13年間、彼の生活費もスマホ代も全部私が払ってきた。なのに37歳の誕生日、彼は突然「お前は結婚相手としては不合格だ」と言い放ち、新しい恋人の写真を見せつけてきた。「俺たち結婚してないから慰謝料も払わない。さっさと出ていけ」って。私は何も言わずに頷いた。だって、その日を待ってたから。荷物を運び出し、ライフラインを全て止め、連絡先をブロックして消えた。自由になったと思った。なのに1週間後、彼は職…

13年間、彼の生活費もスマホ代も全部私が払ってきた。なのに37歳の誕生日、彼は突然「お前は結婚相手としては不合格だ」と言い放ち、新しい恋人の写真を見せつけてきた。「俺たち結婚してないから慰謝料も払わない。さっさと出ていけ」って。私は何も言わずに頷いた。だって、その日を待ってたから。荷物を運び出し、ライフラインを全て止め、連絡先をブロックして消えた。自由になったと思った。なのに1週間後、彼は職...

13年間も私を養っておいて、最後に「不合格」だと?そんな言葉を浴びせた男に、私はもう何も感じなかった。37歳の誕生日、同棲して13年になる松本じ太が突然、別れを告げた。

「お前はもう37のおばさんだ。顔も見飽きた。俺には新しい恋人がいる」

じ太はSNSで知り合ったという女性のツーショット写真を見せつけてきた。モデルをしていて、収入は私の3倍あるらしい。

「俺たちは結婚してないから、慰謝料を払う義務もない。分かったらさっさと出ていけ」

彼は2日以内に出ていけと命令した。住んでいたマンションは私名義で借りているのに、居住権すらないと言わんばかりの態度だった。腹は立ったが、彼と離れられるなら素直に受け入れよう。私は「分かった」と了承した。新しい恋人ができたのだから、彼が今後私に関わってくることもないだろう。そう思っていた。

1週間後、職場にじ太が現れた。

「頼む、戻ってきてくれ」

そう言って土下座した男の姿を見て、私はため息をついた。

私は戸川美由。市役所で働く37歳だ。大学生の頃、同じゼミに通っていた松本じ太と交際していた。じ太は見た目も爽やかで背も高く、いわゆるイケメンだった。そのルックスから女性によくモテた。私と交際している間も、何度浮気されたか分からない。それでも浮気が発覚するたびに頭を下げるじ太を、私は許してきた。

大学4年生になり、卒業後の進路を考え始めた時、じ太から「一緒に暮らそう」と言われたが、私は受け入れられなかった。嬉しくないわけではなかったが、彼は就職も決まっておらず、相変わらず女性の影がちらついていた。疲れていたのだ。

「ごめん、別れよう」

私が別れを選ぶと、じ太は最初こそ「なんでだ」と食い下がったが、すぐに「まあいいか」と受け入れた。私にこだわらなくても、女性なら大勢いると思ったのだろう。実際、別れた直後から学内の女性たちに声をかけまくっていた。

その後、私は市役所に就職し、仕事に専念した。ある日、同僚に「彼氏を作らないんですか」と聞かれた。

「今は仕事に専念したい気分なの」

正直なところ、じ太との恋愛に疲れ切っていた。じ太は交際中、他の女性に声をかけるだけでなく、自分の小遣いがなくなると決まって私にせがんだ。貸してくれという割に、返してくれたことなど一度もない。別れる時に返済を頼んでも「俺と付いてよかったんだから、その代償だ」と言い放った。

私のことを好きだと言いながら、都合よく使われているようで、じ太との将来に希望が持てなくなった。でも、もしかしたら、じ太をそうしてしまったのは私なのかもしれない。私が甘やかしすぎたのかもしれない。そう思うと、別の誰かと付き合う気にもならなかった。

月日はあっという間に過ぎ、社会人2年目を迎えたある日、街でじ太に再会した。

「お姉さん、何してるの?」

驚いて振り返ると、そこにはじ太がいた。

「久しぶり。こんなところで会うなんて、今日はついてるぞ」

急いでいるからと立ち去ろうとしたが、彼が行き手を阻む。

「久しぶりに会ったんだ。食事くらい付き合ってよ」

断りたかったが、彼は私がうんと言うまでつきまとうつもりらしい。仕方なく、食事だけならと誘いに乗った。

「いやあ、久しぶりにまともな飯が食えたよ」

じ太は大学を卒業した後、定職につかず日雇いのアルバイトをしながら生活しているらしい。しかし、自分に合わないとどの仕事も長続きしないようだ。

「この前、電気も止められて大変だったよ」

彼は笑い話として話していたが、まともな食事もできず、ライフラインさえ維持できない現状は笑いごとではない。

「ちゃんと就職したらな。それができたら苦労しないよ。でも、なかなか見つからないんだ。家賃も払えてなくて、出ていけって言われてる。付き合ってた彼女にも振られたし、もう最悪だよ」

