親友に酒をかけられて「貧乏なお前には価値がねえ」と笑われたあの夜、俺は人生のどん底にいた。社長の息子というだけで学校でも嬲られ、父を憎み続けてきた俺にとって、親友の言葉は長年抱えてきた傷をえぐるようだった。立ち尽くす俺の前に、同僚が駆け寄ってきて、一言だけ言ったんだ。「お前、知らないのか?」その言葉に、親友の顔色が一瞬で変わる。何が起きているのかわからないまま、俺は初めて父に電話をかける決心…

親友に酒をかけられて「貧乏なお前には価値がねえ」と笑われたあの夜、俺は人生のどん底にいた。社長の息子というだけで学校でも嬲られ、父を憎み続けてきた俺にとって、親友の言葉は長年抱えてきた傷をえぐるようだった。立ち尽くす俺の前に、同僚が駆け寄ってきて、一言だけ言ったんだ。「お前、知らないのか?」その言葉に、親友の顔色が一瞬で変わる。何が起きているのかわからないまま、俺は初めて父に電話をかける決心...

あいつには本当にがっかりしたよ。社長の息子だからって、仲良くしてたのに。酒に酔った親友の言葉に、俺は耳を疑った。しかしそれは紛れもない真実。親友の本音だった。

「マジ使えねえ。貧乏なお前には何の価値もねえわ。」

ショックで思考が停止してしまった。そんな俺に追い打ちをかけるように、親友はグラスに入った酒を浴びせた。立ち尽くす俺をせら笑う親友。俺はこの世のどん底に突き落とされたような気分になった。

でも、そこへ駆けつけてきた同僚の言葉によって、事態は一変した。同僚が明かした真実に、親友は顔面蒼白になった。

俺の名前は石川。俺は父が嫌いだ。父は有名な大企業の社長をしている。その周りにはいろんな大人がうごめいている。媚びを売る人、気に入られようと必死な人、敵対心を燃やしている人。そんな大人たちを幼い頃から間近で見続けていたからか、昔から人の裏の姿を推測する癖がついてしまった。

そんな苦労を周りが理解してくれることはなく、学校に行けばいじめの標的になることが多かった。

「お前んち金持ちだから、何でも買ってもらえるんだろ。いいよな。いらない漫画買ってもらって、俺らに見せろよ。それぐらいしろよ。金持ち。」

父は仕事で忙しいことを言い訳にして、家庭や子供に興味を向けていなかった。だから、好きなものを何でも買ってもらえるなんてことはない。でも、父が大企業の社長であるという看板のせいで、俺が何を言ってもイメージが覆えることはなかった。

数年前のクリスマスに、父が珍しく話しかけてきたことがあった。

「学ぶ。いつも放っておいてしまってすまない。クリスマスプレゼント、何がいいかな?」

ちょうどクラスメイトからゲーム機を買ってもらうよう指示されたタイミングだったというのもあって、俺は素直に言葉を受け取ることができなかった。

「プレゼント?プレゼントすればどうにかできると思ってんの?俺は絶対父さんみたいにはならないからな。」

そう言って家を飛び出してしまった。一瞬、父が寂しそうな顔をしたようにも見えたが、気のせいだと自分に言い聞かせた。

俺は自ら父の話をしないようにして、仕事のことも家のことも全く話さないようにした。父も何も言わなかった。

月日が流れ、俺は父の会社の子会社に就職した。父の影響で入れたんだと思われるのが嫌で、必死に働いた。周りからはひいきされていると言われることもあったが、実力で結果を出しているつもりだった。

ある日、飲み会で親友が酔って絡んできた。彼はずっと俺のことを見下しているように感じていたが、まさか直接言われるとは思わなかった。

「お前、仕事できる人間なんだからさ。いつまでも子会社にこだわるんじゃなくて、本社に来いよ。」

「またそんなこと言って。俺は今のままでいいんだよ。それより、本社はどんな感じ?」

「……なぜ知ってるんだ?」

「いつまで固まってるんだよ?」

「……お前のせいだからな。」

「どういうことだ?」

親友が突然、言いかけて止まった。その瞬間に、同僚が駆け寄ってきた。

「おい、お前、よくも石川にそんなこと言えたな。知らないのか?お前が今、本社で偉そうにしているのは、全部石川の父さんのおかげだってことを。」

親友の顔色が一瞬で青ざめた。俺は何が起こっているのか理解できなかった。

「どういう意味だ?」

同僚は続けた。

「石川の父さんが、お前の父親の会社を買収して、お前の立場を守ったんだよ。お前はそれを知らないで、石川を馬鹿にしてたのか?」

親友は何も言えずに、その場に立ち尽くした。俺はこれまで父を嫌い、避けてきた。しかし、父は俺を守るために、陰でそんなことをしていたのか。

その日の帰り、俺は初めて父に電話をかけた。長いコール音の後、父の声が聞こえた。

「……学ぶか?」

「父さん……ごめん。」

それだけ言って、俺は電話を切った。涙が止まらなかった。父は何も言わなかったけど、声の感じで、笑っていたような気がした。

翌日、俺は父に会いに行った。父の姿を見た瞬間、今までの悔しさや恨みがすべて消え去るような気がした。俺は父と初めて、本当の話をした。父の仕事の話、そして、俺が今まで抱えてきた思い。父はただ黙って、うなずきながら聞いてくれた。

それから、少しずつだが、俺と父の距離は縮まった。父は俺に、よく笑顔を見せるようになった。俺も父を信じることができるようになった。

あの日の親友の言葉が、すべてを変えてしまったんだ。でも、そのおかげで、俺は父の本当の姿を知ることができた。

今、俺は父と一緒に働いている。父は言うんだ。「学ぶ、お前がいてくれてよかった。」と。

俺はこれまで父を嫌っていた。しかし今は、父を誇りに思う。

人が裏を読む癖のある俺でさえ、父の本当の愛情に気づくまでには長い時間がかかった。そして、気づいたときには、もう遅すぎると思っていた。でも、まだ間に合ったんだ。

だから、もし誰かが大事な人を恨んでいるなら、一度その人の本当の気持ちを考えてみてほしい。もしかしたら、見えないところで、その人はあなたを守っているかもしれないから。

これが俺の勇気を振り絞って父と向き合った話だ。

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