その日、俺は胸の高鳴りを抑えながら指定された会議室の前に立っていた。AI開発ベンチャー・エイミングテックの代表として、国内大手グローバリンクとの契約締結を目前に控えている。長い交渉を経て、ようやくここまで漕ぎ着けた。残すはサインだけだ。ところが、約束の時間を過ぎても相手は現れず、電話も繋がらない。何度もかけ直して、ようやく応答があったと思えば、新たに担当になったという男はあっけらかんと言い放った。「契約、なしにしましたよ」と。
理由を問いただすと、返ってきたのは鼻で笑うような一言だった。「ベンチャーと契約するわけないじゃないですか」。一方的な破棄と見下し。俺はその場で固まった。数ヶ月間、一緒に伴走してくれた高田という担当者は交通事故で入院したという。後任の長谷川は、書類すら満足に読んでいないのかもしれない。だが、それで終わらせるつもりはなかった。俺はスマホを握りしめ、ある場所へ向かうことを決めた。このまま引き下がるわけにはいかない。俺たちの技術を、仲間を、笑われたままで終わらせるわけにはいかない。



