授業参観の日、私は小学一年生の息子・優太の様子を、たくさんの保護者に混じって眺めていた。引っ越してきたばかりで、知り合いのママ友は一人もいない。もともと人見知りで、自分から話しかける勇気もなかった私は、きっとこのまま誰とも話さずに授業参観を終えるのだろうと諦めかけていた。
隣に座っていた女性が、そのときふいに話しかけてきた。
「し子でいいわ。よろしくね」
「こちらこそ、恵と言います。よろしくお願いします」
初めての学校行事で不安になっていた私には、その笑顔が天使のように見えた。そんな私の様子を見かねて、安心させようとしてくれているのだと思った。
「ねえ、すごく若く見えるけど、恵さんっていくつなの?」
「えっと、二十三歳です」
「じゃあ、十七歳で息子さんを産んだってこと?」
「そうです。当時はまだ高校生でしたが、いろいろ考えて出産のために中退したんです」
その瞬間、彼女の顔が変わった。さっきまでニコニコしていた表情が、一瞬で凍りついたのだ。
「中卒で子供を生むなんて嘘でしょ? 少しは息子さんのことも考えなさいよ」
その声はあまりに大きく、周りの保護者たちの視線が一斉に私へ向いた。体が硬直して、うまく呼吸ができない。ここまでストレートに言われた経験は、これまでに一度もなかった。一昔前なら中卒での出産は世間から冷たい目で見られたかもしれないけれど、今は多様な生き方が認められる時代だ。それに、初対面の人に私たち夫婦のことをとやかく言われる筋合いはない。
チャイムが鳴ると、し子さんは何事もなかったように他のママ友の集団へ混ざっていった。ひそひそと話している様子に、自分の噂をされているのだろうかと不安になる。授業が終わって張り詰めた空気が緩んだせいか、一気に疲れが押し寄せてきた。朝から準備に追われて、優太の授業風景もちゃんと見られなかった。一体何のために来たのだろう。
私は優太を連れて、逃げるように教室を後にした。
その夜、仕事から帰ってきた夫の信二に、学校で起きたことを話した。
「授業参観で、他のママから中卒で子供を産むなんて信じられないって言われちゃった」
「そんな言い方されるんだな。まあ気にするなよ。俺たちが考えて決めたことなんだ」
夫は基本的にポジティブ思考で、何か悪いことが起きても「大丈夫だ」「心配しなくていい」と受け流す。その性格には何度も救われてきたし、新しい場所に引っ越してからも、この人といる限りは平穏に暮らしていけると思っていた。それでも、子供が成長するほど悩みの数も増えていく。せめて一人くらい、身近に相談できるママ友がいてくれたら――そのチャンスが今日の授業参観だったのに、結果はあんなことだった。
落ち込んでいる私の携帯に、着信が入った。し子さんからだった。電話番号を交換していたことを、今になって思い出す。私は深呼吸をしてから、恐る恐る通話ボタンを押した。
「ああ、恵さんだったかしら。突然ごめんなさいね。今日は少し失礼なことを言っちゃったかなと思って。あなたがあまりに若かったから、びっくりしちゃったのよ。もし気を悪くしてたら、本当にごめんなさい」
また嫌なことを言われるんじゃないかと身構えていた私は、その言葉に驚いた。直接謝られたことで、し子さんへの好感度が少し回復したような気がする。もちろん、完全に不信感が消えたわけではない。でも、保護者同士、何かと助け合うこともあるだろうし、ごたごたは早いうちに済ませておいたほうがいいと思った。
「気にしないでください。話しかけてもらって、私もほっとしたんです」
「そうだったの。よかったわ。じゃあ、今度の土曜日にママ友を集めてお茶しようと思ってるんだけど、あなたも来ない?」
「私が行ってもいいんですか?」
「もちろんよ。ママ友たちもあなたのことを聞きたがってたわ。もし誰かに嫌なことを言われたら、すぐに私に言ってね」
