「見にくい顔で早く帰れって、あの人、言ったんです。しかも、俺の両親が隣にいるのに、平気で。あの笑顔の裏で、俺をゴミみたいに扱ってきた上司が、今、俺の前で土下座してる。」
田島洋一、25歳。実家で両親と暮らしながら、営業部のエースとして働いていた。あの日までは、そう思っていた。
小学校の頃、兄と遊んでいて木から落ちた。兄の言いつけを守らず、勝手に登って。顔に大きな傷が残った。兄はそれ以来、ずっと俺を守ろうとしてくれた。過保護なくらいに。俺のせいじゃないって言っても、兄は自分を責め続けた。
だから俺は、ちゃんとやらなきゃって思ってた。兄が近々、こっちの支店に異動してくるって聞いて、絶対に立派な姿を見せたいって。
それが、あの日。「見にくい顔」って。控室で、化粧直ししてる時のことだった。
俺は何も言わずに、その場を去った。怒りをグッと飲み込んで。だって、もう決めてたから。あの上司には、もっと大きな罰が待ってるってことを。俺はただ、その時が来るのを待ってるだけ。
「残酷なのは、俺の方かもしれませんね、って、言ってやる日が、楽しみで仕方ないんです。」



