「貧乏人のあなたに、1人5万円、合計500万円のキャンセル料なんて払えるのかしら。そんな大金、あなたのお家は出せるのかしら。」
ママ友の三咲さんは、逆らったら痛い目を見るわよ、という勢いで、周りのママ友にも聞こえるように言った。
私は息子が健やかに育ってほしいという気持ちから、三咲さんの放つ言葉に何度も耐えてきた。
さらに三咲さんは、私を悪役に仕立て上げるため、実の父親である魚谷組の組長まで呼ぶ事態となった。
この後、私が自分自身の身分を明かすことで、三咲さんとその父親の人生が一変するとは、この時は考えもしなかっただろう。
私の名前は太田レイナ。夫と5歳の息子と一緒に暮らす主婦だ。
息子にはのびのびと育ってほしいと願っているため、ママ友たちとの交流を大切にしてきた。
しかし、ママ友の中には、私が我慢してでも接しないといけない、魚谷三咲さんという人がいる。
三咲さんは、父親が魚谷組の組長という肩書きを振りかざし、周囲を脅して、まるで女王様のように振る舞っていた。
先日、公園で他のママ友たちと一緒に息子を遊ばせている時も、私を馬鹿にするような一言を放った。
「今日もまた、貧乏人みたいな服で公園に来たの?レイナさんは、他のママ友にどう思われているのか、考えたことないのかしら。貧乏だから発想力も貧しいのね。」
三咲さんの私への嫌味に対して、他のママ友は「気にすることはない」といつも慰めてくれる。
本当なら言い返したい気持ちは山々だが、やはり息子のためを思うと、平穏に生活した方が賢明だろうと考えていた。
そんなある日、三咲さんから声をかけられた。
「レイナさん、ちょうどいいところにいたわ。今度、ママ友たちの懇親会として100人集まってパーティーをしようと考えているの。でも、会場が空いているかどうかの連絡なんて、簡単で地味な仕事は私には適役じゃないと思うの。そういうちまちました仕事は、貧乏人のレイナさんのような人にしてもらうのがぴったりかと思って。どう、お願いできるわよね?」
私に拒否権なんてなかった。
「100人規模の会場探しと予約ですね。わかりました。」
「よろしくね。こんな誰でもできるような仕事、失敗するんじゃないわよ。」
三咲さんに言われたことが悔しかったが、息子や他のママ友たちに危害が及ぶくらいなら、自分が我慢すればいいだけのことと耐えた。
私は早速、近くの会場へ手当たり次第に電話をかけた。
しかし、会場探しは思ったより簡単ではなかった。
懇親会までの日が短く、人数が多すぎるということで、立て続けに断られてしまったのだ。
私はこのまま会場が見つからず、三咲さんにひどい目に遭わされるんじゃないかと思っていた。
それでもなんとか予約にこぎつけることができたが、会場の担当者から「キャンセルになった場合は、キャンセル料を1人5万円請求する」という厳しい条件をつけられてしまった。
背に腹は変えられないため、私は厳しい条件ながらも予約の手配をした。
そして、その電話を背後で盗み聞きしていた三咲さんが、くすくす笑いながら現れたのだ。
「こんな大金、あなたに払えると思ってるの?三咲さん、失敗したらただじゃ置かないからね。楽しみにしてるわ、レイナさんの大失敗を。」
三咲さんは軽蔑的な目で私を見ながら、意味ありげに笑った。
私は予約の電話の内容を全て聞かれていたのだと思い、嫌な予感がした。
しかし、もう懇親会まで数日しかないことと、他の会場では断られてしまうことは明白だったので、このまま予約を進めることにした。
だが、その考えは甘かったのだ。
これまでの三咲さんからの嫌がらせと比べ物にならないことを、私はこの時、想像もしていなかった。
そして懇親会当日。
約束の時間になっても、ママ友たちは誰1人姿を見せなかった。
「どういうこと?」
私は、きちんとママ友たちに連絡が渡ったかどうか、メールを確認する。
