夕食の最中に綾奈のスマホが鳴った。登録していない番号。総合病院の救急外来からで、正典が全身ズタボロで公園に倒れているのが見つかり、搬送されたと言う。病院に飛び込むと、全身包帯にくるまれた息子がベッドに横たわっていた。誰が俺の子をこんな目に。問い詰めると、正典はぽつりぽつりと話し始めた。「肩桐って卒業生に、ずっとやられてて」。俺はそいつの住所を聞き出し、すぐに電話をかけた。「君が肩桐君かな?」…

夕食の最中に綾奈のスマホが鳴った。登録していない番号。総合病院の救急外来からで、正典が全身ズタボロで公園に倒れているのが見つかり、搬送されたと言う。病院に飛び込むと、全身包帯にくるまれた息子がベッドに横たわっていた。誰が俺の子をこんな目に。問い詰めると、正典はぽつりぽつりと話し始めた。「肩桐って卒業生に、ずっとやられてて」。俺はそいつの住所を聞き出し、すぐに電話をかけた。「君が肩桐君かな?」...

「警察に通報したやつは消されるぜ。」

肩桐はニヤニヤと笑いながら、勝ち誇ったように言い放った。なるほど。いつも父親がヤクザの若頭だと言って周りを脅しているというわけか。

「俺も父さんのいる柳原組の組員だからな。敵に回さない方がいいのはお前でも分かるよな。通報するなんてバカなことしねえよな。命は惜しいだろ」

組の名前まで出してくるなんて。虎の威を借る狐とはこのことを言うのだろうな。俺は肩桐のしょうもない言動に呆れてため息をつきながら、静かに見据えて告げた。

「通報しない。組の名前を言えや」

この後、肩桐は自分が誰の息子に手を出してしまったのかを知り、絶望することになる。

俺の名前は神田正仁。五十五歳で、妻の綾奈と高校生の正典との三人で暮らしている。俺はとあるヤクザ組織の人間で、綾奈はそのことを知っているが、正典には秘密にしていた。親がヤクザということで肩身の狭い思いをさせたくはなかったし、正典の友人関係にも影響を及ぼしたくなかったからだ。正典の中では、俺はただの会社員ということになっている。彼が成人したら俺がヤクザだということを打ち明けると、俺は綾奈に約束していた。その上で、今後俺とどのような付き合いをしていきたいか正典に決めさせようと思っている。打ち明けたことによって正典が俺と距離を置きたいというのであれば、それは仕方がない。寂しくは思うが、親として影から正典を見守るだけだ。

正典との関係は良好で、何も問題はないと俺は思っていたのだが、ここ数ヶ月ほど雲行きが怪しくなっていた。今までは俺とも綾奈とも普通に話していたのだが、正典は最近どこか上の空であまり話ができていない。しつこく話しかけようとすると、素気なく自分の部屋に引き上げてしまい、なんとなく俺たちを避けているように思えた。正典は今まで反抗期のようなこともなかったから、遅く来た反抗期なのだろうかと綾奈と悩ませていたが、まず様子を見ることにした。正典も男だ。何かしら変化があってもおかしくはない。そのうち落ち着いたら自分から話してくるだろうと、俺は思うようにしていた。

しかし、いつまで経っても正典の態度は変わらず、たまたま服の隙間から見えた腕にあざのような跡があるのを俺は見つけてしまった。まさか正典は学校でいじめられているのだろうか。

