「お前はもう用済みだ。これ書いて出しておけ」——夫がスナックから帰ってくるなり、記入済みの離婚届を突きつけてきた。隣には愛人らしきスナックのママがニヤニヤしながら立っている。私はただ呆然とするしかなかった。夫を支えるために仕事もやめ、義母の世話までしてきたのに、私の居場所はもうないと言われたのだ。しかも義母は二人の関係を知っていたのに、何も言わなかった。それどころか「家政婦として住み込みで働…

「お前はもう用済みだ。これ書いて出しておけ」——夫がスナックから帰ってくるなり、記入済みの離婚届を突きつけてきた。隣には愛人らしきスナックのママがニヤニヤしながら立っている。私はただ呆然とするしかなかった。夫を支えるために仕事もやめ、義母の世話までしてきたのに、私の居場所はもうないと言われたのだ。しかも義母は二人の関係を知っていたのに、何も言わなかった。それどころか「家政婦として住み込みで働...

夫がスナックから帰ってくるなり、離婚届を突きつけてきた。すでに記入済みの紙には、夫の名前と、なぜか隣に立つスナックのママの名前があった。

「今日から母さんと彼女を同居させる。お前はもう用済みだから、これ書いて出しておけよ」

あまりの突然のことに、私は言葉を失った。

「え、どういうことなの?」

「察しが悪いな。見て分かるだろう。いつの間にか俺は、いつも通ってたスナックのママと愛人関係になってたんだよ。お前みたいに家事もできない女じゃなくてな」

若いママはニヤニヤしながら私を見下している。

「奥さんに攻め立てられてかわいそうだったから、私が慰めてあげてたのよ。感謝してほしいわ」

私は呆れてしまった。無職で働こうともせず、毎日飲んだくれている夫を支えているのは誰だと。それなのに、このママは自分のことを何か偉いかのように言っている。

とにかく現実を受け入れるしかなかった。夫はもう私のことを愛していない。ならば、この結婚を終わらせるしかないと覚悟を決めた。

しかし、私は一つ気になることがあった。同居している義母に尋ねた。

「お母さん、もしかして二人の関係をご存知だったんですか?」

義母は悪びれもせずに頷いた。

「ええ、そうよ。知ってたわよ」

私は言葉を失った。親子揃って私を騙し続けていたのか。

それでも、私は義母に別のことを言った。

「それより、私の部屋がないじゃないですか。おばさん、早く出ていってくれませんか?これじゃあ私が住めないでしょう」

すると義母は平然とこう言った。

「あら、追い出すのはかわいそうだから、あなたを家政婦として住み込みで働かせるっていうのはどう?」

それを聞いたスナックのママがキャッキャと笑いながら賛成した。

「あ、それいいわね。そうしたら私も家事しなくて済むし」

二人は自分たちの提案に大満足のようだった。

私がいなくなったらどうなるか、全く分かっていないお気楽な人たちだなと内心呆れていた。だったら痛い目を見てもらおうと決めた。

夫が言った。

「でもお前、離婚しても行くところなんかないだろう。これからどうするんだよ」

私は微笑みながら答えた。

「行くところなんか、世界中にいくらでもあるわよ。あなたたちの家政婦なんてごめんだわ」

そして私は、何も知らない夫に笑いかけた。

「だって私、あなたが思っているような女じゃないから」

夫は顔色を変え、焦り始めた。

実は私、みか子。現在40代。会社の同僚だった年明と職場結婚したばかり。年明は少し自分勝手なところはあるけれど優しかったし、お互い年齢的にそろそろ結婚しないとと思っていたので、ちょうどいい相手だと思っていた。

仕事は好きだったから、結婚後も当然続けるつもりだった。しかし、義母から反対を受けた。

「女が結婚後も仕事しているなんてありえないわ。家事はどうするの?おろかにしちゃだめでしょう。夫を支えるのが妻の勤めなんだから、仕事を続けるのは絶対にだめよ」

「でも今時、共働きなんて普通ですよ。別に仕事くらい続けてもいいじゃないですか」

「だめなものはだめ。続けるならあなたを嫁として認めませんからね」

早くに夫をなくした義母を引き取ったのはいいけれど、古い考えの義母は嫁が働くなんてとめくじを立てる。一言目には「早くやめなさい」と口うるさく言ってくる。

この調子で仕事をすることに反対され続け、私はしぶしぶ仕事をやめることにした。専業主婦として家事に専念することになった。

本当は、ずっと仕事をバリバリこなし続けていたかった。家事は嫌いじゃないけれど、主婦は私にはあまり向いていない気がするし、と心の中でため息をつく。しかし、仕方がないと割り切るしかなかった。

私が専業主婦になると、当然ながら義母は家事など一切せずに私に任せっきり。何ひとつ手伝おうとはしない。

年明も同じ調子だったが、そうなるだろうなと予想していたし、主婦なのだからそれは仕方ないことだと諦めていた。

そんなある日、年明が仕事から帰ると、私にある提案をしてきた。

「なあ、みか子は子供の頃から前速持ちだろう。こんな都会にいないで、田舎に引っ越した方がいいんじゃないかな」

「田舎に引っ越し?どうしたのよ、急に」

唐突な話に目を丸くする。確かに私は幼少時から前速を持っていた。大人になってからはそれも落ち着いて、前速が出ることはほとんどなくなったのだが、そこまで心配かけていたのだろうかと疑問に思う。

付き合っていた時も結婚した後も、私の前速なんて気にすることは一切なかったのに、なぜ今になって。

「何か訳があるの?」

「いや、別に。ただ、俺も最近体調が優しくなくて、都会の騒音が疲れるんだ。田舎の方が体にいいだろう」

夫の言い分はもっともに聞こえたが、どこか不自然だった。しかし、これ以上詰めても答えは返ってこないだろうと諦めて、私は田舎への引っ越しに同意した。

引っ越し先は、夫の田舎にある古い家。義母も一緒に移り住んだ。

しかし、そこでの生活は地獄の始まりだった。義母は私を家政婦のように扱い、毎日のように文句を言ってきた。夫は相変わらずスナックに通い、夜遅くに酔って帰ってくる。

私は少しずつ、この生活に限界を感じ始めていた。それでも、夫を愛しているから、なんとか頑張ろうと思っていた。

ところが、ある日。夫のスマホを見た私は、彼の浮気現場を目撃してしまう。スナックのママとのやり取り。愛人関係にあることを示すメッセージと写真。

私の心は崩れ落ちた。この男のために仕事をやめ、義母の身の回りの世話までしてきたのに、裏切られていたのだ。

しかし、私は反撃を決意した。泣き寝入りするつもりはない。

私はこっそりと行動を開始した。まず、夫の浮気の証拠を集めた。メッセージのスクリーンショット、写真、夫婦の会話の録音。そして、自分が持っていた仕事のスキルを活かして、新しい人生を準備し始めた。

すべてがそろった時、私は夫と義母を呼び寄せた。

「あなたたち、よくも私を騙してくれたわね」

私は撮った証拠を机の上に並べた。夫は顔色を変え、義母も言葉を失っている。

「離婚届は、こちらから出させてもらうわ。慰謝料はきっちりと請求するから、覚悟しておいて」

夫は慌てた。

「ちょっと待ってくれ!俺が悪かった!やり直そう!」

「もう遅いわ」

私は冷たく言い放ち、その場を立ち去った。

私には行くところがある。前から準備しておいた新しい職場。そして、新しい生活が私を待っていた。

夫も義母も、私を家政婦扱いしていた人たちは、結局何も残らなかった。私は自分自身の足で立ち、新しい人生を歩み始めたのだ。

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