焼肉の網の上で、僕の肉だけが異様に高級だった。親睦会の幹事を任された僕に、社長が「そっちの分はお前が食べていいぞ」と言った瞬間、部長や同僚たちの視線が一斉に冷たくなった。十年以上、営業部の見えない部分を支えてきたのに、部長は「結果がすべてだ」と吐き捨てた。僕は静かに社長へ電話をかけた。「トラブルバスターズだそうです」と。すると部長が血相を変えて問い詰めてきた。「誰と喋っているんだ」。僕はスマ…

焼肉の網の上で、僕の肉だけが異様に高級だった。親睦会の幹事を任された僕に、社長が「そっちの分はお前が食べていいぞ」と言った瞬間、部長や同僚たちの視線が一斉に冷たくなった。十年以上、営業部の見えない部分を支えてきたのに、部長は「結果がすべてだ」と吐き捨てた。僕は静かに社長へ電話をかけた。「トラブルバスターズだそうです」と。すると部長が血相を変えて問い詰めてきた。「誰と喋っているんだ」。僕はスマ...

「え、今回は高級焼肉という形でな。そっちの分はお前が食べていいぞ」

そう言って社長は、僕の分の肉を指さした。いや、どう考えてもおかしい。親睦会の幹事を任された僕が、一人だけ高級焼肉を食べろと言われている。しかも、その場には部長や同僚たちがいる。

「え、一体どういうことですか?」

「どういうことも何も、そのままの意味だよ。幹事なのに、どうして社員が素直に喜べるものを事前に確認しないんだ。親睦会は会社として行っているんだぞ。学生たちが関係を深めるために開催するものと、お前は勘違いしているんじゃないか。きちんと予算が割り振られているのに、その中で最大限に喜びを伝えるチョイスができないから、こういうことになるんだ。自覚するいい機会だと思ってたよ」

僕は明バストラ会社で営業部として働いている。営業部たるもの、新規開拓という面でどれだけ貢献できるかが成績に直結する。そう言われ続けてきた。そして今日、部長の言葉でようやくすべてを理解した。