「正典、最近学校はどうだ?」

「特に何もないよ。普通だよ」

「本当か? 何か困ったことがあるなら、俺に話してくれていいんだぞ」

「本当に何もないって。何をそんなに心配してんの?」

「まさのり、あなた、あざができているらしいじゃない」

「たまたま転んでぶつけただけだよ。あざくらいで心配しすぎ」

「何もないなら、それに越したことはないんだが」

「俺、もう部屋で宿題やるから」

夕食を三人で囲んでいる時に、俺はそれとなく正典に学校での様子を聞いてみたが、本人は何もないの一点張りで、さっさと部屋に行ってしまった。

「本当に大丈夫だと思う?」

「どうだろうな。まあ、正典も男だし、何かあったとしても自分でどうにかしたいと思っているのかもな」

「でも、思い詰めすぎて変な考え起こしたりしたら……」

「そんなことにはならないように、俺たちはしばらく様子を見守ろう。正典が助けを求めてきたらいつでも手を差し伸べられるようにな」

「そうね。分かったわ」

俺は心配そうな綾奈を説得し、残りのご飯を食べた。確かに俺も心配だったが、あまりしつこくして正典が心を固く閉ざしてしまっても困る。それに正典は部活でサッカーをしているから、少しは体を鍛えているはずだ。少しばかり手を出されたくらいで大きな怪我をすることもないように思う。個人的にはやられたらやり返せと思うが、それは本人の気持ち次第というものだ。

それから数週間が過ぎた頃、正典が友達の家に泊まりに行くというので、俺と綾奈は久しぶりに夫婦で食事に出かけることにした。正典と三人で食事に行くことはあったが、二人で出かけるのはかなり久しぶりだ。二人とも軽くお酒が入り、美味しい料理に舌鼓を打ちながら食事を楽しんでいた。俺と綾奈がデザートを注文しながら会話を楽しんでいると、突然綾奈のスマホが鳴り始めた。

「こんな遅い時間に誰かしら。登録していない番号なのか」

「ええ、市外局番はこの近所のもののようだけど……」

「俺が出る。スマホを貸してくれ」

俺が綾奈からスマホを受け取り電話に出ると、相手は総合病院の救急外来の看護師だった。看護師の話によると、正典が全身ズタボロの状態で公園に倒れているのを近所の人が見つけ、救急車を呼んでくれたらしく、今病院に搬送されてきたのだという。ポケットに入っていた財布の中に学生証が入っていて、緊急連絡先の綾奈の番号が書いてあったから電話をかけてきたらしい。俺は慌てて看護師に今すぐ行くと伝えると、会計を済ませると綾奈と一緒にタクシーに乗り込んで総合病院へと向かった。

病院に着いた俺たちが正典のいる病室に案内してもらうと、そこでは全身包帯でぐるぐる巻きになった正典がベッドに横たわっており、綾奈が悲鳴のような声をあげてベッドにかけ寄る。足にギプスをつけられているのを見るに、きっと骨折しているのだろう。包帯の隙間から覗く肌に細かい傷も見られ、俺は怒りに震えた。一体誰が俺の息子にこんなことを。

正典は顔を歪めながら、か細い声を振り絞って俺たちに話しかけた。

「お母さん、父さん……まあ、話すぐらいは大丈夫なの?」

「まだあっちが痛いけど、鎮痛剤が効いてるみたいだから大丈夫だよ」

「一体何があったんだ?」

「それは……」

正典は言いたくないのか、視線をずらして窓の外を向いたままこちらを見ようとしない。だが、大切な一人息子をこんな目に合わせられて、黙って引き下がることなんてできない。俺と綾奈は代わる代わる正典を説得し、数十分ほど経った頃に正典は根負けして、ぽつりぽつりと何があったのかを話し始めた。

どうやら俺と綾奈が心配した通り、正典はいじめに遭っていたらしい。最初は標的にされてはいなかったのだが、同じ部活の友人が標的にされているのに気がつき、止めに入ったところ、正典も友人と一緒にいじめられるようになってしまったのだという。いじめの首謀者の名前は肩桐と言って、学校の卒業生で、未だに校内に勝手に入り込んだりしていて先生たちも手を焼いている不良なのだそうだ。肩桐は学校では先生たちの目があり、あまり大胆な行動に出ることはなかったが、いつも部活帰りを待ち伏せして正典や友達を殴ったり蹴ったりしてきていたらしい。

