義父にいきなり顔を殴られたのは、結婚の挨拶をしたその瞬間だった。頬に走る激痛と「娘を傷物にしやがって」という怒声。なのに、3年付き合った彼女は嬉しそうに笑っていた。「愛情を確かめたくて、パパに頼んだのよ」――その言葉を聞いた時、私は何も言えなくなった。そして彼女の父親は、今度こそ本気で私を殴ろうとしている。私は目を閉じ、歯を食いしばった。その時、静かな声が響いた。「証拠なら、ありますよ」…

義父にいきなり顔を殴られたのは、結婚の挨拶をしたその瞬間だった。頬に走る激痛と「娘を傷物にしやがって」という怒声。なのに、3年付き合った彼女は嬉しそうに笑っていた。「愛情を確かめたくて、パパに頼んだのよ」――その言葉を聞いた時、私は何も言えなくなった。そして彼女の父親は、今度こそ本気で私を殴ろうとしている。私は目を閉じ、歯を食いしばった。その時、静かな声が響いた。「証拠なら、ありますよ」...

俺の名前はリクト。28歳の会社員だ。3年付き合っている彼女のみさとが、最近は会うたびに結婚の話を持ち出す。俺も将来を真剣に考えてプロポーズした。彼女は喜んでくれたが、「両親に認めてもらってからお返事したい」と言って、一度は断られた。

ショックだったが、同僚のかに励まされ、勇気を振り絞ってみさとの実家へ挨拶に行くことにした。スーツをクリーニングに出し、鏡の前で何度もネクタイを直す。みさとが紅茶を飲みながら笑っている。「そんなに緊張しないで」と言われても、心臓はバクバクだった。

みさとの家に着くと、優しい笑顔の母親が出迎えてくれた。父親も穏やかな人ならいいなと思いながら、居間へ通される。扉が開き、正面に座っていたみさとの父親が立ち上がった。挨拶をしようと口を開いた次の瞬間――頬に強い衝撃と激しい痛みが走った。

気づいた時には、床に尻餅をついていた。何が起きたのか一瞬分からなかった。みさとの父親が拳を握ったまま、怒りの形相で俺を見下ろしている。「娘を傷物にしやがって。お前との結婚など認めん」

お茶を運んできたみさとの母は驚いて固まり、みさとはなぜか嬉しそうに笑っている。俺は何も理解できず、混乱するばかりだった。「ほら、リクト。私への気持ちをパパにアピールしなきゃ」みさとが言う。「土下座でもして、説得しなさいって言うのか?」

腹が立ってきた俺は、立ち上がり、みさとの母にお礼を言ってその場を去ることにした。「今日は帰ります。また後日話しましょう」みさとが後ろから叫ぶが、振り返らなかった。

外を歩きながら、殴られた恐怖と情けなさで涙が出そうになる。かへ電話すると、すぐに心配して駆けつけてくれた。「病院に行こうぜ」と言われ、そのまま付き添ってもらう。診察の帰り道、俺はかにあることを打ち明けた。「みさとは、俺が殴られても全然心配してくれなかった。むしろ嬉しそうだった」

かは真剣な顔で言った。「1度こういうことがあると、またあるかもしれないぞ。お前が理不尽な目にあったのに、彼女はお前の味方をしてくれなかったんだろ?結婚は考え直した方がいい気がする」

確かにそうだ。あんな非常識な父親を「お父さん」と呼べるか。それに、理不尽に殴られた俺を心配もしないみさとのことが、もう分からなくなった。俺は結婚を考え直すことにした。

翌日、スマホを見ると、みさとから大量の着信が入っていた。仕方なく出ると、みさとは怒鳴りつけるように言った。「パパがもっと怒っちゃって大変だったんだからね。パパが私に手を出したのは許すって。私が説得したおかげなんだから。今がチャンスよ」

俺は被害届を出したことを伝えた。みさとは驚いた様子で「冗談だよね」と言うが、俺は続けた。「みさとと結婚しないから」

すると、みさとは意外なことを言い出した。「パパに頼んだの。リクトの愛情を確かめたいから、一発殴って欲しいって。それでも結婚を許して欲しいって言ってくれたら、それは本物の愛でしょ?」

俺は呆れて言葉が出なかった。少女漫画のヒロインかよ。3年も付き合ってきたのに、こんなに自分勝手で変なやつだったのか。俺は何も分かっていなかったんだ。

今夜もう一度実家に来て話し合おうと言うみさとを無視するつもりだったが、みさとの父が職場に突撃してくるかもしれないと考え、俺はもう一度みさとの実家を訪れることにした。

その夜、みさとの父は酒を飲みながら俺を小ばかにしてきた。「被害届けを出したらしいな。ケツの穴の小さい男だぜ」

俺は言い返した。「そうですよ。みさとと結婚するつもりはありません。プロポーズはなかったことにしてください。今日はそれを伝えに来たんです」

みさとは泣きわめき、みさとの父は発狂したように胸ぐらを掴んで殴ろうとした。しかし、みさとの母が「証拠ならありますよ」と静かに言った。天井に設置されたペットカメラを指さして。「ずっと映像をクラウドに保存してあるから。私もね、長年この人の暴力に悩まされてきたの。離婚するための証拠を集めていたのよ」

