「パパと一緒ならハンバーガーもケーキも食べ放題だぞ。遊園地だって行き放題だ。」
そう言って娘を誘う夫に、私は冷めた目を向けていた。夫は都会育ちで、私の田舎の実家を酷く見下している。結婚前は優しかったのに、今では田舎出身の人を見るとあからさまに嫌な顔をするようになった。
夫は毎年、年末年始を私の実家で過ごす約束をしていたのに、今年は「汚い田舎には行きたくない」と勝手に予定を変えようとした。私が反論すると、夫は嘲るように言い放った。
「そんなに帰りたいなら土下座しろよ。『わがままな田舎娘でごめんなさい』って頭をすり付けたら考えてやる。」
その言葉で、私の中で何かが完全に折れた。もうこの男と一緒にいる必要はない。私は娘を連れて実家に帰ることを決意したのだった。娘も「ママについていく」とハッキリ言ってくれた。夫は動揺し、物で釣ろうとするが、娘は「パパは約束も守らないし、ママやじじばばの悪口ばかり言うから嫌い」と拒否。その場は私たち親子の勝利に終わった。
実家に戻った後、元夫は私の母の手作り料理を「スーパーで買える高級品」だと思って食べていたことに気づき、愕然としていた。食生活の質が落ちて苦労している様子が電話で伝わってくる。そして1年後、元夫が突然実家に押しかけてきた。どうやら都会での仕事も人間関係も崩壊し、逃げ場を失ったらしい。一緒に住みたいと言い出す元夫に、私は冷たく言い放った。
「あなたとはもう家族じゃありません。」
それでも執拗に娘に近づこうとする元夫。すると、娘の友達の少年が「このおじさんは悪者だ!」と言って泥やミミズを投げつけ、元夫は悲惨な姿で畑に車を乗り上げてしまった。それ以来、元夫が私たちの前に現れることは二度となかった。私は娘と田舎でのびのびと暮らし、娘もすくすくと成長。今では中学3年生になり、あの日の少年とは良い関係を築いているようだ。私は穏やかな日々の中、自分たちの選択が間違いではなかったと確信していた。