すると、息子と一番仲のいいママ友から、「三咲さんから会場が変更になったというメールがあった」と連絡が入った。
会場の担当者は、心配そうに私の顔を見る。
私は会場の担当者へ、ママ友たちへ確認するため、もう少し待ってほしいことを伝えた。
私だけ、三咲さんからの会場変更の連絡から、意図的に外されていたのだ。
私の中で、何かが弾けたのを感じた。
すると、嫌味な笑い声と共に、三咲さんが宴会場の中から現れる。
「本当、使えないわね、レイナさんって。キャンセル料、ちゃんと払ってね。1人5万円だから、100人分で500万か。そんな貧乏人に払えるのかしら?」
私は無言で睨みつけた。
すると三咲さんは、会場に用意されていた料理を手に取り、私に投げつけた。
「ああ、床が汚れちゃった。宴会の予約はできなくても、掃除くらいはできるでしょ。」
そして、三咲さんは携帯を取り出した。
「払えないなら、魚谷の組長である私の父を呼ぼうか。」
あろうことか、三咲さんは父親である魚谷の組長に電話をかけた。
電話の内容から、30分後に会場に魚谷組の組長が来ることとなったようだ。
「魚谷組の組長まで呼ぶ必要があるんですか?」
「はあ?当たり前じゃない?レイナさんは会場の予約を失敗したし、それに今まで散々私が嫌味を言っても知らぬ顔してるのがむかつくから、父を呼んだのよ。」
私への罵詈雑言は、魚谷の組長が到着するまで続いた。
我慢の限界を感じた頃、魚谷の組長、魚谷芳吉さんが到着した。
「三咲、急にこんなところに呼び出すとは、父親が忙しいのも分からないのか。」
「お父さん、急に呼び出してごめんなさい。でも、前から気に食わないママ友がいることを話していたじゃない。その気に食わなかったママ友のレイナさんが、懇親会の場所を間違えてママ友たちに連絡したのよ。ママ友のみんなに楽しんで欲しくて、レイナさんに協力をしたのに。レイナさんは私を裏切ったのよ。」
「何、そんなことをしたのか。うちの娘を傷つけて、何が楽しいんだ?」
三咲さんは出鱈目を言い、私を悪者に仕立て上げた。
そこで私は、ゆっくりと深呼吸し、静かに笑った。
「なら、私も呼ばせてもらうわ。」
その瞬間、宴会場の奥の個室から、複数の男たちが現れた。
魚谷とは比べ物にならない、最高級の着物に身を包んだ獣たちが急に目の前に現れたため、三咲さんと芳吉さんは驚き、目を丸くしていた。
中でも最も威圧感を放つ男が、私の元へ歩み寄る。
「ご苦労だったな、レイナ。」
「いえ、組長。わざわざお越しありがとうございます。」
「何よ、あんたたち。」
三咲さんは顔面が蒼白になりながら、震える声で問いかける。
「俺は、全国のヤクザを束ねる組長、和田健吾だ。そして、ここにいる男は、全国の組織を束ねる100人のヤクザだ。それにしても、レイナを貧乏人呼ばわりなんて、失礼なんじゃないかね。」
「全国のヤクザを束ねる組織なんて、聞いたことないわよ。うちのお父さんは魚谷組の組長なのよ。偉いの。」
「勉強不足な人なんだな。こんな人がこれからの魚谷組を引っ張っていくのかと思うと、先が思いやられる。」
そして、組長は私を差し示しながら告げる。
「勘違いしているが、レイナはただの主婦じゃない。和田組のレディース若頭だ。」
「そ、そんなわけないじゃない。」
「和田組は、全国のヤクザの乱れた風紀を正すために存在しているの。魚谷がお金を横領していると察知した私たち和田組は、魚谷を数年前から調査をし始めたのよ。調査のためだけじゃない。息子や他のママ友たちを守るためにも、私は三咲さんからの嫌味や嫌がらせにこれまで耐えてきたの。」
それを聞いた三咲さんと芳吉さんは、ガタガタと震え、崩れ落ちるようにへたり込んだ。
「三咲さんがやってきたこと、全部聞いてるわ。ママ友たちを脅し、お金を巻き上げてきたのよね。そろそろ報いを受ける番よ。」
「何のこと?そんな証拠もないのに、勝手に言わないでくれる?」
