普通の金曜の午後、部長に呼び出された会議室で、上司が静かに言った。「三億のプロジェクト、どちらかに任せる」——その瞬間、隣に座っていた同期の柳田が、私を見下すように鼻で笑った。彼は名門大学を出ていて、高卒の私を入社初日からずっと馬鹿にしてきた男だ。でも、まさかここまでやるとは思わなかった。翌日、彼は「USBが消えた」と大声で騒ぎ、私のデスクから見覚えのないUSBが見つかった。部長は冷たい目で…

普通の金曜の午後、部長に呼び出された会議室で、上司が静かに言った。「三億のプロジェクト、どちらかに任せる」——その瞬間、隣に座っていた同期の柳田が、私を見下すように鼻で笑った。彼は名門大学を出ていて、高卒の私を入社初日からずっと馬鹿にしてきた男だ。でも、まさかここまでやるとは思わなかった。翌日、彼は「USBが消えた」と大声で騒ぎ、私のデスクから見覚えのないUSBが見つかった。部長は冷たい目で...

「よし、それなら君が10年間アフリカへ行ってくれ。」

社長の言葉に、同僚の柳田は目を丸くして固まった。と、君が彼の一台プロジェクトを引き継いでくれるのだろう? 」

「そうですけど、けど、えっと……」

柳田の顔は青ざめ、言葉をどもらせながら絞り出すように言った。の、高卒の仕事くらい全て引き継ぎますなんて、人を見下して自信満々に言っていたのはどこの誰だったか。

「卑怯なことをするから、こんなことになるんだぞ。」

俺は、腰が抜けたように崩れ落ちる柳田の姿を眺めながら、そう心の中で呟いた。

なんとか逃れようと俺に罪をなすりつけてきた柳田だったが、追い打ちをかけるような事態が発生し、窮地に追い込まれることになる。

俺の名前は大橋という。部品の生産を行う会社で働いている。

子供の頃、俺の家庭は裕福とは言えず、他の家庭と比べると明らかに貧しい家だったと思う。同級生がみんな持っているゲームを買ってもらうこともできなかったし、旅行に行った記憶もない。しかし、俺はそれでも家族が大好きだった。父と母が、俺のために必死に働いてくれていることが分かっていたからだ。家族三人で仲良く暮らして、俺は十分に幸せだったのだ。

そして俺は、高校在学中に就職で働くことを決めた。父も母も、気を使わないで大学に行けばいいと言ってくれていたが、早く自立したかった。高校を卒業し、就職をしてからは、真面目にコツコツと働いた。大学卒の人より年齢も若く、経験も少ないからこそ、周りの人に認められようと思ったのだ。

その結果もあり、俺は先輩にも認められて、色々な仕事も任せてもらえるようになっていった。

俺はこの仕事と職場が好きだ。ただ唯一、同期の柳田と同僚ということだけが悩みの種だ。

柳田は名門大学を卒業していた。高卒の俺でも名前を知っている大学だ。そんな柳田は、高卒の俺を入社当初から馬鹿にしてきた。

「へ、お前、高卒なの? 低学歴にもほどがあるだろう。」

ほぼ初対面の俺に向かって、鼻で笑いながら言ってきたのが柳田との最初だった。れからも柳田の俺を馬鹿にする態度は変わらず、ずっと馬鹿にされ続けている。

俺が必死に働いているのは、そんな柳田を見返してやろうという気持ちもあってのことだ。

正直言って、柳田は仕事ができるタイプではない。それでいて、自分はすごいと自慢して、プライドばかりが高い。

「俺はお前と違って、名門大学を卒業しているんだぞ。俺に早く追いつけるようにな。」

そう言っていつも俺に上から目線だ。

実際、入社当初は先輩や上司からも、名門大学を卒業していると一目置かれて、ちやほやされていた。しかし、本格的な業務が始まると、柳田は簡単なこともできず、よく先輩に怒られるようになった。

