妊婦だった私は、産後すぐに夫から「女は子供を産んだら家で家事と育児に専念するものだろう。三年後も働くなんて頭がおかしいとしか思えないな」と言われた。出産前は家事も育児も手伝ってくれた夫が、息子が生まれた瞬間に豹変した。「退職届を出せ。言うことを聞かないなら離婚だ」と。私はある人物に電話をかけた。その電話が、この傲慢な男をどん底に落とすことになるとは、この時は思いもしなかった。…

妊婦だった私は、産後すぐに夫から「女は子供を産んだら家で家事と育児に専念するものだろう。三年後も働くなんて頭がおかしいとしか思えないな」と言われた。出産前は家事も育児も手伝ってくれた夫が、息子が生まれた瞬間に豹変した。「退職届を出せ。言うことを聞かないなら離婚だ」と。私はある人物に電話をかけた。その電話が、この傲慢な男をどん底に落とすことになるとは、この時は思いもしなかった。...

「女は子供を産んだら家で家事と育児に専念するものだろう。三年後も働くなんて頭がおかしいとしか思えないな」

その言葉を聞いた瞬間、私は目の前の男が本当に夫なのかと思った。出産前はあんなに優しかったのに、私が仕事を続けたいと言った時も理解してくれると言っていたのに。それが産後、突然豹変したのだ。

「話が違うじゃない。それに育休明けを伸ばすことはできないのよ。うちの会社にとんでもない迷惑をかけてしまうわ」

「はあ。女が会社でやる仕事なんて高が知れているだろう」

そう言ってかずは笑った。妊娠中は一緒に家事をしてくれていたのに。いや、正確には、出産まではしてくれていたのに。産後、息子が生まれてから、かずは家事も育児も一切しなくなった。

「とにかく仕事復帰なんて認めないから退職届を出せよ。言うことを聞かないなら離婚だ。真剣はうちがもらうからな」

豊島をもらってやったのに何様のつもりだ、離婚したらお前なんか二度と結婚なんてできないんだぞ。そう畳みかけてくるかずを見て、もう以前の夫ではないと悟った。私はある人物に連絡を取ることにした。この電話が、この傲慢な男をどん底に落とし入れることになるとは、この時は思いもしなかった。

私の名前はゆり。パレル系で働くバリバリのキャリアウーマンといえば聞こえはいいだろうけれど、悪く言えば仕事にかまけて女を捨てた独身女だ。念のために言うと、結婚願望がないわけではない。いつか結婚して子供を産んで、母親としての幸せも欲しいと思っていた。

私の母は幼い頃に事故で亡くなった。そういうのもあって、自分が母親になることに強い憧れがあるのだろう。ただ、仕事を頑張りすぎたせいで、私は婚期を完全に逃してしまったのだ。

「父親にでも相談したら?娘がいて欲しくないのは適齢期までで、それを過ぎたらもらってくれる男が神に見える。それが父親ってものよ」

古い付き合いの友人であるつぼみに愚痴ったら、そう言われた。つぼみはすでに結婚していて二児の母だが、今でも一緒に働いている。職場近くの喫茶店で言うつぼみからは、結婚した女の余裕というものを感じられる。それが私の妬みだろうか。

「いやよ。そもそもお父さんの反対を押し切って行動してたのよ。今でも反対しているのか、私の前で蒼井さんを褒めるのよ。ほら、社長秘書のちょっと防一種な美人さん。蒼井さんが家庭的で料理上手とか、サポートで講師を共に支えてくれる人材だって。思わず浮気しているの。そう言ってやったわ」

私はそう笑いながら言う。あの時、父は椅子から崩れ落ちるほど否定していた。蒼井さんも心底嫌そうな顔をして涙目だったので、本気で嫌だったのだろう。確かに蒼井さんは私よりも年下だ。あんなおじさん相手は嫌だろう。