私は携帯を取り出した。
「運営費を払っていたのに、三咲さんから支払いだったと言われて多く払ってしまった」という、ママ友たちからの密告の音声を流した。
「ママ友たちからの証言と、録音した音声が何よりの証拠よ。ママ友たちを騙して、お金を巻き上げていたわよね。」
「だから、そんなことしていないってば。」
「まだ白を切るつもりですか?幼稚園の運動会の時に、運営費として保護者から高額なお金を徴収していましたよね。そして、その一部をバッグを買ったり、高級エステ代に当てたりしていましたよね。」
「どこからの情報なのよ。」
これだけの情報が集まっていて、全国のヤクザのトップが集まっている場でも、三咲さんは噛みつくような勢いで私を糾弾する。
「ママ友から、高額な運営費を払ってしまったと聞きました。運営費の件は、ママ友から幼稚園へ『あまりにも運営費が高すぎる』と抗議したところ、『運営費は全て幼稚園で出している』と回答されたことで、事件の内容が発覚しています。現在、警察へ被害を届けるか、幼稚園内で検討されているようですよ。三咲さん、運営費だけではありません。ママ友の中でも経済的に余裕のある人々に取り入って、お金を要求していますよね。お子様の受験のための塾を、高額な金額で入学させていたと報告を受けています。そして、得たお金の一部を、魚谷の資金や三咲さんの家のリフォーム費用、高級レストランでの食事に使っていたことも調査済みです。」
私は冷ややかな目で、三咲さんと芳吉さんを見下ろす。
「分かったわよ。そこまで言うなら返します。今まで奪ったお金は、全て返しますから。」
「三咲は、親の七光で生きてきただけなんだな。実に笑い物だな。」
三咲さんは、和田組長の言葉が図星をついていたため、言い返せもしないようだった。
「こんな親子に、今後の魚谷組は任せられん。レイナ、お前は今までこの親子の不正を見てきた。レイナ自身で、2人の処遇を決めていいぞ。」
「かしこまりました。三咲さん、あなたがしてきたことは、当然許されることではないわ。もちろん、組長の芳吉さんも見逃していたので同罪です。」
「今までのレイナさんにしてきた振る舞いですが、その件は誠に申し訳ありませんでした。」
芳吉さんは頭を床に擦りつけ、土下座を繰り返した。
「お前も謝らないか。」
すると、三咲さんの頭を掴み、私へ土下座をさせた。
「お父さん、痛い。レイナさんにちょっと意地悪言ったぐらいで、土下座なんてするものですか?」
三咲さんと芳吉さんは、なぜここに全国のヤクザのトップたちが集まっているのか理解していなかった。
私が怒っているのは、三咲さんが今してきた私への嫌がらせに対して怒っているんだと思っている。
私は、この人たちが魚谷を今まで運営してきたのかと思うと、怒りを通り越して呆れてしまった。
「三咲さん、芳吉さん、あなたたちは何も分かっていないんですね。」
「なんだ、まだ謝り足りないというのか。示談金が必要なのか。」
周囲の全国トップのヤクザたちも、冷ややかに2人を見つめている。
「はあ。」
私はわざとらしく大げさにため息をつき、和田組長に目配せをした。
和田組長は、静かに頷く。
「私たちは、魚谷が一般人から不正に巻き上げたお金で組を運営していたことに対して、制裁を行うと言っているんです。」
三咲さんたちは黙り込んでしまったため、私はあるところへ電話をかけた。
「会長ですか?お忙しいところすみません。これから海外へ渡航する予定のものを2名確保しましたので、迎えの車を用意してください。はい、お願いします。」
「海外って、海外マフィアのところってこと?映画みたいじゃない?ねえ、レイナさん、嘘よね。私たち、これから海外マフィアのところに行かなければならないの。」
三咲さんがあまりにも極道の世界に対して無知だったため、周りにいたヤクザたちは笑いがこらえられず、吹き出してしまっていた。
