「お仕事ないって言ってたよ。」
ニコニコ笑うまどかを前に、寝ぼけまなこの俺は混乱していた。
「どういうこと?誰が言ってたの?」
「ひかりちゃんだよ。昨日お電話で言ってたよ。」
「はあ?」
俺の名前は高杉翔太。3歳の娘を育てるシングルファザーだ。
娘の名前はまどか。明るくて人見知りしない、天真爛漫な性格の子だ。
最愛の妻をなくした俺がここまでやってこられたのは、全てまどかの無邪気な明るさのおかげだった。
俺の妻は、まどかが1歳の誕生日を迎えた次の日に、星になってしまった。
病気が分かってから半年。あまりに早い別れに俺は呆然とし、悪い夢を見ているようだった。
病に犯された妻は、最後の瞬間まで俺たちのために笑顔を絶やさず、強く生きた。
それに引き換え、俺は何もできなかった。自分の無力さに打ちひしがれ、深い喪失感を抱えたまま暗いトンネルの中を彷徨っていた。
「パパ、パパ」とすがりついてくる小さなまどかに、笑顔を返すことすらできなくなっていた。
そんな俺を見かねた実家の母が同居を提案してくれ、田舎から出てきてくれた。
母に助けられながら、そして無邪気なまどかに支えられながら、なんとかここまで来られた。
朝6時。今日もまどかの元気な声で目が覚める。
「パパ、おはよう。朝だよ。」
まどかはいつも俺のベッドに飛び込んできて、楽しそうに笑う。
俺はまどかの柔らかい髪を軽く撫で、ベッドから這い出すようにして立ち上がった。
このまままどかと一日ゆっくりしていられたらいいのだが、そうもいかない。
母が用意してくれた朝食を掻き込むように食べ、会社へ向かう。
「行ってらっしゃい、パパ。お仕事頑張ってね。」
「今日は一緒に食べられるといいね。晩御飯。」
まどかの寂しげな笑顔に後ろ髪を引かれながら、家を出た。
毎日忙しくて、まどかと話す時間もほとんどない。きっと色々と我慢しているだろうに、幼いながら俺に気を使っているのか、まどかはいつも笑顔だ。
まだ3歳だが大人びたところがあり、言葉も達者なまどか。
そんなまどかに甘えているのは、父親である俺の方だった。
俺の職場は輸入品を多く扱う商社で、所属する部署では毎日様々な国から届く商品の受け入れと取引先とのやり取りに追われている。
直属の上司は女性で、俺より3つ年上の上島さん。
ビシッとスーツを着こなすとても綺麗な女性なのだが、無表情で厳しく、部署内では密かに「鬼上司」なんて言われている。
とはいえ、理不尽な人ではない。この厳しさは仕事に対する真摯な姿勢から来るものだということは、皆分かっていた。
半忙期まっただ中の今、ともすればピリピリとした雰囲気にもなりそうなのだが、上島さんのおかげでチーム一丸となって仕事に取り組めるこの環境はとてもありがたい。
「悪いんだけど、数日間は残業も覚悟した方がいいわ。休日出勤もお願いね。」
ある日の定例で、上島さんが厳しい表情で部署のみんなに伝えた。
休日出勤か。俺は数日前にまどかと言われたことを思い出していた。
「パパ、来週の日曜日、絶対見に来てね。」
まどかがカレンダーを指差しながら、キラキラした目で俺を見つめた。
来週の日曜日、その日はまどかのピアノの発表会だった。
まどかの強い希望で最近習い始めたばかりのピアノ。初めての発表会とあり、張り切っているのは知っていた。
「うーん。行きたいんだけど、仕事がな。」
俺は思わず呟いてしまった。
「え、行けないの?」
察しのいいまどかはすぐに理解したようで、うるうると瞳を潤ませた。
「あ、いや、ごめん。まだわかんない。お仕事の人に聞いてみるね。パパも頑張るよ。」
慌てて取り繕ったが、まどかはしょんぼりと俯いたまま、とぼとぼと自分の部屋に戻っていった。