とはいえ、職場だと難しいのよね。相手も寄りも私に遠慮するし、大半は最初から持ちだもの。別に私は年下でも構わないし、相手の収入にはこだわらないけれど、これからの人生を共に過ごすパートナーだ。理解力があって対等に物を言う意見が欲しい、というのが本音だ。

「うーん。それなら結婚相談所は?」

「結婚相談所?」

「ちゃんとしたところだとそれなりにお金がかかるけれど、その分だけ向こうも本気で結婚を考えている人を紹介してくれるよ。きちんと相手が独身とかも確認するし、自分の情報も知られるから可能性はあるわよ」

つぼみはそう発案して、ついでに結婚相談所を紹介してくれた。子供を生みたいなら、そろそろ本気で急いだ方が良い。そういったこともあり、私は結婚相談所に早速登録した。

結婚相談所に登録したことを知った父は、「そんなのに金をかけるぐらいなら私が紹介する」と言ってきたが、私はきっぱりと否定した。すると父はため息をついた。

そんな中で私は何人かの方と会って話をしていた中で知り合ったのは、かずだった。

「結婚後も仕事を続けて働きたいです。あと子供も欲しいのですが、年齢が年齢なので早めに産みたいです」

その言葉に、やはり四十歳の女というのもありなかなか見つからなかったが、かずだけは認めてくれた。

「素晴らしい考えだと思いますよ」

気が合った私はトントン拍子で話が進み、結婚になった。お互いの両親に挨拶する時、父にあることを言われたぐらいだ。

「お前が決めたことだ。だがこれだけはやっておけ。結婚後、五年が過ぎたら伝えるかどうかはお前に任せる」

「別にいいけど。なんでそんな面倒なことをするの?」

なぜそんなことを言うのかは分からなかったが、機嫌が良いことだったこともあり、特に大きな問題がなかったこともあって、私は承諾した。そして私とかずが結婚したのは、相談所に登録して知り合ってわずか半年後のことだった。

結婚後も、かずは優しかった。仕事で遅くなったとしてもかずは文句を言わなかったし、料理に不満を言うこともなかった。

「結婚前も言ったけれど、家事とか育児も一緒にやりたいわ」

「ああ、いいよ」

私の言葉にかずは頷いてくれた。実際にかずは忙しい時は家の掃除や洗濯をしてくれていた。また美味しい料理を用意してくれることもあって、とても助かった。

また、近距離にいる義両親も優しかった。仕事が忙しいという義父のかん介は、結婚の挨拶を含めて片手で数える程度しか会ったことがないけれど、四十歳で結婚後も働くという私の意見を受け入れてくれたので、理解してくれているのだろう。義母のさきさんは何度も会ったが、手先が器用で家庭的。私と正反対で、作る料理も丁寧にしっかりと時間をかけた料理だと分かる。

夫が作る料理と味が似ているのは、きっと義母が料理を教えたのだろう。

そうした生活の中で、どうにか妊娠をした。私の両親は元より義両親も喜んでくれて、義母は趣味だという手作りでベビーグッズを用意してくれた。

「わあ、素敵な品です。まるでお店で売っているみたいです。お母さん、いっそ売ってみたらどうですか?」

「そんなの無理よ。できるわけないわよ」

「今なら一般人が個人売買するのも可能ですし、人によっては一般的な会社員と同じくらいの収入だって夢ではないんですよ」

私の言葉にさきさんは困ったような顔をした。

さすがに妊娠中も仕事を続けることが難しいということもあり、私は産休と育休を取った。それをきっかけに、ついに私は夢に一歩近づくことになった。育休と産休は、その準備期間でもあると言えるようなものだ。つぼみに育休明けのフォローを頼む形となったし、テレワークの準備もある。

