結婚式の最中、妹が携帯で私を揶揄う動画を撮って、その場でインスタにアップした。私が新郎と誓いの言葉を交わしている横で、彼女のその動画には「私が誰か分かってる人は?」というテロップが載っていた。私は笑顔を保った。式が終わってからも、みんなの前では何も言わなかった。でも、その夜、母から「アシュリーが面白い動画をあげたのよ」と聞かされた時、心の中で何かがプツンと切れた。長年、私はただの“あの子”だ…

結婚式の最中、妹が携帯で私を揶揄う動画を撮って、その場でインスタにアップした。私が新郎と誓いの言葉を交わしている横で、彼女のその動画には「私が誰か分かってる人は?」というテロップが載っていた。私は笑顔を保った。式が終わってからも、みんなの前では何も言わなかった。でも、その夜、母から「アシュリーが面白い動画をあげたのよ」と聞かされた時、心の中で何かがプツンと切れた。長年、私はただの“あの子”だ...

姉の優遇は、ある日突然始まったわけじゃない。最初からずっとあった。でも、私はずっと見て見ぬふりをしてきた。卒業式の日、母は私の写真を一枚撮ったきり、アシュリーのスイム練習があるからと早退した。その時は「仕方ない」と思った。大学の学費だって、私はローンを組んで自分で払った。今も返済中だ。でも、何かを言ったら、また「あなたは我慢強いから」と言われるのが分かっていたから、何も言わなかった。

ただ、心の中ではメモを取り続けていた。自分の記憶を疑わないために。兄のエドワードが「お前は大丈夫だと思ってた」と言った時も、「ああ、やっぱり」と思った。父も母も、アシュリーには何でも与えた。スイムキャンプ、専属コーチ、最初の車、スイムセンター近くのアパート。それらは全部、私が家計のために払ったお金から出ていた。私はただ、黙って働き続けた。

そんな中、祖父のアルバートだけは違った。遠くに住んでいるのに、仕事のことを聞いてきて、アシュリーのことを話してくれ、誇りに思っていると言ってくれた。大きなスピーチはないけど、それが本当に嬉しかった。

そして、結婚式の日が来た。アシュリーは式の最中に変な動画を撮って、それをインスタにアップした。髪が濡れたままの彼女がカメラに向かって変な顔をしている動画に、テロップで「私が誰か分かってる人はいる?」と書かれていた。私はその場では何も言わなかった。式は続いた。でも、心の中はざわついていた。

披露宴で、母が偶然にもその動画の話をした。「アシュリーが面白い動画をあげたのよ」と。私はその時、初めて口を開いた。「あれ、私の結婚式の動画だよ」と。母は一瞬固まったけど、すぐに話題を変えた。それで何となく分かった。彼女たちは、私の人生なんてどうでもいいんだと。

その後、レベッカから長いテキストが届いた。それは、いつもの言い訳と、自分は悪くないという内容だった。最後に「あなたのために何かできたはずよ」と来た。私は「あなたは何もしてくれなかった」と返した。それだけだった。父にも同じことを言った。電話に出た父は、何か言おうとして、ため息だけを残した。

アシュリーからのメッセージには、既読を付けなかった。あの動画を見た瞬間に、何を言っても無駄だと思ったから。エドワードは長い謝罪のテキストを送ってきて、ボイスメッセージも残したけど、私は聞かなかった。急ぐ気になれなかった。

数日後、エドワードが私の家に来た。彼は疲れた顔をしていた。「言いたいことがあるんだ」と切り出した。「僕はお前が一番しっかりしてるから、大丈夫だと思ってた。でも、それは間違いだった」と。あんなにストレートに謝るのは初めてだった。私は「もういいよ」と言った。「ただ、説明を求めるのはやめる。どうせ君たちは答えないだろうから」と。

すると、エドワードは上着の内ポケットから、柔らかい布に包まれた何かを取り出した。それは小さな古い写真だった。祖父と、私と、アシュリーが写っていた。私がまだ小さかった頃のものだ。「アルバートじいちゃんがずっと持っていたんだ。お前に渡すようにって」と彼は言った。写真の裏には、祖父の字でこう書かれていた。「二人とも、私の誇りだ」。

私はその写真を眺めて、何と言っていいのか分からなかった。祖父はずっと見ていてくれたんだ。私をちゃんと見ていてくれた人が、少なくとも一人はいた。

母の妹たちからも、責めるようなメッセージが届いた。みんなアシュリーの味方だった。想像通りだった。私は返信しなかった。

ずっと無視していたアシュリーから、ある日電話がかかってきた。私は出なかった。留守電には、泣き声と怒りが混ざった彼女の声が残っていた。「どうしてこうなったの?私のせいじゃない!」と。私はそのメッセージを削除した。

その後、レベッカから再び長いメールが届いた。今度は、これまでで一番誠実な内容だった。「私はあなたを軽く見ていた。あなたなら頑張れると思ってた。でも、それは間違いだった。ごめん」と。彼女が自分の非を認めたのは、これが初めてだった。すぐに何かが解決するわけではないし、私はまだ両親と距離を置きたかった。でも、その言葉は少しだけ何かを変えた。

私は「お互いがこれからどうするかを考えましょう」と返した。それだけだった。

仕事に戻る日々が続いた。上司が私に大きなプロジェクトを任せてくれた。それは、あの橋のトレーラーの話とは全然違う、本当の意味で私の能力を試す仕事だった。アシュリーとも、表面上は普通に会話をしていたけど、スイムキャンプの話はしなかった。エドワードは時々連絡をくれて、少しずつ関係を修復しようとしていた。彼もセラピーに通っていると、私が聞いた時だけ教えてくれた。

ある日、アシュリーから短いテキストが来た。「話したいことがあるの」。私は会うことにした。カフェで、彼女は何度も言いかけては止まり、最後にこう言った。「私、ずっと自分が特別だと思ってた。両親がいつもそう言ってくれたから。でも、あの結婚式の日から、自分が間違ってたことに気づいた」。彼女の目は潤んでいた。

「気づくのが遅すぎたけど、本当にごめん」と彼女は言った。私は「ありがとう」とだけ言った。まだ全てを許したわけじゃない。でも、彼女が初めて本当のことを言った瞬間、何かが少しだけ軽くなった気がした。

家に帰って、祖父の写真をまた眺めた。裏の言葉を指でなぞりながら。人生は以前と同じには戻らない。それでも、もしかしたら前に進むことはできるのかもしれない。少なくとも、私は自分の一歩を踏み出せた。

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