この港町で朝を迎えるようになってから、もう十年が過ぎた。夜明けとともに店のシャッターを上げ、大きく息を吸い込む。塩の匂いは季節や天気によって少しずつ表情を変えるけれど、どんな日でも変わらずそこにある。俺は今日もこの町で生きているのだと実感する。
炭に火を入れ、網を乗せ、丁寧に開いた鮎の干物を並べていく。じわりと油が浮き、パチパチと小さな音が立ち始めると、やがて香ばしい煙がゆっくりと昇っていく。
ここは俺が選んだ場所だ。誰に命じられたわけでもなく、自分の足でたどり着いた静かな逃げ場。やがて沖から戻ってきた小さな漁船のエンジン音が港に響き始める。ほどなくしていつもの足取りで常吉さんが売店に顔を出した。日に焼けた顔に深い皺を刻みながらにやりと笑う。
「よう兄貴。今日も元気か?」
俺は炭をつつきながら肩をすくめる。
「兄貴ってやめてくれよ。そっちこそ今日も大量か」
常吉さんは豪快に笑い、今朝の水揚げの話を得意げに語っていった。俺は愛銃を打ちながら魚を裏返し、焼き加減を確かめる。こうした何気ないやり取りが、この町での俺の日常だった。ここでは誰も俺の過去を深く詮索しない。ただ港の売店を切り盛りする少し無口な男として受け入れてくれている。
それでも、全てを忘れられたわけではない。遠く国道の方からかすかにサイレンの音が流れてきた。風のせいだろうか。その音はすぐに掻き消されそうなほど小さい。それでも俺の耳ははっきりとそれを拾ってしまう。体がわずかに強張り、指先が止まった。
救急車のサイレンは、今も俺の胸の奥をざわつかせる。炭の上でパチリと油が弾ける音がして、俺ははっと我に返る。魚を焦がすわけにはいかない。俺は静かに息を吐き、網の上の魚に目を戻した。ここは現場じゃない。俺はもう救命士ではない。
昼を少し回った頃、港に観光客の姿が増え始める。焼きたての干物を手渡しながら働いていると、視界の端に白衣が揺れた。振り向く前から分かってしまう。この町で、あの白衣があれほど自然に似合う人は一人しかいない。佐藤まき先生だ。四十歳とは思えないほど凛とした立ち姿で、潮風に揺れる黒髪が日に透ける。港町の風物詩の中にいると、少しだけ浮いて見えるほどの美女だ。観光客の男たちが魚より先に先生の姿に目を向けるのも無理はない。
「洋一さん、今朝も随分早くから動いていたみたいね。顔色、あまり良くないわよ。ちゃんと寝てるの?」
近くに立たれると、塩の匂いに混じってほのかに石鹸の香りがする。
「先生は相変わらず目ざといですね。俺はこの通りピンピンしてますよ」
できるだけ平静を装って答えるが、先生の真っすぐな視線にほんの少しだけ居心地が悪くなる。若い頃ならともかく、この年で女の視線を意識するとは思わなかった。先生に見つめられると、なぜか嘘が通用しない気がする。
まき先生は小さくため息をつく。
「強がるのは昔から変わらないのね。あなたが無理をすると、周りが困るのよ」
胸の奥がわずかに揺れる。俺がこの町へ流れついた理由を知っている数少ない人間。それでも彼女は決して、あの日の話を自分から出さない。俺が話さない限り踏み込まない。その距離がありがたい。
「先生こそ、港に来すぎじゃないですか。診療所は暇なんですか?」
まきはわずかに笑う。
「心配してるだけよ。あなたが倒れたら、この町ちょっと困るんだから」
その言葉に、俺は思わず視線をそらす。町のためだと言われているのに、なぜか少し自分個人を気にかけられているような錯覚をしてしまう。
「今日は午後、診療所にいるわ。何かあったら遠慮せず来なさい」
白衣が潮風に揺れ、その後ろ姿がゆっくり遠ざかっていく。