ただ、気になったのは蒼井さんの元気がちょっとなかったことだ。父に何かされたのかと聞いたら、父がものすごい顔をした。

そんなことがありながらも、育休が始まるとかずは変わった。家事や料理をあまりしなくなったのだ。

まあ、私は家にいるのだから、私が主体になってしまうのは当然だろう。そう、私は納得していた。ただ、つぼみに言わせたらそれっておかしくないらしい。

「そうなの?妊娠出産は初めてだし」

「ゆりはつわりとかないみたいだからいいけれどさ。普通、妊娠中は安定していないといけないから家事とか難しいのよ。普段から家事が得意と言うならむしろ手伝ってくれると思うけれど。育児はいくらでも手伝えるけれど、お腹の中で子供を育てることは父親にはできないのよ。ならその分だけ家事をしてもらわないと」

「勘違いしているかもしれないけれど、妊娠は始まりだし、出産も始まりよ」

他でもない私が目標としている働くお母さんをやってキャリアを積んでいるつぼみの発言には説得力がある。

「うーん。かずは最近出世したしさ、もうすぐ父親になるのだからということになったのよ。それにかずの人柄を評価してという形だしさ」

私はかずをフォローする。かずは最近出世して役職持ちになったのだ。当然仕事も忙しくなるし、父親になるからと仕事に気合いを入れているのかもしれない。

「それに男性は親になる実感が遅いって言うし」

そんな私の言葉につぼみはちょっと考えたようだが、

「まあ、頑張ってね。会社だとあんたが上だけれどさ、母親としては私が先輩よ。働く母親の苦労についてもね」

そうつぼみに苦笑混じりに言われながらも、私はついに男の子を出産した。高齢出産ゆえの不安もあったが、どうにか無事だった。かずの実家は代々続く名家らしく、後継ぎの息子だと喜んでいた。ほぼ会ったことがない義父も、仕事を休んで来てくれた。

今考えると、私はこの時が幸せの絶頂だったのだ。その状況はすぐに一変することになる。そのことが分かっていたのは、おそらく義母であるさきだけだっただろう。

息子が生まれてからの生活は大変だった。何しろ、かずは全く家事をしなくなったのだ。

「ちょっと、もうすぐ育休が終わるのよ。今から家事はさておいて育児をしてくれないと困るわよ」

私はどうしても育休を伸ばすことができない事情もあったのだ。だというのに、泣いている息子をあやすこともしない。それどころか夜遅くまで帰ってこないことも多く、出張が何度もあった。

「ねえ、出張に夜遅くまで出かけて、仕事の残業にしても少しはセーブできない?それどころか休日まで夜に出かけて」

そう私はかずに尋ねるが、

「うるさいな。お前がやればいいだろ」

そう言ってまともに取り合ってくれない上に、「お前、仕事復帰するって本気か?」と言ってきた。

「本気かって、今更そんなことを言うの?そのために色々と準備をしているのよ」

息子を寝かしつけている中でそう言ってきたかずに、私は呆れ混じりに言う。今になってそんなことを言い出してくると、私は思わなかった。

「いや、ふざけているのはそっちだろう。女は子供を産んで家で家事と育児をしているものだろう。三年後も働くなんて頭がおかしいとしか思えないのだけれど」

はあ。言われた言葉に、私はむしろ逆にかずの頭を疑った。

「いや、結婚前から言っていたよね。私は結婚したら子供も欲しいけれど、仕事だって諦めたくない。だから一緒に家事と育児をしてくれる人と結婚したいって」

「いや、子供を産んだら普通はそうだろ。母性とかそういうのが芽生えるのが女だろ」

などと言い出してくる。

「話が違うじゃない。それに育休明けを伸ばすことはできないのよ。うちの会社にとんでもない迷惑をかけてしまうわ」

「はあ。女が会社でやる仕事なんて高が知れているだろう」

そう言ってかずは笑う。

これは本当にあのかずなのだろうかと、私は戸惑う。今まで家事をしてくれていたかずはどこへと消えたのか。そう思っている中で、

「とにかく仕事復帰なんて認めないから退職届を出せよ。言うことを聞かないなら離婚だし、真剣は俺がもらうからな。俺の親父はもうすぐ定年だけど重だから顔が広いんだ。経済力だって俺以上だし、親父の知り合いには弁護士だっているから、いざとなったらそっちに勝ち目はないぞ」

