夫が新居のリビングで、義母と一緒に笑いながら「お前は俺に従えばいいんだよ」と言った瞬間、私はすべてを悟った。寄生虫で無能だと言われ続けた日々。義母に作った料理を捨てられても、夫は母の味方しかしなかった。そして今日、ついに夫は言った。「エリ、今日から両親も同居させる。お前は俺に黙って従え」。私は引き出しからある書類を取り出した。義母がそれを奪い、破り捨てて勝ち誇ったとき、私は静かに告げた。「そ…

夫が新居のリビングで、義母と一緒に笑いながら「お前は俺に従えばいいんだよ」と言った瞬間、私はすべてを悟った。寄生虫で無能だと言われ続けた日々。義母に作った料理を捨てられても、夫は母の味方しかしなかった。そして今日、ついに夫は言った。「エリ、今日から両親も同居させる。お前は俺に黙って従え」。私は引き出しからある書類を取り出した。義母がそれを奪い、破り捨てて勝ち誇ったとき、私は静かに告げた。「そ...

義母が私の作った料理をゴミ箱に捨てた時、私はもう夫婦としてやっていけないと悟った。「エリさんがまともな料理を作れないから悪いんでしょ。あんな見たこともないような色のもの、誰が食べるのよ」と義母は平然と言い放った。

夫のときは義母に異常なほど従順で、まるで操り人形のようだった。何を相談しても彼は義母の肩を持ち、最終的には私が2人から責められる結果になるだけだった。

そんな日々に耐えかねた私は、従順な態度をやめて自己主張することを決めた。これが今の状況に繋がっている。

新築のタワマンを購入した直後、夫は言い放った。

「エリ、今日から両親も同居させる。そのつもりで用意しとけ」

「同居なんて初耳だけど。ときが勝手に決めたの?」

「言う必要ないからな。お前は俺に従え」

「母さんもそう思うよね。エリさんが悪いのよ。息子に寄生虫するだけで無能なんだから。嫁のくせに口応えするんじゃないわよ。嫌なら追い出すからね」

義父がいないことをいいことに、2人の態度はエスカレートする一方だった。しかし、私は取り乱すことなどなかった。

「じゃあ、今すぐ嫁をやめますね。はい、どうぞ。離婚届けです」

「離婚届けなんて用意してたのか。なかなか面白い冗談だな。どうせハッタリでしょ」

「どこまで頭が悪いのかしら。本当にバカな2人だわ。私は全て知っているというのに」

私はそう言って、引き出しから1枚の書類を取り出し、義母の前に差し出した。義母は怪しみながらもそれを受け取り、目を通す。しかし、すぐにその表情が困惑へと変わった。

「これは一体どういうことなの?こんなもの、私には全く理解できないんだけど」

義母が手にしているのは、夫に当てた3400万円の借用書だった。夫は答えられずに沈黙する。私は代わりに一歩前に出た。

「見ていただければ分かるように、それは借用書です。離婚の前に彼に貸した3400万円をきちんと返していただきたいという意味です」

義母はまるで馬鹿にするように鼻で笑った。

「なによ。頭がおかしいんじゃないの?ときが借金なんかするわけがないでしょ。あなたみたいな無能の専業主婦とは違って。この子は社長なのよ」

義母は息子である夫を、何の疑いもなく会社の経営者だと思い込んでいるらしい。その思い込みに私は呆れ、そして笑わずにはいられなかった。

「ときは私に言いました。会社を立ち上げるためにどうしても必要だ。お願いだから貸してくれと。だから3400万円を貸したんです。間違いなくときは私に借金していますよ」

「とき、あなた、嫁に借金して会社を作ったの?賛同してくれる出資者がたくさんいるし、貯金もあるって言っていたじゃない」

夫は義母から目を背け、渋い表情を浮かべるだけだった。

「ときは会社なんて設立していないんです。あの話は全部、ただの口から出任せに過ぎません」

「そんなことありえないわ。ときが自分の会社を持っていないなんて。そんなの嘘よ。私と同居するためにタワマンだって買ってくれた。しかもローンも組んでいない。こんなの社長じゃなきゃありえないでしょ。エリさん、偽物の借用書で私を騙そうってわけ?残念だけど無駄よ」