夜になると、港は昼間とはまるで別の顔を見せる。観光客の姿も消え、波の音だけが聞こえる。売店のシャッターを下ろした後、俺はいつものように椅子に腰を下ろし、闇に溶ける海を眺めていた。目を閉じると、十年前の現場の匂いが蘇る。焦げたゴムとガソリンの混ざった異臭、隊員たちが飛び交う高速道路。
あの日の事故は多重衝突だった。俺は都内の高度救命救急センターに所属する救急救命士で、現場の責任者を任されていた。高瀬は俺の三つ年下の後輩で、俺が一から叩き込んだ救命士だった。不器用なくせに妙に真っすぐで、誰よりも現場に真剣な男だった。
サイレンが鳴り響く中、隊員たちの声が飛び交う。
「隊長、意識レベル低下しています」
「こちらも挟まれています。工具が足りません」
俺は一瞬で優先順位を決めなければならなかった。全員は救えない。それが現場の現実だった。俺は車内で心停止寸前だった若い母親を最優先に指示した。
「こっちを最優先だ。気道確保、すぐ搬送準備に入れ。高瀬、お前は隣の車両を頼む。まだ反応がある。急げ」
高瀬は俺の目をまっすぐ見て、強く頷いた。
「了解です。隊長。絶対に助けます」
あいつはいつもそうだった。俺の判断を疑わない。その信頼が誇らしくもあり、重くもあった。
次の瞬間だった。金属が悲鳴を上げる異様な音が響いた。
「燃料漏れてます。危険です」
俺が振り向いた時、炎が一気に吹き上がった。爆発音が夜を裂き、衝撃波が体を打つ。炎の向こうで何かが崩れる音がした。だが、もう近づけなかった。
その後のことは断片的にしか覚えていない。搬送、指示、搬送。俺は機械のように動き続けた。優先した母親は一命を取り留めた。それは事実だ。だが、高瀬は帰ってこなかった。
事故後、病院の廊下で上司が静かに言った。
「君の判断は間違っていない。お前は隊長として正しい選択をした」
正しい選択。その言葉が今でも胸に引っかかっている。もし逆の指示を出していたら。もし俺があいつの位置に立っていたら。答えの出ない問いだけが、十年経った今も消えない。
海は静かだ。だが、俺の中ではあの夜が終わっていない。だからこの町へ来て、サイレンのない日常に身を置いた。俺は深く息を吐き、暗い海を見つめる。あの日の判断が正しかったのかどうか、今も答えは出ない。
冬の港は風が鋭い。海から吹きつける冷たい空気が頬を刺し、吐く息は白く、指先は火のそばにいてもなかなか温まらない。その日も俺は売店の前に立ち、焼き牡蠣の殻を丁寧に開けながら観光客の相手をしていた。炭の上で弾ける汁の音に、若い夫婦が歓声を上げる。
「すごい、いい匂いですね。こんな港で食べる牡蠣って、なんだか特別な感じがします」
「寒い日は身が締まってうまいんですよ。ほら、熱いうちにどうぞ。火傷しないように気をつけてください」
殻を手渡したその直後だった。胸の奥が、きゅっと内側から握り潰されるように締めつけられた。最初はただの冷えだと思った。冬場は血圧も上がりやすい。年のせいの不調だと自分に言い聞かせようとした。だが次の瞬間、視界がゆらりと揺れた。足元の地面が急に遠く感じる。耳鳴りがして、周囲の音が水の中から聞こえるように鈍くなる。
「おかしいな。どうしたんだ?」
無意識にそう呟いた時には、もう体が言うことを聞かなかった。膝が崩れ、俺はその場に崩れ落ちる。手にしていたトングが金属音を立てて転がった。
「えっ、ちょっと大丈夫ですか?」
誰かの声が遠くで響く。地面に触れた手のひらが異様に冷たく感じる。胸の圧迫は強くなり、息がうまく吸えない。
