「あとは二人で好きにすればいいわ。この結婚生活、私がもらうから。お姉ちゃんは離婚届、よろしくね」
妹のゆかの言葉に、私は一瞬固まった。40歳で初めて手にした結婚生活。タワーマンションでの二人暮らしは経済的にも精神的にも安定していて、ようやく掴んだ幸せだと思っていた。それなのに、突然訪れた妹がこんなことを言い出すなんて。
「お姉ちゃん、聞いてるの?」
夫の顔を見ると、まんざらでもなさそうにニヤニヤしている。そうか。この男は最初から私のことなんてどうでも良かったんだ。お金さえあればいいと感じてはいたけど、気づかないふりをしていた。私はなんて愚かだったんだろう。
でも、私はただ愚かだっただけじゃなかった。
「分かったわ。あとは二人で好きにすればいい」
「え、本当にいいの?じゃあ遠慮なく私がもらうわ」
実はこの時、私は心の中で笑っていた。二人の未来は先が見えているのに、彼らはそれに気づいていないのだから。
私は西田明里、40歳。現在は投資家として生活している。実家は両親と妹の四人暮らしで、昔から裕福な環境ではなかった。それでも両親は私たち子供のことを第一に考えてくれる人たちで、私は大人になったら親孝行したいと思っていた。
子供の頃の私は本当に地味だった。目立つ趣味もなく、恋愛にも興味がなかった。ただひたすら勉強して、いい大学を出て、大企業で稼いで親を喜ばせることだけを考えて生きてきた。大学を卒業してからは証券会社に勤めた。給料は悪くなかったが、個人でもっと稼ぎたいと思って会社を辞め、株式投資を独学で学んだ。今は投資家として満足できる収益を得て生活している。
投資家になりたての頃はトラブル続きだった。それでも全て経験だと思い、前向きに何度も挑戦した。結果を残せるようになるまでにはかなりの年月がかかったけれど、まいた種が実を結び、子供の頃から思い描いていた形で親孝行もできた。
タワーマンションに住み、順風満帆な生活を送っていたけれど、少し退屈も感じるようになった。その退屈を紛らわせるために、勉強以外の趣味を初めて作ってみようと思った。財宝も料理もスポーツも考えたけれど、結局選んだのはお菓子作りだった。特に深い理由はなかったが、近所にお菓子作り教室があるというのが決め手だった。
普段の夕食をデリバリーや外食で済ませている私がお菓子作りなんてできるのか。やってみたら案外向いているかもしれない。そんな前向きな気持ちで教室へ向かった。
「ここね、教室だって言うのにおしゃれなのね」
近所だからと選んだ教室だったが、意外と人気があるようで、小さな子供から年配の方まで幅広い層の生徒がいた。普段人と会話することが少ない私は、その場で少し浮いてしまった。そんな時、声をかけてくれたのはアルバイト講師の男性だった。
「どうかしましたか?こちらの方、初めて来た方でしょうか?」
「は、はい。こういうところに初めて来たもので、何も分からなくて」
「そうでしたか。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。ではこちらへどうぞ」
年は若くないが親切なその男性に案内され、私は教室の中へ向かった。男性と顔を合わせて会話するのは久しぶりだったので、私は少し照れていただろう。
想像以上に大きな教室に感心した。講師と思われる人も何人かいて、間違いだったかなと不安になったけれど、周りを見渡すと同じくらいの年の女性もいることに気づいた。勝手に親近感を感じ、ここならやっていけると気持ちを持ち直した。
すると会場に男性の声が響き渡る。マイクでプログラム進行をしているのは、さっき案内してくれた彼だった。気づかないうちに、私は彼の姿を目で追っていた。
講義は数組ずつグループに分かれ、それぞれに講師がつくという形だった。私はその場で仲良くなった同年代の人やカップルの若者とグループを組むことになった。
