不正を暴くために、俺は自分のハッキングスキルを全て注ぎ込んだ。スクリーンに現れた真実の前に、上司の顔は青ざめていった。

不正を暴くために、俺は自分のハッキングスキルを全て注ぎ込んだ。スクリーンに現れた真実の前に、上司の顔は青ざめていった。

「お前は佐藤…!?」

発表の場に突然現れた俺を見て、田中常務の顔が驚愕に歪んだ。ステージのスクリーンには、先ほどまで俺たちが開発したセキュリティソフトのプレゼン資料が映し出されていたはずだった。しかし今や、そこには見知らぬウィンドウが次々と表示され、会場は騒然としていた。

「ずっと会場の奥で、こうして呼ばれる時を待っていたんだ」
俺がそう言うと、田中常務の顔色がさっと青ざめた。彼は鈴木さんに向かって怒鳴る。
「鈴木!今すぐこの男を下ろせ!」

ところが鈴木さんは動かなかった。
「申し訳ありません、田中常務。全て消去するように命じられていた請求書やメールですが、今回のハッキング攻撃によって全て復元されてしまったようです」

その言葉に、田中常務は全てを察した。俺は会場中に向かって、彼の不正を暴露した。会社の機密情報を外部に流し、その見返りに金銭を受け取っていたこと。請求書の金額を改ざんして差額を懐に入れていたこと。不正を告発しようとした部下を脅して口を封じていたこと。

「確かにパソコンに残っていた証拠は綺麗さっぱり消去されていたが、そんなものは俺にかかれば1分もかからず復元できる」
俺は鈴木さんに目で合図を送ると、彼女はあるソフトを起動した。その途端、スクリーンいっぱいに表示されていたウィンドウが全て消え去った。

「このソフトに搭載された独自のシステムが、ハッキングしてきた相手のIPアドレスを特定し、逆に攻撃を仕掛けて停止させたんだ」
俺が説明すると、会場からは驚きと賞賛の声が上がった。かつて不幸を呼んだハッキングのスキルが、こうして大勢の人に認められた。それが嬉しくて、俺は笑顔で鈴木さんに頷いた。

その後の処分は迅速だった。田中常務は懲戒解雇となり、彼の息がかかっていた社員たちも一斉に処分された。会社の資金を着服していた件は裁判で請求されることになった。55歳にして、彼は全てを失ったのだった。

「本当にありがとう、佐藤君」
国際会議から戻った後、山本さんが頭を下げた。俺は首を振る。
「お礼なら鈴木さんに伝えてください。彼女の協力がなかったら、田中常務の悪事を暴くことはできなかったので」

実は鈴木さんは、田中常務に取り入ったふりをしていた。それは山本さんを守るためだった。4年前、彼女たちが偶然田中常務の不正の証拠を手にしたとき、告発する直前に見つかってしまった。そして田中常務は鈴木さんを脅した。自分に従えば山本さんに手を出さない、と。

「4年もあなた一人で…私が傷つけた罪に比べたら、私の辛さなんて少しも…」
鈴木さんの目から涙が溢れた。山本さんが彼女を力強く抱きしめる。
「謝るのは私の方。あなたを信じてあげられなかった」

「さちさん、私、本当にあなたを尊敬して、本当に大好きなんです」
「私もよ。だからあなたを信じるわ」

その一言で、鈴木さんは声をあげて泣いた。こうして二人は4年越しに和解することができたのだった。

俺たちが開発したセキュリティソフトは、リリースと同時に爆発的なヒットを記録した。会社の最高売上を1週間足らずで塗り替え、山本さんは開発部の新部長に昇進。俺も高い評価を受けるようになった。

鈴木さんは一時期解雇されかけたものの、不正を告発した功績が評価され、軽い処分のみで会社に残ることができた。その後、彼女は大好きだった開発の仕事に復帰し、今はシステムエンジニアとしてバリバリ働いている。

「ねえ、佐藤君、今夜は開いてる?」
「え?」
「今度こそ本当に、一緒に食事なんてどうかなって。私、もっと佐藤君と仲良くなりたいから」

優秀で美人な鈴木さんに誘われて、俺も全く心が動かなかったわけではなかった。けれど。
「すみません。俺は…」
「だよね。ごめん、ごめん。冗談」
「え、だって今夜はさちさんと約束してるでしょ。付き合って1ヶ月の記念に」

「え、俺たちのことはまだ誰にも秘密のはずだったのに」
俺が戸惑っていると、鈴木さんの背後で山本さんが申し訳なさそうに手を合わせていた。
「ごめんね。でも、私とさちさんくらいの仲なら、聞かなくても分かっちゃうの」

そう言われてみれば、告白されたのだって俺がもたもたしているうちに、さちさんからだった。鈴木さんに背中を押されて、俺は山本さんの前に転がり出た。

「さちさん、俺と…今夜、デートしてもらえませんか?」
「え、どうかした?」
聞こえていたはずなのに、さちさんはわざと知らないふりをしてくれた。10歳年上の恋人らしい、大人の気遣いだ。

「嬉しい。じゃあ今日は絶対、残業はなしね」
「頑張ります」

頭を下げた俺を見て、さちさんはクスクスと笑った。まだまだ俺たちは始まったばかりだ。仕事も恋も、待ち受けるピンチは一緒に乗り越えていこう。お互いを信じ合いながら。

かつて、たった一度の失敗で自分の可能性を閉ざしかけた俺。でも今は、守りたい存在のために、自分が持つ力を正しく生かす方法を知っている。そして、それを教えてくれた人と出会えたから。これからも、彼女を守るためにますます自分の力を磨いていく。二人の未来を思い描きながら、俺は誓うのだった。

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