じ太は目に涙を浮かべ、苦しい胸の内を話した。交際中に彼が私に涙を見せたことなどない。よほど苦しい状況なのだろう。別れたとはいえ、かつての恋人が苦労している姿は見るに耐えなかった。

「本気で就職する気があるなら、しばらく一緒に暮らしてもいいわよ」

私にとってマイナスでしかないと分かっていたが、困窮しきった彼を放っておけなかった。じ太は「本当か」と喜んだ。

「ちゃんと就職して、自力で生活できるまでだからね」

「分かってるよ。でも助かった。サンキュー」

その日のうちに、じ太は私の家に引っ越してきた。といっても、わずかな着替えを持ってきただけで、これといった荷物もない。

「これからよろしくな」

その笑顔に、私は一抹の不安を覚えた。

収入のないじ太の生活費は、すべて私が負担することになった。健康保険料、国民年金、さらにはスマホ代まで。それでも彼が就職するまでの辛抱だと、私は覚悟を決めた。

しかし、じ太は就職する様子を見せなかった。毎日家でゴロゴロと過ごし、就職活動をしている気配もない。

「就職先は探してるの?」

「大丈夫。ちゃんとやってるから」

じ太は話をそらすように、私に抱きついてきた。

「ちょっと待って。私たち、付き合ってるわけじゃないわよね」

「一緒に暮らしてるんだ。同じことだろ?それとも俺と一緒になるのは嫌なのか?」

じ太は私との結婚を望んでいるという。そのためにちゃんと働こうと思っているとやる気を見せた。彼の言葉をどこまで信じていいのか分からなかったが、この時は信じてみようと思った。離れていた間に心を入れ替えてくれたのかもしれない。

しかし、数日後、私はじ太の本性を知ってしまった。

ある日、昼休みにランチをしようと市役所を出ると、学生時代の友人に会った。既に結婚し子供がいる彼女と、思い出話に花を咲かせていると、じ太のことを聞かれた。

「実はね、今じ太と一緒に暮らしてるの」

彼の困窮ぶりに同情したことを話すと、友人は笑った。

「まんまとやられたわね」

「やられたって、どういう意味?」

友人の話では、じ太は私と再会する直前まで、複数の女性を渡り歩いていたそうだ。言葉巧みに女性の家に転がり込み、生活の全てを委ね、養ってもらっていたのだとか。しかし、一向に働かない上に浮気が発覚し、怒った女性に追い出されると、また別の女性に声をかけて家に転がり込むのだという。

「あの時『ついてる』って喜んでたのは、そういうことだったのね」

じ太の本性を知って、私は呆れてしまった。友人は「じ太が本気で結婚を考えているのか、冷静に見極めなさい」と助言してくれた。

それからも私は何度も就職を促した。しかし、1年が経っても2年が経っても、じ太は一向に働く気配を見せなかった。自分に合う仕事を探していると言い訳し、私が勧める求人先にもケチをつけては連絡すらしようとしない。そればかりか、就職活動と言いつつ町に出かけ、若い女性に声をかけまくっていた。

ある日、仕事を早退して家に用事があった時、町をふらつくじ太を見かけた。彼は道行く女性に声をかけ、何やら楽しそうに話している。無視されても断られても、次々に声をかけている様子は、スカウトでもしているかのようだった。

その日の夜、私はじ太に何をしていたのか尋ねた。

「ん?ああ。普通に何もしてないよ。ただ声をかけてただけだ。就職の役に立つかもしれないから、コミュニケーション能力を高めてるんだ」

「要するにナンパしてたってことね」

「違う。そんなぬるい話じゃない」

要するに、私の次に転がり込む家を探していたのだろう。この時すでに30歳を超えていたじ太に、女性たちも興味を示さなかった。それでも彼は、自分のルックスがあれば女性たちがちやほやしてくれて、喜んで養ってくれると勘違いしていた。