「皆さんを担当します。北村と申します。私はアルバイトですが、教えるからには精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」
なんと私のグループの担当は、さっき案内してくれた彼だった。アルバイト講師だという話だったが、私にはそんなことは関係なかった。少し意識している彼に近い距離で指導してもらえるなんて、舞い上がってしまった。
講義が始まると、大人数を見なければならない彼はなかなか自分のところに来てくれなかった。それでもいずれ来ることが分かっていたので、私は集中して作業に向き合った。難しい工程もあったけれど、お菓子作りは楽しいと感じ始めていた。その時、ついに彼が私のところに来て指導を始めた。
「いい顔してますね。お菓子作り、楽しいですか?」
「は、はい。大変なところもありますけど、面白いと思います」
「それは良かった」
笑顔を浮かべる彼に、私は何も言えなくなってしまった。ちょうど難しい工程だったので手本を見せてほしいとお願いすると、嫌な顔一つせず披露してくれた。真剣な表情に変わった彼は、手慣れた手つきで作業をこなしていく。その姿に目を奪われ、心が動かされていくのが分かった。
「ありがとうございます。私、普段から料理する習慣もなくて。改めてプロの方はすごいですね」
「私なんてまだまだですよ。実は今日でここの講師をやるのも最後なんです。一人前のパティシエになるために、自分を磨いて店を出そうと思っていて」
彼の口から語られた夢に、私は衝撃を受けていた。自分より若い子が夢のために向かって走っている姿に、私は異性として惹かれていることに気づいた。
「北村さんならなれますよ。努力できる方だと思いますから」
「そう言っていただけると身が引き締まりますね。頑張ります」
「あの、もし北村さんさえよろしければ、私お力になりたいです。これ、私の名刺ですので、気が向いたらご連絡ください」
名刺を受け取った彼は軽く一礼して、他の人の指導に戻っていった。それからの講義は全く覚えていない。彼の姿を追いかけているうちに、講義は終了していた。半分夢見心地のまま教室を後にした。
「北村さんから連絡が来ればいいけど」
翌日、すぐに彼から連絡が来た。電話越しに、私がどういう仕事をしていて、どのように力になれるのか。隠し事が嫌な私は、なぜそのような経緯に至ったのかも全て隠さず話した。彼は最初戸惑っていたが、そこまで期待してくれるなら答えたいと言って受け入れてくれた。
それから彼と連絡を取ることも増え、休日には顔を合わせて個人的にお菓子作りを学んだり、距離が近づいていくのに時間はかからなかった。恋愛をしたことのない私にとっては、何よりも新鮮で濃密な時間だった。手をつなぐこと、顔を合わせて何気ない話で笑い合うこと、唇を重ね愛し合うこと。そのどれもが私の心を満たしていった。
半年が過ぎた頃、私たちは結婚を決めた。もっと近くで力になりたい。成長していく姿をもっと近くで見ていたい。そんなお互いの気持ちが合致したことで結婚へと至った。まさか恋愛に縁もゆかりもない自分が、趣味の延長で女性としての幸せまで掴めるとは思っていなかった。順調な生活は順調な人生へと変わっていった。
「これからも私はあなたの力になるから。妻としてもしっかりあなたを支えていくわ」
「任せておいてよ、明里。必ず夢は叶えるから。明里も何かあったら俺を頼って。ずっとそばにいるから」
夫となった彼は、今は私とタワーマンションに同居している。私は彼のために専用のキッチンルームを契約したり、パティシエの講師を専属でつけてあげたり、できることは何でもしてあげていた。結婚当初は専用のキッチンルームにこもって一日中お菓子を作り続けたり、熱心に講師とのマンツーマンレッスンを受けに行ったりと、夢に向かってひたすら走り続けていた夫に、私もサポートのしがいがあると感じていた。
