中卒だという理由だけで、取引先の部長に「契約破棄だ」と叫ばれ、契約書をビリビリに破られた。俺は石橋、41歳。中堅の精密機器メーカーで営業課長を務めている。中卒だが、努力して知識を身につけ、現場も経験してきた。田村部長の会社とは10年来の付き合いだ。反動体の検査装置の製造を依頼され、完成したので契約締結のために訪れていた。
契約書の確認をしていると、突然会議室に第三者が入ってきた。新しい営業部長の加藤さんだ。5年前、俺の会社の製品を売り込んだ際、彼に「中卒のくせに詐欺をしようっていう度胸はある意味関心するな」と散々罵倒された相手だった。
加藤さんは俺のことを覚えていなかったが、俺の手元の契約書を見て、27億円という金額に目を留めた。「中卒の詐欺師は出てけ。この契約は破棄だ」そう叫ぶと、契約書を破り捨てたのだ。俺は冷静を装い、会議室を後にした。この契約は、ただの検査装置ではない。世界で3社しか作れない超高精度なもので、加藤さんの会社はすぐに必要としていたのだ。
翌日、慌てふためいた加藤さんから電話がかかってきた。契約を破棄したら、上層部に怒られたらしい。今さら契約をやり直したいと言う。俺は淡々と答えた。「検査装置はすでにライバル企業に譲ることが決まりました。あなたの会社とは契約できません」加藤さんは言葉を失った。
その後、田村部長と専務が加藤さんを連れて謝罪に来た。俺は条件を提示した。完成品の10台のうち、1台だけを融通する代わりに、新しい装置を特急で作り、金額は2倍にしてもらうと。話はまとまったが、加藤さんの処分は避けられなかった。俺は「この人にはもう二度と関わりたくない」と告げ、加藤さんは移動処分が決まった。
1ヶ月後、田村部長から報告があった。加藤さんは総務部に移動になり、癖の強い女性社員たちに少年を叩き直され、すでに満身創痍らしい。俺は田村部長との良い関係をこれからも続けていきたいと思った。技術を軽んじる者には、相応の代償があるということを、加藤さんは身をもって知っただろう。