「なるほど。つまり僕がこれまでやってきた業務は、あなたにとっては評価に入っていないと」

「お、やっと俺の言ってる意味が伝わったか。営業部は会社の新規の仕事を取ってくるのが主務だ。それをここまでしないと伝わらないってのも、なかなかだよな」

「そっか。やっぱりそうと思っていたけど、僕以外はみんなすでに気づいていたんですね」

「そうだからこそ、みんな成績をガンガン伸ばしているんだ。いや、まさかこの基礎を伝えるのに十年以上かかるとは思わなかったけどな」

「では、その新規の取引を始めた後のフォローは業務に入らないんですか? 僕がこれまでしていた部署全体の裏方部分は、しなくていいということですね」

「むしろそれは業務に支障を来たすだけだ。結果がすべてであり、それができていないのであれば会社は回らない」

「わかりました。つまり、もう僕のフォローはやらなくて良いと」

「じゃあそういうわけだから、今日はそれが分かった日でバーベキュー記念日とでもしておけ。そっちの肉がお前の分だよ」

あなた方の言い分はよくわかりました。でも、絶対に許さない。

それから僕は社長に電話を入れた。トラブルバスターズだそうです、と。

社長が先にこちらへ説明すべきだと言った。僕は大声で言った。

「聞こえてましたよね」

「ああ、ばっちり」

「おい、誰と喋っているんだ」

部長が焦ったように問い詰める。僕は落ち着いて答えた。

「実は今日のバーベキューの主催は社長なんです」

「はあ? 冗談はよせよ」

「社長主催ですから、今日のはそもそも……」

「あのな、なんでそれが通用すると思ってるんだ? そもそもどうして社長主催って言うのなら、それをお前が仕切ってるんだ。もうちょっとマシな嘘をつけ」

「信じてないんですね。じゃあ、これなら信じてくれますか?」

僕はスマホの画面を見せた。そこには社長からのメッセージが表示されていた。

「お、本物か?」

「いかにも。私は本物しか存在しないはずだが」

そこへ、ひかりさんという営業部の女性社員が割って入った。

「社長、違うんですよ。これは……」

「そっちは室内で焼肉を食べているんだろ。そっちをきちんと食べて、じっくり味わってくるといい。感想はまた聞かせてもらうよ」

「待ってください社長。これは違うくて」

「明君、私が焼いたお肉はわさび醤油とおろしにんにく、どちらでも楽しめるぞ」

「あ、ありがとうございます」

「そういうわけなので、失礼しますね」

僕は社長と一緒にその場を離れた。部長と同僚たちは呆然と立ち尽くしていた。

世の中には切り替えも大事だ。それよりこの人数分のお肉は、二人では多すぎる。せっかくだから、バーベキューをしている他のグループさんたちに分けてあげようではないか、と社長が言った。僕は近くでバーベキューをしていた家族連れやグループに声をかけた。

「いいんですか? それでしたら、私の実家で取れた野菜もせっかくですし、一緒にしましょう」

「私たちも予想以上に外でのバーベキューの設置に苦戦してしまって、そう言っていただけるとありがたい限りです」

「やはり大勢でワイワイやって食べるからこそ楽しめることもあるもんだな」

「じゃあ、僕はこっちのお肉も焼いちゃいますね」

思いがけず地域の交流もできて、僕としてはこの上なく安心できる空間だった。だけど――。

「うま……いや、やばいやばいやばいやばい」

「どうしたんですか?」

「つ、社長が……なんで?」

部下の一人が慌てて駆け寄ってきた。部長も青ざめた顔で走ってくる。

「ちょ、ちょ、落ち着いてください。どうしたんです?」

「部長、あっちに社長が来てるんだよ!」

「社長? なんで?」

「わからん。どうやら社長主催だったのか」

「いやいやいや、聞いてないっすよ、そんなの」

「俺だって聞いてない。だけど実際にあいつと一緒に社長が外で焼いててさ」

「なんだと? つまり証司のやつ、今日の親睦会に社長も声かけてたってことかよ」

「ああ、マジでありえねえ。それって普通、伝えますよね」

「その普通が通用しないから、これまで部長や俺らは呆れてたんだろう」

「とにかく一人に社長を任せるのは重すぎます。急いで俺らも向かいましょう」

「ああ、そうだな。ここは急ぐぞ」

必死で戻ってきた部長たちは、息を切らせながら僕を問い詰めた。

「証司! 一体どういうことだ!」

「いや、どういうことも何も、普通にバーベキューをしていただけですが」

「どうして社長が来ていることを言わない!」

「ああ、それは――そういうのちゃんとやらなきゃだめって、俺でも分かりますよ」

「お前は同期の中で一人だけ、どうして未だにそうなんだ」

「どういうことですか?」

「“ほれ”って知ってるか? 上司にだけ伝えるとか、これは言わなくていいとか。それはあくまでお前の個人的な判断でしかないんだ。共通認識を持つためには、そもそもまずお前の中で気づいたこととか知り得た情報を全員に共有する必要があることすら理解していないのか?」

「そうですね。ですから、あなたたちにそんなことまでと笑われたとしても、毎度細かく僕がやった業務内容については報告しているつもりですが」

「それが把握できていないと言っているんだよ。お前のやった個人的な業務をいくら報告したって、今日みたいな情報共有しなくちゃいけない肝心なことができていなかったら意味がないだろう」