俺は怒られている柳田を見ても、馬鹿にする気もなく、自分も気をつけようと思うくらいだった。が、柳田は違う

「大橋、この前作ってくれた資料、すごく良かったよ。丁寧で分かりやすい。」

「本当ですか? ありがとうございます。」

こんな風に先輩に褒められると、その後俺が一人になった時を見計らって、わざわざ嫌味を言ってくるのだ。

「お前、あんまり調子乗んなよ。生意気なんだよ。高卒のくせに。」

なぜそんなことを言われなくちゃならないんだ。最初はそんなことを言われるたびに嫌な気分になり気にしていたが、次第に相手にしても仕方がないと、気にしないように心がけるようになった。

しかし、一年前のある出来事で柳田との不仲は悪化してしまう。何があったかと言うと、大きなプロジェクトチームに俺が選ばれたのだ

「大橋君はいつも頑張っているし、他のみんなも大橋君に参加してもらいたいと言っているんだ。」

そう言って上司に指名してもらったのだ。

柳田はこのことが相当気に入らなかったのか、上司に納得がいかないと訴えていた

「どうして大橋が選ばれたんですか?

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納得がいきません。」

「大橋君の日頃の仕事ぶりを見て決めたんだ。さっきも言ったが、他のみんなも納得している。」

「いや、でも大橋は高卒ですよ。うして名門大卒の俺じゃないんですか? 」

「確かに君は名門大学を卒業している。れはすごいことだが、仕事への取り組み方、そして何より本人の適正も見て決めたことだ。」

柳田は自分が選ばれるべきだと必死に訴えたが、上司にきっぱりと却下されてしまう。

プライドの高い柳田にとって、相当苦痛な出来事だったのだろう。れから柳田の嫌がらせはエスカレートしていった

時間が経てば柳田の気も収まっていくと俺は考えていたが、そんな考えは甘く、一向に嫌がらせはなくならなかった。時には、仕事の妨害をされることもある。少し席を離れている間に、メールを勝手に消されてしまったのだ。かもそれは、急に入った会議のメールで、気づかなければ会議に参加できないところだった。

先輩がたまたまその会議の話をしてくれて、気づくことができたのだ。

最初は柳田がやっていると決めつけるのは良くないと思っていたが、柳田が俺のパソコンを触っているのを見てしまった。確信した俺は、柳田にやめるよう言ったこともある

「柳田、俺のパソコンを勝手に触ったり、メールを消すのはやめてほしい。」

必要以上に責めないよう、落ち着いて俺は話した。、柳田は鋭い目つきで俺を睨みつける

「はあ? 何言ってんの? そんなことはしてない。自分のミスのを俺のせいにするのはやめろ。」

認めて謝罪するどころか、そんなことはしていないと逆切れを始めたのだ

「ちょっと褒められたからって調子に乗ってんじゃねえよ。」

「調子に乗ってなんかいない。仕事の妨害をされると、取引先にも迷惑がかかる。」

俺は怒りを抑え冷静に話すが、柳田は怒鳴りつけてくるだけだ

「俺が名門大卒だからって、変な言いがかりをつけるなよ。」

しまいにはそう言って、その場から立ち去ってしまった

何を言っても伝わらないと思った俺は、ほんの一瞬でも席を立つ時は必ずパスワードを入れないと触れないようにロックして、消されないようにした。

それからはパソコンを触られることはなくなったが、電話の折り返し連絡を報告されないなど、嫌がらせはなくならなかった。この時も、取引先が不思議そうに俺に連絡をくれたことで発覚した

