「私の夫が浮気をしたの。相手の女性が妊娠したって、義母が離婚届を突きつけてきた」――私はその言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になった。
結婚して10年。世界的な精密機器メーカー・Dコーポレーションの2代目社長である夫・翔吾とは、いつも穏やかで幸せな日々を送ってきた。しかし、私たち夫婦には一つだけ大きな悩みがあった。子供ができないことだ。
義母はそれを許さなかった。「いつになったら子供ができるんだ」と、毎日のように私を攻め立てた。私は不妊症だと決めつけ、「お荷物」「役立たずの嫁」と親族の前で罵倒することもあった。
それでも、翔吾は「子供ができなくても、2人でいれば幸せだ」と優しく言ってくれた。私は彼との人生を決して手放さないと決めていた。
しかし、ある日義母に呼び出され、義実家を訪れると、そこには見知らぬ女性が待っていた。義母は「翔吾に愛人を紹介して、跡取りを作らせた。今、3ヶ月だ」と告げたのだ。
「経営者の妻として、あんたは無能よ。早く判を押しなさい」
義母は離婚届を突きつけてきた。私は翔吾に限って浮気なんてするはずがないと信じていた。しかし、帰ってきた翔吾に問い詰めると、彼は完全に否定した。
「浮気したのは俺じゃない。その女とは面識すらない」
しかし、義母は「隠さなくてもいいの。慰謝料も財産分与もなしってことで、すでにこの人とは話がついてるわ」と言い放った。翔吾は「俺は朋絵を裏切るようなことはしない」と義母に宣言した。
そこで、ようやく自分を落ち着かせた私は、義母の横で困った表情を浮かべる女性・りんに気づいた。その時、部屋にかずという男が現れた。
「翔吾さん、サプライズ大成功」
りんはかずにしがみついた。義母は激しく動揺し、かずに問い詰める。
「どういうことだ? りんは翔吾の子を妊娠してるんじゃないのか?」
「そういうことだよ。これであんたともお別れだな」
私は義母の行動に疑問を抱き、弁護士に依頼してかずとりんの調査を依頼していた。その結果報告書を義母に突きつけた。かずは義母に漫画家志望だと偽り、義母から資金を引き出していた。義母はかずに執筆資金や生活費として、毎月多額の援助をしていた。その額は2000万円以上にも上っていた。
さらに、かずは義母との関係を利用して、義母の息子の名前を悪用していた。義母は、息子の妻である私を追い出すために、若い女性を誘惑させて、自分の子供を妊娠させようと計画していたのだ。しかし、かずは「こんな美人は翔吾にはもったいない」と考え、りんに自分が翔吾だと偽って近づいていた。
かずは義母に、自分は世界的な経営者だと嘘をつき、りんに近づいた。りんは義母が紹介した翔吾だと思い込み、資産家社長だと浮かれて関係を持った。しかし、実際はかずであり、りんは妊娠していなかった。
「私を騙したのね」
りんは激怒し、「妊娠はでっち上げだ」と言い放った。そして、義母とかずの両方をゴミのように罵倒して、義実家を出ていった。かずもりんを追って去っていった。
残された義母は、その場に崩れ落ち、大粒の涙を流した。彼女はこれまで持っていたライフスタイルも、結婚まで考えた恋人も、自身の資産も、すべてを失ってしまったのだ。
しかし、翔吾は義母を冷たい目で見つめていた。
「俺の名誉を汚し、その上俺を支え続けてくれている朋絵を侮辱した罪は重い」
翔吾はその場に顧問弁護士を呼び寄せ、私に対する慰謝料を請求すると告げた。その上で、義母と絶縁し、家から追い出した。義母は「私はあなたの母親よ」とすがったが、翔吾は一切聞く耳を持たなかった。
義母はその後、親戚を頼ったが、これまで親戚たちのことも馬鹿にしてきたため、誰も受け入れなかった。仕方なく義母は格安アパートに引っ越し、老体に鞭打ってパートを始めたが、これまで働いたことがない義母は職場でも嫌われていた。贅沢な暮らしの習慣が抜けず、わずかな給料をすぐに使い果たしてしまい、1ヶ月の大半を空腹に苦しんでいたそうだ。
私は義母のことを思うと少し気の毒に思うこともあったが、自分勝手に私を落とし入れようとした罰が当たったのだと自分に言い聞かせていた。
翔吾は私のことを心配し、より一層優しくなった。義母のストレスから解放され、私は穏やかな日々を取り戻した。
ある日、夕飯の準備をしていると突然吐き気に襲われた。風邪を引いたわけでもないのに、どうしたのだろうと思っていると、食事中にもまた吐き気が襲ってきた。まさかと思い翌日産婦人科を訪れると、妊娠していることが分かったのだ。
その夜、仕事から帰ってきた翔吾に報告すると、彼は両手を上げて喜んでくれた。結婚して10年間苦しみ続けた日々が、ようやく報われた気がした。やがて生まれた息子を前に、私と翔吾は一生この子を大切にしていこうと誓い合った。
私はこれからも、翔吾と息子と一緒に、強く生きていく。