「私と結婚する気なんてなかったのね」

「そうじゃない。これは能力開発の一環なんだ」

「もういいわ。仕事をしないなら、ここから出てって」

「分かった。ちゃんと仕事を見つけるから、そんなに怒らないでくれ」

行き場のないじ太は、私に追い出されたくなかったのだろう。必死に謝り、就職を約束した。

しかし、それからもじ太は定職につかず、同棲を始めてから5年も過ぎると、働かないのが当たり前のように振る舞った。

「お前が働いてたら生活はやっていける。俺は俺のやりたいことをやらせてもらうよ」

「やりたいことって何?」

「そうだな。アイドルとか俳優でもいいな」

30歳を過ぎているのに、夢のような話をしている。

「そんな簡単になれるものじゃないわ。それより、まずはちゃんと働いてよ」

「夢は諦めたら終わるんだ。俺のビジュアルがあれば絶対慣れる」

確かに学生時代の彼はイケメンだとモテはやされ、女性人気も高かった。しかし、何も手入れしてこなかった彼は、年齢を重ねるごとに老けが目立つようになり、日焼けのしみも見え始めている。それでも、自分でやってみるまでは理解できないだろうと思い、私はしばらく様子を見ることにした。

数ヶ月後、芸能事務所のオーディションがあると意気込んで出かけていったじ太は、数時間後、がっかりした様子で帰ってきた。

「どうだったの?」

「あいつらは俺の魅力が分からないんだ。あんな事務所、こっちから願い下げだ」

オーディションの一次審査で落とされてしまったらしい。彼が見ていたサイトを覗いてみると、「俳優候補募集」と書かれている。しかし、募集要項には「25歳までの若者」とあった。

「ちゃんと募集要項を確認しないと」

「年齢なんて関係ないだろう。俺は世間が認めるイケメンなんだ」

これで芸能界を諦めてくれると思っていた。しかし、それからもじ太は突拍子もない夢を語り、一向に定職につこうとしなかった。いつしか私はじ太に就職を促すこともなくなっていた。何を言っても無駄だと諦めてしまっていた。

いつまでこんな生活が続くのか。毎日家にいるというのに、家事すらやらない。口を開けば「お腹が空いた」と、疲れて帰る私に料理を作らせる。お腹が満たされるとどこかに出かけていき、夜中まで帰ってこない。そんなじ太との生活に、いい加減うんざりしていた。

そして、私が37歳の誕生日を迎えた日、じ太から突然別れを告げられた。

「13年も我慢したけど、やっぱりお前は結婚相手としては不合格だ」

「不合格って、どういうこと?」

「お前はもう37のおばさんだ。顔も見飽きた」

じ太は一方的に私を罵倒した。

「それでどうするっていうの?俺は新しい恋人を見つけたんだ」

じ太はSNSで知り合ったという女性とのツーショット写真を見せつけてきた。女性はモデルをしており、収入は私の3倍あるという。

「彼女と一緒にいたら、俺の人生も安泰だ」

「ここを出ていくなら、その前にこれまでの生活費を返済してちょうだい」

「同棲するって言い出したのはお前だろ。言い出した方が生活費を負担するのは当然だ。ちなみに俺たちは結婚してないから、慰謝料を払う義務もない」

身勝手な理由で一方的に別れを告げておきながら、慰謝料すら支払わないという。

「分かったらさっさと出ていけ。彼女と一緒に暮らすから」

じ太は2日以内に出ていけと命令した。しかし、住んでいたマンションは私名義で借りているもので、彼に居住権などない。それでも、じ太を養う重圧から解放されるチャンスなのだ。腹は立つが、彼と離れられるなら素直に受け入れよう。

そう思った私は、「分かった」と了承した。

その日のうちに、私は弁護士の佐藤の元を訪れた。実は少し前から、じ太と別れようと色々と準備を進めていたのだ。仕事で知り合った佐藤に相談に乗ってもらっていた。

「マンションを出て、他に行くところはあるんですか?」

「それなら大丈夫です。新居の契約もすでに済ませており、引っ越し業者の手配もできていました」

じ太から別れを切り出したことは予想外だったが、私にとっては願ったり叶ったりだった。

「13年間に及ぶ同棲生活で、生計を共有していたのは事実です。法的にも2人が内縁関係にあったと認められます」

「それじゃ、慰謝料は請求できるんですね」

「ええ、不貞な相手に対する慰謝料請求が可能です」

いつまでも学生気分で女を食い物にしている男に、きちんと社会のルールを教えてやろう。そう思った私は、徹底的にじ太を追い詰めると決意した。

翌日、私はじ太が遊びに出かけている隙を見て、引っ越し業者と共に全ての荷物を運び出し、新居への引っ越しを完了させた。同時に、私名義で契約していた電気、ガス、水道のライフラインを解約し、じ太に持たせていた家族カードも利用停止にした。当然、マンションの解約手続きも済ませ、電話番号を着信拒否にし、LINEやSNSアカウントは全てブロックした。

