母の手作りベビー服を「ゴミ」と捨てた兄嫁。ところが、それが高級ブランドとコラボする人気作品だと知った瞬間、手のひらを返して「もう1着よこしなさい」と言い出した。私が断ると、電話口で泣きながら漏らしたのは「ユウ君」という知らない男の名前。夫の不在中に芽生えた関係がやがて家族を壊し、最後はDNA鑑定がすべての真実を明らかにする――。思いやりを踏みにじった者に待っていた、衝撃の結末とは?…

母の手作りベビー服を「ゴミ」と捨てた兄嫁。ところが、それが高級ブランドとコラボする人気作品だと知った瞬間、手のひらを返して「もう1着よこしなさい」と言い出した。私が断ると、電話口で泣きながら漏らしたのは「ユウ君」という知らない男の名前。夫の不在中に芽生えた関係がやがて家族を壊し、最後はDNA鑑定がすべての真実を明らかにする――。思いやりを踏みにじった者に待っていた、衝撃の結末とは?...

私は長男の嫁、鈴。33歳の会社員です。10年前に父を亡くしてから、実家で母と二人暮らしをしています。兄も弟もそれぞれ結婚して家庭を持っていますが、私は結婚願望がないわけではないものの、仕事にやりがいを感じていて、今の生活に満足していました。

ある晩、スマホに兄嫁のゆいさんから電話がかかってきました。彼女は最近、人生初の出産をしたばかりです。私に電話なんて珍しいなと思いながら出ると、ゆいさんは「お久しぶりね。私、先日無事に出産したんだけど、お母さんから聞いてない?」と言います。普通、お祝いの挨拶をするべきなのに、その言い方はどこか嫌みったらしいものでした。

ゆいさんは私と同い年で、兄とは結婚して7年になります。兄がベタ惚れしているのであまり大きな声では言えませんが、私は彼女が正直苦手でした。ああ言えばこう言う、何でも皮肉に取る、ネチネチとした物言いが多い人だったからです。

「確かに私から連絡すべきでしたね。すみません。ご出産おめでとうございます。私も仕事が忙しくて、ゆいさんも出産したばかりでバタバタしているだろうと思って、気を遣って連絡を控えていたんです」

しかし、そんな私の言葉も、ゆいさんには「仕事を言い訳にして、パートしかしてない私を馬鹿にしている」と受け取られたようです。「忙しいアピールしないでくれる? 面倒くさいわ」と返されてしまいました。

もちろん、私は彼女を馬鹿にするつもりなんてありませんでした。素直に謝ったのに、ゆいさんは鼻で笑ってこう言いました。「まあいいわ。今度、赤ちゃんの顔を見にうちへ来てよ。可愛い女の子よ。鈴かさんは独身で仕事をバリバリやってるんだから、きっといいお祝いの品をくれるんでしょ?」

それが目的か、と私は内心呆れました。赤ちゃんは私にとっても可愛い甥っ子です。お祝いしたい気持ちは本物です。でも、せめて素直な気持ちでお祝いさせてほしいと思いました。

「じゃあ、ゆいさんの都合のいい日に、母と一緒に伺いますね」

そう言うと、ゆいさんは意外なことを言いました。「ああ、お母さんは連れてこないで。私、あの人が苦手だし。それに、もう出産祝いはもらったから。その時に現金ももらったから、別にいいわ」

私はむっとしました。なんだその言い草は。まるで、お祝い以外に母と会う理由はないと言わんばかりです。しかも、娘の私の前で「お母さんが苦手」と平気で言うなんて、普通は言わないでしょう。

「あー、分かりました。それじゃあまた都合のいい日を連絡してください。私、これから夕食なので失礼しますね」

ゆいさんの無神経な発言は今に始まったことではありません。でも、これ以上不快な気持ちになりたくなくて、私は適当に返事をして電話を切りました。なんだか胸がモヤモヤします。

私が不機嫌そうな顔で2階から降りてくると、夕飯の支度をしていた母が首をかしげました。私は出された食事にお礼を言い、先ほどのゆいさんとのやり取りを話しました。母には申し訳ないけれど、それくらい私は腹が立っていたのです。