私は電話を切り、ゆっくりと2人を見据える。
「魚谷は今日で消えます。2人には2つの道を与えます。1つは、ママ友たちや保護者から不正に巻き上げたお金を私道のために使い、また魚谷の資金にしていた全ての証拠を警察に提出し、詐欺で逮捕される。もう1つは、もう2度と日本に戻って来られないように、海外マフィアの超会長に身柄を預けるか、です。」
「そんなの、どっちも嫌よ。」
よく言ったものの、ヤクザたちの冷たい視線を感じた三咲さんは、すぐに黙ってしまった。
「今まであなたたちがしてきたことに比べたら、どっちも軽いと思いますよ。」
三咲さんと芳吉さんは、恐怖で顔を見合わせる。
「刑務所の中で耐えればいいと思ってますか?」
私は意地の悪い笑みを浮かべる。
「そうよ。刑務所の方がマシだわ。日本に帰って来られなくなるより、全然いいわ。」
「刑務所には、和田組の組員が300人以上もいますよ。それでもいいんですか?」
「どういうことよ。」
「刑務所の看守は、和田組のものよ。そして、組の中でも武闘派が配置されているわ。そして、三咲さんたちの悪事は、これから行くであろう刑務所に情報として共有させてもらってる。」
「そこまでしなくたっていいじゃない。」
三咲さんたちは顔を見合わせ、今にも泣き出しそうだ。
「刑務所に入ったら、昼も夜も休む暇はない。トイレだって、逃げ込める場所はない。海外に行くよりも、地獄の日々を送ることになるかもしれないわね。これから、今まで不正にお金を要求してきたママ友たちが面会に来て、看守たちに土下座を強要されるかもしれないわね。刑務所では、三咲さんたちは人間以下の生活を送ることになるでしょうね。」
もう何も言えなくなったのか、三咲さんと芳吉さんは青ざめた顔で私を見つめていた。
「さあ、どうします?警察に電話しますか?夏は炎天下の中、冬は冷たい風の中で中庭の掃除をさせられ、ゴミはいつまでも消えないかもしれないですね。周りの囚人から、せっかく集めたゴミを頭から被せられる。そんな生活に耐えられそうですか?」
選択を迫られる三咲さんは、緊張しているのか肩で息をして、今にも倒れてしまいそうだ。
「でも、不正にお金を要求されてきたママ友や、貧乏人と言われ続けた私に比べたら、刑務所に入るのは軽いと思う。」
「何でも言うことを聞きますから、警察へ突き出すのはやめてもらえませんか?」
「無理です。警察に行くか、海外に行くかの2択です。」
「そ、そうですか。」
「刑務所の食事の時間も地獄になるでしょうね。毎食必ず、和田組のものが三咲さんたちの隣に座って監視するでしょう。そして、食事にも何が入ってるかわからないから、怯えながら食事することになるわね。あと、お風呂の時間もきっと三咲さんたちが最後になるでしょう。その時は、水のように冷たいお風呂で過ごすと思うわ。」
「そんなの、耐えられるわけないでしょ。」
「三咲さんは、不正にお金を巻き上げたんですよ。当たり前に刑務所へ入るに決まってるじゃないですか。う、最後に寝る時も、和田組のものが監視しているから、きっと寝る間もないでしょう。」
三咲さんたちは愕然とし、絶望した表情を浮かべた。
「海外よりは楽だと考えているみたいなので、それでは警察へ連絡しますね。」
そう言って、私は携帯を取り出し、警察に連絡しようとしたところ。
「海外だ。海外へ俺たちを飛ばしてください。」
芳吉さんが割り込んできた。
「でもお父さん、海外って言ったって、どんなところかわからないじゃない。」
「そんなの知るか。刑務所の中じゃ、確実に地獄だ。さっきレイナさんから聞いたのだって、嫌がらせなんてレベルじゃねえぞ。」
「じゃあ、海外でいいんですね。」
「はい。お願いします。日本の刑務所だけは勘弁してください。」
「そうか。そうか。ようやく海外へ行く気になったか。」
和田組長はにやりと笑って、私に言った。