ちゃんと話してみると、案外いい人なのかもしれない。そう思いながら、お茶会の日を待った。
土曜日、待ち合わせのカフェに到着すると、すでに三人のママ友が待っていた。し子さんはまだ来ていない。まずは初めて会うママ友たちに挨拶をしようと、私は頭を下げた。
「こんにちは。優太の母の恵と言います。今日は誘ってもらってありがとうございました」
しかし、三人は気まずそうな表情を見せるだけで、一言も喋らない。なんだか変な雰囲気だ。黙ってし子さんを待つことにした。
数分後、し子さんが到着してお茶会が始まった。趣味の話から好きな芸能人の話へと、無難な流れだったが、他の三人は相変わらず黙ったまま。そんな空気を知ってか知らずか、し子さんはニコニコしながら私に仕事のことを聞いてきた。
「ところで、恵さんは何かお仕事されてるの?」
「いえ、専業主婦で仕事はしてないんです」
「ふーん。中卒で出産したわけでしょ。一度も働いたことないの?」
「そうですね。でも、息子が小学校に上がったので、そろそろ何か始めようかなって」
「何か始めるって? 社会人経験ゼロで中卒だったら、稼げる金額なんて知れてるわよね。まあ、そのくらいのこともできないんでしょうけど」
し子さんは同意を求めるように周りを見たが、三人は困ったような表情をするだけだった。私としても、どう反応すればいいのか分からない。
「私なんかバリバリのキャリアウーマンよ。大手IT企業で働いてるから、テレビコマーシャルくらい見たことあるでしょ。ああ、分からないかしら。あなたとは格が違うってことが言いたいんだけど」
このときやっと、私がお茶会に誘われた理由が分かった。ママ友を集めて自慢話をするついでに、私を貶めたかっただけなのだ。授業参観のときと全く同じで、彼女は何も反省していない。他の三人が気まずそうに黙っていたのも、それを知っていたからだろう。
「私の旦那も同じIT企業で働いてるんだけど、テレビで話題のベンチャー企業・アクアステージとの契約を取り付けたのは旦那の実績なのよ。それが評価されて部長に昇進したし、私も課長として彼を支えてるわ。社長が超イケメンで、テレビにも引っ張りだこなのよ」
「そうなんです。実は私の――」
「ええ、恵さんのご主人なら、きっと下請けの下請けくらいじゃない? 中卒の妻に子供を生ませるような低能男ですものね」
あまりにも身勝手な作り話に、私の体は怒りで震えた。
「優太君も気の毒だわ。いい大学に入ろうにも、親の稼ぎが心配じゃないの」
「いい加減にしてください。私は何を言われても構いませんが、夫や息子を貶めるような人とは付き合えません」
事情も知らない赤の他人に、夫や息子のことをここまで言われては黙っていられない。
「もうこれ以上、私や家族と関わらないでください。失礼します」
席を立った私に向かって、し子さんは嘲笑うように言い放った。
「低学歴を怒らせるもんじゃないわね。怖い怖い。ああはなりたくないわね、皆さん」
ママ友たちは最後まで微妙な顔をしていたが、毎回あの自慢話を聞かされるために呼ばれているのだとしたら、無理もない。し子さんがいる限り、楽しいお茶会になんてならない。今までで一番と言っても過言ではないほどの怒りを抱えながら、私は一人でカフェを出ていった。ホットケーキは美味しかったけれど、もうこのカフェには来ることはないだろう。
この日を境に、し子さんからの嫌がらせが始まった。ママ友のラインから外されたのは構わない。学校との連絡手段さえあればいいのだから。驚いたのは、「私の息子は不倫相手との間にできた子だ」「誰かのパパと密会してお小遣いを受け取っている」といった根も葉もない噂が、PTAにまで広まってしまったことだ。保護者同士の情報拡散力には目を見張るものがあり、一ヶ月も経たないうちに街中でありもしない噂話が飛び交うようになった。私は外出するにも場所を選ばなければならなくなり、ストレスで一週間ほど寝込んでしまった。それでも、ここでくじけてはダメだと、なんとか立ち直ることができた。