そう言うとかずはまた外へと出かけてしまった。

なぜ、また急に。しかし、これではどうしよう。そう悩んでいると、スマホに連絡が入る。

「失礼します。ゆりさん、今お電話は大丈夫でしょうか?」

「ああ、蒼井さん」

電話の主は父の秘書である蒼井さんだった。女性にしては凛とした声をしている蒼井さんだが、心なしかいつもより声が低い。まるで男性のようだ。

「はい。息子は寝たところなので、大声を出さなければ大丈夫です。主人は外出中です」

そう、私が言うと、

「そうですか。失礼ですが、ゆりさん、仕事復帰はできそうですか?」

「それは父からの質問ですか?」

「いえ、違います。これは私の職務とは関係のない、単なる私事です」

そう、蒼井さんが前置きをすると、

「ゆりさんのお父様と仕事上の付き合いでキャバクラに行くことがあったのですが、そこでゆりさんの旦那さんであるかず様をお見かけしまして」

「え、キャバクラ?」

その言葉に、私は思わず声を上げそうになった。

「はい。しかも、かず様のお父上であるかん介様も一緒のようでして。失礼ですが、ゆりさんのご家庭が心配になり、そこの店のママに尋ねてみると、そこのキャストではないですが、どうもお二人とも会社で不適切な関係を結んでいるようです」

そんな。言葉が出ないとはこのことだろう。初めての育児と仕事復帰の準備に忙しい。それらに追われている中で、仕事をしているならともかく、浮気をしていたということだ。しかも、お父さんまで。

「ゆりさんが知らないでいるのは忍ばない。そう思ってお伝えしました。ゆりさんのご家庭を壊してしまうかもしれないことを伝えて、申し訳ありません」

蒼井さんがそう謝罪をしてきたが、私は考えながら言う。

「ごめんなさい。蒼井さんの言葉を疑うつもりはないわ。けれど、きちんとした証拠がない話を鵜呑みにするのはリスクがあると思うの。悪いのだけれど、きちんと証拠や証人と言ったものと合わせてもらえるかしら」

「かしこまりました」

そう言われて、私は蒼井さんに頼んだ期日で証拠などを見せてもらうことになった。用意されたレコーダーには、私のことを「豊島の女」、そんなひどいことを言うかずとかん介さん。さらに、今までしてくれていると思っていた家事は、さきがしてくれていたということまで録音されていた。

そして、私はかずに離婚するという書き置きと共に、息子と共に家を出た。数日後には職場復帰も近づいていたので、決断は早くした方が良かったのだ。

家を出た私は、蒼井さんが用意してくれた職場近くのマンションに住むことになった。引っ越しを家族ぐるみで手伝ってくれたつぼみからは、

「あんたって本当に仕事はできるけれど、私生活だとどっか抜けてるわよね。もっと早く気づきなさいよ」

そうケタケタと笑いながら言われた。そして一点、つぼみは真面目な顔で訪ねてきた。

「これでどうするの?」

「きっちりとやられた分はやり返すわ。あいつ、共同貯金を使って飲み歩いていたし、愛人に貢いでいたのよ」

そんな会話をしている中で、電話が来た。ちょうどいいタイミングで、かずからだった。

「おい、なんで息子まで連れて行った?」

「あんたに息子の面倒を見ることができるとは思えないけど、家を出たことに文句はないらしいね。どうせ家事は義母にやらせているのだろう」

そう思いながら指摘すると、

「母さんにさせるに決まってるだろ。母さんは女の役目をちゃんと理解しているからな」

「もう六十になろうという母さんに押し付けるの。あんた、お母さんを殺す気なの?」

「豊島をもらってやったのに何様のつもりだ。お前なんか離婚したらもう二度と結婚なんてできないからな。金もないのに息子を育てることができると思っているのか。慰謝料もしっかりと払ってもらうからな。せいぜい泣いて悔しがれ」