義母はそう言い放つと、借用書をビリビリと破り捨て、勝ち誇ったように笑った。しかし、その行動も私にとっては予想の範囲内だった。

「それはコピーですので、破っても問題ありません。原本は別の場所に保管していますから。3400万円という大金だったので、弁護士立ち合いのもと正式に借用書を作成しました。もし嘘だと思ったら、弁護士に確認してみてください」

義母の顔からは徐々に余裕が失われていく。それでも彼女は負けじと声を張り上げた。

「弁護士を持ち出すなんて、随分手の込んだことをするのね。嘘よ。ときは毎朝会社に通ってるし、名刺だって見せてもらったわ。嫁に3400万の借金なんてありえない話よ」

「3400万円の使い道ですが、会社設立のためだというのは全くの嘘です。実際にはときは私を欺いて、そのお金で勝手に新居を購入してしまったんです」

義母の顔には一瞬、驚きと戸惑いが浮かんだ。

「って、もしかして私たちがこれから住むタワマンのことを言っているの?」

義母は苛立ちを隠さず、無言で固まっている夫に問い詰める。

「とき、あんたいつまでこの嫁に好き勝手なことを言わせておくつもりなの?」

しかし、夫は冷静なまま、義母が先ほど破り捨てた借用書の切れ端を無造作に拾い上げ、口元に軽い笑みを浮かべながらさらりと答えた。

「エリが言っていることは全部事実だよ。3400万、確かに借りた」

その言葉を聞いた瞬間、義母の顔色が一気に変わった。

「じゃあ、さっきの借用書は本物だったってこと?本当にこの嫁から3400万もの大金を借りていたっていうの?」

「そういうことだよ。エリが借用書を書かなきゃ金は貸せないって言うからさ。仕方なく書いたんだ」

「どういうことなの?そんなのちゃんと説明してくれなきゃ納得できないわよ」

「説明も何もないさ。借用書があるし。俺もちゃんと認めた。もういいだろ」

義母は唇を震わせながら、さらに問い詰める。

「いいわけないでしょう。大体、どうして専業主婦のエリさんがそんな大金を持ってるわけ?普通じゃ考えられないわ。そのお金、一体どこから手に入れたの?まさか違法なことでもしたんじゃないでしょうね」

義母の視線は、まるで犯罪者を見るように冷たく私に向けられた。私はその突拍子もない発想に笑いをこらえながら、穏やかに微笑んで真実を伝えた。

「お母さんがご存知ないのも無理はありませんが、実は私、ときと結婚する前に友人たちと一緒に会社を設立したんです。そのおかげで事業は順調に成長し、会社の業績も非常に良好なんですよ」

「え?会社を設立した?まさかエリさん、あなた?」

「そうなんです。実は社長になったのはときではなく、この私なんです。独身時代に私は仲間たちと共同で会社を立ち上げました。経済学部を出た友人を中心に、私たちは力を合わせて夢を現実に変えていったのです。ですから、寄生虫しているのはどちらかと言えば、ときの方になりますね」

先ほど義母が投げかけてきた言葉を、今度はそのまま返してやる。義母は一瞬驚き、唇を震わせた。

「エリさん、そんな大事なこと、結婚する時には一言も言わなかったじゃないの。そんなの私たちを騙していたようなものじゃない」

「結婚前にときにはちゃんと話しました。彼はそのことを知っていたはずですけど、お母さんに伝えていなかったんでしょうか?」

義母は驚きと混乱が交錯した表情を浮かべながら、夫に問い詰める。

「とき、あなた、本当なの?そんな大事なことをどうして黙っていたのよ。言わなかった理由は何なの?」

夫はスマホから視線を話すことなく、面倒臭そうに答えた。

「言わなかったのは、後で色々面倒なことになりそうだったからだよ。それに母さんからそこまで詳しく聞かれたこともなかったし。それにさ、エリだってずっと黙ってたんだから、俺だけが悪いわけじゃないだろう」

