法廷の空気が凍りついた。夫の直樹は私を「失敗した母親」「失敗した妻」だと非難し、離婚訴訟を起こした。彼は全財産と、7歳の娘ユナの親権まで要求していた。私は必死に自分を保っていたが、彼の弁護士の冷静な言葉が容赦なく私を追い詰めていた。
私が反論しようとしたその時、ユナが突然立ち上がった。彼女の小さな声が静まり返った法廷に響いた。「裁判官さん、ママが知らないものをお見せしてもいいですか?」
裁判官は一瞬驚いた表情を見せたが、頷いた。ユナは持っていたタブレットを掲げ、再生ボタンを押した。画面から映像が流れ始めた瞬間、そこにいた全員が息を呑んで固まった。直樹の顔色がさっと青ざめ、彼の弁護士も言葉を失っていた。私は何が映っているのか分からず、ただ娘の行動に混乱していた。
その日が始まったのは、いつもと同じ朝だった。私は夜明けからキッチンで動き回り、直樹のコーヒーを淹れ、朝食を並べた。直樹は「今日のコーヒーは少し苦いな」と一言だけ言い、携帯電話を見つめたまま何も言わなかった。私は彼の機嫌を損ねないように、影のように細心の注意を払って動いていた。
直樹が以前のように私に笑いかけたのは、もう随分前のことだった。彼が残業や出張を理由に家を空けることが増えたのは3年前からで、私たちの会話は必要なことだけに減っていた。それでもユナの前では、彼は優しい父親の仮面を被っていた。おはよう、お姫様。パパが学校に送ってやるから。
ユナが嬉しそうに彼の手を取る姿を見て、私は胸が締め付けられた。家族の団欒を演じる時間は、朝のこのわずかな瞬間だけだった。直樹がユナを学校に送って行った後、私は皿を洗い、家の中を片付け、静かに日々をやり過ごしていた。
しかし、その日は違った。直樹がユナを連れて帰ってきた時、彼の後ろに弁護士が立っていた。離婚だ。私はユナとこの家にふさわしくない。その言葉は私の心を深く刺した。あんなに長く尽くしてきたのに、私の何が間違っていたのか。私はただ、家族を守りたかっただけなのに。
もう一度あの映像を思い出す。娘が法廷で流した映像は、私が知らないものを映していた。直樹には何か秘密があったのか。ユナは何を知っているのか。私はこれから、その真実を暴かなくてはならない。
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