出産後、病院のベッドでウトウトしていると、義母の怒鳴り声で目が覚めた。胸ぐらを掴まれ、新生児室に引きずられ、指さされたわが子の髪は、まぶしいほどの金色だった。「ちゃんと見なさいよ。あんたの娘よ。一体、誰の子供を産んだの?」夫は浮気を疑い、血液検査の結果まで持ち出して私を責めた。「B型とO型の親からA型の子は生まれない。つまり、この子は俺の子供じゃないんだろ?」私は無実を訴えたが、誰も信じず、…

出産後、病院のベッドでウトウトしていると、義母の怒鳴り声で目が覚めた。胸ぐらを掴まれ、新生児室に引きずられ、指さされたわが子の髪は、まぶしいほどの金色だった。「ちゃんと見なさいよ。あんたの娘よ。一体、誰の子供を産んだの?」夫は浮気を疑い、血液検査の結果まで持ち出して私を責めた。「B型とO型の親からA型の子は生まれない。つまり、この子は俺の子供じゃないんだろ?」私は無実を訴えたが、誰も信じず、...

夫の実家に嫁いでから、私は義母にずっと疎まれていた。初対面から「財産目当てで息子を誘惑したんでしょう」と決めつけられ、人前で若い頃の自分と比較されることもあった。

それでも夫・遊人は「考えすぎだよ」と取り合ってくれない。そんなある日、私の妊娠が分かると、義母は手のひらを返したように喜んだ。お腹の子にとっては祖母だ。表面上はうまくやっていこうと、私は自分に言い聞かせた。

臨月に入ったある日のこと。サンルームでうとうとしていると、窓の外に見知らぬ男が立っているのに気がついた。悲鳴を上げると義母が飛んできて、男を見た瞬間、固まってしまった。

「信じ…母さん」

その男は義母の息子、つまり夫の弟だという。名前は信司。「弟がいるなんて初耳だ」と動揺する私に、信司は優しく微笑んだ。「君が兄貴の奥さん?もうすぐ子供が生まれるんだね。おめでとう」

義母は怒り狂い、「お金目当てなら無駄よ、さっさと出て行きなさい!」と信司を追い出した。その日の夜、帰ってきた夫に問い詰めると、夫は言った。

「信司は母さんが産んだ俺の弟だよ。でも母さんは昔から信司を異常なほど嫌ってた。信司が医大に現役合格した時なんて『病院を乗っ取る気だ』って詰め寄ったんだ。それ以来、信司は家を出て、今はどこかの病院で働いてるらしい」

何故そこまで実の息子を嫌うのか。私はゾッとした。この家は普通じゃない。もうすぐ生まれる子供を守れるのは私だけだと、夜空の星を見上げながら強く願った。

予定日の1週間前、陣痛が来て娘を出産した。深夜の分娩、疲れ果てて病院のベッドで浅い眠りについていた私は、義母の怒鳴り声で目を覚ました。

「この尻軽女!一体どういうことよ!あなた、誰の子供を産んだの?」

義母に胸ぐらを掴まれ、新生児室に引きずられる。義母が指さしたベビーベッドを覗くと、私の産んだばかりの娘の髪は、日の光を浴びた麦のような金色だった。

「あなた、私の息子と結婚しておいて、外国人と不倫してたのね?」
「違います!この子は遊人の子供です!」

慌てて訴えても、信じてもらえない。そして、夫と看護師が部屋に現れた。看護師は言った。

「血液検査の結果、お子さんはA型でした。B型とO型の両親の間にA型の子供は生まれません」

つまり、この子は夫の子供ではないと。夫の両親は、私が不倫をしたと決めつけ、弁護士を立てるとまで言い放った。

それからの1週間の記憶はない。一人で退院し、実家に戻ると、両親だけは私を信じてくれた。しかし、金髪の孫を見て「なぜなんだ?」と頭を抱える。私にはどうすることもできなかった。こうして私の結婚生活は終わった。私は娘を「凛」と名付け、必死で育てることに決めた。

それから12年。凛は自慢の金髪を生かしてヒップホップダンスに夢中になっていた。そんなある日、凛の学校から電話がかかってくる。なんと、義母が学校に来ているという。

学校に駆けつけると、昔の面影もないほどやつれた義母がいた。「お願い、凛ちゃんと一緒に戻ってきてちょうだい」と縋られ、困惑していると、そこへ信司が現れて義母を連れ去った。