その時だった。力強くはっきりとした若い男の声が、俺のすぐそばで響いた。
「意識はありますか?返事できますか?脈触れます。弱い。誰か救急車を呼んでください。AEDの場所分かりますか?」
その声は落ち着いていて無駄がない。状況を瞬時に把握し、周囲へ的確に指示を出している。まるで現場の中心に立つ救命士の声だった。
「大丈夫です。今呼吸を確認します。焦らなくていいです。ゆっくりでいいから、目を開けてください」
その声の響きがどこか懐かしい。指示の出し方、間の取り方、緊迫の中でもぶれない呼吸。俺は薄れゆく意識の中で、思わずその声を探す。ああ、この感覚は高瀬に似ている。
誰かに支えられながら横向きにされる。温かな手の感触が肩に伝わる。
「大丈夫です。あなたは今、ちゃんと呼吸しています。もうすぐ救急車が来ますから」
俺はずっと救う側だった。現場で誰かを安心させる言葉をかけ続けてきた。それが今、逆になっている。
「救急隊到着まで、私が対応します。状況報告。男性、六十代、意識レベル低下、胸部圧迫感あり」
意識が闇に沈む直前、俺は思った。俺は、救われる側になったのか。
数時間後、ゆっくりと意識が浮かび上がる。鼻を刺す消毒液の匂いと、一定のリズムで鳴る電子音が耳に入る。目を開けると、白い天井がぼやけて見えた。体を動かそうとすると、胸の奥に鈍い痛みが走る。
すぐ横から落ち着いた声がした。
「無理に起き上がらないで。心臓に一時的な血流不足があったの。あと少し遅れていたら危なかったわ」
視線を横に向けると、まき先生が立っていた。その横には若い男がいる。
「意識は回復していますね。よかった」
声を聞くだけで分かる。あの時、冷静な指示を飛ばしていた男だ。
「あんたが、さっきの」
青年は軽く頷いた。
「神谷陸と言います。東京消防局の救急救命士です。今年で九年目です。休暇でこちらに来ていて、たまたま港に立ち寄っていました」
九年目。あの落ち着きにも納得がいく。まき先生がカルテをめくりながら言う。
「洋一さん、少し休めば落ち着くと思うけれど、しばらくは安静よ」
その瞬間、隣に立っていた神谷の表情がわずかに変わった。そばにあったカルテを見たようだ。
「戸田…洋一さん?」
俺は眉をひそめる。
「そうだが、何か問題でもあるか?」
神谷は一歩近づき、まじまじと俺の顔を見る。
「失礼ですが、以前都内の高度救命救急センターにいらっしゃいましたか?」
「…昔の話だ」
神谷は小さく息を飲んだ。
「やっぱり。救急学校で聞いたことがあります。高瀬隊員が何度も名前を出していた隊長が、戸田さんでした」
高瀬の名前が出た瞬間、空気が変わった。
「高瀬を知っているのか?」
神谷は静かに頷いた。
「十年前、救命士学校で特別講義をしてくれました。現場での判断の話をしてくれた時、必ずこう言っていました。『俺の隊長は、絶対に間違えない人だ』って」
胸の奥が締めつけられる。神谷は続ける。
「あの事故の少し前でした。講義の最後に、『現場では必ず判断を迫られる。その時、信じるのは自分の仲間だ』と話していました」
俺は天井を見上げる。あいつがそんなことを言っていたとは知らなかった。
「そう、あなたが倒れた時、すぐに思ったんです。高瀬隊員が教えてくれた通りにやろう、って」
病室が静まる。高瀬はあの時も、その前も、俺を信じていたのかもしれない。
まき先生が静かに言った。
「洋一さん、止まったままだと思っているのは、あなただけかもしれないわね」
神谷は最後にまっすぐ俺を見た。
「私は高瀬隊員の話を聞いて、この仕事を一生の仕事にしようと決めました。そして今日、偶然ですがその隊長に会えた」