「やり返そうかとも思ったんだけど、試合が近いから喧嘩がバレて試合出場停止なんかになっちゃったら他の部員にも迷惑かかっちゃうと思って、何もできなかったんだ」

「そうだったのか。そんなことが」

俺は友達を助けに入ったり、他の部員のことを考えて耐えていた正典の優しさに心を打たれた。安易にやり返せばと考えていた自分が恥ずかしいと思った。

「正典の気持ちは立派だが、さすがにここまでされて俺たちが黙っているわけにはいかないことは理解してくれるな」

「どうするつもり?」

「とりあえずはその肩桐ってやつと話をするつもりだ。そいつの家は分かるか?」

「多分分かるけど、まだ家に帰ってないかも。さっき俺を殴り終わった後に、外に出かけるとか言ってたから」

「分かった。とりあえず家の住所と電話番号を教えてくれ」

俺は肩桐の住所と電話番号を聞き出すと、ある人物へと電話をかけた。その際に、念のため顔が分かるものがないかと正典に聞くと、写メがあるというのでそれもメールで送ってもらっておいた。そして指示を伝えると、綾奈に正典を頼むと伝え、困惑顔の正典と綾奈を病室に残して病院を後にしたのだ。

病院を出た俺は肩桐に電話をかけた。知らない番号だから何度も無視されたが、何回目かでやっと電話に出る。

「誰だよ、しけえな」

「君が肩桐君かな?」

「そうだけど。あんた誰だよ」

「俺は今日君が病院送りにした、神田正典の父親だ」

「正典の父親?」

「俺の息子を病院送りにした責任を、君にちゃんと取ってもらおうと思ってね。今どこにいる?」

「なんでいちいち答えなきゃいけねえんだよ。めんどくせえじじいだな。おとぎゃがれよ」

肩桐はそう言うと一方的に電話を切ってしまった。だが、俺は肩桐の電話の後ろで聞こえていたゲームセンターの騒がしい音を聞き逃さなかった。俺は先ほど病院で電話した相手に再度かけ、正典から送ってもらった肩桐の写メを送り、近くのゲームセンターで探すように指示を出した。すると数分後、電話の相手から肩桐を見つけたと連絡が入ったので、俺は手を出さないように言ってタクシーに乗り込み、肩桐のいるゲームセンターへと向かったのだ。

ゲームセンターに着いた俺は中に入り、友達数人と騒いでいる肩桐を発見し、静かに近づき声をかけた。

「肩桐君だね?」

「あ? 誰だよ、じじい」

「さっき電話した正典の父親だ。君と少し話がしたいんだが」

「てめえなんかと話すことは何もねえよ。さっさと消えろ」

「俺には用があっても、君にはなくてもな。ここは騒がしいから外に出よう。君たちはもう帰りなさい」

「あ、おい、何すんだ、こら」

俺は暴れる肩桐の首根っこを掴むと、そのままゲームセンターの外へと引きずっていく。一緒にいた友達は困惑しながらも、関わらない方がいいと悟ったのか、俺たちについてくることはなくゲームセンターから逃げるように去っていった。