義母はその場でハッとし、すぐに私に視線を向けた。そして、その顔には怒りが滲んでいた。

「そうよ。やっぱりときの責任じゃないわ。私に直接言わなかった、あなたが悪いのよ」

「それはおかしな話ですね。私の話をまともに聞いてくれたこと、ありましたか?何度か話しかけようとしましたけど、その度に嫌みや暴言で返されてしまって、結局話す機会がありませんでしたよね」

「あなたが嫁としての役目を果たしていないから、苦言を呈してあげただけのことよ。それを棚に上げてときは私のせいにするなんて、とんでもないわ」

義母はいつもこんな調子で私を下に見ていた。義母にとって嫁というのはただの家政婦に過ぎず、自分よりも下の立場にあると決めつけていたのだろう。

「さて、ときとはもう夫婦の関係ではなくなりますし、お母さんとも他人の関係に戻るわけですから、私の仕事のことは今更どうでもいいことですよね。それよりも離婚前に、3400万円の借金はきちんと清算してもらいたいので、できるだけ早く対応をお願いします」

私の毅然とした態度に、義母は焦りの色を見せ始めた。彼女は夫の肩を掴んで揺らしながら、必死の形相で問いかけた。

「ちょっととき、え?本気みたいよ。3400万なんて大金、どうするのよ」

「大丈夫だよ母さん。3400万なら返す手立てがあるから心配しないで」

夫のその自信満々な言葉に、義母の焦りはますます深まっていった。3400万円という額を簡単に返せるわけがないと、義母も心の中では分かっていたからだ。

「とき、そんな態度でいられるのも今のうちよ。あなたは何も知らないけれど、私は全てを知っているから。それともう1つお知らせが。とき、3400万円とは別に500万円払ってね」