その言葉を聞いても、私は恐れない。離婚を言い渡すのは、むしろ離婚される覚悟がある人間だけだ。

「安心してちょうだい。後悔する予定はないわ。むしろ後悔するのはそっちだと思うわ。それと慰謝料は逆にこちらが請求させてもらうから、覚悟しておきなさい。私は売られた喧嘩は買う主義よ」

私は右をそのままにしておく女ではない。そう、私は宣言したのだった。

後日、弁護士経由で話し合いの場所が設けられた。様子に不機嫌そうなかん介さんと、未だに偉そうなかず。そして、どこか悩んでいる様子のさきさん。大して私の方も、知り合いの弁護士と父、そして蒼井さんもやってきていた。

「離婚するなら慰謝料をよこせ」

「寝言は寝て言ってちょうだい」

私はきっぱりと宣言する。

「寝言だと。それはそちらだろう」

偉そうに言うかん介さん。

「第一、女の不安定な低収入で子供を育てることなんてできるわけがない。大人しく孫を渡せ。そして慰謝料と養育費を払うのだな。嫌だというのなら大人しく戻ってこい。勝手に実家に帰ったのは同居する形で許してやろう。こっちは片親の売れ残りを引き取ってやったのに」

「かず、お前もお前だ。こんな豊島の女じゃなく、若い従順でバカな女にしておけばよかったんだ」

「はあ、言うけれど、父さん、そういう女はむしろ愛人がいいじゃないか。こいつは金だけはあったしさ。若い女だとついつい甘やかしてしまうだろう。それに軽年劣化で捨てるのも、結婚していたら難しいし」

かん介さんとかずの言葉に、私は耳を疑う。こんな発言を、それも私や父の前で言うとは。

私は意図を見る目はあるつもりだったが、男を見る目はなかったようだ。私はため息をつきながら、

「残念だけれど、慰謝料を払うのはそちらよ」

そう言うと同時に、蒼井さんがすっと差し出したのは、かずが浮気している証拠だ。

「不貞行為は十分な離婚理由になるし、慰謝料請求の証拠にもなるわ。それに私はきちんと育児を記録しています。そこにはあなたが何もしていないという証拠もあります。その状況で真剣が取れると思っているの?」

その言葉にかず側の弁護士がぎょっとしているのが分かる。おそらく、かん介さんからの都合の良い話しか聞いていなかったのかもしれない。

「だが、そっちには経済力が」

「残念ですが、経済力がないのもそっち」

きっぱりと私は言う。

「改めて、こちら名刺です」

そう言って、私は新しく作った名刺を見せる。

「はあ。お前の名刺なんて今更もらっても」

そう言って鼻で笑ったかずだったが、名刺に書かれている会社の名前を見て動きが止まる。そして、ひったくるように名刺を奪って、書いてある内容を見て目を見開き固まる。

「どうした?かず」

かん介さんが言う中で、まるでかずは口をパクパクさせる。

「嘘だろ?お前が、親会社のCEO?」

「CEOなんだそれは?どうせ女の役職なんて聞いたことがないだろう」

かずの言葉にかん介さんはそう言うが、

「CEOとは最高責任者。分かりやすく言えば社長ということですよ。育休明けには正式に就任するのよ」

「親会社の社長」

その言葉に、かん介さんもさきさんも驚いた顔をしていた。

「豊島の会社がその親会社でね。娘は実力をつけさせるために、あえて一から入社してもらったのだよ。わしの後を継ぐなら、それ相応の実力をつけろっとね。娘の夫が偶然にも参加の会社の社員だったことには驚いたよ。ただし、私の移行で少なくとも五年は黙っておくように言っていた」