「離せよ、クソじじい。俺にこんなことしてただで済むと思ってんのか」

外に出たところで手を離すと、肩桐は顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。

「そっちこそ俺の息子を病院送りにして、このままで済むと思ってないよな」

「知るかよ。あいつがいい子ちゃんぶって余計なことに顔突っ込んできたのが悪いんだろうが。俺はそれを身を持って教えてやっただけだ」

「君の言い訳を聞くために来たんじゃないんだ。警察に通報されるのと、病院代を全額支払って慰謝料を払うのと、どっちがいい? 選ばせてやる」

「何と偉そうなこと言ってやがんだ? 警察に通報なんかしたら困ることになるのはめえの方だぜ」

「おお。それはどういう理由で?」

「父は若頭だ。警察に通報したやつは消されるぜ」

肩桐はニヤニヤと笑いながら、勝ち誇ったように言い放った。なるほど。いつも父親がヤクザの若頭だと言って周りを脅しているというわけか。

「俺も父さんのいる柳原組の組員だからな。敵に回さない方がいいのはお前でも分かるよな。通報するなんてバカなことしねえよな。命は惜しいだろ」

「……通報しない。組の名前を言えや」

「は?」

「だからお前と父親のいる組の名前を言え」

「お前、自分の言ってる意味が分かってんのか?」

「なんだ? 呼べないのか? お前がヤクザっていうのも、父親が若頭っていうのも嘘か?」

「嘘じゃねえ。後で泣いても知らねえぞ」

肩桐はスマホを取り出すと、父親らしき人物に電話をかけ始める。

「ああ、親父。なんか俺に喧嘩で負けたガキの父親ってのが俺に文句つけに来てんだけど、親父ちょっと痛めつけてやってよ」

俺は電話をしている間に、先ほど指示を出した人物へ電話をかけ、捜索に出ていた全員をゲームセンターに呼ぶように伝えた。俺が電話を切ると、肩桐も電話を終えて俺に向かってニヤニヤしながら話しかけてくる。

「親父すぐに来るってよ。お前、終わったな」

「さあ、それはどうだろうね」

「強がってんじゃねえよ、一般人のじじいがよ」

それから五分後、ゲームセンターの前に黒塗りの車が次々に現れ、車の中から黒いスーツを着たいかにも裏社会の人間ですと言った男たちが降りてくる。

「なんだ?」

次々に現れる男に肩桐は困惑の表情を浮かべる。男のうちの一人が集団から進み出て俺の前に来ると、さっと頭を下げた。

「お疲れ様です。ご指示通り全員集合させました」

「おい。なんか思ったよりも多いみたいだが、一体何人体制で探してたんだ?」

「大体五百人くらいかと」

「それはまたたくさん集めたな」

「次期組長の息子さんに手を上げた者を見つけるのに、これくらい当たり前ですよ」

「一体これは何の騒ぎだ?」

「ああ、親父」

ここに肩桐の父親が到着したらしく、大勢集まった黒い集団に目を丸くして肩桐に声をかけた。

「こいつが親父を呼べって言ってきたかと思ったら、なんかどんどん人が集まってきてさ」

そう言って肩桐が俺を指さし、肩桐の父親が俺の方を見ると目を見開き、一気に顔面蒼白になっていった。

「あ、あなたは……お疲れ様です。次期組長」

「え、親父?」

俺に向かって勢いよく頭を下げる父親を見て、肩桐は意味が分からないと言った様子だ。

「おお、お前が柳原組の若頭で、こいつの父親か」

「あ、はい。間違いないです」

「そうか。実はな。こいつが俺の息子をボコボコにして病院送りにしてくれたんだわ」

「そ、そんな……大変申し訳ございませんでした。こいつにはよく言って聞かせておきますんで」

「親父、なんでこんなじじいに頭下げてんだよ、バカ野郎」

「この方はな、柳原組や他の傘下の組を束ねる本家白会の次期組長だ」

「え……」

「お前はなんて人の息子さんに手を出したんだ。柳原組なんて一瞬で潰されちまうんだぞ」

そう。実は俺はこの辺りのヤクザ組織を束ねる本家白会の次期組長なのだ。現組長は体調が思わしくなく引退をすでに宣言しており、傘下の組にもそれは通達済み。数日後に控えている就任式を終えれば、俺は正式に本家の組長になることになる。ちなみに柳原組は傘下の中でも下の中ほどの小さい組織で、肩桐の父親が言う通り俺が一声かければ一瞬で潰すことができるだろう。