「大橋君、さっき、他の方に電話をしてと伝えてもらうよう頼んだんだけど……申し訳ございません。う一度かけていただいてしまって。」

身に覚えのないことを言われた俺は、なんとかその場を濁し、大慌てで謝罪をした。

「はは、いいんだよ。君のことだから忘れているとは思ってなかったけど、少し不思議に思ってかけただけだから。」

取引先の方はそれほど気にした様子もなく笑ってくれた。れまで信頼関係を築けていたのだと、少しほっとする。

しかし、このようなことが続くと、もっとたくさんの方に迷惑をかけることになると頭を悩ませる。

車両形態にかけてもらうように徹底するなど、できることは全部やって、柳田に仕事の妨害をされないようにした。

こんなことに悩んで時間を使うなんて、実にもったいないことだ。うして俺がこんな思いをしなければいけないのかとも思ったが、俺にできることは、今まで通り真剣に仕事に取り組み、周りの人に信頼してもらうことだけだ。そう考えて、仕事と向き合った。

そんなある日のこと、俺と柳田は部長に会議室に呼ばれた

「三億になるプロジェクトを、どちらかに任せたい。」

部長は真剣な顔で俺たち二人を見ながらそう言った。

も柳田も、まだそんな大きな仕事はしたことがなく、驚いてしまう。

「二人にはそれぞれで企画書を作成してもらって、いい方を担当者として選びたいと思っている。」

俺は思わず体に力が入る。隣の柳田も、俺と同じように驚きながらも体に力が入ったのが分かった。

部長が会議室から去っていくと、柳田が俺に向かって口を開く

「変なことして俺を落とし入れようとするなよ。」

俺は心の中で「どっちがだよ。」と思いながらも、言葉には出さなかった

「お前が今まで、高卒のくせに調子乗って生意気を言ってたことを証明してやるよ。」

柳田はいつになく強気な口調でそう言ってくる。もこんなチャンス、逃すわけにはいかないよ。」

「せいぜい、堂々と戦おう。」

俺は真剣にそう伝えたが、柳田はそんな俺を鼻で笑いながら、その場を離れてしまう。

散々ひどい嫌がらせをしてきた柳田には、絶対に勝ちたいと思った。実力を柳田に認めてもらうことができれば、嫌がらせがなくなるかもしれないとも考える。

俺はその日から、今まで以上に気合いを入れて仕事に取り組んだ

数日後、俺より一足先に柳田が部長の元に行き、企画書を提出した

「企画書を保存したUSBが見当たらなくて、どうなるかと思った。んとか仕上げられてよかった。」

部長に提出した直後、柳田が自席に戻りながらそんなことを言い出した。

独り言のように言っているが、声の大きさが独り言の大きさではない。るで周囲に聞こえるようにアピールしている感じで、それを聞いた周囲の人も不思議そうにしている。れも少し不思議に思ったが、俺も早く提出しなければと、あまり柳田のことは考えないようにした。

別の案件が立て込んでいた俺は、提出が翌日になってしまったが、無事に部長に企画書を提出することができた。とは結果を待つだけだと、少し心が軽くなる

次の日、俺と柳田は部長に再び会議室に呼ばれた。

こんなに早く決まったのかと不思議に思ったが、部長の顔は強張っており、怒っているようにも見えた。

何事かと思いながらも、俺たちが椅子に座ると、部長が二つの企画書を目の前に置いた。

「二人の企画が、全く同じ内容だった。」

「え、どういうことですか?