じ太との一切の関わりを絶った私は、晴れやかな気持ちに包まれた。じ太の存在は私にとって重荷でしかなかった。彼と離れ、軽くなった背中が嬉しくなった私は、13年間よく頑張ったと、大好きな寿司で自分をねぎらうことにした。

新しい恋人ができたじ太が、今後私に関わってくることもないだろう。そう思っていた。

しかし、1週間後、職場にじ太が訪ねてきた。

「わざわざ職場まで来て、何のつもり?」

「しょうがないだろう。電話は繋がらないし、どこに引っ越したかも分からなかったんだ」

じ太は、私がなぜ彼との連絡を絶ったのかも理解できないらしい。市役所で大騒ぎされても、他の来庁者に迷惑がかかってしまう。仕方なく、私はじ太の話を聞くことにした。

「それで、一体何の用なの?」

「頼む。戻ってきてくれ」

じ太は人目もはばからず、その場に土下座し、大号泣で復縁を求めてきた。

「このままじゃ俺は生きていけない」

クレジットカードが使えず、ライフラインも止まり、手元に現金もないじ太は、1週間で生活が破綻したようだ。その上、住んでいたマンションの家賃を求められ、行き場に困っているという。

身勝手に別れを告げたというのに、また泣き落としでなんとかなると思っているじ太に腹が立つ。

「モデルの彼女を頼ればいいじゃない」

じ太は顔を青ざめさせ、絶望感を漂わせた。

「詐欺だったんだ」

じ太がSNSで知り合った女性は、男を騙して金銭を取る詐欺グループの一員だった。言葉巧みに近づいた彼女は、じ太に金がないと知るや、連絡を絶って消えたのだとか。

「それが何だっていうの?私には関係ないわ」

「イケメンの俺が戻ってきていいって言ってるんだ。素直に喜べよ」

呆れた。

「いつまで自分がモテるって思ってるの?自分の顔、鏡で見てみたら?私がおばさんなら、あなたもただのオジさんよ」

じ太は私に拒絶されるとは夢にも思っていなかったのだろう。

「なんでだよ。俺がこんなに困ってるっていうのに。俺に振り向かない女なんていなんだぞ」

じ太は激しく取り乱し、大声で叫んだ。

「他の人に迷惑だから、帰ってちょうだい」

私は警備員を呼び、じ太を外へ連れ出してもらった。

「落ち着け。ホスト、地下アイドル。まだいくらでも手はある」

警備員に取り押さえられながら、じ太はブツブツと独り言を呟いていた。彼の頭の中は、まだ学生のままらしい。ホストや地下アイドルなら採用してもらえると思っているようだが、37歳のオジさんに需要などあるはずがない。

行き場を失ったじ太は、必ず実家を頼る。そう確信した私は、佐藤を通じてじ太の実家に慰謝料請求の書類を送付してもらった。

案の定、行き倒れ寸前だったじ太は、実家の両親を頼ったそうだ。しかし、両親はじ太の話を聞くまでもなく大激怒したらしい。当然だろう。じ太は両親に「会社をリストラされた」と嘘の報告をしていたのである。それを私が暴露したのだ。

私が送った慰謝料請求の書類を確認した両親は、同封されている手紙に気づいた。そこには、大学を卒業してからのじ太の生活の全てが書いてあった。13年間、私が養い続けてきたことも記入してある。

両親は、会社で働いたこともなく、13年もの間、女に養わせていた事実を知り、その上、身勝手な理由であっさり捨てたことにひどく憤りを感じ、大激怒した。

「慰謝料は自力で支払え。あなたはもう私たちの息子じゃないわ」

じ太は両親から勘当を言い渡され、実家を追い出されたらしい。

数日後、じ太の両親が私の職場を尋ねてきた。

「じ太が申し訳ないことをした。親として本当に情けないわ。この通りです」

じ太の両親は丁寧に謝ってくれた。その上で、じ太が慰謝料を支払わない場合、自分たちが責任を持って支払うと約束してくれた。しかし、両親に支払ってもらうつもりはない。私は金が欲しいわけではなく、じ太にちゃんと反省してほしいのだ。