偶然。その言葉が胸の奥に深く刺さる。俺は救われた命だけじゃない。十年間握りしめたままだった何かが、わずかにほどけ始めていた。
神谷は椅子に腰を下ろし、静かに続けた。どこか慎重な口調だった。
「高瀬隊員の講義は一度きりでした。でもあの人の話は今でも教材として残っています。音声記録も何度も聞きました」
俺は眉をひそめる。音声記録。その言葉が胸に引っかかった。神谷は少し間を置いてから言った。
「事故当日の無線記録も、後輩教育の資料として残されているんです。判断の難しさを学ぶためのケーススタディとして」
俺の指先がわずかに動く。あの日の無線。俺はそれ以来、まともに聞き返していない。神谷は俺の表情を伺いながら、ゆっくりと続けた。
「爆発の直前、高瀬隊員はこう言っています。『隊長の指示通り進めます。隊長の判断を信じます』って」
言葉がはっきりと胸の奥に落ちてきた。『隊長の判断を信じます』。俺は目を閉じる。あの日の喧騒の中、確かに無線は鳴っていた。だが、あいつの最後の声を、俺はきちんと覚えていない。
「その記録を聞いた時、私は思いました。あの人は迷っていなかったんだって。最後まで自分の役割を理解していたんだって」
病室が静まり、機械の電子音だけが規則正しく鳴っている。俺はずっと自分の判断を疑い続けてきた。だが、高瀬は迷っていなかった。
「私はあの無線を何度も聞きました。怖さよりも、信頼の方が強く伝わってきたんです」
俺はあいつを守れなかった。だが、あいつは俺を信じていた。まき先生が静かに言った。
「あなたはずっと一人であの日を背負ってきた。でも高瀬さんは、あなたと一緒に立っていたのよ」
俺は何も言えない。ただ、胸の奥がほんの少し軽くなったのを感じていた。
退院して数日後、俺は久しぶりに売店の前に立った。冬の空気は相変わらず冷たいが、前とはどこか違う。シャッターを持ち上げる時、胸の奥にわずかな緊張が走った。また倒れたらどうする。そんな不安がないわけではない。
炭に火を入れていると、足音が近づいてきた。振り向くと、常吉さんが腕を組んで立っている。
「よう兄貴。やっと戻ってきたか。無理はすんなよ。港で倒れるなんて、聞いてられんぞ」
「ちょっと休みすぎましたかね。体はもう大丈夫です。先生にも許可はもらってます」
常吉はふんと鼻を鳴らす。
「許可とか、そういう問題じゃねえ。兄貴がいねえと、この辺りが妙に静かでよ。干物の匂いもしねえし。なんだか港らしくねえんだ」
その言葉に、思わず手が止まる。俺がいないと港が静かになる。なんて考えたこともなかった。
やがて観光客の姿が見え始め、近所の主婦や仲間も顔を出す。
「戸田さん、大丈夫だったの?急に倒れたって聞いて、びっくりしたわよ」
「兄貴がいなくなったら、焼き魚どこで食えばいいんすか?ちゃんと長生きしてくださいよ」
冗談混じりの声に、笑いが起きる。俺は苦笑しながら牡蠣の殻を網に並べる。
「俺は不死身なんですよ。簡単には死にません」
言いながら、自分でも少し驚く。以前なら、こんな軽口は出なかったかもしれない。俺はこの十年、逃げているつもりでここにいた。だが、知らないうちに俺はこの町の一部になっていたらしい。誰かの世間話の相手になり、誰かの当たり前の風景になっていた。救命士でなくても、俺は誰かと繋がっていた。
網の上で牡蠣の殻がパチリと弾ける。
港に戻って数日が過ぎた頃、一本の電話がかかってきた。画面に表示された名前を見て、俺は思わず息を止める。東京で働いている娘だ。
「どうした?珍しいな」