言っている意味が分からず、思わず聞き返してしまう

「こっちが聞きたい。似ている案を出したとは言えないほど、全く一緒だ。」

俺たちは目の前の企画書を見る。ると本当に部長の言った通り、全く同じものだったのだ。

俺が驚いていると、先に柳田が口を開いた

「なんだこれ? おかしいです、こんなの。」

その声に部長は頷く

「疑いたくないが、これはどう見ても、どちらかが相手の企画書を盗んだとしか思えない。正直に話してくれないか。」

部長は強張った顔で俺たちを交互に見ながら、低い声でそう言う。

俺は驚きで何と言ったらいいのか分からず、言葉が出ない

「部長もご存知の通り、僕が先に完成させて提出しました。こんなこと言いたくないですが、大橋が盗用したんだと思います。」

もちろん俺はそんなことは知っておらず、柳田が嘘をついていることは分かっている。

し、柳田の表情は真剣そのもので、俺の目から見ても真実を語っているように見えた。の名演技に、驚き感心してしまうほどだ

「柳田君はそう言っているが、大橋君はどうかね? 」

部長に聞かれたが、俺が言えることは一つしかない

「僕は盗用してません。自分で考えた企画書です。」

俺は冷静に真剣に、部長の目をしっかり見て答える。

先に柳田にそんなことを言われてしまったが、俺は真実を言うしかない

「部長、彼は嘘をついています。れを落とし入れようとしているんだ。」

そう言って一人で騒ぐ柳田

「実は、企画データを保存したUSBが見当たらないんです。橋のデスクを探させてもらえませんか? 」

柳田は張り切った口調で、部長にそう提案する。

そういえば、企画書を提出した時に「USBがなくなった」とか何とか言っていたな。れもその言葉には聞き覚えがあった。れもが聞こえるような大きな声で言っていたからだ。

柳田のUSBを見た覚えも触った覚えもないが、俺はすごく嫌な予感がした。

部長も柳田の提案に賛成し、俺たちは三人で俺のデスクに向かう。

部長が俺のデスクの引き出しを開けると、ごそごそと中を探る。

の様子を、嫌な緊張を覚えながら見つめていると、引き出しの奥から見覚えのないUSBが出てきた

「それです。れのUSBです。」

柳田がUSBを見て声を張り上げて言う。

俺は慌てて首を横に振った

「僕はこんなの知りません。」

俺は必死に部長を説得しようとするが、部長は呆れた顔で俺を見た

「USBが出てきたのに、君のそんな話が信じられるわけがない。」

俺は部長に怒った口調でそう言われてしまった

「まさか、手柄のために手段を選ばないやつだったなんて。」

柳田はわざとらしくみんなに聞こえるように大きな声でそう言って、俺を非難した。

俺はその場で部長に自宅待機を命じられる。んな事態に全く納得ができないが、潔白を証明するのは難しいと感じた。

どうすることもできず、俺はそのまま言われた通りに帰宅する。

家に着いた俺は気落ちして何もする気になれず、そのままベッドに倒れ込み、先の見えない今後にについて頭を悩ました。

だがそんな中で、とあることを思い出し、スマホを手にする。

れだけはしておかないとと思った俺は、ある人へ「これ以上力になれないかもしれません。」と謝罪のメールを送った。

すみません、何度も謝罪の言葉を繰り返しながら、その夜は、いつの間に眠りに落ちたのだった。

翌日、俺は会社からの電話で叩き起こされた。」

「社長が、君に確認したいとのことで、会社に呼び出される。」

俺が到着すると、しばらくして社長もオフィスフロアにやってきた

「もう一度、話を聞かせてくれるか?