数日後、じ太が再び職場に現れた。

「詐欺師の女を訴える方法を教えてくれ」

じ太は、ホストも地下アイドルも「需要がない」と鼻で笑われただけで採用されなかったと話し、自分を騙した女性を訴えるという。

「お金を騙し取られたの?」

「そうだ。わざわざ借金までして用意したっていうのに。それにあいつがいなきゃ、俺は身ゆと幸せに暮らしてたんだ」

じ太の身勝手な言い分に呆れてしまう。

「彼女に騙されたって証拠はあるの?」

「それは…」

じ太は借金をした時の借用書はあるが、彼女との具体的な金のやり取りは何も残っていないという。

「それじゃ、訴えても無駄かもね。それでも訴えたいって言うなら、弁護士にでも相談してみたら?」

じ太はその場でスマホを開き、藁にもすがる思いで弁護士を探し始めた。

「着手金無料。これならなんとかなるかも」

弁護士から返信を受けたじ太は、「相談してくる」と帰っていった。

しかし、数日後、また私の前に現れた。

「弁護士とのやり取りに金がかかる。少し貸してくれ」

着手金無料と謳っていたにも関わらず、金を要求されたことに疑問を抱かないのだろうか。呆れて何も言えなくなった私は、「話すことはない」とじ太を突き離し、警備員を呼んで彼を追い出してもらった。

1ヶ月後、公園のベンチを破壊したとして、じ太が逮捕されたというニュースが流れた。じ太は弁護士に支払う費用を作ろうと、SNSで見つけた審査なしの金融業者から借金をしたらしい。それ以外にも複数の金融機関から借り入れを行っており、生活は困窮するばかりだった。

イケメンと持て囃され、顔だけで生きていけると思っていた男は、現実を受け入れることができなかったのだろう。自分の置かれた現状にいら立ちを感じ、公園のベンチを破壊したのだとか。

しかし、じ太が頼った弁護士と金融機関は繋がっており、同じ詐欺グループの一員だったのだ。じ太が逮捕される前日、警察の捜査によって組織は一網打尽になっていた。警察署で詐欺だったことを知ったじ太は「自分の金はどうなるんだ」と焦ったらしいが、被害にあった金は1円も戻ることがないと言われ、大きく肩を落としたそうだ。

その後、器物破損の罪で起訴されたじ太には罰金が言い渡された。しかし、じ太に支払う能力などない。その結果、じ太は労役場留置となった。

1ヶ月程度、刑務所で暮らすこととなったじ太は、もしかしたら胸を撫で下ろしているかもしれない。刑務所にいる限り、食事に困ることはないのである。少しでも自分を振り返り、心を入れ替えてくれるといいのだが、彼には期待できなさそうだ。

じ太が釈放された頃、詐欺グループの裁判が始まった。じ太は毎回のように傍聴に訪れたらしい。しかし、裁判所に出頭してきた詐欺師たちを見て愕然としたようだ。自分を騙した彼らは、髪をきちんとセットして高級そうなスーツを身にまとっている。それに比べ、路上生活をしているじ太は、髪もボサボサで汚れた服を着ている。

詐欺師たちの裁判が結審を迎えた日、じ太は「俺の人生を返せ」と傍聴席を乗り越えようとしたらしい。職員に取り押さえられ外に連れ出されたようだが、元を正せば、自分が仕事もせず人生を甘く見ていたことが悪いのだ。

その後は、路上生活を続けながら街中のゴミを漁って歩いたり、大声で叫んだりして近隣住民に迷惑をかけているのだとか。軽犯罪とはいえ、何度も繰り返し刑事罰が下され、刑務所に収容されても、じ太は全く反省しなかったらしい。

それどころか、じ太の行動はどんどんひどくなっていき、ついには強制的に精神鑑定を受けさせられたそうだ。その結果、彼は精神病院送りとなったのだとか。今は、檻のついた病室で、気が狂ったように叫んでいることだろう。

その後、私は一連の騒動に区切りをつけるため、市役所を退職し、福祉活動を行っているNPO法人に加入した。実は以前から、学生時代の友人に「一緒にやらないか」と誘われていたのだ。

子供食堂の運営や高齢者の介護、生活支援事業に取り組みながら、充実した毎日を送っている。最近になり、同じNPO法人で働く男性と交際も始め、将来は2人で支援事業所を立ち上げようと奮闘している。彼は決して私のお金を当てにしない。

ようやく掴んだ幸せを大切にしながら、今日も子供たちのため、高齢者のために、目一杯笑顔で走っていくのである。

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