「あら、そう。残念ね。でも、赤ちゃんに会う機会はまたいくらでもあるから」

私の話を聞き終わっても、母はゆいさんの発言にすっかり慣れてしまったのか、のほほんとしていました。

「でもさ、お兄ちゃんと結婚してから随分立つけど、ゆいさんの態度はひどすぎるよ」

「鈴かが怒ってくれるだけでも、母さんは嬉しいわ。ああ、そうそう。この間はまだ出来上がってなくて渡せなかったんだけど、これも持っていってくれないかしら?」

私の話を聞いてもなお、母は追加でお祝いの品を渡したいらしい。ラッピングされた品を見て、私は苦笑しました。お母さんって、本当にお人好しよね。

「うん、分かった。赤ちゃんのためにお祝いするものだものね。ちゃんと渡すから」

私がそう言うと、母は笑って頷きました。ゆいさんについては色々と思うところはありますが、可愛い甥っ子のためです。私はそう思うことにしました。

ゆいさんの家に行く日、途中で弟嫁のみさんとばったり会いました。みさんも私と同じように家に招かれたらしいです。みさんは4年前に弟と結婚し、すぐに妊娠と出産を経験して、今は第二子を妊娠中です。比べるのは失礼かもしれませんが、ゆいさんと違って明るく素直な性格で、母とも仲が良いのです。

ゆいさんの家に着くと、珍しく機嫌が良さそうな彼女が出迎えてくれました。リビングに通され、ベビーベッドで眠る赤ちゃんと対面しました。無垢な寝顔に、心が癒されます。私たちは寝ている赤ちゃんを起こさないように声を潜めて笑い合い、ソファに座りました。

弟嫁がお祝いの品を渡した後、私も続けてお祝いの品を手渡しました。「おくるみやおもちゃ、それから、これ。母が作った赤ちゃんの服です」

ゆいさんは母の作った服が入ったラッピングを開け、中身を確認すると、大きなため息をつきました。

「今時、手作り? ゴミかね。お母さんにとっては長男の孫なのに、こんなしょぼいものを送ってくるだなんて。他のものもイマイチのセンスだし、本当にがっかりだわ」

床にポイっと捨てるように、ゆいさんは母の手作りの服を投げました。弟嫁が慌てて服を拾い上げます。

「せっかくお母さんが作ってくれたのに、ひどい。ゆいさんがいらないなら、私が欲しいくらいなのに」

弟嫁の言葉に、ゆいさんは鼻で笑いました。「はあ、そんなのが欲しいなら勝手にすれば?」

あからさまにバカにした言い方です。「欲しいって思ってくれるなら、是非そうして。その方がきっとお母さんも喜ぶわ」

私の言葉に、弟嫁はパッと表情を輝かせました。「嬉しい! こんなに素敵な服! 赤ちゃん用だから、この子が生まれたら着せてあげよう。今から楽しみです」

弟嫁があまりに無邪気に喜ぶので、なんだか救われる思いでした。母もこの場にいたら、きっと私と同じように言ったでしょう。

「え、ちょっと。高級ブランドってどういうことなのよ?」

ゆいさんは話が全くわからない様子です。母は私たち3兄弟が自立してから、元々趣味でやっていた手芸のスキルを活かして、ネットで作品を販売していたのです。始めた頃に比べて素材へのこだわりやデザイン性が評価され、「高級ハンドメイド」として話題になっていました。手作りのため希少価値も高く値段が高騰しており、なんと高級ブランドとのコラボの依頼が来たこともあるとか。

ゆいさんは私や母に興味がなく、交流も最低限だったため、知らなかったようです。兄は知っているはずですが、わざわざ言うことでもないと思ったのかもしれません。私が説明を終えると、ゆいさんは「そ、そんなの聞いてない! だったら話は別よ」と言い出し、弟嫁から服を奪おうと掴みかかりました。

とっさに、ゆいさんと弟嫁の間に座っていた私が間に入ったので、なんとか弟嫁は無事です。「みさんとお腹の赤ちゃんに何かあったらどうするんですか?」

私が鋭い口調で言うと、それがゆいさんの悪いスイッチを押してしまったらしい。顔を真っ赤にさせたゆいさんは、感情を吐き出していきます。

「お母さんのただの趣味で作った服が高級ブランドだなんて、普通思わないわよ! こんなの騙し打ちみたいなものだわ。この卑怯者!」

そこからはもう止まりませんでした。「鈴かさんは私と同い年なのに、好きな仕事を続けて自由でずるい!」「みさんは私を差し置いてすぐに出産して、2人目まで簡単に妊娠してずるい!」「少しは気を使って遠慮しなさいよ!」と、ほとんどは今関係のない話で、私や弟に対する嫉妬のようなものが大半でした。

