クリスマスパーティーで、義母が突然泣き出した。「この嫁に日頃からいびられているんです」と。親戚たちの白い目が一気に私に刺さる。でも私は知っていた。義母の涙が偽物だということを。家計を盗んだのも、服を切り裂いたのも、車のブレーキを壊したのも、全部彼女の自作自演だった。義母は私がホストに金をつぎ込んでいると嘘の噂を流し、夫も私を信じてくれなくなった。親戚の前で土下座しろと迫られたその時、私は静か…

クリスマスパーティーで、義母が突然泣き出した。「この嫁に日頃からいびられているんです」と。親戚たちの白い目が一気に私に刺さる。でも私は知っていた。義母の涙が偽物だということを。家計を盗んだのも、服を切り裂いたのも、車のブレーキを壊したのも、全部彼女の自作自演だった。義母は私がホストに金をつぎ込んでいると嘘の噂を流し、夫も私を信じてくれなくなった。親戚の前で土下座しろと迫られたその時、私は静か...

クリスマスパーティーの最中、義母が突然大きな悲鳴を上げた。

「料理に虫が入ってるわ!」

義母の皿には大きなゴキブリが乗っていた。親戚たちの視線が一斉に私へ向く。

「あんた、わざと私の皿に虫を入れたわね」

「そんな、私は何も知りません」

「わざとじゃなかったら、どうして私の皿にだけ虫が入るのよ!」

義母は私を台所へ連れて行き、耳元でささやいた。

「そんなことどうでもいいわ。無能なあんたは、これから先も一生私に逆らえないのよ」

そう言って彼女は不気味な笑みを浮かべた。父の遺品が盗まれた事件といい、服を切り裂かれた事件といい、車のブレーキが故障した事件といい、すべては義母の自演だった。親戚たちの前で私を辱めるために、彼女は虫まで買ってきたのだ。

義母は親戚の待つ部屋へ戻ると、今度は泣き出した。私が彼女に日頃からひどいことをしていると嘘の涙を流して訴えたのだ。親戚たちは私に白い目を向け、非難の声を上げ始めた。

「いい加減、演技をやめたらどうですか?」

「演技だって? この期に及んでまだ私を痛めつけるつもりなの?」

「いいえ、私はこれまで一度もお母さんをいびったことなんてありません」

私は冷静に言った。

「つい先ほどのお母さんの音声を録音しています。ここで再生してもよろしいですか?」

義母の顔が一瞬で強張った。親戚の一人が「聞いてみよう」と声を上げ、私はスマホの音声を再生した。部屋に義母の暴言が響き渡る。子供たちのクリスマスソングの合唱が背景に流れていた。

「そんなのは偽物よ! AIで加工したに決まってる!」

「これはついさっきお母さんが私に言った言葉です。子供たちの歌声も入っています。AIで加工できる時代とはいえ、これまで完璧に再現するのは不可能です」

親戚たちは納得した顔を見せた。義母はなおも嘘だと主張し続ける。

「実はお父さんの遺品が盗まれた頃から、私は監視カメラを設置していました」

義母は青ざめた。映像には、義母が遺品の骨董品を売っている現場がはっきり映っていた。

「ホストクラブにはまっていたのも、お母さんですよね」

私は義母に探偵の調査報告書を突きつけた。

きっかけは兄の言葉だった。あの日、久しぶりに兄が家を訪ねてきた。彼は会社の書類を取りに来たと言っていたが、明らかに痩せて、頭には円形脱毛症の跡があった。

「兄さん、もしかして…」

「ちょっと色々あってな。それよりお前は大丈夫なのか?」

兄は洋介から日常的に暴言や暴力を受けていると明かした。義母の嘘のせいで私の評判が落ち、兄はそれをかばって余計に辛い立場に立たされていたのだ。

「ごめんね、私のせいで」

「お前のせいじゃない。もう少しの辛抱だから」

兄は何かを決意しているようだった。それから数週間後、兄と私は義母と洋介の調査を始めた。探偵を雇い、彼らの過去を徹底的に調べさせたのだ。義母があれほど執拗に私を貶めようとした理由は、私が洋介を「奪った」と思い込んでいたからだった。彼女は長年、財産を目的に私が結婚したと決めつけていた。