だが、ついに決定的な出来事が起こった。
ある日の夕方、息子の優太が泣きながら帰ってきた。服はところどころ汚れ、手足にはたくさんの擦り傷ができている。
「どうしたの? 何があったの?」
「あゆむ君に……」
あゆむ君は、し子さんの息子だ。二人はとても仲が良かったはずで、こんなに傷になるほど喧嘩するとは思えない。
「僕と喧嘩したら、好きなおもちゃを買ってあげるからって。あの子をいじめても親は何も言わないから大丈夫だって。あゆむ君のママが言ってたって」
「それ、本当にあゆむ君が言ったの?」
「うん。それで僕のこと、何回も何回も蹴飛ばしたんだ」
私は言葉を失った。し子さんは自分の息子まで巻き込んでいたのだ。それだけじゃない。おもちゃを餌に、子供の純粋さを利用して友達同士を喧嘩させたのだ。子供は親が言うことを当たり前に信じるし、おもちゃという餌があれば善悪に関わらず実行してしまう。仲のいい友達同士を喧嘩させるなんて、親のやることではない。そのくらい、中卒の私でも――いや、誰にだって分かるはずなのに。
「痛かったね。優太を守れなくて、お母さん失格だよ。本当にごめんね」
私は優太を思いきり抱きしめた。これまでにない怒りが込み上げてくる。根も葉もない噂を流されようが、馬鹿にされようが、耐え続けてきたのは優太のことがあったからだ。し子さんを怒らせてしまえば、その報復が優太に向くかもしれないと、あえて無反応を貫いてきた。しかし、どうやらそれは見当違いだったらしい。
隣に立つ夫は、私以上に怒っていた。普段は穏やかな夫からは想像できない表情で、しばらく無言の時間が続いた。
「恵、行くぞ」
「うん」
日が暮れた頃、私たちは車に乗り込み、し子さんの家へ向かった。普段から「自分の家がどれほど広くて立派なのか」を聞かされていたおかげで、迷うことなく到着できた。私は先に車を降り、急いで玄関を目指す。震える指でインターホンを押すと、扉が開いてし子さんが出てきた。
「あら、低学歴のお母様。泥棒でもしに来たの?」
「優太が怪我して帰ってきたのよ。どういうことか説明して」
「何が起こってるの? 怖いわね。私は低学歴でどうしようもない親だから、少しくらい優太君をいじめたって大丈夫って、あゆむに言っただけよ」
「ふざけないで。子供を物で釣るなんて、あなた本当に母親なの?」
「はあ。中卒の分際で、大手IT企業のキャリアウーマンに向かってよくそんな口が聞けるわね。中卒の母親に育てられた子供と、うちのあゆむが同じ学校だなんて耐えられないのよ。一緒にしないで欲しいわ」
「一緒にしないで欲しいのはこっちの方だ」
そう言いたいのをぐっと我慢した。この人に何を言っても無駄だ。それは何度も嫌がらせを受けている私が一番分かっていた。ため息をついたところで、駐車を済ませた夫の気配がした。
「失礼。これはこれは、妻と息子が大変お世話になったようで」
「ああ、あなたが恵さんの……ちょっと待って。あなた、確か……」
「どうも、恵の夫の信二です。ご主人とは仕事で何度かお会いしてますが」
「え、ちょ、ちょっと待って。あなた、確か話題のベンチャー企業アクアステージの創業者であり、テレビにも引っ張りだこな超イケメン社長……」
つまり、私の夫がその社長なのだ。し子さんは顔色を変えた。
「アクアステージの社長が、なぜここに」
「先ほどご挨拶したはずです。恵の夫だと」
「嘘よ。この人が恵さんと……中卒と結婚だなんて、何かの間違いでしょう」
この状況でも私への嫌みを忘れないのは、ある意味大したものだ。
「ともかく、ご主人には大変お世話になってますので、手厳しいことは言いたくありませんが、あなたのことは妻からいろいろと聞いてますよ」