「ちょっとした仕事の忙しさ、なんとかならないのかい。まどかはパパに見てもらうんだって、毎日一生懸命練習してるのよ。」
まどかが部屋に入るのを確認した母が、小声で俺に耳打ちした。
「なんとかって、俺だってそうしたいさ。でも今半忙期だし、俺だけ休みをもらうなんて、あの鬼上司が許してくれるわけないよ。」
思うようにならない苛立ちに、思わず声を荒げてしまった。
「鬼上司って、前に話してた上島ひかりさんって方かい?」
「ああ、鬼のように厳しい上司がいるって言っただろ。」
「そうかい。仕事なら仕方ないわね。まどかには私から何とか言っておくわ。」
母は残念そうに肩を落とした。
噂をすれば、上島さんから電話だ。
けたたましく音を立てたスマホの画面には「上島ひかり」の文字。
「ああ、はい。その資料なら俺のデスクにあります。確か引き出しの一番上に。はい、はい。わかりました。お疲れ様です。失礼します。」
時計の針は22時を指していたが、上島さんはまだ残業しているようだった。
「はあ。」
どっと疲れを感じた俺はソファーに倒れ込み、スマホを放り出す。
だんだんとまぶたが重くなってきて、気がつけば眠りについていた。
「パパ、起きて。こんなところで寝てたの?風邪引くよ。」
まどかに頬をペチペチと叩かれ、目が覚めた俺は眩しい光に目を細める。
あれ、もう朝か。やばい、会社行かなきゃ。日曜日にまどかの発表会に行くためにも、早いところ仕事を片付けておかなきゃ。
そう思いながら慌てて準備をしていると――
「パパ、日曜日、お仕事お休みしていいって言ってたよ。良かったね。発表会、来られるね!」
まどかが嬉しそうに俺に抱きついてきた。
「お仕事、ないって言ってた。」
「ん?どういうこと?誰が言ってたの?」
ニコニコするまどかを前に、寝ぼけまなこの俺はさらに混乱していた。
「ひかりちゃんだよ。昨日お電話で言ってたよ。」
「は?ひかりちゃんって誰?まさか上島さん?」
まどかが俺の上司と電話で話すなんてこと、あるか?いや、ないだろう。
「ひかりちゃんとお電話したって、どういうこと?」
努めて冷静にまどかに聞いてみた。すると――
「パパのスマホでお電話したの。ひかりちゃん、優しかったよ。鬼なんかじゃなかったよ。日曜日、ピアノの発表会あるからパパはお仕事できませんって言ったら、お休みしていいって。」
そう言って嬉しそうに飛び跳ねた。
どうもまどかは昨日、俺と母が話しているのを聞いていたらしい。
さらに俺が寝ている間、放置していたスマホの着信履歴から上島さんの名前を見つけ、電話したというのだ。
「まどか、ひらがな読めるもん。ひかりって書いてあったの、分かったの?」
得意げに鼻の穴を膨らませるが、俺は背中に変な汗が伝うのを感じた。
慌てて履歴を見ると、確かに上島さんに発信している。しかも15分間も。
何を話してたんだ。
全く、子供という生き物は何をしでかすかわからないものだ。
まだ幼いと思っていたまどかだが、スマホの操作も簡単にこなし、自分の意思で俺の上司と話をするだなんて。
「大人の会話や行動をよく見てるものよね、子供って。」
母も呆れたように笑いながら言った。
「感心してる場合じゃないよ。上島さんに謝らなきゃ。」
俺はビクビクしながら会社に向かった。
「上島さん、すみません。うちの娘が電話したそうで。」
出社してすぐ上島さんの元へ行って頭を下げた俺。
だけど上島さんは、表情を変えることなく――
「日曜日は娘さんの発表会に行ってあげてください。これは課長命令です。」
それだけ言って、会議室へと入っていった。
なんだか気まずいし、忙しい中俺だけ休みをもらうのも申し訳ないしで、日報を書きながら自分のデスクに座る。