社長がそう言うと、部長が今回のことを最初から説明する

「そうか、それで柳田君のUSBが、大橋君の引き出しの中にあったのか。」

「実際に入っていたことは、みんなで確認しましたし、間違いありません。」

「しかし、僕は企画書を盗用はしていませんし、USBも触っていません。」

俺は社長にもやっていないことをきちんと訴える。社長は少し困ったように考えている

「君の言い分は分かった。と、USBが出てきてしまった以上、何もなかったことにはできない。」

そう言って、俺の処分についての話になる

「大橋君はとても仕事ができて、私も信頼をしていました。抱えている仕事もたくさんあります。」

部長はそう話し始め、俺のこれまでの実績や、一年前から重要な案件を抱えていることを社長に説明する。

大丈夫ですよ。高卒の仕事くらい、自分が全て引き継ぎます。」

そこで柳田が自信満々にアピールする

「こんなことをした大橋君とは、もう怖くて働けません。厳しい処分を与えるべきだと思います。」

俺に厳しい処分を訴える柳田に向かって、社長が口を開いた

「なるほど。確かに柳田君が彼の仕事を全て引き継げるというのならば、会社としても遠慮なく厳しい処分を下せるな。」

「任せてください。」

柳田の返事を聞いて、社長が一つ大きく頷く

「よし、そこまで言うなら、君が十年間アフリカへ行ってくれ。」

「え、アフリカ。」

社長の言葉に、柳田は目を丸くして固まった

「そうだ。彼が一年前から携わっている一台プロジェクトも、当然引き継いでくれるのだろう。」

「そうですけど……けど、えっと……」

柳田が引きつった笑みを浮かべて、あたふたする。うやら柳田は、何も分かっていなかったらしい。

実は、俺が選ばれた大きなプロジェクトとは、アフリカへの事業進出だった。

れは貧しい家庭で育った経験から、昔から世界の貧困問題などに興味があった。の知識を買われて、そのプロジェクトに選ばれていたのだ。の、柳田はそんなことは知らず、「大きなプロジェクト」というだけで奪おうとしていたようで、中身を知って慌てている。」「え、そんな、アフリカなんて。」

さっきまでの勢いはどこへ行ったのかと思うほど、動揺しているようだった

「私が力を入れている事業でね。んなに自信を持っているのならば、頼もしい。君に任せようじゃないか。」

社長が満面の笑みで柳田に言う

「そ、それならば、東洋の処罰として大橋が行くのがふさわしいです。」

すると今度は、そんなことを言い出した。

社長も、さっきまで俺の仕事を全部引き継ぐと豪語していたのに、そんなことを言い出す柳田に、少し不思議そうだ。

するとその時、同僚の一人が俺たちのところに近づいてきた

「あの、すみません。少しお話があります。」

この同僚は、仕事もできて周りからも頼りにされているが、俺とはあまり面識もなく、そんなに喋ったこともない。

のを言うのかと思いながら、耳を傾ける

「先ほどからUSBがどうのという話が聞こえてきたので、少し気になることがありまして。」

「なんだ? 遠慮なく言ってくれ。」

「はい。実は、企画提出の前日の、少なくなったオフィスで、柳さんが見慣れないUSBを自分のパソコンに差しているのを見ました。」

同僚の告白に、一同がぎょっとする

「それは本当に、企画書提出の前日だったのか? 」

「はい。柳さんが企画書を提出した際、USBがなくなったと大きな声で言っていたので、きちんと覚えています。」

同僚は冷静に淡々と話す

「柳田さんのUSBを見たことがあったので、いつものと違うなと思いまして。」

その同僚は柳田と席が近いため、どんな見た目のUSBを使っているのか分かっているのだろう

「なくしたと言っていたので新しいものかとも思い、あまり気にしないようにしていたのですが、あの前日に使っていたUSBを、それから柳さんが使っているのをいつも見てません。」