兄以外の身内に対して、ゆいさんの当たりがきつかった理由が、なんとなく分かったような気がしました。ゆいさんは結婚に際して好きだった仕事を退職し、パートに転向して家事と妊活に励んでいたのです。そんな中で、自由に仕事をしている私や、妊娠と出産が早かった弟嫁に対して、暗い感情をくすぶらせていたのかもしれません。

でも、それとこれとは話が別です。だからって何を言ってもいいわけではないし、高級だろうがなかろうが、人の真心を台無しにしていいわけがないのです。ゆいさんは感情が爆発してワッと泣き出し、赤ちゃんも泣き出してしまいました。赤ちゃんを心配した弟嫁が近づこうとすると、「私の子に近づかないで!」とゆいさんが静止します。

私と弟嫁がどうすることもできずに困惑していると、兄が仕事から帰ってきました。自分の嫁と赤ちゃんが泣いている異様な状況に、兄は頬を引きつらせます。「あの、何があったんだよ」

兄がひとまず泣いている赤ちゃんを抱いてあやし、私が事情を説明すると、兄は私と弟嫁に頭を下げました。「ああ、すまん。ゆいは初めての育児でノイローゼ気味なのかもしれない。みさんも妊娠中で大変なのに、申し訳ない。具合とか大丈夫?」

弟嫁の体を気遣うのが良くなかったのか。ゆいさんが怒鳴ります。「妊婦のくせに、人の夫に色目を使わないで!」兄が「良くないよ」とたしなめると、ゆいさんはヒステリックな声をあげてまた泣き始めました。

「俺がなんとかするから、もう2人は気にしないで帰ってくれ。今日はゆいが呼んだのに、こんなことになってしまってすまない」

兄が申し訳なさそうに言い、私たちは兄夫婦の家を後にしました。外は日が落ち始めて、辺りが薄暗くなっています。

「ゆいさん、大丈夫かな? 私も初めて出産した時は気が張って、メンタル面でも大変だったから気持ちは分かるんです」

帰り道、弟嫁は色々と暴言を吐かれたにも関わらず、ゆいさんの心配をしていました。母といい、弟嫁といい、人がいいというか。少なくともゆいさんの暴言に傷ついているということはなさそうで、私は少しほっとしました。

「お兄ちゃんもいるし、大丈夫よ」

元気付けるように私が言うと、ようやく弟嫁の表情に笑顔が戻りました。

数時間後のことです。夕食を終え、自室に戻ってスマホを手に取ると、何件もゆいさんから着信が来ていました。

「げえ」

この時点で嫌な予感しかしません。硬直していると、またスマホが振動し、表示画面にはゆいさんの名前。このまま電源を落としてしまいたい。そう思いつつ、私は諦めて電話に出ました。

「なんですぐに出ないのよ」

思った通り不機嫌な様子のゆいさんに、私は答えました。「あ、夕食を取っていたので。あの、兄はどうしたんですか?」

「今、お風呂中よ」

兄がいたら電話を止めてくれたでしょうが、それなら納得です。兄はお風呂が長い人だから、今のうちに今日の件で何か文句を言おうとでも思ったのでしょう。

「それで、ご用件は何でしょう?」

「赤ちゃんの服をもう1着よこしなさい」

ゆいさんの言葉に、私は「え?」と思わず声をあげました。「手作りはゴミ以下なのでは?」

「うるさいわね。高級ブランドなんでしょ? ネットで自慢したいの。お母さんにもう1度頼んでよ」

いつも以上にめちゃくちゃなことを言っているゆいさんに、私はうんざりしてため息をつきました。反省して謝ってくるなんて期待していなかったけれど、いくらなんでも勝手すぎます。

「何ため息ついてるのよ。みさんはもう私がもらったの一点張りだし、本当にどいつもこいつも!」

どうやら、私の前に弟嫁にも電話をしていたようです。どうせ、「それは本来自分がもらった」とかなんとか言って、服を取り上げようとしたのでしょう。自分の発言と行動がどれだけ理不尽か、自覚がないようです。