「何が言いたいんですか?」

「だから、社長が来るのであれば事前に言うべきだろう?」

「それは、社長自身がみんなのことを驚かせたいから黙っててくれと言ったからですよ」

「はあ? なんだと?」

「サプライズにしたかったそうです」

「なっ、そんな子供でも分かる言い訳が通用するわけないだろう」

「ええ、それ本人を前にして言っちゃいます。と言っているのですが、どうしましょう、社長」

そこへ、社長がゆっくりと歩いてきた。社長は相変わらず穏やかな表情で、焼き上がった肉を皿に乗せている。

「サプライズは、私はやらないよ」

「ちょっ、なんでそんなこの人たちの中に溶け込んでるんだよ!」

「違和感なさすぎて社長だと分からなかったですね」

「それを口にするな」

「その前にお前も口を閉じろ」

「なぜこうも一つ一つが噛み合わないんだ……」

部長たちは頭を抱えた。

「そもそも、なんでお前は今日の主催が社長だと伝えなかった?」

「ですから、それはサプライズだと……」

「あのなあ、そういうのをこっそり伝えて、社長がサプライズを成功させたと思えるように、こっちが振る舞う準備とかを仕込むのも仕事だろうが。なのに、何をそんな正直に言われたことだけを守ってるんだ。そんな機嫌取りをしてもらうために、私は明君にお願いしたわけではないんだが」

社長が静かに口を挟んだ。

「いやいや、それはあくまで社長側の意見でして、我々社員はそうはいかないんですよ」

「じゃあ聞くが、君はそうやって部下が裏でこそこそ機嫌取りをするような行動をして嬉しいのか?」

「ええ、もちろん。むしろそうすることで秩序と、その部下の今後のやる気も高まります」

「それはただ単に君が有能感に浸りたいだけだろう」

「そんなことは……」

「むしろ、そんな見え透いたお世辞を使われたら、普通は『なんだこいつ』と引くものだ。君は今までそんな考えで仕事をしていたのか?」

「何を言ってるんです? むしろ我々は、そこらの表面的にしか御世辞を使えない奴らとは違います。自分たちは既に会社が回っていけるように支えているんです。言ってしまえば、相手の気持ちを読み取るのはプロフェッショナルですよ。そういう配慮がこれまでもずっと日頃からあったから、社長も気持ちよく仕事ができる環境になっているんですよ」

「言いたいことはそれだけか」

「はい」

「そもそも私は、君たちに機嫌を取ってもらわないと立ち行かないような人間で生きてなんかいない。第一、私はプロフェッショナルだ。だったら、そのスキルは会社の内部ではなく外部に向けて存分に発揮してくれれば十分。内側の人間に向けてそういうことをして、会社にとって何の得があると言うんだ」

「いやいや、でもそうすることで自分たちは会社から必要な人間だと認めてもらえるんです。言ってしまえば、未来の会社のためですよ」

「そうですよ」

「そうすることでスキルを身につけて、会社の役に立つ存在となっていく。経験を積むに越したことはないですよ」

「それってつまり、会社の中での自分の存在意義を見出したいだけってことに聞こえるのだけど」

そこへ、さっきバーベキューを一緒に楽しんでいたママさんたちが声をかけてきた。

「ごめんなさいね。さっきからあなたたちの言い分を聞かせてもらっていたけど、要するに業務全体の表面的に見える部分だけを見て、できるできないを判断してるってことでしょ」

「そうでありますね」

「その表面的な部分を担っているのは分かりますが、あなた方の発言は、まるでそこしかやっていないのに、すべてを回しているようにしか聞こえません」

「なんだと? 部外者が口を出さないでもらえますか」

「ええ、そうやってその場に合わせただけなのに、まるで全て見てきたかのように発言する奴には、そう言われても仕方ないわね」

「別に私たちに突っかかるのはどうぞお好きにって感じだけどね」

「それはただ、客観的に見たらあなたたちの発言がおかしいよって、部外者からも見抜かれただけなんですけどね」

「そうでありますな。気持ちのいい部分だけやって、自分たちが全て回していると勘違いしているだけならまだ可愛げがありますが、それを他者にまで被害を出すのであれば、支える側の信用を一気になくすということを学んだ方がいいかもしれませぬな」