同僚たちは世話しなく動き回り、電話も鳴りっぱなしだ。
「こりゃ休みなしだな。日曜も出勤でやるしかない。」
なんて声も聞こえてくる。
俺は会議を終え戻ってきた上島さんの元に走った。
「娘が何て言ったかわかりませんが、俺、日曜日も仕事に出ますから。うちの事情なんて関係ありません。この半忙期に休むわけにはいかないんです。」
そう言ってもう一度頭を下げた。
もちろんまどかの晴れ姿は見たい。だがそれよりも、このチームワークを壊すのが怖かった。
だけど――
「あなたの代わりはいくらでもいるわ。でも、まどかちゃんのパパは、高杉君、あなただけでしょう。」
上島さんは強い瞳で俺をじっと見つめた。
「あなた一人くらいいなくても、どうにでもなるわ。まどかちゃんを悲しませないで。私も責任感じちゃうから。」
そう言ってふっと笑う上島さん。
なんだか眩しく見えた。
こうして次の日曜日、上島さんが休みをくれたおかげで、俺は無事まどかの初めての発表会を見に行くことができた。
まどかは大喜びだ。
発表会の後は、俺と母とまどかで久しぶりに外食。
まどかは終始ご機嫌で、大好物のハンバーグを美味しそうに頬張った。
こんなに穏やかで幸せな気持ちになれたのは、いつぶりだろうか。
妻をなくし、慣れない家事と子育て、そして仕事に必死だった毎日。
俺なりに頑張っては来たけれど、寂しがり屋のまどかの気持ちを考えると申し訳なさで胸がいっぱいになる。
こうやってふと立ち止まり、振り返ることができたのも、寛大な心を持って対応してくれた上島課長のおかげだ。
休み明け、俺はすぐに上島さんにお礼を言いに行った。
「課長、おかげ様で娘の晴れ姿を見ることができました。忙しい中お休みいただき、ありがとうございます。ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
そう言って頭を下げる俺に、上島さんは――
「まどかちゃん、喜んでたんじゃない?良かったわね。」
そう言って、普段見たことのないような柔和な笑顔を見せた。
「え?ああ、はい。まあ、そうですね。」
思いがけず優しい笑顔を目の当たりにした俺は、ドキッとしてうまく言葉が出てこなくなった。
「仕事も大切だけど、家族も大切にしなきゃね。まどかちゃん、いくつなの?まだ小さいんでしょ?きっと寂しいんじゃないかしら。」
いつも事務的な話しかしない上島さんが、こんなにリラックスした様子で話してくれたことがあっただろうか。
俺は戸惑いながら返事をした。
「もうすぐ4歳です。母親がいない分、我慢させてるところは多いと思います。俺が母親の分まで頑張らなきゃいけないんですけど、なかなか。」
上島さんは俺の話を聞いて目を丸くした。
「え、まだそんなに小さいの?すごくしっかりお話ししてたから、もっと大きなお子さんかと思ってたわ。」
まどか、一体上島さんとどんな話をしたんだろう。
「パパは日曜日に大事な用事があるからお休みさせてくださいって言うのよ。大事な用事って何?って聞いたら、初めてのピアノの発表会があるって言うじゃない。私、びっくりしちゃって。可愛い娘さんの発表会に行かせないなんて、それこそ鬼よね。」
そう言って上島さんはクスクスと笑った。
「お、鬼?」
恐る恐る聞き返すと――
「まどかちゃんに、ひかりちゃんは鬼上司ですって言われたの。」
おかしそうに大きな口を開けて笑う上島さんだったが、俺はじんわりと額に汗が滲んできた。
「す、すみません。」
慌てて謝る俺に――
「いいのよ。車内でそう言われてるってことは、うすうす知ってたし。仕事第一で愛想笑いもできないから、そう思われて当然よ。この不器用なところ直したいんだけど、仕事に集中しちゃうとついね。」