ただ、結婚してから半年が経った頃からだろうか。夫の様子が少しずつ変わり始めた。どこで知ったのか分からないが、私が大株主で不労所得で生活していると知ってから、金遣いが荒くなり、講師とのレッスンにも顔を出すことが少なくなっていった。
「ちょっと最近だらしないわよ。お金遣いも荒くなってるし、レッスンにも行ってないでしょ。講師の方からわざわざ連絡まできてるのよ」
「ああ、金は仕方ないだろう。自分に合う道具やらなんやら揃えるのに使うんだから。レッスンだって、行きたい時に行ってるんだから問題ないだろう」
言えばこういう口答えしかしない夫に、私は愛想を尽かし始めていた。ただパティシエになるという夢は諦めていないようだったから、温かい目で見守ることにした。ぎくしゃくした関係の中で生活を続けていると、家に思いもよらぬ客が訪れた。
「お姉ちゃん、分かる?私、私、ゆかだよ。家の中に入れて」
インターホンに映ったのは妹のゆかだった。正直、ゆかとは疎遠だった。私が苦手としていたからだ。妹は地味な私とは正反対で、昔から可愛くて誰にでも愛想を振りまくような子だった。その性格のせいか男性関係はだらしなく、学生の頃から両親にそのことで叱られている姿をよく見ていた。それだけでなく、家族だというのに私を馬鹿にした態度で接してくるのが不快だった。
どうやってこの場所を知ったのかは分からないが、家にあげないわけにもいかず、しぶしぶ部屋へ招いた。
「急にどうしたのよ。今まで連絡もしてこなかったのに。それにこの場所、誰に聞いたの」
「ママから聞いたよ。結婚したって聞いたからさ、旦那さんにも顔を合わせておきたいなとか思ってさ」
「だからと言って、急に来てもいい理由にはならないからね」
「誰だ?明里の友達か何か?」
部屋の奥から夫が顔を出すと、妹の目つきが変わった。まるで獲物を見つけた獣のように、夫を見つめている。
「初めまして。妹のゆかです。やだ、お姉ちゃん、旦那さんかっこいいじゃん」
「そうかしら。まあ、そう見えるのかもね」
「可愛い妹だな。せっかく来たんだ。お菓子の一つでも作ってやるよ」
夫が勝手に妹を部屋に上げることに苛立ちを覚えると同時に、妹に対する不安が込み上げる。もしかしたら夫とも問題を起こすかもしれない。でもゆかももう大人だし、その辺は考えているだろう。そんな葛藤を抱えながらその日を過ごした。私も一緒にお菓子作りに参加した。夫と少し離れ始めていた距離感を縮めたいという気持ちからだった。
妹はこの日から頻繁にうちを訪れるようになった。私が留守の時でも「夫がいるから」と勝手に訪れている時もあった。お菓子作りを教えていると夫は言っていたが、不安しかなかった。
「なあ、今日はゆかちゃん来ないのか。せっかく新しいお菓子の作り方を教えてあげようと思ったのに」
「知らないわよ。ゆかのこと構ってあげるのもいいけど、自分のことはどうなの?講師の方がレッスンに身が入ってないって」
「俺も人間だぞ。そんな毎日毎日お菓子作りのことばっかり考えられると思うか?」
妹が来てから夫の堕落に磨きがかかっているのは私も感じていた。夫を信じたいから強く言うことはなかったが、もしこれ以上だらしなくなるようなら強く言わなければと思っていた。
後日、夫が珍しくレッスンへ向かったため、家でゆっくりできると思っていた矢先にインターホンが鳴った。きっと妹だろう。分かりきっているがゆえに深いため息をつき、私は仕方なく妹を家に上げた。
「今日は何の用?北村もいないから、帰った方がいいんじゃない?お菓子目当てなら申し訳ないけど、私は何もできないからね」
「冷たいんだからお姉ちゃんてば。今日は北村さんに用事じゃなくて、お姉ちゃんに用事があるの」
「私に?分かったわ。リビングで待ってて。お茶を持っていくわ」
夫にではなく私に用事。私に興味のかけらもない妹が何の用事だろう。お茶を入れながら思い当たる節を考えるが、思いつかない。仕方なく妹の言葉に耳を傾けることにした。