この一言でようやく夫はスマホから目を離し、訳がわからないという表情で私を睨みつけた。

「500万?そんな金額、請求される覚えなんてないぞ」

「あなたに覚えがなくても関係ないわ。絶対に払ってもらうからね」

「なんだその態度は。お前、俺のこと舐めてんのか?」

ナイフのように鋭い目で威嚇してくる夫。でも、その刃は私には届かない。

「私はあなたを舐めているわけではなく、権利を主張しているだけだから」

夫に自分の立場を理解させるため、私はある人物に連絡を取った。すぐに玄関のチャイムが鳴り、一人の人物が現れる。

「あなた?どうしてここに?今日は帰れないと言っていたのに」

義母が一番に声をあげた。その人物は義父だった。今日、義父は都合が悪く家に帰れない予定だったため、夫と義母は驚いているというわけだ。

「遅れてすまなかったね」

義父はそう言うと、すぐに1枚の書類を取り出し、夫に突きつけた。普段とは違う義父の厳しい様子に緊張しながら、夫はその書類に目を落とす。直後、彼は顔面蒼白になった。

「知らないとは言わせないからな」

義父が持ってきたのは500万円の慰謝料請求書だった。それを持つ夫の手がブルブルと震え出す。

「父さんまで、何を言ってるんだ?俺は慰謝料なんて請求される覚えなんてないぞ」

「本当に心当たりがないという夫の様子に、私は呆れ果てていた。バレないと思っているのか、バレても平気だと思っているのか。どちらにしても許せない」

「とき、浮気相手の名前は恵子でしょ」

私がその名前を告げると、夫の顔が瞬時に青ざめた。彼は私が浮気のことに気づいているとは思っていなかったようで、慌てた様子で言葉が詰まっている。

「そ、そんな名前、聞いたことがない」

明らかに動揺している夫は、それでも必死にとぼけようとする。その様子を見た義母がすぐに反応した。

「とき?一体どういうことなの?浮気なんてしてるの?恵子って一体誰?」

「もう一度言いますね。恵子はときの浮気相手です」

「うるさいわ。あなたには聞いていないのよ。私はときに直接聞いているの」

「では私もときに話しかけますので、お母さんは黙っていてください。とき、弁護士さんにもすでに相談済みだから、きっちり慰謝料を払ってもらうわよ」

「何をバカなことを。お前の妄想に決まっている。適当な名前をあげて俺を脅そうとしているだけだ」

「妄想?3400万円を渡した直後から、あなたの言動は明らかに不審だった。あれだけ浮気の匂いを漂わせておいて、私が何も気づかないとでも思っていたの?証拠集めに苦労しなかったのは、その変化があまりにも分かりやすかったからだわ。会社設立の準備だと称して深夜まで帰らなかったり、泊まりで帰ってこなかったりする日が続いた。帰宅しても私のものではない香水の匂いを漂わせていた。入浴中に上着のポケットや財布を調べると、そこには高級レストランやブランド店、さらにはホテルの領収書が大量に見つかった。白を切っても無駄よ。正直に認めなさい」

「そんなのお前の憶測に過ぎないだろう。妄想で父さんまで巻き込んで、どうかしてるんじゃないのか」

「どうかしているのは、まだ浮気がバレていないと思っているあなたでしょ」

「お前は決めつけてばかりだ。証拠もないのに父さんや母さんまで巻き込むな」

案の上、夫は浮気を認めようとしなかった。しかし、次の瞬間、義父が待ってましたと言わんばかりに口を開いた。

「証拠ならここにたくさんあるぞ。探偵から受け取った調査報告書だ」

義父は報告書を取り出して夫に突きつける。それを見た夫の顔色が一変した。

「こんなもの、いつ…」

「エリさんから相談を受けてね、知り合いの探偵に依頼したんだ」

義父は私を見つめながら事実を告げる。私は説明を始めた。

「私は夫が入浴中にスマホの内容を全て写真に納め、車にはGPSを仕掛けた。そして証拠を集めた後、義父さんに相談する決断をした。義母さんに相談しても夫の味方になるだけだと知っていたからだ。義母さんの嫌みを受け続け、夫がかばってくれない時には、義父さんだけが私の話を真剣に聞いてくれた。いつも義父さんは私に対する義母さんの理不尽な態度を注意し、夫の親離れできない態度を叱ってくれた。私にとって唯一の頼りになる存在だった」

状況を理解した義母は、夫に確認するしかなくなった。

「とき、大丈夫なの?本当に浮気はしていないの?」

「母さんまで俺を信じてくれないのか?」

「いえ、私はときを信じるわ。でも、あなたの味方よ」

義母が夫の手を取り優しく頷く。私は構わず話を続けた。

「浮気相手の恵子は社長令嬢よね。ときは彼女を騙して3400万円を払わせようとしていたんですって。だから3400万円なら返す当てがあるだなんて強気に言えたのよね」

「そんな女は知らない。俺だって会社を設立するのに協力者が見つかったんだ。ちょっと遅れたがもう準備はできている。事業が軌道に乗れば、3400万円くらいすぐに返せるんだ」

夫はまだ苦しい言い訳を続け、認めようとしない。

「苦しい嘘はやめたら?私は浮気相手の恵子にも会ったのよ。本人から直接話を聞いたんだから」

「それこそ出たらめだろう。適当なことを言って俺を落とし入れようとしているんだな」

「もちろん出たらめなんかじゃない。浮気相手の恵子は、夫が既婚者とは知らず結婚するつもりでいたのだ。何も知らなかった彼女は、夫に騙されていたことを知り、全面的に協力してくれると言っていた。ちなみに私が恵子の詳しい事情を知っているのは、浮気調査をしたからではなく別の理由があった。あなたの浮気相手の恵子はね、私の友人なの」

私の言葉に夫は息を飲んだ。

「まさか、それも落とし入れるための嘘だな」

「そんなわけないでしょ。疑うなら、今この場で恵子に電話してもいいわよ」

私がスマホを取り出すと、夫は「もういい」と電話をかけようとするのを阻止した。恵子は高校時代からの友人で、私と一緒に事業を起こした仲間のうちの一人だ。社長令嬢でもある恵子は大学の経済学部出身で、彼女の知識があったからこそ会社も順調に軌道に乗ったという背景もあった。

