋からそれを盗んだ日のことだ。「これは母のものだ。あなたは何もかも奪った」と私は言った。
「それはただの物よ」とセルマは言った。
「この家族が機能しているのは私のおかげよ。あなたも含めてね」と彼女は続けた。
その夜、私は決めた。もう誰も私を救ってはくれない。自分で道を切り開くしかない、と。
十八歳の誕生日、家には何の祝いもなかった。ケーキも、プレゼントも、誰の言葉も。でも私は気にしなかった。その日の朝、私は弁護士のもとへ行き、すべてを確認した。母が残した家は、私の名義になっていた。現在の市場価値は約四十五万ドル。母が作った別口座には六万二千ドル。十八歳になった今、すぐに引き出せた。
セルマが家族会議を開いたのは、その日の夜だった。みんながリビングに集まった。私は封筒をテーブルに置いた。
「これが何か分かってる?」とセルマが言った。
「母が残してくれたものよ」と私は言った。「この家は私の名義。あなたたちはここにいる権利がない」
沈黙が部屋を満たした。セルマの顔が赤くなった。「ハロルド、何か言ってよ。これは馬鹿げてるわ」
でも父は何も言わなかった。ただ床を見つめていた。何年もずっとそうだった。彼は何かを決めるべき時になると、いつもそうやって黙り込んだ。何も言わず、何もしない。それが彼の生き方だった。
「あなたは自分のことしか考えたことがない」と私はセルマに言った。「私を追い出そうとした。でも今、あなたたちの居場所は私が決めるの」
セルマは弁護士を呼んだ。でもすべての書類は完璧だった。署名も法的要件もすべて満たしていた。セルマは追い出される寸前だった。
その後、父の姉から電話がかかってきた。「お前のせいで家族がバラバラだ」と言われた。でも私は言った。「あなたたちは何年も私を無視してきた。今さら関係を築こうなんて遅すぎる」
セルマは最後の土壇場で頼んできた。「お願い、家を出ないでください。行く場所がないの」と。
「あなたはずっと私にそんなことをしてきた。今さら同情を求めても無駄よ」と私は言った。
二週間後、私は合法的に彼らを立ち退かせた。セルマとキャンディは荷物をまとめて去っていった。家を出る瞬間、私は初めて自由を感じた。もう彼らの顔を見ることも、彼らの声を聞くこともない。
母が残してくれたものは、お金と家だけじゃなかった。私は自分の足で立ち、自分の人生を歩んでいた。誰の助けも借りずに。