「それで、私へ何の用事?忙しいから手短に頼むわ」
「えっと、北村さんいるじゃん。私、北村さんのこと好きになっちゃってさ。北村さんも同じ気持ちでいてくれるみたいでさ。お姉ちゃんには本当申し訳ないんだけど、離婚してくれないかな」
ゆかの口から出た言葉は衝撃的だった。でも私の心は揺さぶられることもなく、冷静に淡々と会話を続けた。
「なんだ、そんなことか。いいわよ。お互いに納得した上でその結果になったんでしょ。離婚してあげるわ。慰謝料も何もいらないわ。あなたたち二人が幸せなら、好きにしなさい」
お茶を飲み、喉を潤し、ふーっと一息つく。顔がほころびそうになるのを必死に抑えた。ちょうど夫にも愛想を尽かし、離婚を考えていたところに、これは思わぬ救いの手だった。レッスンに行くと言って実際はサボっているのも知っているし、私の資産に寄生して生活できると言っているのも知っている。このまま結婚生活を続けていても、堕落しきった人間になってしまうと思っていたから、妹の話はとても美味しいものだった。
「本当に、本当にいいの?やった!ありがとう、お姉ちゃん。お姉ちゃんもここから出なきゃいけないし大変になっちゃうけど、ちゃんと私手伝うから安心してよね」
「ん?どういうこと?私がこのマンションから出るって、何の話?」
「ここ、北村さんが契約してるんでしょ?離婚したなら、私が代わりに住むことになるんだから、お姉ちゃんには出て行ってもらわなきゃいけないでしょ。いやあ、私もついに玉の輿か。お姉ちゃんももっといい人に出会えればいいんだけどね」
「ああ、そういうことか」
きっと夫は、私がしていることをまるで自分がしているかのように見栄を張って、妹を誑かしていたんだと理解した。愛想を尽かした先まで来ると、笑えてくる。夫と妹には哀れみすら覚える。
「そうね。じゃあ、さっさとお邪魔虫な私はここから出る準備をするわ。いつまでもいると、あなたたちの迷惑になってしまうしね。離婚届は書いて後で送るわ」
私は友人に頼み、引っ越し業者も驚くスピードで部屋を二日ほどで片付け、マンションを後にした。哀れな二人を思うと笑えてくるが、その感情は自分の中だけにしまい込んだ。
それから数ヶ月後、私の携帯に夫と妹の二人から連絡が来ていた。どんな要件かはおよそ分かっていたが、折り返し電話をかける。
「ちょっとお姉ちゃん、マンションの家賃納付勧告書が届いたんだけど、一体どういうこと?払えるわけないでしょ、こんな金額」
「払えない?あなた、北村と結婚したんでしょ。だったら北村に払ってもらいなさいよ。お金いっぱい持ってるんでしょ、彼」
慌てた様子の妹に、淡々と言葉を返していく。妹は落ち着く様子もなく、さらに私を追い込むように怒鳴り散らす。
「持ってるわけないでしょ!嘘だったのよ。嘘!全部嘘!本当にありえないんだけど」
「あら、そうなの?残念ね。せっかく玉の輿だって喜んでたのに。でもゆかも悪いんじゃない?北村の言葉だけ信じて、中身は全く見てもいなかったんでしょ。中身をちゃんと見ることができていたら、こんなことにはならなかったかもしれないのに」
正直、私も元夫の中身をちゃんと見ることができていなかったなと、自虐的に言った。
「うるさいなあ!私が北村さんのどこを見ようか関係ないでしょ!いいからこのマンションのお金払ってよ!」
何も知らない妹が不便に思えてきた私は、全てを語ることにした。
「はいはい。なんだかゆかのことがかわいそうになってきたから、全部教えてあげる。マンションの家賃滞納の話だけど、元々そこのタワーマンションは私が借りているものよ。北村が借りているわけじゃないの」
「私が北村さんのところに転がり込んだとでも思ってたの?はあ?今そういう冗談とか嘘とか話す場面じゃないんだけど」
「嘘でも冗談でもないから、黙って聞きなさい」
「北村のことだけど、何か聞いてた?」