「どうしたじゃないでしょう。倒れたって聞いたよ。どうしてすぐ連絡くれないの?」
電話越しの声は怒っている。俺は曖昧に笑ってごまかしたが、その二日後、綾乃は本当に港へやってきた。潮風の中、コートを着込んだ娘が売店の前に立っている。
「顔色、悪くない?」
「先生が太鼓判を押してくれた。もう平気だ」
綾乃はあたりを見渡し、潮の匂いを吸い込むと、どこかほっとしたように息をついた。
「みんな心配してたんだね。さっきも漁師さんに『兄貴を頼むぞ』って言われたよ」
娘には、これまで詳しい話をしてこなかった。東京の仕事をやめ、この町に来た理由も、曖昧なままにしてきた。
夕方、店を閉めた後、俺たちは港のベンチに並んで座った。波の音だけが静かに響いている。しばらく沈黙が続いた後、綾乃が口を開いた。
「お父さん。あの事故のこと、今でも引きずってるんでしょ?」
胸の奥がゆっくりと重くなる。逃げてきた話題だった。だが、もうごまかせない。
「俺はな、あの日、判断をした。全員は救えなかった。後輩が一人、帰ってこなかった」
言葉にするのは、思ったよりも苦しかった。
「俺は隊長だった。あいつは俺の指示を信じて動いた。爆発が起きた。俺は…逃げたんだ。あの日から、現場からも、自分からも」
潮風が頬を打つ。綾乃は黙って聞いていた。やがて、ゆっくりと首を振る。
「逃げた人は、こんな風に人に囲まれないよ」
俺は顔を上げる。
「みんなお父さんのことを心配してるんでしょ?先生も漁師さんも、『あの人がいると安心する』って言ってたよ」
胸が静かに揺れる。
「救命士じゃなくても、お父さんはずっと誰かを支えてきたんじゃないの?命を救う仕事を辞めても、命を支えることは続けてたんでしょ?」
娘の言葉は、誰よりも重かった。
「私、小さい頃覚えてるよ。お父さん、夜中に呼び出されても、すぐに出かけていったでしょ。あの背中、かっこよかったよ」
その記憶に、胸の奥が熱くなる。俺は海を見つめる。娘の言葉が、深く刺さった。
俺は小さく息を吐き、静かに言った。
「…俺は、まだやり直せると思うか」
綾乃は笑って即した。
「もうとっくにやり直してるよ。気づいてなかったのは、お父さんだけ」
波の音が、優しく堤防を叩く。
数日後、神谷がこの町を立つ日、港は穏やかな夕暮れに包まれていた。売店の片付けを終えた俺は、見送りに出た。神谷は小さなボストンバッグを肩にかけ、海を一度だけ振り返る。
「短い滞在でしたけど、忘れられない町になりました」
「観光で来た割には、随分濃い休暇だったな」
そう言うと、神谷は少し笑い、和かな顔に戻った。
「戸田さん。私は、あなたの背中を追いかけます」
真っすぐな目だった。俺は苦笑し、肩をすくめる。
「やめとけ。俺みたいになるな。遠回りばっかりの、めんどくさい人生だ」
神谷は首を横に振る。
「遠回りじゃないです。あなたが止まらなかったから、高瀬さんがいて、私がいます」
この言葉に、胸の奥が静かに震えた。俺は十年間、あの日で時間を止めていた。だが、本当は止まっていなかったのかもしれない。高瀬が信じた判断は、神谷へと受け継がれ、あの時、俺を救った。
神谷は深く頭を下げた。
「ありがとうございました。あなたに会えて、よかったです」
これだけ言うと、彼は港を後にした。夕日の中、俺は黙って見送る。
やがてあたりは静まり、波の音だけが残った。俺はゆっくりと海を見つめた。あの日の答えは、まだ出ない。だが、それでいいのかもしれない。答えが出ないまま、それでも前に進み続ける。あいつが俺を信じたように、俺も誰かの信じる理由であり続ける。この町で、今日も魚を焼きながら。