「そ、そんな……あいつはそんなこと一言も……」

「正典には秘密にしていたからな。あいつが成人した時に伝えるはずだったが、きっと、もう隠しておけねえだろうな。どう責任を取ってもらおうか」

「す、すみません。でも、知らなかったんだから仕方がないじゃないですか」

「知らなかったら一般人に手を出してもいいのか? 柳原組は一般人に手を出すのは御法度だ。本家のルールを守ってないってことか?」

「いえ、まさかそんなことはありません。こいつが勝手にやっていただけで、他の組員も組長も俺も関係ありません」

「親父、何言い出すんだよ」

「うるさい。黙れ。お前には今まで何度もチャンスを与えてやってきたが、今回ばかりはどうにもならねえんだよ」

「そ、そんな。親父だろ? どうにかしてくれよ」

「さっきそいつにも伝えたんだが、大人しく警察に行くか、慰謝料を払うか、どっちにするよ」

「け、警察に行きます」

「だめだ。お前が捕まったら組に迷惑がかかるだろうが、俺の地位もなくなる。慰謝料を払うってことでお願いいたします」

「慰謝料は三億になるが、それでもいいんだな」

「構いません。こいつを好きなように使ってくださって構わないので、どうかこの場はご容赦を」

「ち、ちょっと待て。三億なんて俺に払えるわけねえじゃん。好きなようにってなんだよ」

「船に乗るなり、工場で働くなりして支払え。お前ももう大人なんだ。自分のケツは自分で拭け」

「そんなの嫌に決まってんだろ。警察に行って捕まった方がマシだ」

「そんなことしてみろ。出てきた瞬間に首を消されるぞ。俺はお前のことは構わないからな」

「そ、そんな……」

親子二人のやり取りを黙って聞いていた俺だったが、これも今まで父親が息子を甘やかしてきたことの結果だろう。父親にも今回の責任の一端はあるのだ。

「若頭よ。お前にも監督不行き届きで責任は取ってもらうぞ」

「……分かりました」

「柳原組の組長には伝えておくから、お前は明日から下っ端の構成員に降格だ。分かったな」

「はい」

「よし。話はまとまったみたいだし、こいつはこっちで預からせてもらうからな」

「よろしくお願いいたします」

「い、嫌だ。助けて、助けてくれ、親父」

俺は泣き騒ぐ肩桐を幹部に任せて一台の車に乗り込み、その場を後にしたのだった。

その後、組に戻った俺は宣言通り柳原組の組長に連絡を入れ、今回の後始末として肩桐の父親を降格させるように伝えた。そして肩桐はと言うと、ちょうどよく漁船が低下していたので、その船に乗せて遠洋へと送り出した。肩桐が次に陸地に足をつける時、それは三億の慰謝料を全額支払えるだけ稼ぎ終わった後だ。

正典は幸いにも命に別状はなく、脳のCTやMRIにも異常は見られなかったため、数日間病院で安静にした後に家に帰ってくることができた。まだ骨折は治りきっていないから松葉杖で学校に通い、部活も見学しなければならないが、骨折さえ治れば日常生活に戻れるということなので、俺も綾奈も一安心だ。

俺がヤクザだということは今回の一件で正典には知られてしまったのだが、実は正典は少し前からそうではないかと疑っていたらしい。だがそれを自分に打ち明けないのは、自分のことを思ってのことだろうと察し、俺が打ち明けたいタイミングまで知らん顔をしておくことにしていたのだとか。

「父さんがどんな仕事をしていても、俺の父さんには変わりないし。それに、やばい人ならとっくに母さんに捨てられてるでしょ」

「そうかもしれないわね」

「母さんが父さんのことを知った上で一緒にいるんだから、俺だって知ったからって離れていったりするつもりはないよ」

「父さんはね、こう見えて、お前が成人したら打ち明けようってずっと悩んでたのよ。正典に打ち明けて嫌われたらって、ビクビクしてたんだから」

「それでもヤクザを続けるのには、父さんなりの理由があるんだろ」

「まあな。俺が若い頃に生き倒れそうになっていた時に助けてくれたのが、今の組長だったんだ。だから俺はあの人の大切にしている組を守りたいんだよ。もちろん、お前たち家族もな」

そう話すと、綾奈と正典は微笑みながら頷いてくれた。俺はこれからもこの家族と大切なものを守るために、胸を張って日々生きていこうと思っている。

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