上島さんは照れ臭そうに頭を掻いた。
それから数週間が経ち――
「上島課長、なんだか変わったわよね。」
「うんうん。彼氏でもできたのかしら。」
「なんだか優しくなった気がする。」
車内でこんなことが囁かれるようになった。
無表情で厳しかった上島さんが変わったと、みんな噂している。
確かに優しくなったよな。
俺はその理由が知りたかった。「彼氏ができた」なんていう噂の真偽を確かめたかった。そう思う自分に戸惑いながら――
「上島課長。」
ある日の業務後、俺は意を決して上島さんに声をかけた。
「あら、高杉君。まどかちゃんは元気?」
上島さんは明るい笑顔で返してくれた。
そして……
「そうだ。ちょうど良かった。これ、まどかちゃんにプレゼントしようと思って持ってきたの。」
そう言ってバッグから取り出したのは、まどかが大好きなアニメキャラクターのマスコット人形。
「え、まどかが一番好きなキャラじゃないですか。」
どうしてそんな話を上島さんとしたことはない。まどかの好きなキャラを知ってるわけがない。偶然にしてはできすぎている。
しかもまどかのお気に入りは、そのキャラの中でもレアキャラ。グッズもなかなか売っていないのだ。
「最近、よく電話でお話するのよ、まどかちゃんと。これが好きだって聞いたから、探してたの。やっと見つけたからプレゼントしたくって。」
あっけらかんとした表情で話す上島さんだったが、俺は頭が真っ白になった。
「最近、よく……電話で話す?」
「ええ、あなたのスマホからね。おしゃべりしたいらしくって、まどかちゃんからよく電話してきてくれるの。私のこと『ひかりちゃん』なんて呼んでくれて、いろんなことおしゃべりして、なんだか小さなお友達ができたみたいで嬉しいわ。」
上島さんはまるで少女のような笑顔で言った。
「それに、まどかちゃん、パパのあんなことやこんなこと、色々と教えてくれるわよ。」
いたずらっぽく笑う上島さんに、カーッと顔が赤くなってしまった。
「椎茸、食べられないんですってね。それにお化け屋敷が大の苦手。暗いところも苦手で、寝る時はいつも明かりをつけて寝るとか。」
まどかのやつ、何をペラペラ喋ってるんだ。しかも会社の上司に。
俺は顔から火が出る思いで、「ちょ、ちょっとその辺で勘弁してください」と言葉を絞り出した。
「でね、もしよかったらなんだけど――」
上島さんは言いにくそうに俺を覗き込んだ。
「まどかちゃん、パパと私と3人で遊園地に行きたいって言うのよ。」
3人で遊園地。
そういえば、まどかは保育園の帰りに他の親子連れを羨ましそうに眺めてたっけ。
「どうしてうちはパパだけなんだ」って泣かれたこともある。
小さかったまどかに母親の記憶はないし、「なくなった」って話はしてるが、どこまで理解しているのか分からない。
ただ、甘えるべきママという存在が自分にはいないという事実が、まどかを苦しめているようだった。
まどかの本音を痛いほど感じた俺は、その気持ちを尊重したいと思った。
上司である上島さんとプライベートで、しかも娘と3人で会うというのもなかなか勇気がいることだったが、上島さんの笑顔が俺の背中を押してくれた。
半忙期も過ぎたある日の日曜日、俺はまどかと上島さんと共に、郊外の遊園地に来ていた。
初対面のはずの2人だが、電話で会話を交わしていたからか、すぐに息が合った。
「ひかりちゃん」「まどかちゃん」と呼び合いながらはしゃぎ回る2人を、なんだか信じられない気持ちで眺めていた。
「お写真撮りましょうか。せっかくですから、ご家族皆さんで。」
2人の写真を撮ってばかりの俺に、親切なスタッフが声をかけてくれた。
「ああ、お願いします。」
俺は何も考えず持っていたスマホを渡し、メリーゴーランドに乗る2人に近づいた。