部長も社長も、少し顔を強張らせながら真剣に話を聞いている。

の隣で俺ははっとして、ポケットを探り、中から一本のUSBを取り出した

「もしかして、それってこれじゃないか? 」

「あ、それだと思います。」

俺は、他の人のUSBと紛れてしまわないように、あえて人があまり使わなそうな色のUSBを使っている。

れで同僚の記憶にも残っていたのだろう。

俺は同僚の返事を聞いて、そのUSBを社長たちに見せた

「これは僕のUSBです。提出した企画データが入っています。」

同僚と俺の言葉を聞いて、社長と部長が鋭い視線を柳田に向けた

「いや、あの、もう一つあるんです。普段は自宅で使ってるやつで、同じ色なんですよ。の日はそれを持ってきていて、そのことを言っているんだと思いますよ。」

柳田が必死に言い訳をしている。

それに社長は少し考え込んだ後、口を開いた

「分かった。USBの接続履歴を調べよう。そして、どっちが嘘をついていたか、はっきりさせよう。」

社長の発言に、柳田の顔はだんだんと青ざめていき、言葉をなくしていた。

すぐさま専門家を招いて調査が行われ、俺のUSBから企画書データが柳田のパソコンへ転送されていたことが発覚した。

一方、盗まれたとされた柳田のUSBは、俺のパソコンへの接続履歴がない。

れで全て、柳田の嘘だったことが判明し、俺の企画書を盗用したのは柳田だったと、全員が知ることとなった

「君がこんなにも卑怯な人間だったとは、知らなかったよ。」

「いや、違うんです。」

「何が違うと言うんだ。」

ここに来てなおも言い訳をしようとする柳田を、社長が一括する

「なんて、往生際が悪いんだ。」

呆れつつ柳田を見つめていると、そこに先輩が近づいてきた。の、普段色々と相談に乗ってくれている、仲のいい先輩だ

「すみません、この際なので、ご報告したいことがあります。実は、以前柳田君が大橋君のパソコンを触り、メールを削除していたことを、相談されました。」

俺はこの先輩だけには、柳田の嫌がらせのことを相談していた。の時も、すぐに上司に話そうと言ってくれていたが、「きちんとした証拠もないから言わないでいい」と俺は答えていた。

そんな俺を思って、一瞬でも席を立つ時はしっかりパソコンをロックしろと助言してくれたのも、この先輩だった

「なんだと?

先輩の話に部長が顔を真っ赤にして柳田を睨む

「これは一度しっかりと調査をしなければいけないようだな。」

「そ、それは……盗用したのは認めます。すみませんでした。ですから、調査しないで欲しいと。」

「これはますます、怪しさがありそうだな。」

社長の言葉に、柳田は小さくなった

その後、社長の指示で社内調査が行われ、俺にしてきた数々の嫌がらせが発覚した。れが正直に全てを話したのはもちろん、同僚の中にも何人かの目撃者がおり、「この際だから」とみんな知っていることを打ち明けてくれた。

確実な証拠がなくて今まで声をあげることができなかったと、俺へ謝罪をしてくれる人もいた。

れして俺への嫌がらせも、盗用も、全てがバレてしまった柳田は、解雇処分となった。

柳田がいなくなった翌日、俺は社長室を尋ねた。」

「すぐに決めつけて判断せず、最後まで俺の言うことに耳を傾けてくださって、ありがとうございました。社長のおかげです。」

俺は社長へお礼を伝えに言ったのだ

「君にいなくなられては、私も困ってしまうからな。」

社長が俺の顔を見て笑う

「君から『これ以上お力になれないかもしれません』なんてメールが来た時は、驚いたよ。」

自宅待機を命じられた後、俺が謝罪メールを送ったのは、社長だった。

れが社長個人の連絡先を知っていたのは、俺の父と社長が幼馴染みだからだ。れも幼い頃から何度も会って、遊んでもらっていた。

社長との距離が近くなったのは、学生の時、俺が貧困問題やアフリカについての勉強を始めたことがきっかけだった。

社長は会うたびに色々なことを教えてくれ、逆に俺が学んだ知識について聞いてくれた。

知識が深いことに、社長は感心してくれていた。

「アフリカへの事業進出の手助けをしてくれないか。」

高校三年生の冬、進路について考えていた俺は、社長にそう声をかけられた。

突然そんなことを言われた時は本当に驚いたが、高卒で働くことを考えていた俺にとっては、嬉しい話だった。

俺も社長の話を聞いて、社長の会社に興味を持っていたのだ。

そうして、この会社へ入社した。

だから社長には、今回の件に限らず、本当に感謝し、恩を感じている。

その恩を返すために、俺にできることは、これまで以上に会社のために尽力することだ。

これからも周りの人に信頼してもらえるように、真面目に仕事をしていこうと思う。