高校時代の初恋の人に、8年ぶりに再会した。閉店間際の食堂に現れた彼女は、かつて学校一の美人だった面影はあるものの、痩せ細り、ぼろぼろの服を着て、割引弁当を買おうとしていた。「白石さん?」と声をかけると、彼女は逃げ出そうとした。…

高校時代の初恋の人に、8年ぶりに再会した。閉店間際の食堂に現れた彼女は、かつて学校一の美人だった面影はあるものの、痩せ細り、ぼろぼろの服を着て、割引弁当を買おうとしていた。「白石さん?」と声をかけると、彼女は逃げ出そうとした。...

店のレジに、閉店間際の割引シールが貼られた弁当箱を差し出した女性を見た瞬間、聞き覚えのある声に息が止まった。高校時代の初恋の人、白石さんだった。やつれて、ぼろぼろの服を着ていたけど、間違いなく彼女だった。
「白石さん?」
驚いて声を上げると、彼女は数秒固まった後、踵を返して逃げ出そうとした。私は店を飛び出し、路上で叫んだ。
「待って。白石さんですよね?」
ぼろぼろの服を着た女性は、肩を震わせて立ち止まった。

高校時代、私は父を突然の脳溢血で亡くし、家計は火の車だった。母は必死に働いたが、給食費すらままならず、私はいつも空腹だった。
そんな私に、毎日のように自分の弁当を分けてくれたのが白石さんだった。学校一の美人で、大企業の社長令嬢。雲の上の存在だった。

「佐藤くん、食べてくれない? うちはお母さんが料理しないから、デパ地下ので済ませてるの。味が濃くて、もう飽きちゃって」
そう言って差し出される高級弁当と、私の母の手作り弁当を交換する日々。白石さんは私の弁当を「美味しい」と喜んで食べてくれた。
いつしか二人で食べる昼休みが、私の何よりの楽しみになっていた。周りから付き合っていると噂され、私自身も、もしかしたら、と期待していた。

しかし同級生の宮原が、執拗に私たちを邪魔し始めた。
「佐藤って貧乏で気持ち悪いよな。近づいたら貧乏が移るぞ」
「お前、白石さんに弁当たかってるんだろ?」
根も葉もない悪口を撒き散らした。私を庇ってくれた白石さんも、次第にクラスから孤立させられた。それでも彼女は「佐藤くんとなら、付き合ってもいいよ」と言ってくれた。あの時、心臓が張り裂けそうなくらい嬉しかった。

だが半年後、突然、白石さんは言った。
「もう、一緒にご飯食べない。別れよう」
そう言い残して、逃げるように去っていった。理由は分からなかった。ただ、私と一緒にいることで白石さんまでいじめの標的になるのを恐れてのことだと思い込むしかなかった。そのまま私たちは、卒業まで一度も話さなかった。

それから8年。私は調理師免許を取り、父の遺した小さな食堂を母と切り盛りしていた。家計は少しずつ回復し、店も繁盛していた。
そんなある日、閉店間際に現れたのは、あの白石さんだった。

「白石さん、何があったんですか。そんなに痩せて」
私は思わず彼女の腕を掴んだ。彼女はうつむいたまま、絞り出すような声で話した。
「2年前に父が心の病気になってね。会社を私が継いだけど、潰しちゃったの。借金だけが残って…今はパートを掛け持ちして返してるけど、まだ全然」
「私が悪いんだよ。高校の時、佐藤くんがお前は貧乏だって馬鹿にされてた時、何もできなかった。見て見ぬふりをした罰だよ」

そう言って自嘲気味に笑う白石さんの姿は、あまりにも悲しかった。
気温は氷点下。彼女は薄着のまま震えていた。
「白石さん、うちに来ませんか。うちは暖かいし、美味しい飯もある。高校の時、さんざん弁当をもらった恩返しをさせてください」
私の言葉に、白石さんの目から涙が溢れた。

うちに連れて帰ると、母は白石さんを見て事情を悟ったらしく、「自分のように苦労した人なら、店で働いてみない?」と提案した。
「お試しでいいから」と。
白石さんは泣きながら頷いた。

それから白石さんは、うちの店で働き始めた。ちゃんと食べて、ちゃんと寝て、少しずつ元気を取り戻していった。
そして、ある日。
「ねえ、佐藤くん」
「何ですか?」
「あの日、私が弁当を一緒に食べなくなった本当の理由、知りたい?」

そう言って白石さんが見せた表情と、その後明かされた衝撃の真実と、さらにその先に待っていた、私が高校時代に知ることになるはずもなかった話の全貌を、私はあの日知ることになる。
その日から、私たちの人生は大きく動き出すことになったのだ。

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