夜釣りをしていたら、ボロボロの服を着た双子の少女が俺のバケツを覗き込んでいた。「お腹空いてる?」と聞くと、彼女たちは小さく頷いた。母親は1年前に離婚し、養育費ももらえないまま女手一つで子供を育てていると言う。俺は同情から魚を振る舞い、それから毎日のように彼女たちと過ごすようになった。しかし幸せな日々は突然終わりを告げる。彼女たちはこの町を去らなければならなくなったのだ。「おじちゃんも一緒に行…

夜釣りをしていたら、ボロボロの服を着た双子の少女が俺のバケツを覗き込んでいた。「お腹空いてる?」と聞くと、彼女たちは小さく頷いた。母親は1年前に離婚し、養育費ももらえないまま女手一つで子供を育てていると言う。俺は同情から魚を振る舞い、それから毎日のように彼女たちと過ごすようになった。しかし幸せな日々は突然終わりを告げる。彼女たちはこの町を去らなければならなくなったのだ。「おじちゃんも一緒に行...

俺は38歳の独身サラリーマン。仕事に追われる毎日で、結婚のチャンスもなく、気づけばこんな年になっていた。そんな俺の唯一の楽しみは夜釣りだった。仕事のことも考えず、ただ静かに水面を見つめる時間が好きだった。

ある日の深夜、いつものように湖で釣りをしていると、背後に気配を感じた。振り返ると、ボロボロの服を着た双子の少女たちが、興味深そうに俺のバケツを覗き込んでいた。

「おじさん、お魚好きなの?」

彼女たちはお腹を空かせているようで、思わず釣れた魚を一緒に食べないかと誘った。すると双子は嬉しそうに母親を呼びに行き、やがて現れたのはももこという女性だった。彼女もまた、同じように疲れ切った様子の服を着ていた。

話を聞くと、ももこは1年前に離婚し、女手一つで双子を育てているという。元夫は養育費すらまともに払わない、どうしようもない男らしい。生活は苦しく、娘たちにまともな食事を与えることすら難しい状況だった。

それから俺は、ももこたちと一緒に釣りをし、彼女が作る魚料理を食べるようになった。気づけば、それが俺の毎日の楽しみになっていた。双子の誕生日にはサプライズパーティーを開き、彼女たちが初めてケーキを食べる姿を見て、胸が温かくなった。

ももこの話を聞くうちに、俺は彼女に特別な感情を抱いていることに気づいた。しかし、幸せな日々は長くは続かなかった。ももこが実家の老朽化の問題で、この町を離れなければならなくなったのだ。

「鉄さん、ありがとうございました。私たちは、あなたに出会えて幸せでした」

別れの朝、ももこは涙を流しながらそう言った。双子も「おじちゃんも一緒に行こうよ」と泣きながら俺にすがりついたが、俺はただの他人だ。大人として、彼女たちを引き止めるわけにはいかなかった。

彼女たちを見送った後、俺は湖のほとりに残され、その場で泣き崩れた。それからの日々は、孤独との戦いだった。気を紛らわすために、湖の奥深くに古びた小屋を見つけて修繕し始めた。ももこたちが帰ってきた時に、みんなで集まれる場所を作りたかったのだ。

そんなある日、その小屋で一冊の古い日記を見つけた。そこには、かつてこの小屋に住んでいた男性の記録が綴られていた。彼もまた、災害で家族を失い、孤独に暮らしていたらしい。しかし日記には、家族との幸せな思い出と未来への希望が書かれていた。

その日記に励まされた俺は、ももこたちとの再会を信じて待ち続けることを決めた。

そして数ヶ月後、小屋での作業中に、聞き覚えのある子供の声が聞こえてきた。振り返ると、そこには有沙とさゆり、そしてももこが立っていた。

「おじさん、ただいま!」

ももこの実家の修繕が早く済み、兄夫婦がそこに住むことになったため、彼女たちはこの町に戻ってきたのだという。俺は嬉しさのあまり、彼女たちを自宅に招き、ももこに家事を手伝ってもらえないかと提案した。一緒に住むことになれば、もっとももこたちを支えられると思ったのだ。

こうして俺たちの4人暮らしが始まった。ももこへの想いを自覚した俺は、告白しようと思っていたが、なかなか切り出せずにいた。

そんな中、双子の幼稚園の運動会が開かれた。俺も一緒に参加すると、友達の1人が「おじさん誰?」と尋ねてきた。俺は自然とこう答えていた。

「おじさんは、有沙ちゃんとさゆりちゃんの新しいパパだよ」

その言葉に、ももこは驚いた表情を見せた。俺は誤魔化すように謝ったが、ももこは逆にこう言ったのだ。

「私も鉄さんのことが好きなんです。この町に戻ってきたのも、あなたがいたから」

俺はももこの手を握り、二人で双子に報告した。有沙とさゆりは、幸せそうな笑顔を見せてくれた。

それから数ヶ月後、俺たちは結婚し、本当の家族になった。ももこのお腹には、新しい命も宿っている。素敵な妻と可愛い子供たちに囲まれ、俺は今、心から幸せだと思っている。

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