「お母さん、もっとお父さんの近くに寄ってください。お嬢さんを囲むように。」
「お母さん」と呼ばれた上島さんが、一瞬戸惑ったのを俺は見逃さなかった。
「ひかりちゃん、お母さんだって。」
まどかも嬉しかったのか、上島さんを見上げて笑っている。
亡くなった妻と経験できなかった「親子3人での遊園地」。今、上島さんと楽しんでいる。
それが不思議と違和感なく、自然に受け入れられている自分に驚いていた。
俺たちはこれからもずっと一緒にいる。なんだかそんな気がしていた。
一日中遊園地を楽しみ、レストランで夕食を取った後、家に着いた俺たち。
疲れたのか後部座席でぐっすりと眠ってしまったまどかを見つめ、助手席の上島さんが口を開いた。
「とっても幸せな時間だったわ。私ね、実は子供ってずっと苦手だったの。どう接していいかわからなくて。でも、まどかちゃんは違う。初めて会った気がしないの。またこうやって会ったりできるかしら。私はそうしたいのだけど。」
遠慮がちに俺を見る上島さん。
ちょうど信号が赤になり、ブレーキを踏んだ俺は、たまらず上島さんの方に体を向けた。
上目遣いで俺を見る上島さんをまっすぐに見つめ――
「俺もそうしたいと思ってました。3人の時間が、自分でも驚くほど心地よくて。これからも俺たちはずっとこうしていられるんじゃないかって、錯覚するほどでした。」
「どうして、錯覚って思うの?現実よ。私たちはきっとこれからも一緒にいる。そんな気がするの。」
上島さんはそう言うと、ハンドルに置いた俺の左手に手を伸ばした。
柔らかい上島さんの手の温かさを感じながら――
「不思議ですね。俺もそう思います。」
そう言って上島さんの手を握り返した。
その時――
「うーん。ひかりちゃん、早くこっちこっち。」
体をよじりながら寝言を口にしたまどか。
はは、夢の中でも上島さんと遊んでるみたいだな。嬉しいな。
信号が青になり、動き出した車の中で、俺たちは笑い合った。
それから俺たちは週末ごとに会うようになった。
まどかも嬉しそうに「今週のお休みにはどこに行く?」「水族館」「動物園もいいなあ」なんて楽しみにしているようだ。
もちろん俺も。会社で毎日顔を合わせてはいるが、週末の上島さんは幸せそうで穏やかで、俺にとってすごく愛しい存在になっていた。
これからもずっと一緒にいたい。上島さんと本当の家族になりたい。
そう思うのに、時間はかからなかった。
プロポーズの決意をしたのは、それから半年後のこと。
まどかの目の前で、俺は思いを告げた。
「ひかりさん、俺と結婚してください。あなたと家族になりたいです。」
花束を抱え、ひざまずいて告白する俺に、まどかも同じように頭を下げた。
「ひかりちゃん、私のママになってください。」
「高杉君、まどかちゃん……」
ひかりさんは感極まった様子で、ポロポロと涙をこぼした。
こうして、尊敬する厳しい上司だったひかりさんが、俺の妻となった。
もしもまどかがあの時、ひかりさんに電話をかけていなければ。
もしもまどかが「3人で遊園地に行きたい」なんて言い出さなければ。
確実に今の俺たちはないだろう。
ひかりさんは、亡くなった俺の妻の仏壇に手を合わせた。
「まどかちゃんを幸せにすると、お約束します。勝手ですが、今後とも私たちのことを見守ってくださると嬉しいです。よろしくお願いします。」
そう言って、丁寧に頭を下げていた。
「まあまあ、早く早く。一緒に遊ぼうよ。」
庭でまどかが手招きしている。
「今行くよ。」
俺は日の下ではしゃぐ2人を見ながら、これ以上ない幸せを感じていた。
ありがとうな。俺からも頑張るよ。
家の中の仏壇の写真の妻が、少し微笑んだ気がした。