「一流パティシエで人気があって、今は経営の方に力を入れてるから、別に店に出なくていいんだって」
よくもそんな適当な嘘をつけるものだと元夫に思うと同時に、そんな嘘に騙されている自分の妹にもため息が出る。かわいそうだとは思わないが、二人のためだと思って続けて真実を伝えていく。
「ああ、そんなもの嘘に決まっているでしょう。北村は一流パティシエでも何でもないわ。フリーターよ、ただのフリーター」
「え…」
「どうせ、北村が大株主だとか株式投資で成功してるとか、そんな言葉に騙されたんでしょ」
「そ、そうだけど、でも…」
「もう分かってるはずよ。北村はまるで貯金もないただのフリーターだって。そもそも北村が嘘で言ってた株式投資とかの話もあるでしょ。それも全部、私がやっていることだもの」
「お姉ちゃんが…?お姉ちゃんにそんなことできっこないじゃん!」
全く信用しない妹に拉致が開かないと感じ、私は電話をテレビ電話に切り替えると、自分の預金残高やマンションの賃貸契約書などを見せつけた。画面越しにそれを確認する妹が徐々に青ざめていく表情は、とても気持ちよかった。
「馬鹿なゆかにも分かるように説明してあげる。そこのマンションは私が借りています。あなたたちが住むと言ったから賃貸契約はそのままにしています。ただ、今の名義はあなたたちに変更しているから、支払うのはあなたたち」
「そ、そんな…」
「北村はただのフリーター。パティシエでも何でもない。私の稼ぎで飼育していただけの男なの。寄生してもらわなきゃ何にもできない男なの。本当に残念だったわね。玉の輿なんかじゃなくって」
全ての事実を聞くと、電話越しに妹は泣き始めた。そんな姿を見ても、私の気持ちは何も変わらない。泣きじゃくる妹を知らん顔で、私は電話を切る準備をする。
「私も暇じゃないから、もういいかしら。言いたいことは言ったからね。前にも言ったけど、あとは二人でお好きにしなさい。じゃあね」
もう二度と連絡を取ることもないし、顔を合わせることもないだろう。電話を切った後はすごく気持ちが晴れやかだった。夢を追いかけることを諦めた元夫と、自分のことしか考えないわがままな妹。この二人のことを考えなくてもいいと思うと、気づかないうちに笑いがこぼれていた。
数ヶ月が経ち、妹夫婦はタワーマンションの賃貸契約を解消したらしい。支払えなかった分の家賃は、なんとか分割にしてもらって払っているそうだ。興味本位で頼んだ人物調査の結果も、見ていて非常に面白いものだった。
元夫の北村は、今は日雇いのバイトとして肉体労働をしているらしい。出会った時の嘘偽りのない夢をちゃんと追いかけていれば、今頃は一人前のパティシエとして活躍していたかもしれなかったのに。
妹も昼夜問わず仕事三昧らしい。結婚する前より厳しくなった生活にストレスが溜まり、二人で借りている安いアパートでは毎日のように喧嘩する声が聞こえてくるみたいだ。お互いを思い合って手を取り合えない夫婦なんて、長く続くわけがない。私が言えたことではないけれど、それは置いておいて、遅かれ早かれ離婚すると思う。
そんな私はと言うと、独身生活を満喫しているというより、結婚はもうこりごりで、どうやら一人で生きていく方が向いているのだと思う。誰かと歩調を合わせて人生を歩んでいくというのは、苦行でしかなかった。
株式投資も続けており、年々増える利益で新しい事業を起こしてみたりもした。様々なジャンルの事業を展開してみたけれど、やはり自分で一番手応えを感じたのは専門学校だった。お菓子作り専門の学校を作り、夢を追いかける人の架け橋になっている。年齢も経歴も関係ない。本当に夢を叶えたいという気持ちがあるのなら、誰でも受け入れる学校だ。
お菓子作りはどうやら私の趣味にはなりえなかったけれど、様々なお菓子に触れる機会が増え、お菓子自体は以前より好きになった。これからも独身貴族として、自分らしい生活を送っていくことだろう。
