彼のシルエットがかすかに見えたかと思うと、あっという間に闇の中へ消えていった。黒川は普段、なるべく後ろを振り返らないようにしていた。振り返ると、考え込んでしまって時間が無駄になるからだ。それだけのことだった。
最初、それが何なのかすぐには分からなかった。目に入ったタイトルに目を奪われ、次の行を読んでようやく理解した。それが最初の理由だった。
「お荷物がございましたら、おまとめいただき、ロッカーの鍵をご返却ください」
彼は一度も案件を成功させたことがなく、勝手に連絡を取ったこともなく、苦情を言ったこともなかった。それはすべて事実だった。みんな体調を崩していたが、空はまだ灰色で、そこから光が差しているようには見えなかった。
地元の国立大学だったが、それでも大学は大学だった。卒業後、食品メーカーの会社員として約20年間働いた。仕方なく始めた仕事だった。ちゃんとした仕事が見つかるまでのつなぎだと思っていた。
黒川はバッグを近くのゴミ箱に投げ入れ、しばらくそこに立っていた。背筋はまだピンと伸びていたが、それがかえって哀れだった。体だけが動いているように見えて、中身は空っぽのようだった。
しばらく天井を見つめた後、黒川は立ち上がった。連絡先をスクロールしていくと、ほとんどが会社の番号で、個人の名前はごくわずかだった。はっきりとは思い出せなかった。電話すべきだろうか。情けないという声と、他に方法がないという声が交錯した。エコーボックスはまだ中にあった。
電話の向こうで短い間があった。礼儀正しいわけでも、親しげなわけでもなかった。まるで、飼い主を思い出せない犬が吠える前の沈黙のようなものだった。黒川は相手が息を整えるのを待って、大丈夫かと尋ねた。黒川は何も答えることができなかった。
彼は社会のせい、時代のせい、経済のせい、会社のせいにし、何かあるといつも誰かのせいにして、自分では何もしない。奥さんに伝えなかったのは、伝えたくないだろうと思ったからだ。頭の中で数字を組み合わせてみたが、どう計算しても足りなかった。中山はまた、ちゃんとしたものを食べたかと尋ねた。黒川が「いいえ」と言う前に、中山はもう歩き出していた。
車は新宿へ向かい、明るく賑やかな定食屋ではなく、静かな和食店に入った。座敷に通され、黒川は20年ぶりに足を伸ばした。
「管理職を引き受ける方には、責任の形として50万円を投資していただきます」
「他に選択肢がないなら」と中山は簡潔に言った。他にも候補者はいた。この金から50万円を出せば、残りは約12万円。家賃を払えば7万円も残らない。同じことだった。五月の午後だった。靴はまだ光っていた。昨夜、咲夜が磨いてくれたからだ。前日、中山に50万円の入った封筒を渡してあった。
壁には路線図が貼ってあった。他にすることがなかった。事務仕事があれば、と言いかけて止めた。「体が動くなら、何でもやります」
大学卒業後、食品メーカーで20年働き、37歳で道を失い、それ以来、日雇い労働者として働いていた。立ち止まっている暇はなかった。
最初の2週間、長谷川は黒川に対して非常に親しげだった。他のスタッフがいる前では、長谷川は黒川に対してある特定の口調を使い始めた。問題は、その口調が他のスタッフに向けるものとは明らかに違っていたことだ。長谷川の視線は虚ろになった。それで十分だった。この仕事を失えば、次はなかった。
救急車が到着してから、彼はようやく姿を現した。証拠を確認する前に、黒川の話を聞く前に、黒川が口を開いた。短い会話だった。ポケットで点けた環境に優しいタバコの煙が朝の空気に溶けていった。結局、月給は一銭も振り込まれなかった。2ヶ月分は無理でも、1ヶ月分くらいは諦めてもいいと言った。私たちにも余裕があるわけじゃない。大家に伝言を残そうかと思ったが、髪の毛もペンも見つからなかった。
「65歳以上歓迎」という言葉は一言もなかった。工場と倉庫が混在する地域を約30分歩いて、ようやく目当ての場所を見つけた。男は黒川の顔をしばらく見つめてから、年齢を尋ねた。中に入ると、約20人の男たちがすでにいた。20代に見える者もいれば、黒川と同じくらいの年齢の者もいた。たとえ気にしていたとしても、誰も気にしていなかった。中には5000円が入っていた。それで彼には十分だった。空腹のせいなのか、疲れのせいなのか分からなかった。両方かもしれなかった。
文面は短かった。法律事務所の名前が書かれ、その下に最初の行があった。何か言ったと思ったが、それがチコに向けたものなのか、自分自身に向けたものなのか分からなかった。消えたわけではなく、何か別のものが取って代わったのだった。その後、ベルトコンベアがゆっくり動いているのか、速く動いているのか、もはや分からなくなった。音は最初は大きかったが、次第に遠ざかっていき、やがて消えた。
意識が戻る前に、まず鼻だけが戻ってきた。二人部屋の個室で、隣のベッドは空いていた。痛みはありますかと尋ねられた。黒川は少し考えてから「いいえ」と答えた。医療記録を見ながら黒川の隣に立っていた石井は、状態を確認すると言った。体重が標準を大幅に下回っている。それから顔を上げて、「経過を観察するため、23日まで入院してください」と言った。黒川は天敵の存在を避けながら名刺を受け取った。彼の目は単に事実を確認しているだけだった。彼は各手続きの説明が書かれたパンフレットを置いて、また連絡しますと言って去っていった。
それは他の誰かだった。住所の約15センチ先に名前が書かれていた。差出人の名前は空欄だった。ただ「返します」とだけ書かれていた。中には腕時計が入っていた。彼女は黒川が去った後も、離婚後も、彼が入院している間も、それを大切に持っていた。それは永遠に分からないだろう。「返します」という言葉が何を意味していたのかは分からなかった。しばらくそのままにしておくと、少しずつ温かくなっていった。それらはすべて、順序もなくそこにあった。最初の橋の穴に留めても、まだ少し余裕があった。機械式時計なので、そのままにしておけば止まっているはずだった。
車に乗る前に、黒川は病院の入り口で立ち止まった。しばらくそのことに気を配らなかった。それだけのことだった。
それはあまりにも重くて、普通にしていれば気づかなかっただろう。劇的な逆転でも、感情的な別れでもなく、ただ静かに、一歩ずつ前へ進むようなものだった。この物語が、皆さんの心にほんの少しでも残ってくれたなら、それで十分です。