俺も電話の録音があることを伝えると、みさとの父は真っ赤な顔で暴れ出した。やがて近所の通報で警官が到着し、みさとの父は連行された。みさとは「被害届けを取り下げて」とすがるが、俺は首を振った。「元はといえば、みさとが馬鹿げたお願いをしたせいだろ」

みさとはようやく諦めたのか、「分かった。ごめん」と言って手を離した。こうして、俺とみさとの交際は幕を下ろした。後日、みさとの父から弁護士を通じて謝罪と慰謝料の申し出があり、俺は60万円を受け取った。警察沙汰になったことで、みさとと父は近所から白い目で見られているらしい。

時が経ち、みさとの母が無事離婚できたと聞いた。みさとは俺との破局理由を周囲に話し、ドン引きされて孤立しているそうだ。自分のどこが悪かったかを自覚しない限り、みさとに明るい未来はないだろう。

俺は今夜、かにおいしい焼肉をご馳走する予定だ。改めて、友達のありがたさを噛みしめている。

私の名前はさえ子。34歳。2つ年下の夫・暑人と結婚して4年になる。私は幼い頃に母を事故でなくし、父も大学卒業後に病で亡くして天涯孤独になった。だから夫との結婚で家族ができたことが本当に嬉しかった。夫婦仲もよく、順風満帆な生活を送っていると思っていた――半年ほど前までは。

発端は、義母とお茶をしていた時のことだ。義母は結婚の時に「本当の母親だと思って甘えてちょうだいね」と言ってくれた優しい人だ。その義母が突然、こう切り出した。「100万円貸してくれないかしら?」

飲みかけのコーヒーを吹き出しそうになった。「欲しいバッグがあるのよ」義母は言う。義父はお金に潔癖な人で、義母はほとんど自分のお金を持っていないらしい。私は夫に相談しようとしたが、義母は「あの人に言わないで」と懇願する。断ると、義母は手のひらを返したように「娘だと思っていたのは私だけだったんだわ」と嫌味を言って帰ってしまった。

帰宅後、夫に話すと、「母さんがそんなことを。ごめん」と謝ってくれた。その時、義母から電話がかかってきた。夫に代わると、「さえ子さんたら告げ口したのね」と怒り出す義母。それでも夫は「どうしてもって言うなら、せめて俺に相談しろ」と注意し、結局、借用書を書くことを条件に100万円を貸すことにした。

しかし、それが悪い流れの始まりだった。義母はその後も何度もお金を借りに来るようになった。1万円、3万円、金額はバラバラだが、少しずつ確実に借金は膨らんでいく。返済を求めるたびに「家族でしょ」と言われ、私たちはなかなか強く出られなかった。

半年で借金は200万円に達した。私が「もう貸せません」ときっぱり言うと、義母はようやく返済の約束をした。「返済の用意ができたので、私1人で実家へ取りに来てほしい」

夫は心配したが、私は1人で行くと決めた。その代わり、夫に「ある人物を連れてきてほしい」とお願いした。約束の日、義実家を訪れると、義父が200万円の入った封筒を差し出した。「援助される立場のくせに、その態度は何様だ」義父は私を一括した。

「援助?むしろ援助したのは私たちの方ですが」

義母の顔が青ざめた。義父が話を聞くと、義母は半年間にわたり私たち夫婦から200万円を借りていたこと、返済をしていないことが明らかになった。義母は「さえ子さんが嘘をついている」と必死に否定するが、私は借用書を見せた。

その時、夫が到着した。夫が連れてきたのは、夫より5歳年下の義妹だった。義母はさらに顔を青くする。義妹は会社をクビになり、義母に頼って生活していたのだ。「お兄ちゃんたちは子供もいなくてお金も余ってるでしょ」と義母に催促していたらしい。義母は最初にバッグを買うためと言って借りたが、その後は義妹の生活費や趣味のお金に流れていたのだ。

義父は激怒し、義妹を張り倒して謝罪させた。義母は土下座して謝るが、私にはもうどうでもよかった。「お母さんに初めて挨拶した時、本当に嬉しかったんです。でも、実際は都合のいい時ばかり私を娘と呼んで、私の気持ちを考えてはくださらなかった。そんな母なら、私いりません」

義父は「こちらで引き取るから、お前たちはもう行きなさい」と言ってくれた。数週間後、義父が私たちのマンションに訪れ、迷惑料として50万円を差し出した。「少ないけど慰謝料にして欲しい」と。義母は義父のカードにも無断で手をつけていたことが発覚し、結局離婚になった。義妹と一緒に家を追い出され、今では互いを攻め合いながら親戚の民宿で住み込みの仕事をしているそうだ。

実は、この騒動の後、私の妊娠が判明した。夫も義父もとても喜んでくれている。返済してもらった200万円と義父のくれた50万円は、生まれてくる子供のために使おうと思う。

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