「お前みたいに大学を出てないやつに、デザイナーのセンスなんてあるわけないだろ。」…

「お前みたいに大学を出てないやつに、デザイナーのセンスなんてあるわけないだろ。」...

「お前みたいに大学を出てないやつに、デザイナーのセンスなんてあるわけないだろ。」

それが、いつも俺を見下してくる部長の口癖だった。ある日、出社してみると、俺のデスクは勝手に片付けられていた。

「デザイン留学から帰ってきた優秀な娘が、うちで働くことになったんだ。無能なお前は、もう会社に必要ないよ。」

平然とそう言い放つ部長に、思わず眉をひそめた。この人はきっと、俺のデザインを見たことがないんだろう。俺がどんな仕事をしているかも知らないから、こんなことを言えるんだ。

「わかりました。席は娘さんに譲ります。」

俺の仕事をこれっぽっちも見ようとしない上司にも、そんな人間を管理職にしている会社にも、嫌気がさしていた。

この後、この上司と会社にどんな運命が待っているのか、見物だな。そう思いながら、俺は部長に背を向けて静かにその場を去った。

俺の名前は裕介。父は海外を拠点にアーティストとして活動している。幼い頃からそんな父に憧れていた。年末年始の休みや、日本で公演をするときに帰国する父に、いつもくっついて回っていたのを覚えている。

父から聞かされる話はどれも物珍しくて、刺激的で、楽しかった。

「どうだ、裕介。一緒に海外で暮らしてみないか?」

そう誘われたのは、高校2年の冬だった。

俺は当たり前のように大学受験をするつもりでいた。でも、その思いがけない誘いに、すぐ飛びついた。海外でこれをやりたいという明確な目標があったわけじゃない。ただ、父の話でしか知らない外の世界を見てみたかったんだ。

それから俺は両親を説得し、高校卒業後、父のいる海外へ移住した。

一度、どうして誘ってくれたのか聞いたことがある。

「当時は海外は刺激もあるし、裕介のやりたいことも見つかるだろうと思ったんだ。」

父は笑ってそう言った。どうやら俺に明確な目標がないことを見抜いていたらしい。

父は昔から、自由に自分のやりたいことをやってきた人だ。突拍子もない行動をする人だと親戚中では言われているけど、そんな父だからこそカッコいいと思っていた。

海外では、父のようなことをしながら、自宅近くの大学にも通っていた。

だから、帰国してからも父がいれば大丈夫だと思っていた。だが、現実は甘くなかった。

父の名前は日本では通用しなかった。日本でデザイナーとして働くには、学歴が必要だと言われた。それでも俺は諦めなかった。実務経験を積みながら、自分のスキルを磨いた。

そして、なんとか今の会社に入社した。

入社してからは、必死に働いた。成果も上げた。でも、部長はいつも俺を低く見ていた。学歴がないという理由だけで、俺の仕事を否定し続けた。

部長が俺に言った言葉は、今でも忘れられない。

「お前みたいなやつがデザインを語るな。」

悔しかった。でも、その悔しさをバネにして、もっと良いデザインを作ってやろうと思った。

そして、部長の娘が入社することになった。その日から、俺の立場はさらに悪くなった。

「お前の席は、娘に譲れ。」

そう言われた時、俺は何かが切れるのを感じた。

俺は何も言わず、机の上を片付け始めた。すると、部長が追い討ちをかけるように言った。

「娘はデザイン留学していたんだ。お前みたいな素人とは違う。」

「そうですね。」

俺は短く答えた。それ以上、何を言っても無駄だと思った。

その日の夕方、俺は会社を辞める決意を固めた。

辞表を出す前に、俺は一つの計画を立てた。俺がこれまで作ってきたデザインを、すべてまとめた。そして、それを社長に直接見せることにした。

翌日、俺は社長室を訪ねた。

「突然すみません。これを見てください。」

俺はポートフォリオを差し出した。社長は最初、怪訝な顔をしていたが、ページをめくるうちに、その表情が変わっていった。

「これは…すべて君が作ったのか?」

「はい。」

その時、部長が社長室に飛び込んできた。

「何をしているんだ!無断で社長に会うなんて!」

しかし、社長は部長を制した。

「ちょっと待て。このデザイン、見てみろ。素人に作れるものじゃない。」

部長は反論しようとしたが、言葉を失った。

「私は、間違っていたのかもしれない。」

社長はそう言って、深く息をついた。

「裕介さん、もう一度、当社で働いてくれないか。」

俺は一瞬、迷った。しかし、すぐに首を横に振った。

「もう決めたことがあるんです。」

俺は部長を見た。部長は顔を真っ赤にして、何か言いたそうだったが、何も言えなかった。

「あなたの娘さんが私の席を欲しいと言った。なら、私はあなたの座る場所をいただきます。」

そう言うと、俺は部長に向かって、持っていた書類を置いた。それは、部長が過去に不正をしていた証拠だった。

「こ、これは…」

部長の顔色が真っ青に変わった。

「私は、これを会社に提出しに行きます。」

俺は振り返らずに、部長室を出た。

後ろから、大声で何か叫ぶ声が聞こえたが、俺はもう振り返らなかった。

その後、部長は会社を解雇された。俺は自分の会社を立ち上げることにした。

あの時、部長に侮辱されたことで、俺は自分の本当の価値に気づくことができた。

学歴なんかじゃない。大事なのは、何を作るか、どう表現するかだ。

俺は今、自分のデザインで、自分の道を歩いている。

あの部長には、ぜひ一度、俺の新しい作品を見せてやりたい。彼が俺を無能だと言ったことを、後悔させてやる。

そして、いつかこの胸のつかえが取れたら、父にもう一度会いに行こう。

Thumbnail