「言っているのは、君の会社では社長ぐらいだね。特別扱いするように言っていないが、いくら親会社のCEOだからって社員を解雇にできるわけがない」

父さんの言葉にかずが叫ぶが、

「不貞行為について調べたのはこちらです。浮気相手が会社に入った派遣社員と不適切な関係でいるということですね。しかも、職務時間にホテルへ行き、経費を使って旅行もしていることも調べ終えています」

そう言ったのは蒼井さんだ。

「こちらとしても、娘の夫とは関係なく、不適切な行為を行う社員を放置するわけにはいかない。悪いが、慰謝料とは別に責任を取る形になるだろうね。まあ、責任はそちらの会社の社長に頼むことになるが、親子揃ってどうなるだろうね。私としても、可愛い娘にひどい扱いをして、随分な暴言を受けたからね」

この言葉に慌てた様子のかん介さんが、

「おお、お許しください。このバカ息子は勘当しますので」

「そ、そんな、親父」

かずのショックを受けた言葉が響くが、

「何度も言うが、処分はそちらの社長だ」

父がそう言い切り、さて、

「それでは離婚について話しますが、裁判をするの?するなら徹底的にやるけれど、そちらに勝ち目はないと思うわよ」

そう、私に言われた言葉にかずは絶望。かん介さんは息子を見捨てて、コビを売り続けるのだった。

というわけで、無事に離婚が成立したわ。向こうの弁護士も、話が違うということで受けるつもりもなかったみたい。

職場で秘書になってもらっているつぼみに経緯を話している中で、つぼみはそう言って頷く。その後、会社が作った保育所に息子を預けて、私は無事にCEOになっている。

かずは会社を解雇された。そもそも父さんを怒らせたし、私にもいい印象を受けていない。これ以上いるのはやばい、ということだろう。同じ会社に務めているかん介さんも左遷。窓際部署に飛ばされたみたい。父親は解雇ではないね。

「かん介さんはあと一年ぐらいで退職だからね。それに退職金はしっかりと受け取ってもらわないと」

「うん。どういうことよ」

「お母さんが離婚する時に、財産分与でお金をもらえるでしょう」

そう言って私は微笑を浮かべる。

「お母さんは優しかったからね。それに、私にしてくれていたわ。妊娠中、家事を手伝いに来てくれようとしていたみたいよ。お父さんが出産までは明かすなと言われていたみたい。あと、あの年になって離婚しても生活ができないと思っていたみたいなの。離婚に強い弁護士の紹介。それと、お母さんの手芸の腕前。あれはすごいわよ。個人売買レベルだけれど、実際に利益も出している。もうお母さんはあのお父さんがいなくても生活できる」

むしろ、甲斐性のない息子も勘当して連絡先も分からなくなっている。待っているのは遺産だけでしょうね。慰謝料もたっぷり払うでしょうし。私は微笑を浮かべる。かずはもう、この業界では働けない。養育費の方は期待していないし不要なので気にしていないが、それでも請求はしている。

「しかし、これだともう結婚は無理かな」

「それなら、私ではどうでしょうか?」

そう声がして現れたのは、父の秘書から私の秘書になった蒼井さんだ。

「へ?いや、蒼井さんは結婚できると思いますよ。スラッとしていて美人ですし、素敵な旦那さんが見つかりますよ。私と違って」

そう言うと、蒼井さんはため息をついて、なぜかつぼみは爆笑をしていた。

「ゆりさん」

ため息混じりに蒼井さんは私の名前を呼ぶと、書類を置いて言う。

「私は、男性です」

え?正直、入社してからずっとゆりさんに惹かれておりました。結婚を認めてもらうために努力して、社長秘書にまでなりました。社長も私を結婚相手として紹介しようとしておりましたよ。

その言葉に、私は驚くしかできなかったのだった。

やはり、私は男を見る目がないらしい。

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