「火政府として役に立たないなら家賃35万円を支払ってもらおうか」――息子にそう怒鳴られたのは、私が購入した都内の高級マンションでのことだった。起業を応援すると言って買ってやった部屋で、家賃も払わず好き放題暮らしているのは自分たちなのに。生活費も家事も全部押し付けておいて、就職を勧めただけでこの扱いか。私は迷わず「出ていくわ」と伝え、その足で不動産屋へ向かった。息子たちが住むマンションを売却す…

「火政府として役に立たないなら家賃35万円を支払ってもらおうか」――息子にそう怒鳴られたのは、私が購入した都内の高級マンションでのことだった。起業を応援すると言って買ってやった部屋で、家賃も払わず好き放題暮らしているのは自分たちなのに。生活費も家事も全部押し付けておいて、就職を勧めただけでこの扱いか。私は迷わず「出ていくわ」と伝え、その足で不動産屋へ向かった。息子たちが住むマンションを売却す...

私は65歳。数年前に夫を亡くし、今はパートをしながら質素に一人で暮らしている。夫は資産家で、私に十分な遺産を残してくれた。息子の国は38歳。昔から何をやっても長続きしない性格で、就職してもすぐに辞めてしまった。28歳で千寿と結婚してからは少し落ち着いたように見えた。

ある日、国と千寿が訪ねてきて、こう言った。「千寿と一緒に最先端のWebマーケティングコンサルティング業を始めようと思ってるんだ」。私には内容が理解できなかったが、息子が本気で勉強して起業するという姿が嬉しくて、応援したいと思った。しかし、彼らは事業資金を要求してきた。夫の遺言で「親族といえども金の貸し借りはするな」と言われていたため断ると、今度は「事務所としてマンションを購入してほしい」と懇願された。私は都内の高級マンションを一括で購入し、ローンは私が支払うことにした。事業が軌道に乗ったら買い取ってもらえばいいと考えたからだ。

しかし、契約の手続きは全て私に丸投げされ、事業が始まってからは連絡も減っていった。2年後、気になってマンションを訪ねると、部屋中に生ゴミが放置され、排水溝にはカビが生えている有様だった。国は「今が勝負時なんだ。家事にかけてる時間なんかない」と言い放つ。何度注意しても部屋は汚れていくばかりで、千寿に家事をするよう促すと、今度は「お母さんが同居して家事をやってください。そしたら問題は全て解決です」と言われた。私は仕方なく彼らとの同居を始めた。

同居を始めてすぐ、パートから帰るとリビングから2人の声が聞こえた。「これで財布と家政婦が手に入ったな」「面倒な家事は全部お母さんにやってもらって私たちは楽しみましょう」「あの調子じゃ親父の遺産もまだ残っているはずだ」。お腹の底から怒りが湧き上がったが、2人は専門用語を並べて私を外に追い出した。私は財布の紐を固く結ぶことにした。

それでも、彼らは生活費の全てを私に負担させ、週末ごとに高額な飲食を伴う「クライアントとの接点」と称する外出を繰り返していた。同居して2年が経っても事業は一向に安定しない。私は夫の人脈を使って国の就職先を紹介したが、国は激怒した。「俺たちの事業が信用できないのか?」「火政府として役に立たないなら家賃35万円を支払ってもらおうか。それが嫌なら今すぐこの家から出ていけ」と怒鳴られた。

私が購入したマンションで、家賃も払わずに好き勝手に過ごしているのは自分たちだというのに。私は「わかった。それじゃあここから出ていくわ」と即座に決断した。荷物は旅行鞄一つに収まるほどしかなかった。元の家に戻ったが、年齢を考えると一人で生活していくには段差や階段が気になる。私はシェアハウスへの入居を決め、夫と暮らした家を売却した。

その頃、国たちの事業が詐欺ではないかという噂が親族の間で広がっていた。私も事業の実態調査を行うと、なんと事業開始の届けすら出されていないことが判明した。国たちは最初から親族を騙して資金を搾取するために嘘をついていたのだ。国たちは私だけでなく、千寿の父である新太郎にも資金援助を求めていたが、新太郎は詐欺で訴えると追い返した。国たちの資金は、毎日のように繰り返される2人の遊興費に消えていたのだ。

私は不動産屋を訪れ、国たちが住むマンションの売却手続きを進めた。ウェブマーケティングに事務所は必要ないと聞き、すぐに買い手も見つかった。国たちには退去通告がされ、強制退去となった。

ボロボロのワゴン車でやってきた国たちは「俺たちの家を勝手に売り払うなんてひどいじゃないか」と怒鳴ったが、私は「私はあくまで会社の事務所として購入した。勝手に住みついていたのはあなたたち」と突き放した。国たちは新たな住まいを要求し、慰謝料を払えと脅してきたが、その時、新太郎が駆けつけた。実は新太郎は、私が住むシェアハウスの清掃管理会社の社長だった。

新太郎はその場で千寿に勘当を言い渡した。「お前たちは親戚たちを騙して金を奪い取ったんだ。みんな怒りが収まらず、お前たちを詐欺で訴えると息巻いている」。私も「あなたはもう私の息子じゃないわ。親戚たちにお金を全て返すまで身内だなんて思わないで」と言い放った。

さらに調査を進めると、国が夫から相続した莫大な遺産も全て遊興費で使い果たしていたことが分かった。その資金が尽きたからこそ、詐欺を思いついたのだ。

その後、国たちは私が住むシェアハウスへの入居を求めたが、高齢者向けの規約により断られた。仕方なく安アパートを借りたようだが、反省する気配はなかった。数日後、私の郵便受けに「今すぐ100万円を振り込め。従わなければ命も保証しない」という脅迫文が届いた。他の入居者のポストには私を誹謗中傷する文書が投函されていた。国たちの仕業に違いない。

国たちは新太郎への報復も試みたが、これは失敗。逃走中にスマホを落としていったのだ。私は弁護士に相談し、証拠を掴むため玄関に高感度のトレイルカメラを設置した。翌夜、国がやってきて玄関に生ゴミを塗り付ける様子が鮮明なカラー映像で記録された。私は証拠を弁護士に確認してもらい、警察に被害届を提出。親族たちと共に詐欺の容疑でも告訴し、警察による本格的な捜査が始まった。

数日後、国と千寿が逮捕された。スマホやパソコンの解析で、事業計画が架空のものであり、2人にWebマーケティングの知識すらないことが証明された。千寿は「国の指示に従っただけ」と否認したが、国は「詐欺を持ちかけたのは千寿だった」と証言。夫の遺産が尽きた国に対し、千寿が新規事業の名目で親族から資金を得ることを提案したのだ。2人のスマホからは遊興費のやり取りも浮き彫りになり、私への嫌がらせも千寿が国に指示した内容のメッセージが確認された。

2人は起訴され、裁判の結果、懲役5年の判決が下った。私は新太郎と共に、2人が親族から騙し取った資金を返済し、それぞれの遺産相続人から2人の名前を除外した。

今はシェアハウスの仲間たちと「Y時クラブ」という趣味サークルを結成し、高級Tサロンでの交流や、地域の子供たちにマナーを教えるボランティア活動をしている。新太郎とも親交を続けながら、心身共に満たされたセカンドライフを送っている。

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