「いや、そのような立派な方の奥さんが中卒だなんて、ありえないって言うか……」
「ありえないと言われても、事実ですので。優太はもちろん私の息子ですし」
「そんなことって……」
慌てふためくし子さんを見た夫は、くすくすと笑い始めた。私はこの笑った顔が好きだ。
「いやあ、それにしてもキャリアウーマンとは面白いですね。ご主人が優秀なので、仕方なく課長職を与えていると噂で聞きましたが」
「噂ですって?」
「ともかく、そんなことより大事な話がある。うちの恵のことを散々馬鹿にしてくれたみたいだな」
「いや、私は別に、恵さんも優太君も、人からとやかく言われるようなことは何もしてないんだよ」
「でも、中卒なのに子供を生むなんて、普通に考えたらありえないって……」
「お前、自分で何を言ってるか分かってるのか? ふざけんなよ。恵は起業したばかりの俺を支えるために結婚を選んだんだ。言っとくが、優太は俺たちが結婚してからの子供だぞ。勝手な妄想で家族のことを傷つけてんじゃねえよ」
そうなのだ。私たちが交際を始めたのは、夫が二十歳、私が十五歳の頃だった。会社を立ち上げたのは彼が東大在学中のことで、学業に励みながらも夢に向かって突き進む彼を支えたいと思った私は、高校を中退して結婚する道を選んだ。当然、両親には反対された。「高校を卒業するまでは許さない」と言われたが、夫の事業は絶対に成功すると信じていた私の意思は変わらず、結婚を押し切った。これまでの援助もないまま、手元の資金が減っていくだけの生活に弱音を吐くこともあった。それでも、夫の事業に協力してくれる人が少しずつ増えていき、東大発の注目ベンチャー企業としてメディアでも紹介され始めた。現在では、最も信頼できる企業の一つに数えられるまでに成長し、テレビや雑誌の取材だけで一日が終わることもある。
反対していた両親も、テレビで話題になるようになっては認めざるを得ず、いつの間にか父と夫の二人だけで飲みに行くほどになっていた。そして私たち夫婦は、優太を授かった。子育てに苦労しつつ、周囲に陰口を言われながらも、家族三人で助け合ってきた。私は自分の人生に誇りを持っているし、中卒になったことも後悔していない。それを理解している夫にとって、私への侮辱は我慢ならないものだった。
「そう、そう。さっきの続きだが、急闘室に入り浸ってる名ばかりの課長さんについては、俺の会社で話題に上がってたよ。首にしようかどうしようかとね」
「そんなこと……」
「息子のクラスにあんたの子供がいるから遠慮してたけど、もう限界だ。俺の会社との取引は、一旦中止させてもらう」
「待って。それだけは……」
「そういえば、旦那さんは今いらっしゃらないんですか? 部長さんなら、帰宅されててもいい時間ですけど」
「それは……」
口ごもるし子さんの顔色を察して、私はしばらく無言で待つことにした。そして、とうとう観念したように、し子さんが口を開いた。
「分かったわ。全部話すわよ。少し前に私が投資に失敗したのが原因で、旦那とは別居中なの。それに彼は、東京の大学を卒業してるけど、東大卒じゃないわ。この家だって、父から譲り受けただけで、自分で購入したわけじゃないのよ」
「なるほど。全部嘘だったってことですね」
「だから、うちとの取引はやめないで。そんなことされたら、旦那に何を言われるか……もう二度と戻ってこないかもしれないし、今の会社で働けなくなったら困るのよ。クレジットカードの支払いが溜まってて……」
「私はお金持ちだって自慢してましたよね。人のことを傷つけておいて、いざ自分の番になったら『あれは嘘です』ですか。お願いだから許してください」
「冗談じゃないわよ」
私が怒ると、隣で笑顔を浮かべた夫は、スーツの懐から白い封筒を取り出した。中身は、し子さんの会社と夫が交わした契約書だった。