私は思わず吹き出しました。「図々しいのはゆいさんの方でしょ。母の真心をゴミだって床に放り投げたくせに、高級ブランドだって分かったら手のひらを返すだなんて。いい大人が恥ずかしくないんですか? どうしても欲しいって言うなら、母にしっかり謝って、ご自分で頼んでください」

今まで、ゆいさんにきつく言い返したことはありません。それもこれも、母や兄のことを考えてのことでした。でも、もう我慢の限界です。弟嫁に赤ちゃんの服を譲った経緯も母には話してあります。私に頼めば済むと思っているのも気に入りません。たまには自分で頭を下げればいいのです。

「私のことが嫌いだから、そんな意地悪言うのね!」

私の本音を聞き終わったゆいさんの声は震えていました。「それは関係ない」と私は否定しましたが、ゆいさんは黙り込み、電話の向こうですすり泣くのが聞こえてきます。人にきつく言う割には、ゆいさん自身は打たれ弱いのです。

「みんな冷たい! せっかく赤ちゃんを産んだのに、誰もちやほやしてくれない! みさんにはブロックされるし、あんたにはバカにされるし、旦那は味方してくれないし。やっぱり私にはユウ君しか味方はいないんだわ!」

聞き慣れない名前が唐突に飛び込んできて、私は耳を疑いました。あの優しい弟嫁にブロックされたという発言にも衝撃でしたが、きっとゆいさんが電話で相当ひどいことを言ったに違いありません。

「え、ユウ君って誰ですか?」

私の質問に、ゆいさんが「はっ」と息を飲むのが分かりました。どうやら口を滑らせてしまったことに気づき、混乱しているようです。ゆいさんが何を言うか待っていると、「どういうことだ」と兄の声が聞こえてきて、私はぎょっとしました。兄がお風呂から上がってきたのでしょう。

驚いたのはゆいさんも同じようで、「え、違う! 違うのよ! ユウ君はただのネットの友達で、誤解よ!」と必死に言い訳をしています。何がどう誤解なのかは分かりませんが、どうやらまずいことになったようです。

ゆいさんから電話を奪ったようで、声が兄に切り替わりました。「鈴かか、電話してたのか。悪いけど、ちょっと嫁と話すから」

兄の声はいつもより低く、怒りに満ちていました。私は了承し、電話を切りました。おそらく、これから修羅場になるでしょう。

後日、兄が離婚の報告に我が家を訪れました。まず、兄は母の手作りの服をゴミ扱いしたゆいさんのことを謝罪しました。ゆいさんは、手作りのものを大量に送られて、自分が責められていると感じたそうです。ゆいさん自身はいつも私や母、弟嫁を見くびっていたというのに。

私との電話の後、兄は例のユウ君についてゆいさんを問い詰めたらしいです。仕事で忙しい兄の目を盗んで、ネットでユウ君とやらと出会い、実際に会って浮気に発展したと、ゆいさんは自白したそうです。「寂しさからの過ちだ」としきりに訴えたそうですが、そんなものは言い訳になりません。兄が、ゆいさんの育児のサポートと家族との時間を大事にするために、仕事を調整し始めていたのを私は知っていました。兄の気持ちを考えると、胸が苦しい。

いつも温厚な母でさえ、ゆいさんに対して怒りをあらわにしていました。赤ちゃんも、念のためDNA鑑定をするそうです。ただ出産のお祝いを渡しに行くだけの話が、まさかここまで大事に発展するとは思いませんでした。

結局、DNA鑑定は兄との親子関係を否定しました。兄はゆいさんと浮気相手から多額の慰謝料を受け取り、離婚が成立しました。ゆいさんは浮気相手にも捨てられ、これからは昼夜問わず働く毎日になるだろうと兄から聞きました。赤ちゃんは、ゆいさんではなく常識人のご両親が育てていくらしいので、安心です。

あれから3年が経ちました。母の作る服や小物は今でも多くの人に愛され、私も弟嫁も、もちろん昔からの大ファンです。私は昨年結婚し、今は妊娠中です。母は今から赤ちゃんの服を張り切って考えてくれています。

ゆいさんの件で深く傷ついていた兄にも、最近ようやく新しい恋人ができました。兄には、今度こそ幸せになってほしいと心から願っています。

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