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「おお、銃殺。生きてたんだな。」
同窓会の喧騒の中、背後から投げかけられたその声に、俺はゆっくりと振り返った。そこには、昔と変わらない嫌味な笑みを浮かべる同級生の姿があった。
「俺は親父の会社で専務やってるんだよ。もうすぐ社長だな。」
彼は胸を張りながら名刺を差し出してくる。その高飛車な態度に内心苛立ちを覚えながらも、俺は名刺を受け取った。彼は相変わらず自慢話ばかりだ。
「ところでお前はどこで働いてるんだ?」
「ああ、大したことないよ。今スマホゲームを作ってるんだ。」
淡々と答えた俺の言葉に、彼は吹き出した。
「やっぱり中卒だな。そんなくだらない仕事してるとはな。」
昔と何も変わらない。だが、この後に起きることを彼は知らない。俺がこの同窓会に来た理由も、その裏に隠された真実も。
俺の名前は新谷ケト。ゲーム会社で働く40歳だ。初めて手に取った時のワクワク感、ゲームを起動する時のあの音、ハラハラするストーリー展開。全てが好きで、ゲーム業界で働けることはとても楽しい。
俺がゲーム会社で働くことになったのは、幼い頃のとある一本のゲームソフトがきっかけだった。
俺は母子家庭で育った。物心着いた時には父親がおらず、母は女手一つで俺を育ててくれた。朝も夜も母は働いてくれていたが、他の家よりも貧しい家庭だったと思う。
「新作のゲーム買ってもらったんだ。今日学校終わったら戦おうぜ。」
「おう、俺もこの前買ってもらったんだ。一緒にやろう。」
小学生の頃、クラスメイトのこんな声が聞こえてきた。俺はゲームなんて一度も買ってもらったことがなかった。欲しい気持ちはあったが、母が忙しく働いている姿を見ると、どうしても言えなかった。
しかし、同級生が羨ましくて、一度だけ母にわがままを言った。
「お母さん、俺ゲーム欲しい。クラスのみんなやってるんだ。俺だけやったことなくて。どうしてもやってみたい。お願い。ゲーム買って。」
母は一瞬悲しそうな顔をした後、俺を抱きしめた。
「今までたくさん我慢させていてごめんね。誕生日楽しみに待っててね。」
母はそんな風に優しく微笑みかけてくれた。
忘れもしない。数ヶ月後の12歳の誕生日。母は夜の仕事に出かける前、夕飯を食べながら俺にキラキラの袋を渡した。
「お誕生日おめでとう。これはお母さんからのプレゼントよ。開けてみて。」
キラキラの袋に包まれているそれを見て、胸が高鳴る。丁寧にリボンを外し、そっと中を覗き見ると、そこには同級生たちが持っているゲーム機と、CMでもやっている新作のRPGのゲームソフトが入っていた。
「お母さん、これいいの?ありがとう。これ欲しかったやつだ。」
俺は中の箱を手に取り、夢中で開けた。母は俺のその様子をニコニコしながら見ている。
俺はこの日からそのゲームに夢中になった。母が仕事で遅く、夜一人で寂しい時でも、ゲームを起動すれば俺は勇者になれた。友達と喧嘩した日も、ゲームの中には一緒に旅をする仲間がいた。ゲームは俺に光を与えてくれ、俺は毎日欠かさずプレイしていた。
後にも先にも母に買ってもらったゲームはこの一本だけだったが、俺を魅了するには十分だった。俺は何度もクリアして、その世界にどっぷりと浸かった。
月日は流れ、気づけば40歳。ある日、机の上に一通の手紙が届いた。
「もうそんな年か。早いな。」
そこには中学の同窓会が開かれることが書かれていた。俺はすぐに参加に丸をつけた。高校や大学へ進学していない俺にとって、中学時代の友人は数少ない学生時代の友人だった。久しぶりにみんなに会うのが楽しみだ。
同窓会当日。会場に足を踏み入れると、懐かしい顔ぶれが揃っていた。昔話に花を咲かせる中、あの嫌味な同級生が近づいてきた。
「おい、新谷。お前、何してるんだ?」
「スマホゲームを作ってるんだ。」
「はっ、やっぱりな。中卒だからな。俺みたいに偉くなれないんだよ。」
彼は勝ち誇ったように笑った。だが、俺は知っている。彼が自慢する父親の会社が、今どんな状況にあるのかを。
「足立社長。これは事実でしょうか?」
数週間後、俺は彼の父親の会社の役員室にいた。手に持っていたのは、ある調査報告書。俺はそれを静かに机の上に置いた。
足立社長は顔色を変えた。彼の会社はここ数年、業績が悪化していた。そして、その影で不正な会計処理が行われているという情報を、俺は偶然掴んでいた。
「この報告書の内容、ご確認ください。もし事実なら、私はこの情報を取引先に公表せざるを得ません。」
俺が冷静にそう告げると、足立社長は額の汗を拭いながら震え始めた。
そう、俺はただのゲーム会社の社員ではない。俺が作ったスマホゲームは大ヒットし、今では大手企業との取引も行っている。そして、この調査報告書は、俺の会社が提供するセキュリティサービスによって発見されたものだった。
「新谷君。何とかならないか。」
足立社長は必死に懇願するが、俺の答えは決まっていた。
「申し訳ありません。私はただ、事実を伝えただけです。後は法廷で話しましょう。」
俺はそう言い残し、役員室を後にした。その顔には、かつて俺を見下した同級生の姿が重なっていた。だが、俺はもう昔の自分ではない。ゲームが教えてくれたんだ。どんな困難も、正しい選択をすれば乗り越えられるということを。
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