「ご主人に罪はありませんが、撤回しませんよ」
にっこりと笑いながら契約書を広げると、夫はビリビリと破って玄関に捨てた。
「そんな……」
「あと、あゆむ君を使って優太を傷つけた件、恵に関する事実無根の噂を流した件については、近々うちの顧問弁護士から連絡が行くでしょう。では、失礼」
夫はそう言うと、私の肩を抱き、玄関に背を向けて歩き出した。
「ちょっと待って。お願いだから!」
し子さんの悲痛な叫びが夜の住宅街に響き渡るが、私たちは気にすることなく車に乗り込み、家路へと向かった。
散々私の身の上を馬鹿にしながら自慢話を繰り返していたし子さん。初めて会ったときは「天使が悪魔に変わった」とショックを受けていたけれど、あの慌てぶりを見てしまったら、もはや哀れな姿としか思えなかった。
翌朝、夫は早々に動き出した。手始めに、し子さんが務めるIT企業の社長の携帯へ連絡し、現在進行中の取引を含めて中止すると通告したのだ。それ以降は、電話があっても一切取り次がないよう、社内の全従業員に言い聞かせる徹底ぶりだった。「何より大切にしている家族を侮辱された」とあっては、仕事の契約など後回しだと、電話口で怒鳴っていたという。アクアステージとの取引が中止になったことで、し子さんの会社は創立以来の大損害を被った。
し子さんの夫婦関係も急速に悪化し、ついに離婚が決定。別居中だった夫からは、慰謝料に加えて損害賠償を請求されているらしい。私に対するし子さんの言動で人生を狂わされたというのもあるが、元々アクアステージとの契約における功労者だった夫にしてみれば、夫婦揃って首にされたことは耐えがたい屈辱だっただろう。諸々の支払いに充てるため、し子さんも親から譲り受けた家を売却せざるを得なくなった。それでも家計は回復せず、息子のあゆむ君は祖父母のもとへ引き取られた。これで、し子さんは自慢できるものを全て失ったことになる。
そして二ヶ月後、彼女はこの町から姿を消した。し子さんの噂は、以前の私以上に悪評として街中に広がり、同業他社への再就職も難しいらしい。その辺りは、夫が早急に手を回したようだ。結局は、散々馬鹿にしていたコンビニのバイトで生計を立てているとのこと。クレジットカードの他に数々の借金を抱える彼女が、一つの仕事だけでやっていけるとは到底考えられないけれど。
ともあれ、町全体の雰囲気も徐々に変わり始めている。あれから私はママ友たちとの距離を縮めていき、月に二回の定期的なお茶会にも参加するようになった。初めてのお茶会で話せなかった三人とは特に仲良くなって、子育ての相談やおすすめの激安ショップを教えてもらうなど、頼もしい人たちばかりだ。
優太の怪我はすっかり治って、毎朝元気に学校へ通っている。ちなみに、あゆむ君とは仲直りしたらしく、最近では我が家に遊びに来ることも増えた。夫が買い与えたパソコンで一緒にゲームをしたり、ネットで好きな情報を集めたり、二人とも夢中になって気づけば夜になってしまうこともある。並んで晩ご飯を食べる二人を眺めながら、夫が話すことはいつも同じだ。
「優太には会社を継がせて、あゆむ君には役員として頑張ってもらおう」
数々の嫌がらせから解放された私はと言うと、現在二人目の子供を授かっている。妹が欲しいと主張する優太。そろそろパートでも始めようかと考えていたけれど、今はただ、子供が無事に生まれてくれたらそれでいい。夫も同じ気持ちだ。
優太がお腹にいた頃のように、穏やかな日々を過ごしてほしい。それを励みに仕事を頑張れるのだと、夫は言う。優太も学校が終わるとすぐに駆けつけてきて、私のお腹に話しかけるのが日課だ。
こんな家族に囲まれて暮らせることを、私は心から感謝している。もちろん、これから大変なことはいろいろあるだろう。でも、この掛け替えのない日々が長く続くように、家族みんなで協力して生きていこうと思う。