数日後、信司からすべての真相を聞かされた。

「凛の父親は兄貴で間違いない。覚醒遺伝だったんだ。実は…兄貴は父さんの子供じゃなかった。不倫をしていたのは母さんの方。義父と結婚してすぐ、英語教室の英国人講師と不倫して、その子供が兄貴だったんだ」

義母は、産まれた凛が不倫相手そっくりの金髪だったことを知り、昔の自分の不倫がバレるのを恐れた。そこで看護師に血液検査の結果を改ざんさせ、件の不倫の罪を私に着せて、私と凛を家から追い出したのだという。

「凛の本当の血液型はB型だった。看護師は当時、兄貴に振られて恨んでいて、母さんの提案に乗ったんだ。後で兄貴と結婚する約束でね」

信司は続けた。

「あの騒動から色々あって、母さんは兄貴と一緒に家を追い出されたんだ。今は安アパートで暮らしてる。それで、父さんが君たちに会って謝りたいって言い出して、母さんがそれを利用して君を呼び戻そうとしたんだ」

すべてを聞いて、私は呆れた。義母は今度は義父とよりを戻すために、私を利用しようとしたのだ。あの金髪の孫さえいなければ、すべて上手くいっていたと思っているのだろう。

そして3日後、事件が起きた。部活帰りの凛が、車で連れ去られそうになったと警察から電話がかかってきたのだ。幸い、通りかかった人が止めたおかげで未遂に終わった。犯人の特徴を聞くと、40代、彫りが深く浅黒い肌、夫にそっくりだった。

すぐに信司と一緒に、義母たちのアパートへ乗り込んだ。問い詰めると、夫はあっさり白状した。「だって凛は俺の娘だろ?親が子に会いに行くだけだろ」と、悪びれもせず笑った。

「一体何がしたいのよ!」

私が叫ぶと、義母が提案してきた。「私たち、家族でやり直しましょうよ。凛ちゃんのためにもそれが一番よ。あなたの無実も証明されたんだし」

あまりに自己中心的で、私は怒りを通り越して呆れた。すると信司が義母に問い詰めた。

「母さん、俺は母さんに愛されたと思ったことは一度もないよ。もう終わりにしよう」

そう言って、信司はテーブルの上に数枚の写真を並べた。そこには、義母と初老の外国人男性が、ラブホテルに入っていく姿が映っていた。

「つい先月撮った写真だ。不倫相手との関係は今も続いてるんだろ?この男に金を渡し続けてるんだろ?!」

完全に図星を指され、義母は狂ったように写真を破り始めた。「あの人は私のすべてなの!あなたに何が分かるのよ!」

その時、パトカーのサイレンが近づいてきた。凛を連れ去ろうとした罪で、夫が逮捕される。玄関の扉を壊して刑事たちがなだれ込み、夫はそのまま手錠をかけられた。

「さやか、頼む!助けてくれ!俺たちやり直そう!」

縋る夫に、私は左手の薬指を差し出した。そこには、大きなダイヤの婚約指輪があった。

「私はもうすぐ再婚します。だから、あなたとはもう会うことはありません。さよなら」

夫は逮捕され、義母は夫に見捨てられ無一文になった。

数年後、私は信司と再婚し、凛と義父の4人で丘の上の屋敷に住むことになった。義父は病院の院長を退き、信司が新しい院長に就任した。

凛は自分の出生の秘密を聞かされた後も、驚くほどすんなりと受け入れてくれた。「お母さん、大変だったんだね。これからはもっと自分のことを優先してよ」と、私を気遣ってくれた。

そして、凛はあの義母が異常なほど嫌っていた医者の道を選んだ。義父の出身大学の医学部に入学し、将来は国際緊急医療チームに入って、海外で災害にあった人たちを助ける医者になるという目標に向かって、毎日勉強に励んでいる。

ある夜、私は昔と同じようにベランダで夜空を見上げていた。そこへ信司がやってきて、自分の着ていたカーディガンを私に羽織らせてくれた。

「昔のことを思い出してたの。凛がまだ私のお腹にいた頃、ここでこうして『この子を守れるのは私しかいない』って、不安でいっぱいだったなって」

信司がそっと私の肩を抱く。私は彼に寄りかかり、星空を見上げた。その時、大きな星が夜空を横切るように流れていった。

私はその流れ星に、心の中でそっと願った。今度こそ、本当の幸せを守っていけますように。

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