部長たちは顔を赤くして怒り出した。

「だからな、そういう風にあんたらには見えるかもしれないけど、現実問題、会社の仕事を取ってきているのは俺たちなんだ」

「だから、その仕事を取ってくるために誰がその他の仕事をやってくれているの? スケジュールが被らないように調整しているのは誰でありますか? 直接対面するための書類作成をしているのは誰? 契約した後の相手方のフォローは誰がしているのでありますか?」

「それは……」

「会社云々を抜きにしても、学生から社会人へと羽ばたいていく人間が持つ価値観として、総合的に判断しても君たちのその自己中心主義というのはすでに時代遅れになっている。早く気づいた方がいい。確かに営業部という部署は仕事を取ってくることが最重要でもあるし、それを担っているという分、労力も凄まじいとは思っている。だからこそ、そこに力を全集中できるように、陰の見えない部分でフォローしてくれる存在に気づかないと、今後の人生においてもうまくいかなくなってしまうぞ。というのを、この方たちはわざわざ口を挟んでまで教えてくれたというのに、それに対して文句を言うとは何事だ。やっぱり怒るぞ」

「当たり前だ。むしろ今は、花形と言われる人だけがちやほやされる価値観はすでに廃止していこうという方向に、世間も動き始めているというのを研修で学んでいるだろう。会社でも家庭でも、どこにおいても生きていくためには、その環境の中で互いに手を取り合っていくのがいい。どっちが上だからとかがなくなってきているんだ。その君たちが持っている価値観が間違えているのだと、いい加減に気づかないか?」

「いやいやいや、どうしてそこまで証司をかばうんですか? おかしいでしょ。我々は直接的な仕事を取ってきているんです。それなのに、そっちは『できて当たり前』だからと褒めないんですか? それで、言ってしまえば見えない部分の仕事は『大丈夫だよ』と停滞させるのがいいってことですか?」

「何を言ってるんだ君は?」

「わからないんですか? 社長が言ってるのはつまり、できていない人間はそのままでいいよと甘やかし、それでちゃんとできている一部の人間には褒めることもせず、もっとできるだろう、どうしてやらないんだと言っているようなものです。どうして会社というトップに立つ側の人間が、そうやって本当に頑張っている一部の人間に正当な評価をしないんですか? つまり俺たちは、そういう貢献できてない側の奴らの分も稼ぐために、これからも何も言わないでやれってことになりますよ」

「なんというか、すごく捻くれた解釈ね。正当化するために本質を歪めてしまわれたのですか」

「言っただろうが、部外者が口を出すんじゃない」

「どの口が言ってるんだ」

「ああ、呆れた。はっきり言おう。君たちには今回の件で、もう労うという気持ちさえなくなった」

「ああ、やっぱりいいか。君は都合よく話をつなげているが、その今の君の態度を受けて、労う気がなくなったと言っているんだ。そもそも最初は部長たちを労うためにこのバーベキューを予定していたんですよ」

その言葉に、僕の中で何かが切れた。ずっと我慢してきたものが、堰を切ったように溢れ出した。

「社長、ずっと僕はこれまで我慢してきましたが、いいでしょうか?」

「ああ、いいぞ」

「では言わせてもらいます。ご都合主義でいるのもいい加減にしてください」

「なんだと?」

「確かに僕は営業部にいながら、部長たちのように新規の仕事を取ってこれてはいない。ですが、その分、営業部のみんなが常に新規のお客様を取り続けられるように、それ以外の業務を全て担ってきたんだ。その僕がやっていた見えない部分に支えられていたから、あなたたちは営業という業務だけに集中できていたんだろうが」

部長たちは一瞬言葉を失った。だが、それも束の間だった。

「いいか、この際だから社長として未来のために明言しておこう。今後において、むしろ支えるとかサポートするというのは、支えられる側も一緒に共感できて、互いのやっていることに尊敬もできて、その上で信頼関係を築こうとしてくれる人こそ求められていくスキルだと私は思っている。そして今回、そのスキルを持っているのは君だとはっきり分かった」

