「この人をそのかしてパーティーに参加したのね」――二十七年前、私の妹と元夫に夫を寝取られた。二人は今日も、息子の自慢話を大声で続けていた。年収五千万のエリートだと、得意げに笑いながら。私は何も言わずに立ち去ろうとした。でも、その瞬間、社長秘書が私に耳打ちした。「あなたたちの息子は、本日付けで解雇されたそうですよ」二人の顔が凍りついた。私が誰なのか、まだ知らないようだ。今、この場で明かされる真…

「この人をそのかしてパーティーに参加したのね」――二十七年前、私の妹と元夫に夫を寝取られた。二人は今日も、息子の自慢話を大声で続けていた。年収五千万のエリートだと、得意げに笑いながら。私は何も言わずに立ち去ろうとした。でも、その瞬間、社長秘書が私に耳打ちした。「あなたたちの息子は、本日付けで解雇されたそうですよ」二人の顔が凍りついた。私が誰なのか、まだ知らないようだ。今、この場で明かされる真...

夫の高は、私が調合したサンプル香水の匂いをまとっていた。それは世界に二つとないもの。一つは私が職場に置き、もう一つは実家の母に贈ったものだ。母に確認すると、すみれが勝手に持ち出したという。結婚して三年、私はようやく確信した。高の浮気相手は、私の妹のすみれだ。

私は高を問い詰めた。
「すみれと会ってるの?」
「何言ってんだ。そんなわけないだろ」
高は目を合わせずに否定した。私はすみれの同級生に協力を頼み、二人の行動を調べた。すると、すみれと男が密会する動画が届いた。男の顔は映っていなかったが、腕時計は結婚記念日に私が高へ贈ったものだった。

ある週末、高はゴルフに行くと言った。大きなボストンバッグまで持って。
「ゴルフだけなのに、そんなに荷物がいるの?」
「汗をかくから、風呂に寄って行こうと思って」
嘘だ。私は高を尾行した。車はゴルフ場とは反対方向へ走り、すみれが住むマンションへ。すみれを乗せた車は、隣県の温泉旅館へと入っていった。

私は二人の部屋の前に立った。中から声が聞こえる。
「最近、妻が疑ってるんだ」
「バレてもいいじゃない。姉さんなんて、早く捨てちゃえばいいのに」
私はドアを勢いよく開けた。二人は驚いた顔をした。すみれは高に絡みつき、勝ち誇ったように笑う。その時、三歳ほどの男の子がすみれに「ママ」と抱きついてきた。高にそっくりの顔をした男の子だった。
「この子は、私と高さんの子供よ」
すみれは笑った。高は何も言わない。私は呆然とその場を後にした。

両親に全てを打ち明けると、父は激怒し、二人を呼びつけた。
「姉の夫を寝取るなんて、何を考えてるんだ!」
「だって、好きになっちゃったんだから仕方ないでしょ」
すみれは反省の色もなく、高は「すみれを選ぶ」と言った。私は離婚を決意した。高が慰謝料を申し出たが、私は断った。裏切った男の金など、受け取りたくなかった。

あれから二十七年。外資系金融機関のパーティーに招かれた私は、そこで高とすみれに再会した。すみれは息子の自慢を大声で始めた。
「うちの息子は、ここのシニアマネージャーで年収五千万なのよ!」
「君を選んで正解だったよ。老後も安泰だ」
高も得意げに笑う。周囲の視線に気づかず、二人は高笑いを続けた。その時、社長秘書の園田が近づいてきた。
「奥様、お時間です」
「ええ、ありがとう」
「この人をそのかして、パーティーに参加したのね」
すみれが吐き捨てた。園田は二人を冷ややかに見た。
「あなたたちの息子は、本日付けで解雇されたそうですよ」

そう、私の夫はこの会社の社長、正直だった。高と離婚してから二年後、私は正直と再婚していた。社長夫人として、私はスピーチのためにステージへ上がった。会場からは拍手が湧く。すみれと高は、青ざめた顔で私を見つめていた。

スピーチを終えた私に、二人はすがりついてきた。
「お姉さま、うちの息子を役員候補に推薦してやってくれ!」
「申し訳ないけど、この会社は忖度しないわ。あなたたちとは、もう他人よ」
その直後、正直が壇上でマイクを握った。
「当社の信頼を揺るがす重大な不正行為が発覚しました。関与した社員には、厳重な処分を下します」

園田が私に耳打ちした。
「不正を行った社員は、あの二人の息子です」
二人の息子は、顧客から預かった資産を横領し、取引先からキックバックを受け取っていた。総額は一億円。数日後、彼は逮捕され、実刑が言い渡された。高は役員の座を追われ、自主退職に追い込まれた。すみれと高は家と車を売り払い、どこか遠い町へ引っ越していった。

それから数年後、私は正直と温泉地を訪れていた。地元の市場で買い物をしていると、泥だらけで段ボールを運ぶ女性とぶつかった。女性が顔を上げると、すみれだった。すみれは私を見るなり、顔を覆って路地の奥へ逃げていった。
「知り合いか?」
「いいえ、誰だったかしら」
私は見なかったことにして、正直と旅行を楽しんだ。私の人生に、もう妹はいない。

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