その時、宴会場の外に、海外マフィアの車が入ってきた音がした。
「超会長はとても大らかな人よ。三咲さんたちのようにクズな人間も、心よく受け入れてくれるわ。」
「あ、よかった。助かったのね。」
「ち、ちょっと待ってくださいよ。海外マフィアのとこで、俺らはどうなるんですか?」
魚谷の組長の方が、まともな質問ができるようだ。
和田組長が笑いを漏らすと、それに釣られて周りのヤクザたちも爆笑する。
「そういえば、超会長のとこでの暮らしを話さないとですね。海外マフィアには、法律なんてないようなものです。もちろん、三咲さんたちの人権も当然ありません。まず最初の洗礼は、超会長が所有するビルの地下で24時間労働させられます。」
「24時間?刑務所よりもきついじゃない。」
「ビルの地下ですから、当然窓もありません。それに24時間休みなく働かされるため、逃げようものなら監視員に捕らえられるでしょうね。逃げようったって、出口は1つしかないので、逃げることもできませんが。」
芳吉さんは、私の話を聞き号泣した。
「会長は、特に傲慢な人間が嫌いだとか。三咲さんみたいに、親の肩書きを振りかざしたような人は、特別扱いになりそうですよ。楽しみですね。それに、言葉も通じない国で一生奴隷として働き、もちろん日本には2度と戻れない。パスポートも取り上げられ、三咲さんたちの情報は世界中のマフィアに共有されます。おそらく超会長は、面倒見のいい人と聞いているので、三咲さんたちが働けなくなるまで、面倒は見てくれると思いますよ。」
「最後までって、どういうことよ。」
「3年もビルの地下に収容されて、24時間働き続ければ、人間なんてボロボロになりますよ。手足は動かなくなり、そして心も壊れる。ただの人形より質が悪い廃人になるでしょうね。超会長は、無駄を嫌う人でもあるそうです。動けなくなった三咲さんたちの体の全てをバラバラにし、余すことなく臓器を売り捌かれることになるでしょうね。」
「そんなの、ひどすぎるわ。」
「ひどすぎるですって?ママ友から巻き上げたお金を不正に使って、魚谷の資金にしていたんです。極道の世界を知っているのに、極道に背いたらどうなるか、想像できませんでしたか?」
決断を迫られた三咲さんたちは、ついに絶叫した。
「やっぱり刑務所でお願いします。刑務所に入れてください。刑務所、刑務所がいいです。お願いしますから、生かしてください。もう悪いことはしない。」
三咲さんの態度は、さっきまでと大違いだ。
「20年でも30年でも服役します。今までご迷惑をかけた方々に、毎日土下座しますから。他の受刑者の相手でも、何でもします。」
三咲さんたちは床に体を擦りつけ、涙と鼻水を垂らしながら懇願する。
「もう手遅れよ。さっきの車が到着した音が聞こえたでしょう。今までの報いを受けなさい。」
三咲さんたちは泣き叫びながら、海外マフィアの車に押し込まれ、そのまま姿を消した。
数日後、私の元に「アジアの某国で、日本人の臓器が高値で売買されている」という噂が届いた。
「今後、魚谷と同じようなことをする者がいれば、同じ運命を辿ると伝えろ。いいな。」
和田組長は、私にきつく命じた。
「承知いたしました。」
「レイナが三咲さんからの嫌がらせに耐えてくれたおかげで、極道が汚されることなくて本当に助かったよ。ありがとう。」
「とんでもございません。ヤクザの肩書きを振りかざして一般人を巻き込むという卑劣な行為を、見逃すわけにはいきません。」
「その調子で、今後も頼むぞ。」
「はい、和田組長。」
1週間後、三咲さんたちが見送られた時のお金で、宴会場のキャンセル料の500万円を無事支払うことができた。
そして私は1ヶ月後、他のママ友たちと改めて懇親会を開き、三咲さんのいない平和な時間を満喫した。
「これでようやく、穏やかに暮らせるわね。」
私は静かに微笑みながら、息子の手を握った。