「なぜですか?」

「仕事ができる奴は、言い方を変えてしまえば探せばいくらでもいる。しかし、状況判断して円滑に物事が回るために影となって支え続けられる側の人間は、そういない。我が社でそれに値する人間は誰かと、みんなのことを見ていた。それも今回の件でよく分かった。そのスキルを持っている人間こそ、今後必要不可欠な人材だ」

「だからって、どうしてそれが僕になるんです?」

「だって、社長だとしても一人の人間として普通に接してくれたのは、明君だけだもん。これからの時代はさらにAIも発達していって、取引も人と人との顔合わせとかも最小限になっていく。その中で信頼を勝ち取っていくためには、相手の感情を読み取ることではなく、相手がスムーズに物事を進められるよう事前に準備をしてくれる気の利く人間。こういう意味では、一番今営業部で相手の立場とか自分の昇進とか考えながらギラギラして突っ込んできている君たちよりも、マイペースで常に同じ感情で冷静に状況判断して、どんな緊急事態でも一定のペースで業務が回せるよう裏で支えてくれる彼こそがエースだよ。たとえ相手が社長であろうとね」

部長たちはうつむいた。

「悪かったよ」

「え?」

「だから、悪かった。謝るからさ。本当は支えられてるって分かってたんだ」

「えっと、普通に許しませんよ」

「は?」

「だってその謝罪、自分たちの立場が危うくなったから、この場を収めるためだけの謝罪ですよね?」

「それは……」

「本当に謝罪したいと思っているのであれば、これからの態度で示し続けてください」

「いつまでだ?」

「それって、ただお前が今までの分の有能感に浸りたいだけだろう」

「そうやって期限を設けて、その期間だけ反省すればいいという考えだから、周りと軋轢が生まれるんじゃないんですか? 僕はこれまでも、そしてこれからも会社が円滑に進むためにサポートし続けます。間違っても、あなた方の欲を満たすためではありません。自分の存在意義を証明したいためでもありません」

部長たちは悲痛な表情を浮かべた。

「面部分しか見えてなくて、自己解釈していてすみませんでした……」

「今回の件は、本当に申し訳ありませんでした」

こうして、今回の件を受けて、バストラ会社の営業部の内情が表に出てしまい、月部長や柊たちは役員会議にかけられることに。さらに、高級焼肉店への人数分の過剰な支払いを経費で落とそうとしていたことが社長にバレてしまったため、懲戒処分及び謹慎とは別に、話し合いが設けられたそうだ。

「ただ自分の地位を上げたかったなんて浅はかな考えをしたから」
「会社のためではなく、自分の威厳を見せたいとか欲を出したから」
「長いものに巻かれれば安心とかで、全体の判断を放棄したから」
「自己中心主義で会社のためとか周りに目を配らなかったから」

と反省していたようだけど、そもそも今回の経費はバーベキューで使われていたため、月の元部長と柊たちが個人的に食べた高級焼肉店での一枚一万円規模の支払い分は当然自腹扱いとなり、一人当たり数百万の支払いを余儀なくされた。

さらには、なんと例のひかりさんや緑子さんの旦那さんがそれぞれライバル会社の社員さんだったらしく、噂が広まってしまい、月の元部長たちは取引先から白い目で見られるようになり、やむなく退職せざるを得なかった。今は変わっていく価値観の中で、自分が一番という考えがいかに周りから反感を買うか身を持って味わいながら、細々と暮らしているそうだ。

一方の僕はと言えば――。

「お疲れさまです」

「お、明君、お疲れさん。どうだ、仕事は順調か?」

「はい。こちら、既存の取引先の特徴をまとめたものです」

「本当に君は気が利くなあ。そういえば、いい人とかいないのか? 君みたいな気配りができる人間なら、結婚した後も上手くやっていけると思うんだが」

「いやあ、相手がいないんですよ」

「そこが一番重要じゃないか」

あの日から、僕の仕事は変わった。褒められるためにやっているわけじゃない。会社が円滑に回るために、自分にできることを、いつものペースで続けているだけだ。それが、結果的に誰かの支えになっているなら、それでいい。

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