クリスマスパーティーで真実を暴かれた義母は、その場にへたり込んだ。

「お父さんを亡くして寂しかったのよ」

「いいえ、お母さんのホスト通いはお父さんが生きている頃からです。お父さんはそれを知りながら、何も言わなかった」

義父は入院中、私にこう言って頭を下げていた。

「あの人を許してやってくれ。仕事ばかりで家庭を顧みなかった自分が悪いのだ」

それでも義母は私を受け入れることができず、洋介との仲を裂こうと、私が彼女に虐待しているという嘘を作り上げたのだ。

真実を聞いた洋介は、最後まで義母を擁護した。

「母さんをこんな目に合わせたお前の兄貴がどうなるか、覚えておけよ」

しかし、私は何も怖くなかった。兄はすでに動いていたのだ。

数日後、洋介の会社で臨時の役員会議が開かれた。何も知らされずに呼ばれた洋介は、不機嫌そうに会議室へ入ってきたが、私の姿を見るなり声を上げた。

「なんで部外者のお前がここにいるんだ。さっさと出ていけ」

「出ていく必要はない。由美さんは私が呼んだんだ」

そう言ったのは、副社長を務める叔父だった。クリスマスパーティーの後、叔父は私に謝罪し、今回の件を真摯に受け止めると約束してくれたのだ。

「それで、部外者まで呼んで一体何を議論するつもりだ?」

「君の解任だよ」

「なんだって?」

そこへ兄が現れた。

「これまで洋介社長が行ってきた不正の数々を証言します」

兄は洋介の秘書になって以来、洋介による違法な経費処理や会社の資金の私的流用に加担させられていたという。しかし兄は銀行の取引記録や会社の裏帳簿のコピーを証拠として集め、外部の会計士や法務専門家に分析を依頼していたのだ。

「これだけではありません。洋介社長は20年前、私と私たちの父を罠に落とした」

その言葉に、会議室は一瞬で凍りついた。

20年前、洋介は義父の会社ではなく、私の父が務める関連企業に就職していた。当時から義父の会社を継ぐことが決まっていた彼は、経理で会社の金を横領していた。それを知った父は洋介を告発しようとしたが、洋介は先手を打って女性社員に虚偽の証言をさせ、父にセクハラの疑いを着せたのだ。

父は冤罪で会社を追われ、無実を証明しようと裁判を起こしたが、その途中で過労により亡くなった。父は会社を相手に戦い続けた末に、命をすり減らしてしまったのだ。

「そんな証拠があるのか?」

「証拠ならあります」

兄は当時虚偽の証言をした女性社員の告白を録音した音声を流した。彼女は洋介に「従わなければ父親の会社を潰す」と脅されていたという。

「そして、これが当時の会計帳簿のコピーです」

横領の額は当時だけで1000万円を超えていた。自分の罪を隠すため、洋介は父をはめ、結果的に死に追いやったのだ。

洋介は必死に否定したが、企業調査チームの弁護士が裏付けを取っており、役員全員の一致で社長を解任された。叔父は深く頭を下げた。

「お父さんの件も、私ども親族として恥ずかしい思いだ」

「お陰で父の無実が証明されました。父も天国で喜んでいると思います」

しかし、まだ疑問が残っていた。

「洋介さんは横領してまで、何にお金を使っていたんですか?」

「それなら、ここに答えが書いてあります」

私は探偵の調査報告書を机に置いた。洋介には複数の愛人がいて、彼女たちに金をつぎ込むために会社の資金を流用していたのだ。妻がいながらも、彼は昼夜問わず店に通い続けていた。

私はその場で洋介に離婚届を突きつけた。

「あなたとお母さんには、慰謝料をきっちり支払ってもらいますから」

「待ってくれ。俺は離婚なんて望んでない」

「私が離婚を望んでいるの。拒否するなら裁判に訴えるまでよ」

洋介は離婚届を破り捨てたが、その日のうちに私は家を出て、離婚と慰謝料を求める裁判を起こした。裁判所は私の訴えを認め、洋介と義母に慰謝料の支払いを命じた。

その後、会社は洋介を刑事告訴した。横領事件で逮捕された元社長というニュースはSNSで拡散され、義母の歪んだ性格も世間に知れ渡った。私の名誉は回復し、近所の人たちからは謝罪の言葉が届いた。

洋介は実刑判決を言い渡され、長い間、外に出ることができなくなった。会社への損害賠償と私への慰謝料の支払いのため、義母と洋介の資産は差し押さえられ、二人はすべてを失った。

行き場を失った義母は親戚を頼ったが、誰一人手を差し伸べなかった。困り果てた義母は入れ込んでいたホストに婚姻届を送りつけて「責任を取れ」と迫ったが、ストーカーとして訴えられ、今は福祉の力を借りて安アパートで暮らしているという。

兄は新社長となった叔父に仕事ぶりを評価され、経理部長に抜擢された。私も正社員として働けることになり、ようやく兄弟で穏やかな日々を取り戻した。

20年越しに父の名誉は回復した。あの日、父が無実を訴え続けた姿を私は忘れない。だからこそ、私も最後まで自分を信じて戦い抜けたのだと思う。

今日も私は、父からもらった強さを胸に、まっすぐ歩いていく。

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