「これでもまだ認めないのか?」

「まさか、エリと恵子が友人だったとは…」

「ようやく観念したのか」

夫は言葉を失い、項垂れた。それでも義母だけは諦り切れないのか、私に噛みついてくる。

「ときは悪くない。悪いのはエリさんよ。社長なのにそれを隠して騙すようなエリさんが悪いのよ」

「お前が甘やかすから、ときはそうなったんだ」

様子を見ていた義父が、とうとう切れた。義父が怒鳴ることなど滅多にないので、夫と義母はびっくりと肩を震わせ沈黙した。

「ときもときだ。いい大人がこんな馬鹿げたことをしておいて、反省するどころかエリさんのせいにするとか、情けない。いいか?何があっても自分で落とし前をつけるんだ。借金の3400万円と慰謝料の500万円、計3900万円は必ず払え」

「お、俺が悪かった。本当に反省しています。この通りです」

義父の剣幕に、夫は怯えながら即座に土下座して謝罪した。その姿に義母も涙を浮かべながら夫の隣に座り込み、「どうか許してやってください」と何度も頭を下げる。

「とき、なんで浮気なんかしたんだ。エリさんはお前のために尽くしてくれていただろう。そんな彼女を裏切るなんて、何を考えているんだ」

土下座したままの夫は、怖ず怖ずと話し始めた。

「母さんが、後継ぎを生めない嫁なんていらないって言うからさ」

その言葉に、私の胸が痛むのを感じた。実は私は不妊症で、子供を持つことができない体だ。私たちが結婚する際、この問題について2人でじっくり話し合い、理解と納得の上での結婚だったはずだった。

「なんで今頃そんなことを引き合いに出すの?」

「母さんがやっぱり孫は見たいって言うし」

義母はまるで当然のことだと言わんばかりの口調で続けた。

「だって、嫁が子供を産むのは当たり前でしょ。エリさんが嫁の勤めを果たせないんだから、浮気されても仕方ないじゃない」

義母の冷酷な言葉と共に、夫も小さく頷きながら同意する。その姿に私は愕然とした。結婚前の夫は本当に優しく、不妊に対しても理解があったのに。この変わりようにショックを受けた。

「せっかく3400万も借りたし、母さんと同居する家を買うことにした。それでエリは居づらくなって出ていくと思ったんだ」

「じゃあ何?この家は私への嫌がらせに買ったというわけ?」

「お前がしつこく母さんとも合いが悪いのになかなか離婚したいと言い出さなかったし」

「お前たち親子は、我が儘ながら人間として最低じゃないか。エリさんを追い出すために嫁いびりをしていたなんて。しかもひどい理由で浮気を正当化するなど、お前たちはどうかしている」

静かに聞いていた義父が、感情を抑えた声で謝罪してくれる。

「エリさん、本当に申し訳ない」

私は心から感謝した。

「頭をあげてください。お父さんだけはいつも味方でいてくれました。今回も色々と協力してもらって、本当に助かりました」

ゆっくりと頭を上げた義父は、夫と義母に向き直り、冷静かつ厳しい口調で指摘した。

「嫁が子供を産むのは当たり前。そんな考え方、おかしいだろ。そもそもお前がずっと親離れできずに夫婦の問題に口出しするから、こうなるんだ」

義母は強い口調で怒られて縮こまりながらも、「あなただって孫の顔を見られないのは嫌でしょ」とブツブツ言い続けていた。義父はそんな義母を無視して、夫に強い口調で叱りつけた。

「問題がある時こそ、夫婦で寄り添うべきなんだ。ときが一番に考えるべきはエリさんのことだろう。いつまでも親離れできずに、何でもかんでも母親を頼るな」

「母さんは俺のためを思ってくれただけだ」

この状況でも義母をフォローしようとする夫に対し、義父は冷ややかに義母に1枚の書類を差し出した。

「え?あなた、これって」

差し出されたのは離婚届けだった。それを見て義母は息を飲んだ。

「お前と夫婦として寄り添うことは無理だと判断した。まさか俺も裏切られているとは思わなかったよ」

実は義母も浮気していた。義父が私に紹介してくれた探偵は、元々義父が義母の浮気調査を依頼した人だった。義母は若い頃から金遣いが荒く、そのために義父とはよく喧嘩になっていた。結婚してからも浪費癖は収まらず、頻繁に義父にお金を無心していた。それでも足りなかったので、お金を得るために浮気を始めたらしい。SNSでお金を持っていそうな男を探し、その男に貢がせようとしたのだ。

