義妹のリホと初めて会った日、彼女は私を一目見るなり笑った。
「お兄ちゃんは高収入でイケメンなのに、こんなさえないおばさんと結婚するとか謎すぎ。」
私は凍りついた。夫の圭一さんは確かに年下でイケメンで高収入だ。でも、面と向かってそんなことを言う神経が理解できなかった。
夫が叱ると、リホはヘラヘラと笑って言い放った。
「え、だって久しぶりに合コンがあったんだもん。」
顔合わせを欠席した理由が「学業」ではなかったことに衝撃を受けた。私は間を取り持とうと、今は専業主婦をしていると話せば、リホは畳みかける。
「専業主婦なんてニートじゃん。ニートなんて社会のゴミが義姉とかマジで勘弁なんですけど。それともお兄ちゃんのお金を吸い取る計算中かな。」
私は必死に笑顔を保ち、「お医者さんって素晴らしい職業ですね」と伝えた。するとリホは鼻で笑う。
「はあ。ニートが知ったかぶりしちゃって。言われなくても分かってますよ。」
その場はなんとか収まったが、リホの印象は最悪だった。これからは距離を置こうと決めた。
数日後、私は入院中の母を見舞いに、実家でもある父の病院を訪れた。ロビーで兄と話していると、聞き覚えのある大きな声が響く。
「あれ?ニートの瞳さんがなんでここに?」
リホが意地の悪い笑顔で見下ろしていた。実習で来たらしい。病院だと声を潜めるよう注意しても、彼女は聞く耳を持たない。
「はあ。ニートの娘がお兄ちゃんみたいな高収入の男を捕まえて、お母さんもさぞ安心してるでしょうね。どうせお母さんの入院費もお兄ちゃんに払わせてるんでしょう。社会のゴミ親子が考えそうなことだわ。」
さすがに我慢の限界だった。周りの医師も患者も顔をしかめている。止めに入った医師にすら、リホは「これくらい言うのがちょうどいいんですよ」と笑った。その医師は「お前、人生終わったな」と捨て台詞を残して去る。
その時、用事を終えた兄が戻ってきた。兄の姿を見るなり、リホの態度が豹変する。猫を被るという言葉がこれほど似合う瞬間はない。彼女は甘えた声で兄に話しかけ、私を「この人と仲いいんですか?」と尋ねた。兄が「知ってるよ。妹だからね」と答えると、リホは呆然とした。
「じゃあ、瞳さんってこの病院の理事長の…」
私は頷いた。
「ええ、娘よ。元々はここで医師として働いていたわ。体調の問題でやめたけどね。今は療養しているから、一時的に専業主婦として家事を頑張っているところ。」
リホは青ざめた。彼女はこの病院への就職を希望していると聞いたことがある。兄に、そして周囲に、私や母を侮辱したところを聞かれたのだ。就職は絶望的だと理解したに違いない。
私は続けた。
「人を簡単に社会のゴミだなんて言い切ったりバカにするなんて、医者になる以前に人として問題があると思う。あなたに医者になる資格はないわ。」
リホは何も言えず、その場から走り去った。廊下を走るなと看護師に注意され、盛大に転んでいた。
それから半年後、リホは酒に酔って大怪我をし、入院したそうだ。何の因果か、医者として人を助ける立場になって、ようやく自分の傲慢さを理解したらしい。「恥ずかしくてたまらない。瞳さんにも謝りたい」と反省していると義両親から聞いた。リホは医学部を退学し、心を入れ替えて頑張るつもりだという。
一方、私は製薬企業でメディカルドクターとして働き始めた。父や兄は病院に戻ってこないかと言ってくれたが、私は新しい場所で頑張りたいと思う。母の体調も回復し、来年の結婚式を楽しみにしている。