「あなたがお金をくれないから、仕方がなかったんです」

「まさか母さんが浮気をしていたなんて…」

必死な義母と呆然とする夫。そんな2人を見て、似た親子だと感じた。そして、こんな人たちのために悩んだり我慢するのは馬鹿げていると痛感した。

「もうお前たちには愛想が尽きた。親子2人で好きにすればいいさ」

「待って。あなたに捨てられたら困るわ。ときも無職なのよ」

「そんなことはもう私には関係ない。慰謝料もきっちり払ってもらうぞ。とき、お前とも親子の縁を切る。ただし3900万円の支払いが終わるまでは監視するからな。それがせめてもエリさんへの罪滅ぼしだ」

この時の義父の言葉は氷のように冷たかったが、私の心には温かいものが流れた。夫と義母は再び義父に向かって土下座し、何度も謝罪の言葉を口にしたが、義父は首を横に振り続けた。

「謝る相手が違うだろう。私より先に謝罪しなければならないのは、エリさんだろうが」

義父の言葉に、ようやく夫と義母が私に謝罪をした。

「子供が欲しかったのは母さんのためだけじゃない。周りに子供が生まれるようになったことで、俺も子供が欲しくなったんだ。悪気はなかった。本当にすまなかった。もう子供が欲しいなんて言わないから、もう一度やり直そう」

「私もときの子供が見たかっただけなの。孫が欲しかっただけで、エリさん自身が嫌いだったわけではないのよ。許して」

夫と義母の言葉は私には何ひとつ響かなかった。彼らがどんなに言葉を尽くしても、私の心には届かないと知っていたからだ。それでも、私には言わずにいられないことがあった。

「あなた以上に、私だって子供が欲しかったわよ。でも私は不妊症で簡単には授かることができない。その現実を受け入れた上で、あなたは私に結婚を申し込んだのよね。お母さんも今一度よく考えてみてください。世の中には私だけでなく、子供が欲しくても授かることができない人がたくさんいるんです。嫁が子供を生むのは当たり前。な考え方、私は絶対に認めません。それに、あなたを許せるほど私は心が広くありませんから」

きっぱりと夫と義母を突き放し、私は改めて離婚と借金の返済、そして慰謝料の請求を厳しく突きつけた。彼らがどれほど反論しようと、私の決意は揺がない。夫と義母はまだ何か言い訳をしようと口を開いていたが、私はそれを無視し、新居になるはずだったタワマンを義父と共に後にした。心に残るものはなく、ただただ冷静に次のステップへと進むことだけを考えていた。

その後、私と夫の離婚手続きは無事に進み成立した。義父は改めて私に対して深い謝罪の言葉を述べ、夫と義母に対しても報いを受けさせると約束してくれた。約束通り、義父は離婚後も夫と義母を監視し、彼らは借金返済と慰謝料のために必死に働き続けた。夫は3400万円の借金と500万円の慰謝料の支払いに追われ、義母もまた義父に対する慰謝料のために苦しんでいたが、次第に耐えられなくなり、とうとう逃げ出してしまった。逃げること自体は一時的な解決策に過ぎなかったが、その後彼らの状況はさらに悪化し、次第に2人は人生のどん底に陥っていった。結局、夫と義母は全てを失う結果になった。

私は義父が様々な手を尽くしてくれたことに感謝し、新しい人生をスタートする決意を固めた。夫や義母とは完全に絶縁したが、義父とは今も時折り連絡を取り合っている。義父には心から感謝の気持ちを伝えたい。幸いにも両親に恵まれた私は再婚し、新しい夫の協力を得て不妊治療を開始した。数年後には念願の子供を授かることができ、今は幸せな家庭を築いている。過去の苦しみを乗り越え、新たな人生を歩むことができたことに、心から感謝している。

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